昨日から話題になっているのですが。
3歳ダート三冠競走を中心とした2・3歳馬競走の体系整備について (地方競馬全国協会)
従来、南関東所属3歳馬で争われていた羽田盃・東京ダービーをJRA所属馬を含む全国の馬に開放し、JpnI格付けを取得、
現在のジャパンダートダービーについては名称変更の上、10月上旬の開催とする。
これにより日本の3歳ダート三冠が大井競馬場に揃うことになるというもの。
あわせて、園田競馬場で3歳限定で行われている兵庫チャンピオンシップ(JpnII)について、
1400m戦に変更し、ダートの3歳短距離チャンピオン決定戦にするとのこと。
園田競馬場は日本一コンパクトな競馬場で、大半が1400m戦を占めるという特徴もあり、これにより園田で開催される中央・地方交流重賞は全て1400mになる。
以前こんな話を書いたことがある。
世界的に見れば、アメリカのクラシック三冠も有名だという。
ケンタッキーダービー・プリークネスステークス・ベルモントステークスの3レースで勝利することで、
期間は5~6月で中1~2週と詰まっていて、距離のバリエーションは約2000m、約1900m、約2400mで、全部ダート。
日本の地方競馬もダート競馬だからか、3歳馬の三冠はこのスタイルに近いのかなと。さすがにここまでの短期決戦ではないが。
(三冠最終決戦とは)
芝ではイギリスのクラシック競走に準ずる5レースがあり、このタイプのクラシック三冠がまともに成立しているのは日本ぐらいと言われている。
日本では牝馬三冠最終戦の秋華賞も加わり、牝馬ではこちらの三冠が目標になる。
このタイプの特徴の1つが春2戦・秋1戦という構成であるが、秋になると4歳以上馬と混ざってレースに出られるため、ヨーロッパでの三冠の形骸化につながったとも。
これに対してアメリカの三冠は春に短期集中で3戦行うということである。
日本のダート競馬もこれを参考にしてきたところが多く、各地の地方競馬にあるご当地の三冠シリーズもアメリカンスタイルが主流と思っていた。
ただ、実際にアメリカンスタイルなのは南関東と兵庫(園田)の2つぐらい。
南関東は下記3レースで三冠、
- 羽田盃(4月下旬~5月上旬・大井1800m)
- 東京ダービー(6月上旬・大井2000m)
- ジャパンダートダービー(7月上旬・大井2000m) JpnI(中央・地方全国交流)
あと、ここは牝馬三冠もある。
- 桜花賞(3月下旬・浦和1600m→来年から1500m) 地方全国交流
- 東京プリンセス賞(4月下旬~5月上旬・大井1800m)
- 関東オークス(6月中旬・川崎2100m) JpnII(中央・地方全国交流)
兵庫は下記3レースで三冠である。
- 菊水賞(4月上旬・1700m)
- 兵庫チャンピオンシップ(5月上旬・1800m) JpnII(中央・地方全国交流)
- 兵庫ダービー(6月上旬・1800m)
問題はJRA勢が来る交流重賞で、地元馬限定のレースがあるから三冠挑戦権は地元馬しかないが、地元勢が交流重賞で勝つことは難しい。
地方競馬ではダービーシリーズとして6月に各地のご当地ダービーを固めている。
高知優駿(黒潮ダービー)と門別の北海優駿は地方全国交流、他は地元馬のみである。
同時期にJRAではユニコーンステークス(GIII)が行われ、
これらの上位馬がジャパンダートダービーに集い、3歳ダート王を争う――
というのは建前で、実際にはジャパンダートダービーにはJRA勢と南関東勢以外はあまりいないという。
これは勝ち目がないという判断もあるのだろう。
実際には各地の3歳チャンピオンが集まるという性格が強いのは、
10月上旬に盛岡で行われるダービーグランプリ(地方全国交流)だという。
この前哨戦を「3歳秋のチャンピオンシップ」としてシリーズ化している。
アメリカンスタイルと書いた南関東と兵庫の三冠シリーズだが、
このうち一冠は現実には難しく、一方で秋にはダービーグランプリの前哨戦がある。
北海道・岩手・高知・佐賀では、ダービーの前哨戦・ダービー(ダービーシリーズ)・ダービーグランプリの前哨戦(3歳秋のチャンピオンシップ)で三冠である。
南関東・兵庫も実際にはこれに近い実情もあったんだと思う。
新しい3歳ダート三冠では春2戦・秋1戦だから、完全にヨーロピアンスタイルである。
ジャパンダートダービーが10月上旬に移るが、これは現在のダービーグランプリの位置である。
現在のジャパンダートダービーは各地の3歳チャンピオンが集まるのは難しい。
現在のダービーグランプリの時期にJRAを含め夏を越えて強くなった馬が集まるのが適しているというのはなるほどと思った。
ダービーグランプリを交流重賞にせずに、ジャパンダートダービーの移設という形を取ったのは、すぐにG1級のレースにできるからだろう。
大井競馬が主催者であることで高額賞金のアテがあるのも好都合である。
新しい3歳ダート三冠は立場によって異なるメリット・デメリットがある。
わかりやすいのがJRA所属馬にとってのメリット。
ジャパンダートダービー(1着賞金6000万円)に代えて、新しい三冠(羽田盃5000万円・東京ダービー1億円・新ジャパンダートダービー7000万円)が目標となる。
JRAでは年間レース数の兼ね合いもあり、ダートまで手が回らなかったので、大井でやってもらえることはありがたいことである。
おそらくJRAにもこれにふさわしい前哨戦も整備されるのだと思う。
2歳・3歳のダートOPクラスのレースはいずれも重賞(GIII)やリステッドになれる実績はあるので、ダート三冠を念頭に再配置するのだろう。
課題は国際的な格付けがないこと。
いきなりG1級のJpnIの格付けが付くのは日本ローカル格付けだからこそである。
将来的には国際競走にという構想はあるだろうが、格下げは受け入れたくないだろう。
今のジャパンダートダービーはG2になれるかどうかというレベル。国際G1への道は遠い。
最近はダートも外国遠征が行われることが増えたが、せっかくのダービーでの戦績も国際的にはリステッド扱いでは……というのはある。
大井競馬にとっての明確なメリットは馬券売上である。
やはりJRA所属馬もやってきてハイレベルな争いとなれば注目度は高い。
新しいダート三冠の賞金はJRA所属馬に持って行かれる分もあるが、
そこで得た馬券売上で前哨戦の充実、あるいは条件戦の賞金引き上げなど、地元馬に還元できる分も増えると読んでいるのだと思う。
ただ、大きな課題があって、それはご当地ダービーを失うことである。
従来は東京ダービーがあるから、南関東所属を選ぶ馬も少なくなかったとみられる。
2016年の東京ダービーを優勝したバルダッサーレは、JRAからの移籍初戦が東京ダービーで明らかな東京ダービー目当ての移籍だった。
これは物議を醸し、東京ダービーの出走順は地方競馬の賞金で決めるルールになった。
そこまでした地元馬のダービーをJRA含め全国開放するなんてと思う人は多いのだろう。
ただ、昨年は船橋所属のミューチャリーとカジノフォンテンが、JRA勢を破りG1級のレースで2勝するなど、地方勢も強くなっている。
もしJRA勢を打破できれば、新しい三冠レースは従来より高額賞金である。
日本ダート競馬の主役は大井をはじめとする南関東だということで、強い馬が集まることに期待しているのではないか。
他の地方競馬主催者ですが、各地のダービーあるいは前哨戦の位置づけが変わることは間違いないと思う。
このためどのようになるかは見通せない部分は多い。
例えば、兵庫ダービーは地元馬のみで1着賞金2000万円を争うということで、
地元馬だけのレースでこの賞金の高さは魅力的だと言われており、今後も続けるのではないか。
もちろん兵庫から大井のダート三冠へ向かう選択肢もあるし、
兵庫チャンピオンシップを頂点とした3歳短距離王の道もできるが、
地元勢で争う兵庫ダービーが目標という馬は揃うでしょう。
門別はもともと門別デビューから移籍して東京ダービーを目指す馬を送り出してきた。
今後は門別所属でも東京ダービーは目指せることになる。
また門別で行われる北海優駿を含む三冠シリーズは地方全国交流競走である。
このため大井の三冠は厳しいけど、という馬の受け皿になる可能性がある。
同じようなことは同じく地方全国交流の高知優駿(黒潮ダービー)にもあると思う。
各主催者とも課題はいろいろあるが、日本ダート競馬の課題の1つを打開するために大井競馬が手を挙げたことは大きいのでは。
これと同じような形でダートの牝馬三冠も整備されるといいですけどね。
すでに関東オークス(JpnII)はありますが、同じく川崎では秋にロジータ記念がある。
関東オークスの前哨戦には大井の東京プリンセス賞がある。
また、2歳牝馬チャンピオン決定戦として年末に東京2歳優駿牝馬がある。
現状、JRAの前哨戦が散々(2歳・3歳という以前にダートでOPクラスの牝馬限定戦がない)なので、そこが整えられるかが課題である。