僕にとって東京というと千代田区と台東区の印象が強くて、特に千代田区はよく行くんだけど、
千代田区といってもほとんど秋葉原界隈を中心とした神田地区ばかりで、
意外と行ったことのないところは多いのだ。
今は東京の特別区は23区だが、1947年以前は35区あって、郊外の特別区以外はこの時に合併を経験している。
千代田区もそうで、1947年以前は神田区と麹町区の2つの区だったものを合併してできたという経緯がある。
このとき旧神田区の町名には神田を冠することにした。神田区田代町が千代田区神田田代町になったなど。
その後、町名整理が行われたときに神田を冠した町名がなくなったところもあるので、神田を冠した町名が全て残っているわけではない。
ただ、今でも神田と付いた町名が残っている部分はけっこうあって、旧神田区の名残は見えやすい。
町名整理後に神田が外れた町名のうち、猿楽町と三崎町は2018年から神田猿楽町、神田三崎町に再度変更されるとのこと。(cf.「神田」地名復活、千代田区長が議案 三崎町と猿楽町 (日本経済新聞))
住民の要望を受けてとのことで、未だに神田地区への愛着が強いことがうかがえる。
一方の麹町区、こちらの名残はさほどないが、日本に住んでいる多くの人にとって身近なところに残っている。
それが通帳である。「印紙税申告納付につき麹町税務署承認済」と書かれた通帳はとても多い。
というのも全国展開している大きな銀行は旧麹町区域に本店を置いていることが多く、通帳は本店の所在地を作成地として印紙税を納めることが一般的だ。
ゆうちょ銀行、三菱東京UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行などが該当する。ゆうちょ銀行の通帳に書かれるようになったのですごく身近になった。
千代田区内には麹町税務署と神田税務署の2つがあり、そのまま旧麹町区域と旧神田区域を分けているので、税務署の名前に残ってるってわけ。
ちなみに りそな銀行は東税務署になってるらしい。ということは通帳作成地は大阪だな。昔は東税務署ってなってる通帳も多かったんだろうが。
と、前置きが長くなったが、今日は千代田区のうち、ほぼ行ったことがなかった旧麹町区域を歩いてきた。
というわけでスタート地点は九段下駅、地上に出るとちょうど坂の中腹あたりだった。
この坂は九段坂という。九段下というのは九段坂の下という意味で……って九段坂の中腹に出てきたらそれって九段下ではないな。
当初、東西線の駅ができたときには完全に九段下だったのだが、その後、九段坂の地下に新宿線・半蔵門線の駅ができたのでこうなったみたい。
ともあれ九段坂を上りきると北の丸公園の入口が見える。江戸城の北の丸に由来し、かつての江戸城の門が残っている。
旧江戸城のうち皇居として使われている部分はおいそれと入れないが、北の丸公園は国民公園として広く開かれている。
北の丸公園というと目立つのが日本武道館である。今日は柔道をやっているようだ。
そういえば日本武道館ってコンサートで使う時と武道で使う時では使用料が大きく違うらしいんだけど、
武道をやれば、あとは歌っても使用料は安いままらしい。そういうことをやらかした歌手がいるのかは知らないけど。
科学技術館もある。科学と技術だから今に生きる科学を学ぶことができそうだ。今日は入らなかったけど。
そしてもう1つ、北の丸公園の注目ポイントが東京国立近代美術館である。
って来るまで知らなかったんだけどね。
日本に5館ある国立美術館のうち初めて設立されて、京都国立近代美術館はここの分館として生まれたという経緯がある。
ということはコンセプトは一緒ですね。明治あたりから今に至るまでの美術品を集めた博物館ってことだ。
東京にあるということで東京ゆかりの作品が多く、東京の景色がモチーフになっている作品なんてのもけっこうあって、なるほどと思ったことも。
東京ゆかりという点で驚いたのは「一つのプロジェクト、七つの箱と行為、美術館にて」、舞台はなんと東京国立近代美術館である。
取得方法が「購入」ってなってたから国立美術館がお金を出したってことか。今に生きる美術館だからこそのことである。
説明文もなかなかユーモアがあっておもしろい。学芸員の工夫でもあるのだろうが、美術なんてそんなもんなんだと思って素直に見られるのはよい。
コレクション展は420円で見られる。大学生だと130円とかむちゃくちゃ安いのだが、それと比べれば少しする。
パスポートを買えば、1000円でコレクション展1年間見放題、コレクション展の展示替えは年5回だから毎度来れば1回200円か……今日は買わなかったけど。
初めて来たけどけっこう気に入った。ここだと竹橋駅からすぐという立地か。地下鉄で来る分には便利だな。
北の丸公園から出てきて、江戸城の堀に沿って歩いて行く。
途中、千代田区役所が見えたが、なんと国の役所と一緒のビルに入ってるようだ。
国の行政の中心である千代田区らしいことだが、区役所がそれでいいのか? 千代田区と国が共同で民間事業者に作らせたビルにそれぞれ入居しているそうで。
また九段坂を上がると、上がりきったあたりに大きな鳥居が見えてきた。靖国神社である。
なにかと話題になる靖国神社だが、コンセプトはわかりやすく、国のために命を落とした人ならば身分、職業、性別関係なく祀っているとのこと。
「希望に応じて誰でも」ではなく、「無条件に誰でも」なのは信仰の自由の観点から疑問はあるのだが、今でもそうらしい。
今は独立した宗教法人(神社本庁との包括関係はなし)なのだが、戦前は行政施設だったからそういうところには無頓着だったのだろう。
気になるところはいろいろあるが、参集殿に行けば誰でも昇殿参拝できるのはたいへん開かれた神社ということでさすがだなと思った。
説明を見てびっくりしたのだけど、どうも本当にそうらしい。
引き続き、掘にそって歩いて行く。ちょうどこのあたりは千鳥ヶ淵といい、無名戦没者の墓がある。
このあたりは堀に沿って走る人々が目立つ。そういう人がいるって話は聞いてたけど本当なんだな。
警察官が豪邸の周りをうろちょろしているように見えて、なにかと思ったらイギリス大使館だった。なにかとすごい。
さらに進むと「TOKYO FM JOAU 80.0MHz」と書いたビルが。TOKYO FMの本社・スタジオですね。
このあたりで走る人のために便宜を図る施設があるようで。FMラジオ局らしい?
この先は完全な官庁街になっていく。まずは最高裁判所が現れる。
次に現れるのは国立国会図書館、ものすごい地下に深いらしいのだが、今日は休館日なので体感はしてない。
国立国会図書館があればその隣は国会議事堂である。
このあたりから警察官の数がなお一層増えてくるのだが、T字路の3方向どちらにも警察の青と白のバスが停まっている姿は異様だった。
警備対象は何かって首相官邸ですね。こんなことに警察官がやたらと動員されているのも大変な話だ。警備員じゃないからな。
さらに進んで特許庁前交差点まで来ると港区という表記が現れる。
ここで千代田区も終わり、周りを見てみると整然とした官庁街から、雑然とした街に変わりつつあることを感じた。
溜池山王駅で銀座線に乗ってゴールということにした。
東京の繁華街ってちょっと行ったらすぐに住宅があったりして、生活感を感じるところも多いのだが、
今日歩いたあたりでは人々の生活を感じさせるものはほとんどないように感じた。
住宅がないわけではないのだが、オフィスの方が目立つんだよなぁ。
都心だが、意外にも緑が多くて静かな街というのは歩いたことで得られた発見だ。
人が集まるところはオフィスぐらいしかないから静かなんだよね。今日は休日というのもあってなおさら。
もともと大名屋敷が建ち並んでいたということで、明治以降に街が生まれ変わっていく中でもゆとりを確保できたのだろう。
オフィス街を歩いて何が楽しいのだという話もあろうかと思うが、意外とみどころはある。
と言ってもまたこうやって歩くことがあるかというとそれは別問題だが。大阪の船場だって散歩したのは一度ぐらいしかない。
北の丸公園に来ることはあるかもしれんが。