石炭を運んだ線路と座席の出てくる展示場

朝、阪九フェリーは無事に北九州・新門司港に入った。

下船すると小倉行きのバスが待っていて、これに乗ると小倉まで行けるのだが、

所要時間は35分とやっぱりこっちもけっこうかかる。

北口で下ろされたのだが、ちょうど同じバスターミナルに名門大洋フェリーのバスも入っていた。

こちらもおなじく新門司港発着、ただし委託先のバス会社が違うようだ。


今日の主な目的地は福岡で、真っ直ぐいけば1時間ほどだが、いろいろ遠回りしながら行くことに。

というわけで、まずは戸畑駅まで電車に乗って、そこから海に向かって歩く。

すると大きな橋が見えてくるが、その下に若戸渡船の乗り場が。

対岸の若松との間を結ぶ市営渡船、運賃は100円である。

見えている橋は若戸大橋という自動車専用橋で、歩行者・自転車は渡船を使うことになる。

距離感といい、自動車専用橋と並行しているのといい、大阪の天保山渡に似ている。こちらは無料だが。


渡船が横断したのは洞海湾という細長い湾で、主に工業港として利用されている。

渡船で到着した若松がどんな港だったか、そのことがよくわかるのが若松駅である。

今は30分に1本程度、列車がやってくる終着駅だけど、その周りにやたらと広い土地が残され、錆びた蒸気機関車が置かれている。

実は、若松は筑豊炭田から列車で出荷された石炭を船に乗せる中継地点として発展したところだった。

やたらと広い土地が残されているのは石炭時代の名残で、蒸気機関車は石炭を燃料に走っていた。

時代が移り変わり、現在は若松駅にやってくる列車は蓄電池車「DENCHA」になっている。

折尾~若松はずっと電化されずに来たのだが、ディーゼルカーの老朽化が進む中で蓄電池車が使える距離ということで、蓄電池車への置き換えが行われた。

石炭の時代に生まれた線路を、高性能蓄電池を載せた電車が走るというのは、エネルギーの移り変わりの象徴だろうか。


若松駅から乗った列車は直方行きだが、非電化なのは折尾までで、そこからは福北ゆたか線として電化された区間に入る。

蓄電池車のいいところだと思うけど、電化区間では普通に電車として走っていて、なおかつ充電もできる。

直方駅で博多行きに乗り換えて、長者原駅で香椎線に乗り換えたが、

実はこちらも糟屋炭田から西戸崎(さいとざき)港への出荷ルートで、電化されていない。

なので以前はディーゼルカーが走っていたのだが、こちらもDENCHAに置き換えられたのだった。


ここから西戸崎まで行って、博多港まで船で行こうかと思ったのだが、

ここまでいろいろタイムロスもあって、なかなか厳しいということで、香椎からは目的地に直行することに。

そうしてたどり着いたのがマリンメッセ福岡である。

会場選びはきっと難しい

実は博多港の旅客ターミナルからも近いので、海から行くのは合理的そうだったのだが、

どう考えても遠回りなので、時間に余裕がなければできない。あと少し余裕があればできたんだけどね。


マリンメッセ福岡の案内図を見ているだけだと、なんかよくわかんない会場だなと思ったが、

入ってみるとすぐわかったが、ここって根本的には展示場なんだね。

ただ、多目的展示室(8000m2)を囲むように、2階展示室(1100m2)があり、それぞれ格納式の座席がある。

多目的展示室・2階展示室の両方の座席を出すと、まさにアリーナができるんですね。

そのため、スポーツやコンサートの用途でも使用でき、特にコンサートでの使用実績は多い。

ただ、根本的に展示場なので、展示場として使うのがもっとも素直ですけどね。

展示場として考えると、展示場を囲む2階展示場というのは不思議な存在だが、座席を出すための方便ですね。

展示場として2階展示場は活用されてるんだろうかね。全く使い道がないとは思わないが。


終演後は博多駅まで歩いた。途中、満員のバス数台に追い越されたが。

これでも案外近いと言えるわけ

大博通りを歩く人は博多駅まで歩く人が多かったね。呉服町駅で地下鉄に吸われる人は少なかった。

そこから夕食を食べて、新幹線に乗って、熊本までやってきて1泊。

終演~宿がだいたい2時間ぐらいですかね。

新幹線は偉大だというのはあるけど、新幹線のターミナル駅まで30分でも歩けば着くのは、実は便利なのかもしれない。

特に遠征の人が多かったからね。

パソコン工房になったもの

今日は近鉄電車でG20真っ只中の大阪へ向かった。

電車はいつもの週末だが、地上に出ると道路は車が少なく、逆に警察のバス(人員輸送車)が目立つ。

中之島に行くのに、四つ橋線難波駅を目指して千日前通を歩いていると、佐賀県警察の人と多くすれ違った。

難波界隈は警戒しているといっても、普段よりちょっと警戒強化してるねぇぐらいだけど、

リーガロイヤルホテルとコンラッド大阪のある中之島の警戒はかなりのもの。

いろんなところにバリケードを立ててあって、要人が通るときにはすぐに完全に閉鎖できるように準備してあった。

国立国際美術館でも手荷物検査とボディチェックがあった。まぁ実効性はどうだか知らないけど。

四つ橋筋沿いにある駐車場には警察車両、特にバスが多く停車していた。

福島駅へ向かうために堂島川を渡ると、警察のボートが橋をくぐっていった。川からも中之島を守っているようだった。


話は戻るが、中之島に行く前に、日本橋の電気街を歩いていた。

すると、BUSHIROADと書いた大きな看板を掲げている建物がある。

何かと思ったら、カードラボというトレーディングカード(TCG)専門店に、TCGを手がけるブシロードが広告を出していたようだ。

別にブシロードが乗っとったわけではないようだ。もともと広告枠らしい。

でも、この建物、かつてはパソコン工房本店だったんだけどなぁ。


というか、今もパソコン工房を営むユニットコムの登記上の本店はここである。

登記上の本店が実際に本社機能を持っている必要はないのだが、少なくともここで郵便物を受け取れる必要はある。

それで裏口を見てみると「株式会社ユニットコム」と書いたポストが置かれていた。

現在、この建物にはユニットコムの店舗はなく、全てが カードラボ または らしんばん という他社の店舗になっている。

店舗はなくても何らかの業務を行っている可能性はあるが、ただポストだけ置かれているだけの可能性もある。


そもそもユニットコムの本社機能は、ここにパソコン工房本店があったときから、向かいのビルにあったとされている。

かつて、このビルの1階にはFaithという、当時ユニットコムが展開していたブランドの1つの店舗があった。

ただ、このビルからFaithは去り、現在は1~4階にアニメイト・らしんばん・メロンブックス・カードラボの店舗がある。

現在も本社機能はここにあるんですかね? 一応、裏口には「UNITCOM」という古ぼけた看板が付いてるけど。


パソコン工房本店は2014年に近くに新築されたビルに移転した。

隣にはアウトレット別館があるが、これは元々TWO TOPの店舗だった。これもユニットコムのブランド。

2013年にFaithとTWO TOPが集約されBUY MOREになり、後にパソコン工房の別館という扱いになった。

というわけで、ちゃんとユニットコムの店舗は少し姿を変えて今もあるんですよ、

ただ、よく見てみるとパソコン工房のビルの2~3階にはアニメイト O.N.SQUAREが入っている。

アニメイトのカフェとイベントスペースらしい。


アニメイト・らしんばん・メロンブックス・カードラボが1つのビルに寄り合っているが、

これはいずれも関連会社らしい。いずれも非公開会社なので確からしいことはわからないのだが。

旧パソコン工房本店も、ユニットコム本社ビルも、パソコン工房新店舗の2~3階も、

全部、アニメイトとその関連会社に貸しているということでズブズブの関係だな。

過剰だったり、使いにくかったりした店舗を、他に貸して有効活用できれば、それはそれでいいのかね。

これらの店舗面積が増えたことで、日本橋が趣味の街としての存在感を高めることができたのは確かだし。

ここまでの大型店舗って他になかなかないですから。いずれもその分野では西日本最大と言えるほどにはなった。


現在のユニットコムという会社はマウスコンピュータの小売部門ということになろうかと思う。

パソコン工房・TWO TOP・Faith はもともと別のルーツをもつ会社だったが、

同じ会社になって、特に東京・秋葉原と大阪・日本橋では複数のブランドの店舗が乱立するような状況で、

それは不合理だという判断があったのか、現在は全てパソコン工房のブランドに集約された。

もともと秋葉原にはパソコン工房ってあったのかな。TWO TOPとFaithの本店があったのを集約したらパソコン工房になっちゃったという理解だが。


一方で、それぞれのブランドごとにBTOでのパソコンの販売を行っていた。

TWO TOPはビジネス用途、Faithはゲーミング用途というすみ分けがあったようだが、これらは全てiiyamaブランドに集約された。

iiyamaもマウスコンピュータ傘下のディスプレイメーカーで、そのブランド力を生かそうということだったのだろう。

iiyama PCもユニットコム製品であることは変わらないらしいのだが、iiyamaの工場で組み立ててるそうだ。

そういう経緯もあって、今のパソコン工房はiiyamaのアンテナショップのような役割も担っている。

パソコン工房本店の移転にはそういう期待も込められたような気がする。


大阪を去って向かったのは神戸・六甲アイランドである。

なぜ六甲アイランドかというと、阪九フェリーに乗るため。

阪神~北九州では大型フェリーが1日4往復しており、需要の旺盛さを知ることが出来る。

名門大洋フェリーは大阪・南港から2往復、阪九フェリーは泉大津と神戸から1往復ずつ出ている。

最初はG20のことも忘れてたから、ニュートラムですぐいける名門大洋だと考えていたのだが、

設備と運賃などを考慮して阪九フェリーにしたが、何がいいって1人用個室が7240円ということ。

えらく安いなと思ってたどり着くと、どうもドライバールームと同仕様の部屋でテレビもない部屋だった。

テレビ付きの1人用個室(2等指定A)もあるのだが、それよりさらに安いのを選んでたらしい。

まぁ狭苦しい部屋ではあるが、2段ベッドよりはゆったりしてるからいいか。ちょっと詰めが甘いが。


ちなみに六甲アイランドのフェリー乗り場は徒歩客はバスで行くのだが、

阪神御影駅から阪急御影駅・JR住吉駅・アイランド北口駅を経て行くバスで、

最後のアイランド北口駅から乗車する場合だけ無料で、あとは有料(230円)というのは、

無料送迎バスだが、六甲ライナーに乗らなくて済んだ分は自己負担という考えなんだろう。

なんとなく六甲アイランドに行って、歩いて行ってもいいかもなと思ったが、2kmぐらいあるのでバスは必須かね。

バス乗り場に行くと部活動の団体らしきがいて、すでに乗車している乗客を考えると乗り切れなさそうだった。

それで代表者が運転手に相談すると「待っててくれたら戻ってくるから」とのことだった。

無料区間だけなら5分ぐらいしか走らないから、融通は効きやすいようだ。無料区間にはそんな意図もありそうだ。

でも短距離でもバスの時間に合わせて動かないといけないのは不便だね。そう考えると駅直結の大阪・南港はいいよね。

ゴミ箱が封鎖されてるから

今日から九州に向けて出発した。

九州にまっすぐに行くなら飛行機かせいぜい列車だが、

やっぱり九州だと瀬戸内海のフェリーでしょ、ということで往路は大阪に寄り道しながら行くことにした。

その後、G20サミットの期間と被っていることに気づいたけど、大きな影響は多分ないはず。

大阪・南港からのフェリーだったら気がかりだったけど、神戸港からだし。


昼まで在宅勤務をして、名古屋まで東名ハイウェイバスに乗るために東京駅へ向かった。

東京駅について、トイレに寄ってからバスターミナルへ行こうとしたら、

トイレにペットボトルなどが放置されていたが、1つ2つなら時々あるが、それにしても妙に多い。

なんで? と思ってトイレを出て、振り返ってみたら、ゴミ箱が封鎖されていた。

そう。G20サミット開催に合わせて、テロ対策という名目でゴミ箱を封鎖しているんですね。

それで、捨てれなくなったゴミがトイレに放置されていたということだろう。


テロ対策という名目でゴミ箱とコインロッカーが閉鎖されるのはよくあることだが、

本当に効果があるんだろうかという疑問はある。

テロの標的は大きくハードターゲットとソフトターゲットに分けられるそうだ。

ハードターゲットというのはクリティカルで警備が厳重な施設、

今回のサミットだと会場のインテックス大阪とか要人が宿泊するホテルとかそういうところだろう。

ただ、そういうところは警備が厳重なので、なかなか狙いにくいという面もある。

そこで、テロの標的として心配されているのが、警備の手薄なソフトターゲットということである。

別に要人が出入りするとかそういうわけではないが、G20で大阪への注目が集まっている中で、

観光地とかターミナルとかで事件を起こせば注目されるということで、そこを狙われかねないと。

ただ、どこでも対象になりうるという点では、警備の強化などしようにも手が付けにくい。

クリティカルではないが、それだけに数が多くて狙われやすいのがソフトターゲットということ。


それなら簡単に潰せそうなところは潰しておこうというのが、ゴミ箱とコインロッカーの閉鎖なのかなぁと。

ゴミ箱が警戒されるのは、捨てられたものがよくわからないまま放置されるからだと思うが、

平時からの対策として、透明部分を設けたゴミ箱はもうずいぶん普及した。

それが十分かはわからないけど、もともとゴミ箱の閉鎖だって気休め程度の対策である。

やろうと思えば危険物を公共空間に放置する方法はいくらでもあるだろう。

どうせソフトターゲットまで徹底した警備は行き届かないのだから。


それはそうとして、公共空間のゴミ箱というのは、だんだんと減ってきているし、

今後、さらに減る方向に行かざるを得なくなるのではないかと思う。

市町村で回収されるペットボトルや容器包装プラスチックは比較的よく分別・洗浄されているし、

市町村が選別など行って、容器包装リサイクル協会に引き渡せば、製品の製造者の責任でリサイクルされる。

ところが、公共空間のゴミ箱に集まるゴミは、まだ秩序があるように見えるペットボトルですら、

そのまま引き渡せるような代物ではなく、国内で適正に処理するには人件費が見合わないと、

外国に輸出してリサイクルされることに期待していたが、実は適正にリサイクルされてということで輸入差し止めも起きているようだ。

それでも費用を掛ければ何らかの処分はできるだろうが、それは見合わないとゴミ箱を撤去する場所も増えるんじゃないだろうか。


本来は、自宅に持ち帰って、本人の責任で分別などして捨てろということである。

容器包装について言えば、容器包装リサイクル協会に引き取ってもらえば、市町村の負担は抑えられる。

排出者にとっては分別・洗浄するのが前提ではあるが、あまりにひどいと回収されないからそこそこやる。

どこまで徹底されているかという話はあるが、公共空間のゴミ箱よりはよっぽど品質はよいに違いない。

というか、街中で容器包装を厳密に分別したり洗浄したりするのは無理ですからね。


ただ、そうはいってもゴミ箱がないならないで、街中にゴミを放置する人が一定出るんだよね。

ゴミ箱が閉鎖されたら、トイレにゴミを放置する人が続出したのもそういうことだろう。

そうして放置されたゴミがゴミを呼ぶわけで、根気強く向き合わないとゴミ箱をなくすことは難しいなと思った。

それでも、街中でゴミを捨てる手段が全くなくなると、どこに行くかという懸念はあるんだよね。

公共空間に置かれたゴミ箱に代わる選択肢を何か用意できないといけないだろうか。

リターナブル容器とか、有償引き取りとか、そういうことなのかなぁ。いずれにせよ運用は大変だが。


あくまでも今回のゴミ箱封鎖は暫定的なもので、来週には解除されることだと思う。

ただ、将来的にはそういうこともあるんじゃないかなと。

そうなったときどうなるかと考えると似たようなもんじゃないのかなと。

間接的にダムの水を使っている

西日本では梅雨入りが余りに遅れて水不足が問題になっている地域もあるようである。

水不足といって真っ先に思い浮かぶのが四国の早明浦ダムだが、貯水率は83%となっている。

24時間前の貯水率は65%だったそうで、台風の影響である程度の蓄えができたようだ。


一方で、同じ画面に表示されていた銅山川3ダム合計の貯水率が35%となっている。

これは愛媛県にとって危機的状況なのではと思ったらやっぱりそうらしくて、

銅山川では第3次取水制限ということで、工業用水30%カット、上水道5%カットとなっている。

この程度ならば生活用水への影響はそう多くないかとは思うが、危ない状況である。


早明浦ダムは吉野川上流の高知県の山間部に作られたダムで、下流の吉野川は徳島県内を流れて海に注ぐ。

これだけだと、早明浦ダムの水は徳島県内でしか使えない。

高知県内を流れるうちに使える可能性はあるが、高知県の吉野川流域は山間部の過疎地域なので。

ところが実際の早明浦ダムは四国の4県全ての利水に貢献している。


まず、香川県への水の供給だが、下流の池田ダムで水を取水して、香川用水という水路から供給する。

これはわかりやすい。専用の水路を早明浦ダムの下流に作ったわけだね。

ゆえに徳島県と香川県はともに早明浦ダムの渇水の影響が直接的に現れる。


次に愛媛県への供給だが、実は早明浦ダムの水が直接的に愛媛県に行くことはない。

吉野川の支流で銅山川は主に愛媛県内を流れていて、この水は四国中央市に供給されてきた。

四国中央市というと製紙業で有名だが、それを支えてきたのが銅山川のダムということである。

銅山川は愛媛県内を流れる川だが、その下流には徳島県内の吉野川があるので、

本来ならば銅山川のダムは愛媛県内と徳島県内の両方の利水の役割を持つべきなのだが、

徳島県内への利水は早明浦ダムに肩代わりしてもらうことで、銅山川のダムは徳島県側に水を流さなくてよい。

早明浦ダムの存在により、銅山川の水は愛媛県内で全部消費することができるので、愛媛県の利水に貢献しているということ。


高知県への供給は、早明浦ダムに流れ込む前の瀬戸川・地蔵寺川から水を取って、

別の水系の鏡川にある鏡ダムに導水される。ここの落差で発電もしているらしい。

この鏡ダムは高知市の水道用水として使われている。

ダムに入る前の水を取ってしまっても、その分は早明浦ダムの貯水分で補えるよねってこと。

この利水ルートを高知用水と呼んでいるが、高知市にとって高知用水の重要度はそこまで高くないようで、

徳島県・香川県のピンチとなれば真っ先に100%カットされるのだった。


銅山川の水を愛媛県内で使い切るというところで気づいた人もいるかもしれないが、

銅山川3ダムのもっとも下流にある新宮ダムから下流には水を流さなくてもよいということになる。

もちろん洪水時など過剰なときは下流に水を流すんだけど、渇水時に下流に流す水は常に0m3/sだ。

それでも吉野川の流量は早明浦ダムで確保できるが、新宮ダム下流から吉野川に合流するまでの銅山川に流れる水はなくなってしまう。

このままでは銅山川が枯れ川になってしまい環境への影響があるということで、

対策として新宮ダムの下流に作られた影井堰で、流量調整を行い、銅山川の維持に必要最低限の流量は保つようにしているそうだ。

ただ、新宮ダム自体には河川機能維持という役割はないので、常に流量が保たれているわけでもないらしく。可能な範囲でということのようだ。


そんなわけで、ダムの水って下流以外でも間接的に使えるんですね。

水不足に悩まされた奈良盆地に紀の川(奈良県内では吉野川と呼ばれている)の水を供給する吉野川分水は

紀の川上流の 大迫ダム と 津風呂ダム から放流された水を取水して奈良盆地に供給している。

ただ、紀の川下流の和歌山県内も水に余裕があったわけではなく、この計画は単純には実現しなかった。

どうしてこれが実現できたかというと、奈良県でも水に余裕があった熊野川流域に猿谷ダムを作り、

ここから紀の川水系の丹生川に水を放流し、それで和歌山県内の農業用水を確保できるようにしたからという。

だから、吉野川分水は間接的には熊野川の水なんだよね。直接はやってこないんだけど。

塩作りもいろいろ

日本で食べられている塩の原料はほぼ全て海水だが、作り方はわりといろいろある。

でも、食用の塩でもっとも一般的なのはイオン交換膜を使って海水を濃縮して、

そこから釜で加熱して結晶化させる方法で、日本国内の海水から作られる塩は基本的にこれ。


その昔、日本国内でも塩田を使って塩作りをしていたときは、塩田で濃い海水を作って、釜で結晶化させていた。

日本は天日だけで塩を結晶化させるところまでやるのは難しくて、かといって海水をそのまま炊くとあまりにエネルギー消費が多すぎるので、

日本では一貫して、塩田で濃い海水を作って、そこから釜で結晶化させるという方法を取ってきた。

古代には藻に海水を付けて乾燥させるとかやっていたが、1950年代には流下式塩田という方式に発展していた。

この塩田の部分がイオン交換膜になったということで、日本の塩作りの伝統を踏襲したものだと理解していた。


イオン交換膜を使った方式のよいところは、海水に含まれる重金属や有機物は濃縮されないこと。

何も考えずに海水を濃縮すると有害物質も濃縮されるし、細菌が繁殖することさえある。

でも、イオン交換膜では前処理で不純物や細菌は取り除かれるし、原理的に有害物質が濃縮されないので安全性が高い。

重金属などが取り除かれる一方、塩化ナトリウム以外に塩化マグネシウム(にがり)や塩化カリウムなども濃縮される。

なので、食塩だけでなく、にがりの製造もこの方法で行われている。

塩化ナトリウム分の多い塩を作るのは、どちらかというと結晶化のプロセスでの工夫である。


ただ、この方法は世界的にはあまり一般的な方法ではない。

世界の塩生産の2/3が岩塩、1/3が海水からということで、岩塩の方が多いんだね。

岩塩は固形で掘り出すか、水を注入して塩水を吸い出すことで取り出す。

固形で掘りだしたとしても、食塩以外の不純物も多いので、一旦水に溶かして再結晶化されるのが普通。

まれに岩塩そのままを売ってたりするけど、扱いは良くない。


1/3の海水からの塩作りも、普通は天日塩ということで、ひたすら太陽と風の力で濃縮して結晶化される。

日本でもメキシコやオーストラリアで作られた天日塩を輸入して、食用・工業用に使っている。

いろいろな「塩」の違いとは?/塩作りの原理/その原理の使い方 (カンホアの塩)

塩分濃度25~30%ぐらいの範囲で結晶化させると、塩化ナトリウム分の多い塩が得られるのだが、それだけでは高純度な塩化ナトリウムは得られない。

そこで、その後に塩田から刈り取った塩を、飽和食塩水で洗うことで、不純物を洗い落とし、塩化ナトリウム以外の成分を抜いている。

通常はそこまでして天日塩として完成を迎えて、工業用途としてはそのまま使えばいいんだけど、

海水を濃縮させる中で細菌が繁殖するので、天日塩を安全に食用にするには、水に溶かして釜で炊くという工程を加える必要がある。


最初に書いた通り、日本で食べられている塩の原料はほぼ海水だが、作り方にはいろいろバリエーションがある。

「伯方の塩」ができるまで (伯方塩業)

「赤穂の天塩」の原料 (天塩)

日本では1997年まで塩の専売制があった。そして、1972年からイオン交換膜を使った製塩が始まり、塩田を廃止することになった。

安全性が高く高純度な食塩が安価に入手できるようになったのはよかったが、塩田で作っていた頃の純度の低い塩の入手は難しくなる。

それは困るということで、専売制の枠組みの外で「特殊用塩」という名目で塩の製造許可を受けたのが先に書いた2社である。

今でこそ個性的な塩がいろいろあるが、専売制があった時代から個性的な塩作りに取り組んでいたということ。

どちらも当初は専売公社が輸入していた天日塩を加工することで塩作りに取り組んでいて、

「伯方の塩」はオーストラリアまたがメキシコから輸入した天日塩を瀬戸内の海水で溶かして、不純物を取り除いてから加熱して結晶化して作っている。

「赤穂の天塩」はオーストラリアから天日塩とにがりを輸入して、天日塩とにがりを溶かして再結晶化したものと、天日塩を洗浄・粉砕したものを混合して作っている。


天日塩を海水に溶かしたり、にがりを別途輸入したり、なんとなく回りくどい気がするが、

高純度の塩化ナトリウムは工業用途でニーズの高いこともあって入手性がよいのが理由のようだ。

赤穂の天塩なんて塩とにがりを分けて輸入するぐらいだが、それぞれ汎用品を輸入できるのは理由なんじゃないか。

その上で所望の成分が得られるように工場で調整すればよくて、そこは塩田時代からのノウハウが生かせる。

なおかつ、イオン交換膜を使って海水から濃縮をスタートすると大がかりな設備が必要だが、

天日塩をスタート地点にするなら、天日塩を溶かした先は塩田時代とあんまり変わらない設備で済むのも理由だったのかも知れない。

ちなみに、「赤穂の天塩」と同じようなことを国内の海水からイオン交換膜を使って作った塩とにがりを使ってやることもできて、

専売公社の塩事業を継承した塩事業センターも「にがり食塩」という商品名で販売している。


かつての専売制の反動か、多種多様な塩作りが行われている影響か、塩の商品表示でのトラブルは多かったようで、

食用塩公正取引協議会が表示ルールを決めて運用していて、それに適合した商品には公正マークが付けられている。

その中で製造方法や原料について一定の用語を使って表記することになっている。

伯方の塩だと原料は「天日海塩(93% メキシコまたはオーストラリア)、海水(3% 日本)」なんて表記になるし、

赤穂の天塩だと製法は「洗浄・粉砕」と「溶解・立釜」の2ルートできたのを「混合」するという表記になる。

ユニークな塩を見かけたらよく見てみると面白いかも知れない。

見比べてみると特徴的なところとそうでないところが見えてくるだろう。

共催でオリンピック

2026年の冬期オリンピックの開催都市がミラノとコルティナダンペッツォに決まった。

イタリアの2都市での共同開催という形になる。

ミラノは北イタリアの中心都市で、工業都市としても知られる人口130万人の都市。

一方のコルティナダンペッツォは山間のリゾート地で、人口6000人ほどということで都市というよりは村だな。

ウィンタースポーツでは国際大会の会場になることも多く、1956年には冬季オリンピックの舞台になっている。


Dossier (Milano Cortina 2026)

計画では、ミラノ、ヴァルテッリーナ、ヴァル・ディ・フィエンメ、コルティナの4つのクラスタがある。

ミラノでは雪の競技はできないので、開会式と氷の競技の一部をやる。

雪の競技は他の3地区、氷の競技でもカーリングはコルティナなど、わりといろいろ散っている。

冬のオリンピックではメダルの授与は日を改めて別の会場でやるのだが、メダルセレモニーはミラノとコルティナの2地区でやる。

ちなみにミラノとコルティナは250kmほど離れ、他の2地区はその間にあるということかね。


冬のオリンピックって雪山でやる競技と、氷上でやる競技があるので、地理的には分散するものではあって、

2022年の北京オリンピックでは、氷の競技は北京でやるが、雪の競技は160kmも離れた張家口などで行われる。

この逆に2018年のピョンチャンオリンピックは、氷の競技が開催され、観戦などの拠点になったのはお隣のカンヌン市だった。

雪山が開催都市

選手だけでなく、報道関係者や観戦客を多く受け入れられて、雪の競技も氷の競技も都市内でできるなんて、そんな都市はそうそうない。


もっとも、それができた大都市もあるんだけどね。

それが1972年の札幌オリンピック、なんとアルペンスキー滑降以外は全て札幌市内で行われた。

札幌は人口200万の大都市でありながら豪雪地帯という世界的にも珍しい都市で、

スキージャンプなどが行われた大倉山は都心からわずか5km、より本格的なスキー場のある手稲山すら10kmほどである。

滑降は手稲山では条件を満たせず、隣接する千歳市の恵庭岳に仮設コースを作ったからで、条件を考えれば十分近い部類である。

でも、これはなかなかマネできないよね。


2都市での共催を認めたのは経費を節減して、オリンピックの開催都市への立候補を増やそうという意図があったんだろう。

オリンピックのために競技場を新設するのはあまりに大変で、使えるものは活用してもらった方がよい。

従来から開催都市以外で競技を行うことはあって、軽井沢町が今のところ唯一無二の夏冬の両方のオリンピックの舞台となった町であるのもその一例。

1964年の東京オリンピックで馬術、1998年の長野オリンピックでカーリングと、いずれも開催都市以外でも競技をやったからこそだから。

もともと冬のオリンピックでは開催都市周辺のかなり広いエリアに会場が分散するのは普通だったけど、

それをさらに推し進めて、ミラノとコルティナにまたがる広いエリアで開催しようという意図だったのだろう。


もともと冬のオリンピックはそんなものだし、広域に分散してもそんなものかなぁと思うけど、

夏のオリンピックはなんやかんやと言って主要競技は開催都市でというこだわりも強い。

ただ、こういってはなんだけど、2020年のオリンピック開催都市である東京というのはろくな陸上競技場のない都市で、

今回は国立競技場を改築して、サブトラックを仮設するということで対応したが、オリンピック後は球技専用に改造されることが決まっている。

だから、実態としては仮設の陸上競技場ということで、先につながるものはない。

それでも、オリンピックの開催都市で花形種目である陸上競技ができないのは論外ということだったんだろう。

いくら国際大会の実績も豊富だからって、大阪の長居陸上競技場で陸上競技をやるとか、そんなアホみたいなことはあり得ないし、

比較的近くで設備が充実している調布市の 味の素スタジアム を使うのはまだありそうだけど、それだって格好は付かない。

そんなこと言っているからオリンピックに金がかかって仕方ないとなるのだが。

もうホームを新設するしか

こんなニュースが流れてきた。

京浜東北線しか止まらない… 川口駅に中距離列車停車? JR前向き回答 市、調査費2750万円 (産経新聞)

川口駅に湘南新宿ライン・宇都宮線の電車を停車させる検討のための予算が積まれて、

JRとしても前向きな回答が来ているという話。


東北本線は東京駅から大宮・宇都宮を経て、盛岡まで向かう路線となっているが、東京付近ではだいたい6本の線路が敷かれている。

2本が宇都宮線と呼ばれている快速電車用の線路、以前は東京側は上野駅から始まっていたが、

現在は上野東京ラインとして東海道線と連結されたので、宇都宮・大宮方面から上野・品川を経て東海道線小田原方面につながっている。

2本が京浜東北線と呼ばれている各停用の線路で、こちらは大宮~上野~東京~品川~横浜とつながっている。

大宮~東京では基本的に宇都宮線と京浜東北線は平行していて、宇都宮線は快速停車駅だけにホームがある。

具体的には上野・尾久・赤羽・浦和・さいたま新都心だが、このうち尾久駅付近は京浜東北線と違うルートを走るので宇都宮線専用の駅である。

もう2本が田端~大宮にある東北貨物線だが、実態としては、田端~池袋~新宿~大崎の山手貨物線と連結して、湘南新宿ラインの電車が走る線路になっている。

ちゃんと貨物列車も走ってるんですけどね。ただ、本数としては圧倒的に湘南新宿ラインが多いので。

もともと貨物線ということもあって、長らく赤羽駅だけにホームがあったそうだが、2013年に浦和駅にもホームが新設されたそうだ。


川口駅は東北本線の埼玉県内に入って最初の駅で、1日の乗車人員が8万人以上とのことだ。

宇都宮線との役割分担もあって、京浜東北線のみが停車する駅となっているのはその通りなのだが、

あまりの利用者の多さにホーム上の混雑がひどく、積み残しも発生していて、ダイヤが乱れると改札止めも発生している。

そこで緩和策として、京浜東北線以外の電車を停車させることが提案されたと。

僕が以前に見たのは、湘南新宿ラインの電車を停車させるというアイデアで、

上野方面は従来通りに京浜東北線で、池袋・新宿方面は湘南新宿ラインという役割分担が成り立つのではという話だった。

なお、現在は川口駅と池袋・新宿方面の行き来には隣の赤羽駅で京浜東北線と埼京線を乗り換えるのが通常かと思う。


そもそもホームの新設が可能かどうかが問題だが、設置可能なスペースはあるので、その点では実現性はあるようだ。

ただ、問題は京浜東北線だけが混んでいるというわけではないことで、宇都宮線も湘南新宿ラインも混んでいると。

果たしてそういう状況で川口駅に停車させて問題は解決するのかというのが懐疑的だと。

多くの乗降が見込まれるので、停車時間も長く取ることになるだろうから、川口駅を利用しない人にとっては所要時間増の影響もある。

あと、宇都宮線上野方面と湘南新宿ラインのいずれかだけが停車するようになると停車駅が複雑だねという話があって、

この区間で、さいたま新都心駅(2000年新設)は宇都宮線だけ、浦和駅は2013年以降は宇都宮線と湘南新宿ラインの両方が停車となっている。

ここで川口駅は宇都宮線が通過で、湘南新宿ラインが停車となると、これは一体何なんだと。

もっとも、さいたま新都心駅は近くに埼京線の北与野駅があって、これで池袋・新宿方面に行けるという背景もあるのだが。


線路ごとに役割分担があるので、むやみに停車駅を増やしたくはないが、安全面を考えるとやむを得ないか。

というのがJRから得られたという前向きな回答の背景のような気はする。

かつては京浜東北線の混雑のピーク区間は上野→御徒町だったが、上野東京ラインの完成後は分散したので、

今は京浜東北線の混雑ピークが川口→赤羽で、朝ピーク1時間平均の乗車率は173%と、赤羽で埼京線に分散できる直前が一番ひどい。

それなら川口駅の時点で先手を打ってもいいのは確かかも知れない。

ただ、分散先と目される湘南新宿ラインは本数が少なくて過度な期待ができないので、そちらの対策ができればというのはある。


東京都市圏のJRは路線によって種別ごとの分担がずいぶん違うと思っていて、

中央線の快速電車は平日ならば新宿を出ると、2駅先の中野から各停ということで、とても快速とは思えないような停車駅。

これに利用者が集中するので、ひどく混雑することが知られていて、昼間でもけっこうな混雑だ。

逆に中央・総武線各停の黄色い電車は快速電車との停車駅の差が小さいからか空いているので、

積極的に活用しているが、基本的には三鷹駅で終わりだし、中野折り返しすら多いという状況で使える範囲が限られているのも確か。

その逆に黄色い電車の千葉~秋葉原は、総武線快速に比べて利用者が多いことが知られている。

実は同じ運行系統の黄色い電車でも、区間によって立ち位置が違うほどだ。


なかなかままならないものだが、走る線路が違うので、なかなか機動的に停車駅を変えられないんだよね。

川口駅にしてもそうで、京浜東北線が限界に達したら、もうホーム新設以外に救いはないんだけど、

ホーム新設すると、その線路を走る電車に大きな影響が出てしまう。

というのも、ラッシュ時は停車駅が同じ電車を詰めて走らせて輸送力を稼いでいるからね。

この区間では宇都宮線上野方面と湘南新宿ラインで別々の線路なので、それぞれ分けて考えられるのは救いかも知れないが。


この手の話は、ホーム新設はスペースの問題で困難ということで、門前払いを食らうことが多いのだが、

川口駅については可能ということで、果たしてどういう答えが出るのか注目したい。

結婚してもアイドルでよいわけ

以前、こんな記事を見て、そういう考えもあるんだなぁと読んでいた。

アイドル声優の結婚が提示する新しいアイドルのカタチ (こえのおと)

一般的には女性アイドルは結婚しても現役であることなんてないし、恋愛が報道されると非難されるぐらいなのに、

声優でアイドル的に活動している人は、結婚しても素直に祝われるのが普通だし、それをもって活動が大きく変わるわけでもない。

その差異に釈然としないと思っていたのだが、という話が書かれている。


この記事を読んだときに、面白いなと思ったのがこの部分。

声優にはそのようなリスクはほぼない。アイドル活動をすればファンも付きやすい。そして恋愛しても結婚してもほとんど批判されない。アイドルとしてその声優を見ていたファンは減るだろうが、だからと言って仕事が減るわけでもなく、多少CD売上が減ったり、グッズをメルカリに出品される程度である。

この差が私には不平等に感じたのだ。誤解を恐れず言ってしまえば、アイドルは厳しく、アイドル声優はヌルい。

「グッズがメルカリに出品される程度」の影響というのがちょっと面白い書き方だが、実際よくあることらしい。

アイドル的な活動をきっかけにつかんだファンにとって、結婚を機に熱が冷めてしまうということもあるかもしれないが、

全体からしてそんなに多いわけではないし、なにより声の仕事にとっては全く影響がないと。

それを「ヌルい」とまで断じるのは、世のアイドルは「普通の青春を棒に振ってアイドルとして活動」している実情との対比なのだろう。


ファンの受け止め方が違う背景には、声優だと、結婚しても活動を継続してきた人が多くて、

なおかつ、一時的に仕事を離れることがあっても、復帰して再び活躍されている人も多く、今後の活躍に期待することは十分出来ると。

どんな仕事もずっと続けられる人ばかりではないのはそうだと思うんだけど、

結婚を機にどうこうということはあまりないので、ファンとしても安心できるということなんじゃないだろうかと。

ただ、それができるのは不断の努力があるからで、鳴かず飛ばずでそもそも声優業が続かない人も世の中にはたくさんいるわけだから。

そこを無視して「ヌルい」とか言っちゃいかんよ、とは思うけど。


そもそもアイドルってなんだよって話はあって、具体的な定義なんてないよね。

ただ、なんとなくこういうところに重点を置いているとアイドル的だというのはあると理解している。

そういえば、以前こんな記事を見たことがある。

日本のアイドルは世界でどう受け入れられる?「CHEERZ」海外フェス出展から読み解く、国・地域ごとの特性 (SENSORS)

日本のアイドル文化って外国ではどうですか? というところで、うまくハマる地域と、さっぱりダメな地域があると。

さっぱりダメな地域の代表がアメリカで、未熟なアイドルが成長していくという姿を応援するスタイルは受け入れられないと。

裏返せば未熟でもアイドルとしては成立するんだけど、そのスタイルで長く続けるのは難しいということでもあるのかなと。

だからアイドル後に何に転向するかなんて話も出てくるんでしょうが。


先の記事の最後は次の通り締めくくられている。

しかしながら、先日(4月10日)にアイドルグループのNegiccoのNao☆がアイドルを続けながら結婚した。このときはファンからも祝福された。(略)

アイドルの形が少しずつ変容してきているのかなと思う。アイドル声優はもしかしたら一般的なアイドル業界の先を行っているのかも知れない。

「Negicco」は2003年に新潟で結成されたアイドルグループ、メンバーの入れ替わりもあったようだが、現在の3人は結成当初からのメンバーである。

2003年結成ということは、今で結成16年ということで、まさにベテランアイドルということになる。

それ相応の立ち位置を獲得してきたからこそ、長く活動を続けられたんだろうし、メンバーの結婚も素直に祝福されたのだろう。

一般的なアイドル業界では珍しいことだったので、この現象は驚きを持って受け止められたようだ。


でも、それはアイドル声優にとってはすでに通り過ぎた道だったよねって。

先日、NHK BSプレミアムの番組で、声優ユニット「スフィア」についてのファンの印象を募集したところ、

結成10年を迎えるということで、「ベテラン」「アイドル」というキーワードがあったのが印象的だった。

4人組ユニットで2人が既婚者だが(2017年に豊崎愛生さんが、2019年に戸松遥さんがそれぞれ結婚された)、ファンの理解はベテランアイドルのようだ。

確かにこういう事例を見ると先進的だったのかなと思う。

そこに至る背景には多少の差がありそうだが、ベテランアイドルとしての立ち位置を築いたという点では同じなので。

かつては花街、今はライブハウス

東京・渋谷というとライブハウスの多いところとして知られているが、

特に円山町界隈は多いと聞いていたが、右も左もライブハウスが連続しているところがあって、

ここまで多いとどれが目的地か迷ってしまいそうだ。


かくいう自分も迷ってしまったんだよね。

あまり行かないところだったので、そもそも交差点で曲がる向きを間違えたのだが、

正しい道に入って、目標物も見えてきて、このへんだというところで看板を見て歩いてたんだけど、目的地のライブハウスの名前がない。

行きすぎたかなと思って地図を見てみると、ちょうど今通り過ぎたところとなっている。

地図上ではこことなっているビルの看板を見ても違う名前が書いてあるんだけどと思ったら、フロアによって違うライブハウスになっていたようで、

さらに、起伏のある地形を生かして、玄関を分けていたんですね。

というわけで裏口に回り込むと目的地のライブハウスの看板があった。


円山町界隈というと、ライブハウス以上にラブホテルが目立つ街ですけどね。

渋谷というと、東名高速道路につながる首都高速渋谷線で上空を通過することもしばしばあるが、

首都高速渋谷線と東名高速道路のルートというのは、江戸時代までさかのぼると大山街道とか矢倉沢往還と呼ばれていた道があった。

その時代には円山町は宿場町として賑わったそうで、かつては料亭も多く建ち並んでいたそうだが、今はほとんど失われてしまった。

それと入れ替わるように発展したのがラブホテルであり、クラブであり、ライブハウスであると。

こうして考えてみると、物事の本質はあまり変わっていないのかもしれない。


小規模なライブハウスが集中しているのを見ると、大阪の心斎橋界隈の姿が重なる。

いろんな意味で東京の渋谷界隈と大阪の難波・心斎橋界隈は重なる部分が多いね。

もっとも東京では他にもライブハウスが点在する地域はあるし、なにより1000人以上も入る大規模なライブハウスも多くある。

だから、相対的に渋谷界隈に立ち並ぶライブハウスの存在感は薄いのかも知れない。

心斎橋界隈にあるライブハウスが大阪のライブハウスの大半というのと比べるとずいぶん事情が違う。

ライブハウスの街というイメージはおぼろげにあったが、実際に渋谷界隈のライブハウスにいったのは今回が初めて。


終演後にグッズ売り場を見ると、気になるCDがいくつかあって、しかも値段がちょっと安いような。

今回披露された曲も収録されていそうだということで、いくつかピックアップして買っていった。

想定外の支出で、財布の中身がすっからかんになったが。(すぐに下ろしたけど)

後で電卓を叩いて見たら、定価よりもおよそ2割引になっていた。

端数を丸めた程度かと思ったが、本当に安かった。

直販だとこれぐらいで売っても割に合うんですかね。それで潤うならありがたいことですけど。

怪しげな配当金

この時期は株式の配当金の支払いが多い時期で、かなりの金額の配当金が入ってきている。

そんなわけで証券会社の預かり金に集まった配当金を出金することにした。

来月はクレジットカードの請求金額がやや多いが、それを打ち消すには十分な金額だった。

ここだけみるとホクホクに見えるが、株価の変動により評価額が下がっているものが多いんだよね。

今、売るわけではないのだが、評価額のマイナスの方がはるかに大きいのが実情でもある。


届いた配当金計算書を集めて、証券会社の入出金明細と見比べて、家計簿に記録してとやっているのだが、

記載内容が他とちょっと違う配当金計算書があった。

「配当に関するご説明」という書類が同封されていて、事情が書かれていたのだが、

どうも、この会社の今回の配当金、資本剰余金を原資としたものなので、税務上の扱いが違うらしい。


一般的に配当金は利益剰余金から支払われる。

会社の利益の一部を配当金に充てるのが通常で、利益が積み上がっていく先が利益剰余金である。

過去に利益剰余金に積み上げた中から配当金を支払うこともあって、

その年度だけ見ると、損失が出てるけど、過去に積み上げた利益があれば、そこから配当金を払うことも出来る。


資本剰余金とはなにかという話だが、資本取引で生じた剰余金とのことだが、これではちょっとわかりにくい。

この会社について言えば、資本剰余金のほとんどは新設合併時に発生したものである。

会社が合併して新しい会社ができる場合、両社の株主資本の合計を資本金・資本準備金・利益剰余金に自由に割り振ることができる。

そして、いずれにも割り振られず残った分は その他資本剰余金 として計上される。

合併前の両社が持っていた余剰な資本金・資本準備金、あるいは長年積み重ねてきた利益剰余金が、合併を機にその他資本剰余金に移ったということだ。


資本金は会社の根本となるお金だから、資本金に手を付けるには株主総会での特別決議が必要となる。

資本準備金はもともと取り崩しも想定されているお金だが、株主総会の普通決議がないと取り崩せない。

利益剰余金が大きくマイナスになっているような会社だと、資本準備金や資本金に手を付けて立て直すことはあるが、それなりの手続きが必要だ。

一方、その他資本剰余金は、単純に余分な資本なので、株主総会の決議もなく、配当の原資にすることも許されている。


でも、それって「タコ足配当」じゃないの?

タコ足配当 とはタコが自分の足を食べるかのように、利益不相応に資産を取り崩して配当することを表している。

利益剰余金ではなく、資本剰余金から配当するということは、まさに資産を取り崩して配当しているように見えるが。

でも、この会社は連結では営業利益を出しているので、利益不相応とまでは言えないと思う。

ただ、さっきも書いたように、この会社は合併時に利益剰余金は0円からスタートして、合併前に長年積み重なった利益剰余金はその他資本剰余金に移っている。

なおかつ、この会社自体は持株会社で、連結での利益の多くは子会社で発生しているが、子会社から配当されるまでは親会社の利益にならないんだよね。

ところが子会社から親会社への配当はあまり行われていなくて、子会社の利益の多くはその会社で留保されている状況だ。

連結でみると利益剰余金の金額は十分ありそうだけど、親会社単独でみるとさっぱりないという状況になっている。

事情を考えると、そういうこともあるかもしれないなぁとは思うが、なぜこうしているのかはよくわからない。


資本剰余金を原資とした配当金は税務上の扱いが違うと書いたが、

これは資本の払い戻し、言うならば株の一部を売ったような扱いになってしまう。

例えば、資本剰余金から配当して純資産が1%減ったとする。これを純資産減少割合という。

その場合、その人は株式の1%相当を売った対価として、配当金を手にしたかのような処理をする必要がある。

例えば、1株1000円で100株買った株から、1株あたり15円の配当金を受けとったとする。

すると、1000円×100株×1%=1000円で購入していた株を、15円×100株=1500円で売ったことになり、500円の譲渡益が発生する。

ところが、1株2000円で購入していた場合は、15円×100株-2000円×100株×1%=-500円 と500円の譲渡損が発生する。

取得価格によって、配当金を受けとったことによる損益額が異なるので、各自で計算して、各自で税金の申告をする必要がある。

あと、この株を将来売るときには、すでに一部は売却したということで、取得価格も純資産減少割合だけ減らす必要がある。

特定口座を使っている場合は、証券会社で勝手に補正してくれるので、こちらで考えることはない。


今回のケースでは、譲渡益が発生したことになっていた。

取得時よりも株価が下がっていたので、含み損が出ていたのだが、配当金を受け取ったことで、取得価格を下げる補正も行われて含み損が減少した

これがいいことなのかは、なんとも言えないが……

まぁ配当金を受け取って勝手に譲渡損が発生しなかったのはよかったのかね。