市町村が線路を引き取る

この4月で伊賀鉄道伊賀線の施設・車両の所有が伊賀市に移っていたらしい。

4月1日から伊賀鉄道伊賀線が公有民営体制に移行いたします。 (伊賀鉄道)

これまで伊賀鉄道は近鉄から線路を借りて走らせていたが、今後は伊賀市から線路を借りて走ることになる。


このあたりの背景は以前、このBlogにも書いている。

上下分離で鉄道は維持できるか

上下分離により国・県からの補助が受けられることがポイントになっている。

あとは、鉄道施設・車両の維持費を沿線市町村持ちにすることで、近鉄にとっての負担を軽減するという意図がある。

伊賀鉄道は近鉄が98%出資する子会社ですから、伊賀鉄道というのは近鉄そのものである。

今までも伊賀鉄道の赤字の一部は伊賀市から補填してもらっていたが、それでも近鉄にとっての負担はけっこうあった。

今後は伊賀鉄道は伊賀市からタダで線路・車両を借りて走らせる立場になり、近鉄にとっての大幅に軽減される。

タダで借りている線路で利益が生まれた場合は伊賀市に還元される仕組みになっている。逆に伊賀鉄道が赤字になれば伊賀市が補填するのだが。


伊賀線は全区間が伊賀市内なので、一括して伊賀市に譲渡すれば話が済んだ。

ところが、伊賀線と同時期に分社化された養老鉄道養老線はそういうわけにはいかない。

なぜならば養老線は三重県桑名市と岐阜県の6市町にまたがって走っているからである。

どうするんだろう? と思って調べてみたら、沿線市町で法人を作って引き受けるとのことだった。

さらに調べてみると、その鉄道施設・車両を引き受ける法人が見つかった。

その名は「一般社団法人養老線管理機構」である。社員(出資者)は沿線の7市町になっている。

営利性はないので会社ではなく社団法人にしたという意図があるようだ。

社団法人が鉄道事業者になるというのは珍しいようだが、今回の様なケースでは最適の選択肢だったのだろう。

今年中の譲渡を予定しているようだ。


伊賀線も養老線も内部・八王子線(現在は四日市あすなろう鉄道)も、日本の他の地域のローカル線問題に比べればかなり恵まれた話ではある。

いずれも大都市圏やその外縁に位置を走る路線で、私鉄としてやっていくのは厳しいとは言うけど、それなりの利用者がいる。

なにしろ、利用者の相当数を高校生が占めるにしても、いずれの路線も主な区間では終日30分か40分間隔で走っているのだから。

それだけに沿線市町村からの理解も深く、このような支援を受けられているのではないかと思う。

特に養老線は関係町村が多いわけで、よく結束できたなぁとも思うのだ。

そして近鉄も鉄道でやる意味を理解してくれているのだから。(内部・八王子線はBRT化という提案はあったが)


ところで、なんで近鉄は伊賀線と養老線を保有していたのかという話だが、今の大阪線と名古屋線のルーツに関わっている。

伊賀線はもともと現在の伊賀上野駅から名張を結んでいた。

これに対して(大阪~)桜井~名張~伊勢という路線を作るときに、補償のためにこの路線を買収したとされている。

新路線に平行する区間は後に廃止されたが、平行しない区間が残ったのが現在の伊賀線となっている。

養老線はもともと揖斐~大垣~桑名~津~伊勢を結んでいた伊勢電気鉄道を買収したことに由来している。

このうち桑名~江戸橋(津市)の間は現在の近鉄名古屋線に直接使われている。(ただし四日市駅付近の線路などは後に移設されている)

江戸橋~伊勢については現在使われている中川経由のルートがあるので廃止された(跡地は近鉄道路として知られているそう)、

平行路線のない桑名~大垣~揖斐は養老線として残ることになった。

実は近鉄の支線たちを調べて行くと、そういう新線建設時に補償のために買収したって路線がけっこうある。

廃止された路線もあるが、鉄道としてやる意義があれば残してきたのだ。その中で沿線市町村と連帯して残すという話が出てきたんだと。