全国高等学校野球選手権記念大会、優勝したのは慶應義塾高校だったのだが、
なんと107年ぶりの優勝だったそうである。
第2回大会、当時は「全国中等学校優勝野球大会」という名前だった。
まだ甲子園球場ができる前の時代、豊中球場での開催だったという。
そんなこともあるんだなぁという感じだけど。
今回優勝したのは横浜市港北区にある慶應義塾高等学校だが、
107年前に優勝したのは東京市にあった慶應義塾普通部である。
そして「慶應義塾普通部」という学校は現在も存在している。
この名前で中学校である。
なんでも学校名に「中」と入らない中学校は全国でここだけらしい。
歴史の長い学校にはいろいろあるということなのだが、
この名前の学校ができたのは1890年、慶應義塾大学部の発足時である。
慶應義塾は1873年に7年制の正則科、17歳以上で入学できる変則科を設けていた。
当時は私立の大学が設立できなかった時代ということもあり、
この学校は当時の中学校(13~17歳)に位置づけられていたそう。
そのため従来のコースを普通部、新設された発展的なコースを大学部としたそうである。
1898年に 幼稚舎 6年・普通部 5年・大学部 5年という体系が確立された。
大学部は専門学校(単科大学相当)に位置づけられている。
私立大学の設置が認められてから、1920年に大学に移行、慶應義塾大学という名前が付いた。
そして、太平洋戦争後の学制改革によりこれらの学校は再編される。
普通部の後2年、大学部の前1年を組み合わせて、慶應義塾第一高等学校を設立した。
普通部は新制度の中学校に移行したということらしい。
なお、慶應義塾にはもう1つ、現在の中学校年代の生徒がいた学校があり、
その生徒の移行先として中学校として慶應義塾中等部を設立している。
こちらは移転せず、東京都港区に現在も存在している。
高校年代については慶應義塾第二高等学校に移行したが、高校は2つ合併して、現在の慶應義塾高等学校となって、後に移転している。
慶應義塾普通部で中学校というのも驚いたけど、慶應義塾幼稚舎で小学校というのも驚いた。
いかにも幼稚園っぽい名前なんだけど、当初の慶應義塾の幼年者を受け入れる寄宿舎に由来する学校なのでこういう名前になってるらしい。
普通部を基準にして、それより幼年ということなんですね。
それにしても小学校・中学校って名前に入れなくてもいいんですね。
「幼稚部」「小学部」「中学部」「高等部」は特別支援学校では1つの学校内の部門として規定されているが、
それ以外のケースでは制度が異なる学校ごとに独立した学校として扱われる。
例えば、大学によっては2年のコースを「短期大学部」として設けていることがあるが、
「○○大学短期大学部」という名前の短期大学が独立して存在している扱いになるらしい。
短期大学は大学の一種なのに、学部・大学院とは同時に存在できないらしい。
(このあたりも短期大学の数が減る中で今は昔という感じもあるけど)
そんな都合もあるので学校の名称に制度上の名前を含まないとはできないのだろう。
以前、義務教育学校の名前が一定しないという話を書いた。
ところでこういう過小規模の小中学校は小学校と中学校が一体化していることも多いが、
2016年から「義務教育学校」という制度ができて、名実共に一体化できるようになったらしい。(略)
義務教育学校の名称には決まったルールがないので「○○義務教育学校」とか「○○学園」とか「○○学校」とか、あるいはシンプルに「○○小中学校」というのもある。
義務教育学校とか小中学校と付いていれば意味はわかるけど、
「江東区立有明西学園」とか書かれても何かなぁとなるよね。
他に名前が一定しない学校としては特別支援学校も知られている。
こちらは旧制度の「盲学校」「聾学校」「養護学校」の名前が残っているため。
特別支援学校は障害の種類によらず包括的に取り扱える制度だが、
視覚障害・聴覚障害向けの教育は専門性が高いので、現在も独立した学校で行っていることが多い。
このため旧制度の名前をそのまま残した方がわかりやすい面はある。
一方で旧来の養護学校を中心に命名を改めたものもあるが、
「特別支援学校」と付けるとは限らず「支援学校」となった地域もある。
「東京都立南大沢学園」のように特別支援教育と一見してわからないような命名もある。
(ちなみにこの特別支援学校は高等部しかないので、実質的に高校相当である)
あと、もう1つ名前が一定しない学校があって「認定こども園」である。
認定こども園 には幼稚園・保育所が認定を受けたものと、
認定こども園法に基づく「幼保連携型認定こども園」が存在する。
このうち幼稚園と幼保連携型認定こども園は学校に位置づけられる。
幼稚園は3歳以上のみを受け入れるが、幼保連携型認定こども園は福祉施設としての側面もあるため2歳以下でも受け入れ可能という違いがある。
学校コード表を見てみると「こども園」と入った幼稚園は多数あるし、
「幼稚園」「保育園」と入った幼保連携型認定こども園も多数ある。
(ただ、公立学校では「幼稚園」「保育園」で幼保連携型認定こども園というケースはないようだ)
こういうのに比べれば稀だけど中学校・小学校でも独特な命名があると。
慶應義塾普通部についてはその歴史の長さがそのまま現れた名前で、
実際には普通部の機能は高校も継承しているし、そっちの方が大きいぐらい。
高校を分離するという体裁を取ったためこうなったが、そのアプローチが珍しいとも言える。