JRでは一部区間で特急に特急券を持たずに乗車することが認められている。
来年春から北海道で1区間増えることが決まっている。
これ、区間によって適用されるルールが違うらしい。
まず、宮崎~宮崎空港 と 早岐~佐世保 である。
比較的特急の割合が高い区間の短距離利用を認めているものである。
もっとも特急を使わないとどうにもならないほど普通列車が少ないわけでもない。
自由席を利用する場合はこの区間を特急料金の計算から除外するため、
博多~佐世保を自由席で利用する場合は、博多~早岐の自由席特急券を使う。
意外なところでは宮崎~都城を自由席で利用する場合は、南宮崎~都城の自由席特急券を使う。
宮崎~南宮崎も宮崎~宮崎空港に含まれているため除外されるという。
この区間については普通列車扱いでの運行になっていると説明される。
案内上は「特急」なんですけどね。
でも純然たる普通列車ではなく、指定席で乗車する場合は特急扱いになるという。
旅客営業規則にはこのような規定がある。
第57条9 急行列車と普通列車とが直通して運転する列車又は次の各号に掲げる一部区間を普通列車として運転する急行列車の指定席に、急行列車と普通列車を相互に連続して乗車する場合は、1個の列車とみなして、1枚の急行券を発売することがある。
(1)宮崎・宮崎空港間を普通列車として運転する特別急行列車にちりん号、にちりんシーガイア号、ひゅうが号、きりしま号及び海幸山幸号
(2)人吉・吉松間を普通列車として運転する特別急行列車いさぶろう号及びしんぺい号。
(4)早岐・佐世保間を普通列車として運転する特別急行列車みどり号。
この規定は普通列車扱いになる区間でも、他の区間にまたがって指定席で乗車する場合は、全区間の指定席特急券を購入して乗車することを表している。
先ほど博多~佐世保で自由席を利用する場合は博多~早岐の自由席特急券(1800円)で乗車すると書いたが、
指定席だと博多~佐世保の指定席特急券(通常期2530円)になるんだよね。
差額は730円、本来は指定席と自由席の差額は530円だが、早岐~佐世保の距離差によりさらに200円の差が生じている。
なお、(2)は肥薩線の長期運休中の区間のため、現在は運行されていない。
観光列車を特急扱いにする一方、沿線住民への配慮でわずかに自由席を設けて、乗車券のみで利用できる区間を設定したという事情がある。
さっきの規定で(3)を飛ばしたが、これも九州だがちょっと事情が違う区間。
(3)吉塚・博多間を普通列車として運転する特別急行列車かささぎ号。
これは かささぎ104号 の博多→吉塚の片道1本だけが該当する。
この区間には他の特急もあるが、そちらは対象にならない。
明確に「普通」として博多駅に入ってくる。
それならわざわざこんな規定要らないんじゃないの? と思うんだけど、
一応は吉塚までの指定席特急券を購入することはできるらしい。
次は大きく飛んで 青森~新青森 の区間である。
これは新幹線乗り継ぎのために同区間を使う人への配慮である。
九州と異なるのは特急券が不要になるのはこの区間だけ自由席に乗車する場合に限られることである。
青森~弘前と乗車する場合は自由席・指定席とも全区間の特急券が必要である。
北海道新幹線開通前は 新青森~函館 の特急を引くことも多かったらしいが、
現在は対象となる特急は つがる号の3往復のみで、この特例を利用する機会は少ないという。
そして最後に紹介する特例区間はかなりハードな区間である。
普通列車が運行されていないので、特例で乗車券だけでの特急利用が認められている区間がある。
それが、石勝線の新夕張~新得なのだが、この区間は特急のショートカット目的で作られたという経緯がある。
石勝線自体、運行列車の大半が特急だけど、千歳~新夕張については、生活路線としての意義もあるということで普通列車がある。
新夕張発着は朝に千歳行き1本、昼に1往復、夕方に1往復の計2.5往復となっている。(朝は車庫から回送されてくるらしい)
これに対して新夕張~新得は開通以来、一貫して普通列車が設定されたことがないという、新幹線と同じく特急専用線なんですね。
そこで、この区間だけならば乗車券のみ、あるいは青春18きっぷのような普通列車に限るというきっぷでも、特急券無しで自由席を利用できる特例がある。
ただし、この区間から1駅でもはみ出ると全区間の特急券が必要(青春18きっぷの場合は乗車券部分も無効)というルールがあるので、
この区間を特急料金を払わずに使うというのは、なかなか実用的ではないと思うんだけどね。
というか、特急専用線ならば必ず特急券を買うことでもいいんじゃないの? という気はするんだけどね。
(どうして特急形車両を使うんだ?)
ここに書いた通り、石勝線の新夕張~新得間である。
普通列車が全く無いがゆえの特例なのだが、実用性はほとんどない。
なお、この区間については来年春から特急列車が全席指定になる都合、
指定席の空席を乗車券のみで利用できるという規定に改められる。
どのみち実用性は見いだせない規定である。
さて、来年春から東室蘭~室蘭が特例区間に加わる。
苫小牧~長万部間の本線にある東室蘭駅(室蘭市の代表駅)から分岐する支線区間である。
同区間を運行する列車の一部は札幌~東室蘭の特急 すずらん号の延長運転となっている。
現在は全席自由席の普通列車として扱われている。
しかし来年春から すずらん号は全席指定席となることなども考慮して、札幌~室蘭の特急に改められることとなった。
それでも東室蘭~室蘭に限れば従来通りの使い方ができる特例が設けられた。
なおこの区間にはすずらん号以外の普通列車の運行もある。
この区間のみであれば乗車券のみで普通車指定席の空席が利用できることにする。
札幌~室蘭を乗車する場合、従来は札幌~東室蘭の特急券で利用していたが、
来年春からは札幌~室蘭の特急券を購入することとなる。
もっとも東室蘭と室蘭で特急券の料金が変わる区間は存在しないとのこと。
最後に書いた東室蘭~室蘭のように特急が全席自由席の普通列車に化けるのは他にもあるらしい。
この中には同じく来年春から全車指定になる わかしお号 との直通運転もある。
ただ、夜間帯の勝浦行きの特急2本が、安房鴨川行きの普通に化けるというもので、
指定席→自由席という変化なのでトラブルは少ないだろうとは言える。
さて、来年春から北海道の多くの特急で全席指定化が行われることとなった。
長距離特急の多い北海道で指定席拡大というのは基本的によい話だが、
北海道ゆえの課題もあり、それが普通列車が少ない区間での短距離利用である。
在来線特急の全席指定化については、JR東日本とJR西日本が積極的にやってきたが、アプローチは異なる。
JR東日本は関東圏の全席指定特急(成田エクスプレスを除く)で通年定額の特別な特急料金を設定している。
この料金は従来の指定席より安く、比較的長い距離では従来の自由席と大差ない。
車内料金として事前料金より割り増しした料金が設定されていること。
座席未指定特急券が指定席同額で発売され、これを購入すれば満席でも乗車できること。
座席の使用を条件としない特急券
特別な料金設定の背景には普通列車グリーン車との関係もあると思われる。
全車指定になっても従来より割安ならそれはそれでと思いますが。
なお、この全車指定特急ではチケットレス特急券が導入され、100円だけ割引がある。
劇的に安いわけではないが、指定席券売機が混雑しやすいので有用である。
JR西日本はチケットレス特急券の普及を背景として全車指定化を進めた。
通勤で特急指定席って使えるんですか?
チケットレス特急券はJ-WESTカード会員に対しては割安で提供されている。
なんと自由席特急料金と同額以下である。
本来、定期券では特急の指定席には乗車できないのだが、
チケットレス特急券についてはその限りではない。
このような事情からリピーターの多い通勤特急から普及していった。
JR西日本は特急運行区間にICOCA導入を進め、チケットレス特急券の導入路線を広げていった。
そして近畿圏完結の特急は順次全席指定化されていった。
J-WEST会員以外でもチケットレス特急券は若干安く買えるが、
紙のきっぷであれば従来の指定席特急料金と変わらない。
全車指定で満席の場合は530円引きで立席特急券が購入できるそう。
北海道のアプローチはこの2つと似ている部分と異なる部分がある。
まず、料金体系は従来の指定席特急料金と同じ。これは西日本と同じ。
座席未指定特急券を導入するのは東日本と同じ。満席でも料金は変わらない。
一方でチケットレス特急券の導入区間は 札幌~苫小牧・岩見沢 に限られる。
ICカード導入エリアが狭いという事情もあるのかもしれない。
このため自由席から指定席の差額がそのままのしかかることとなる。
その代わり「えきねっとトクだ値」の設定区間を拡大するとはあるが、
これは前日までの購入が前提かつ、乗車券とセットである。
そうなると「普通列車が少ない区間での短距離利用」が苦しいよねと。
そもそも西日本も東日本もそういう区間は基本的には全車指定化していない。
くろしお号や但馬方面では苦しい区間はあるが、チケットレスの割引が手厚い。
北海道は長距離特急の本数が限られる中で全車指定化にはもちろん理由はあるが、
なかなか救済策に乏しいのが実情である。なんとかならんもんか。