球団が選手の保有権を持つということ

ちょっと気になった話なんだけど……

海外FA権は保有しておらず、球団はポスティングによる移籍は認めない方針。不可欠な戦力として全力で慰留するが、再び夢を追うことを望めば、自由契約になることが現実的だ。

(ソフトバンク・有原航平、流出も メジャー再挑戦の意思 海外FA権なく球団ポスティング認めない方針…自由契約の可能性 (スポーツ報知))

ソフトバンクホークスの有原選手がMLBへの移籍を考えているが、球団は容認していないが、

このまま交渉決裂すると自由契約になって結局はMLBに移籍されてしまう? という話が書かれている。


先日、誰それが戦力外通告という話がニュースで様々報じられた。

戦力外通告というのは制度的にはやや複雑なものである。

各球団は12月頭に保留選手名簿というものを提出する。

来季も契約を継続する意思がある選手を記載するのだが、ここに記載された選手は他球団との契約交渉が禁止される。

現在、支配下契約にある選手のうち、保留選手名簿に記載しない選手には事前に通知をすることが求められている。

これが戦力外通告……と単純に言えないのが難しいところである。


というのも契約を継続する意思があっても、保留選手名簿に書けない選手がいるんですね。

それは大幅減俸を予定している場合。

一定以上の減俸を行う場合は自由契約にしなければならないルールがあり、

保留選手名簿に書けないので、事前の通知が求められている。

それをきっかけに他球団との交渉を行う選手もいるが、減俸を受け入れて契約を継続する選手もいる。

(減俸合意が得られれば保留選手名簿に書くのかもしれないが)


保留選手名簿に書かれた選手は球団に保有権があるという扱いで、

国内外を問わず他の球団に移籍することはできない。

この保有権というのは任意引退した選手も3年間(かつては永久に)存続する。

万が一、引退選手が現役復帰することがあれば、元の球団に戻るか、

元の球団の了承を得て自由契約になる必要があるという意味なのだが……

本当に引退であればどうでもよさそうだが、そうでもないのである。

アマチュア野球の選手・指導者に転身するには自由契約にならないといけないというルールがあるから。

このため最近は引退選手は自由契約にすることが多いようである。


冒頭に書かれたように本人に継続する意志がない場合でも、

球団が保留選手名簿に書けば、他球団との交渉はできない状態が続く。

その場合でも野球界以外に転身する自由はあるため、職業選択の自由はあるとは言えるが……

とはいえ、現実的にこういう状況が続くことは考えにくいように思う。

そもそもなぜ戦力外通告が行われるのか? というところに立ち返ると支配下契約できる人数が限られているからである。

球団が契約の意志があると表明し続ける限り、その分の支配下契約枠は空けておかないといけない。

現実的に契約できないと判明した時点で、その選手を自由契約にしてその枠を他の選手との契約に回すのが合理的である。

なお、保留選手名簿に書いた後で自由契約にすることを「契約保留権放棄」という。


有原選手は現在ホークスに所属しているが、元は日本ハムファイターズにいた。

2020年のオフ、球団の了承を得てポスティング制度でMLBに移籍したが、

うまくいかず自由契約、日本に出戻りすることになった。

この際、ファイターズは再契約のオファーを出したそうである。

ただ、それより好条件を出したホークスに所属することとなったという。

このことを「有原式FA」という人もいて、制度上の欠陥と言う人もいる。


NPB球団間の移籍にフリーエージェント制度を使う場合、

年俸が高い重要度の高い選手が移籍すると、移籍先の球団から移籍元の球団に補償金の支払いが必要で、

さらに人的補償として移籍先の球団から選手を引き抜くこともできる。

人的補償による移籍を拒否すると資格停止処分となり試合に出場できなくなる。

引退するなら関係ないので、これが時に問題になることはあるが。


一方、MLBなど外国への移籍について、フリーエージェント制度を使うと一切補償がない。

この点でポスティング制度は移籍金の支払いがあるという点で移籍元球団には有利である。

このためフリーエージェントで移籍される前にポスティングでの移籍を認めて金にするという戦略がある。

ただし、お金持ちのチームにとっては移籍金もはした金である。

そう、ソフトバンクホークスはお金持ちなのでポスティング制度の移籍金なんていらないのである。


日本人のMLB球団移籍というのは近年では珍しくもないが、

1995年にMLBに移籍した野茂英雄さんは近鉄バファローズといろいろ揉めた末、

バファローズを任意引退して、MLBに移籍するということをやっていた。

当時はルールが未整備のため、NPB球団の保有権は外国まで及ばないということでこうしたらしい。

すなわち日本に出戻りする場合はバファローズと再契約するか、了承を得て自由契約になるかだと。

現在はこういうことはできない。保有権は外国に及ぶし、外国球団に移籍すると保有権は失う。


裏返せば保有権を主張し続ければ、選手の意図によらずMLB移籍は封じられる。

任意引退であれば契約がなくなっても3年間は保有権は継続するが、

任意引退は本人の意志によるものなので球団側から押しつけることはできない。

(円満引退であってもアマチュア転身の意向があれば自由契約にせざるを得ない)

保留選手名簿に記載し続ければよいが、支配下契約枠には限りがある。

このためどこかで自由契約を認めざるを得ない。

ひとたび自由契約を認めればMLBはもちろん、他のNPB球団との契約も自由であり、

ポスティング制度や国内のフリーエージェント制度のような補償制度はない。


選手を過度に縛るのも考え物だが、球団同士の秩序というのもある。

「有原式FA」なんてまさにそうだけど特殊なケースではどうもうまくいかないと。

冒頭で書いた話も、通常のルールでは想定されない話ではあるが、

果たしてそういうこともあるのだろうか?

そもそも契約更改かポスティング制度でのMLB移籍か、通常考えられる選択肢でお互い折り合えればよいのですが。

暗証番号が弱い宅配ロッカー

少し前にうちのアパートに宅配ロッカーが導入された。

もしかしたら今どきの感覚では当初なかったという方が合ってるのかも。

そこはあまりこだわりはなかったのだが、確かに家探しのとき、宅配ロッカーを設置している物件は多かった覚えがある。


かつて、社宅住まいのときにも宅配ロッカーはあったのだが、

このときのロッカーと今のロッカー、大きく異なる点がある。

それは暗証番号の仕組みである。

社宅の宅配ロッカーは、部屋ごとにあらかじめ暗証番号を決めておく。

配達するときは部屋番号を入れて置いて、受け取る時はあらかじめ決めた暗証番号で受け取る。

一方、今の宅配ロッカーは暗証番号を配達時に決める方式である。

集合住宅向けだとそういうタイプもあるんですよね。


そうはいってもあらかじめ配達日時の調整などして対面で受け取ることは多いのだが、

知らない荷物が届くこともあるので、そういうときにロッカーがよく使われている。

おそらく配達員の端末に暗証番号の作英支援機能もあるんだろう。

それで受け取ろうとすると開かんのだが?


この宅配ロッカーの暗証番号はなかなか脆弱である。

というのも数字のボタンの順序ではなく、組み合わせで決まるためである。

4桁の数字の順序を含めた組み合わせは単純に10000通りだが、

このロッカーは10種類の数字が押されているか押されてないか

210=1024通りということになる。

ただ、4つの数字を押すということで言えば 10C4=210通りである。

まぁ暗証番号を作る装置がダブりありで出してくれば、

3つとか2つとかの組み合わせも入るわけですが。


というわけでどれか1つ押し忘れたのでは? と順番に試してみたら、

正解で1桁押し忘れていて、4桁の数字の内3つ押せば開いた。

まぁそういうミスもあるという話ではあるが、

4桁押さなくてもロックがかかるので、そういうことはあると。

これ、開かなかったら、運送業者に問い合わせるようにとはあるが、

運送業者もわからなければ実質的には大家、というか管理会社に開けてもらうしかない。

じゃあ最初から管理会社でいいんじゃないかって?

そこは運送業者の責任だから、そっちにまずは言ってくれと居住者向けには書かれている。

特定原付だと走れない路側帯

帰り道、緑色の最高速度表示灯を付けた電動キックボードが2台走り抜けていって、

友人同士なのかねと、それはいいけど路側帯を走っていたのが気になった。


普通自転車と特定原付の車道上のルールはほぼ同じだが、

歩道では特定原付は6km/hに制限された歩道モード(特例特定原付)にしなければならない。

この点は特定原付と自転車の重要な差異である。

(もっとも法令の想定では大差ないと考えているのだが)

ただ、この中間的な存在に路側帯ってのがあるんですよね。


路側帯というのは道路の歩道がない端に設けられるものである。

路側帯の使い方として道路交通法ではこのように規定されている。

  • 歩行者の通行 (歩行者の通行に十分な幅がある場合)
  • 軽車両(自転車含む)・特例特定原付の走行
    (道路の左側で歩行者用路側帯(2本線)以外)
  • 車両の駐停車 (駐停車禁止路側帯(実線+破線)・歩行者用路側帯(2本線)以外)

冒頭の話の答えをもう書いてしまったのだが、あれは違反なんですね。

特定原付が路側帯を走行する場合は歩道モード(特例特定原付)にしなければならないので。

それぞれ注意点はあるが追って。


一方で歩道がある側の車道の端に引かれる線は車道外側線といい、

この外側も車道の一部とされている。車両の走行・駐停車には自由に使える。

車道の左端を走行すると規定されている自転車・特定原付にとって、

車道外側線の外側は走行に適することが多いので、自転車ナビマークが置かれていることも多い。

駐停車車両がいると真っ先に潰される場所なので常に走れるというわけではないが。


さて、路側帯の用途として3つ書いたが、それぞれ注意点はある。

まず、歩行者の通行だが「歩行者等の通行に十分な幅員を有する路側帯」の場合の話である。

裏返せば歩行者が通れない路側帯があるということなのだが……

実は路側帯の定義に「歩行者の通行の用に供し、又は車道の効用を保つため」と書かれている。

道路の端は舗装が壊れたり崩れたりしやすいので車は通るなということである。

この目的の場合、歩行者が通れないぐらい狭いこともあるので、

その場合は車道の右側を歩きましょうねということである。


次に軽車両・特例特定原付の走行である。

まず左側通行である。昔はこの左側通行というルールがなかったらしい。

すなわち自転車の歩道通行同様に右側の路側帯を走ってもよかったのである。

これ禁止されたのは意外と最近で2013年のことである。

線で区切られただけの路側帯を他の車と逆に走ると危険というのも理由だが、

車道外側線の外側と路側帯でルールが異なるという複雑さをなくすという意図もあったらしい。

路側帯は当然歩行者優先なので「著しく歩行者の通行を妨げることとなる場合」は通行できず、

「歩行者の通行を妨げないような速度と方法で進行しなければならない」となっている。


車両の駐停車だが、これは0.75mの余地を残しておく必要がある。

よく路側帯にギチギチに駐停車されていることがあるが、

あれはダメなんですね。左に歩行者1人通れるぐらいの余地はいると。

狭い路側帯の場合、実質的に駐停車には使えないことになる。

これは歩行者の安全という観点もあるが「車道の効用を保つ」という観点もある。

歩道がある場合は、車道の端は道路の端ではないので、端が崩れる心配はないのでギチギチに寄ってもよい。

とはいえ、この差異もどこまで意識されてるのかなという感はある。


自転車の歩道通行と自転車の路側帯走行、似ているようでけっこう違う。

歩道通行は原則として標識などで認められた歩道でしかできない。

最近は歩道通行可の歩道はかなり絞り込まれているように思うが。

基本的にはそれなりに幅に余裕があるところでなければ認められない。

一方の路側帯は原則として認められている。歩行者用路側帯はめったにない。

歩道通行が認められるのは普通自転車に限られるが、路側帯は全ての自転車、それどころか軽車両まで認められている。

この観点では路側帯は歩道というより車道の端に近い印象を受ける。

また、歩行者最優先である点は同じだが、法令上の要求は少し差がある。

  • 路側帯: 歩行者の通行を妨げないような速度と方法で進行しなければならない
  • 歩道(普通自転車通行指定部分なし): 歩道の中央から車道寄りの部分を徐行
  • 歩道(普通自転車通行指定部分あり): 歩行者がないときは、歩道の状況に応じた安全な速度と方法で進行することができる

この文章から果たしてどう走ればいいかわかるだろうか?


指定部分のない歩道は「徐行」と書かれている。

この徐行というのは6~8km/h程度までとされている。

冒頭に特定原付は歩道通行するとき6km/hの歩道モードにしなければならないと書いたが、

そもそも自転車も歩道を走行するならばそのぐらいの速度に落とさないといけないのである。

その速度だと転けそうで怖いが、法令上の要求はそうなんですね。

一方で線などで区切られた通行指定部分がある場合、

「安全な速度と方法で進行することができる」となっている。

自転車道に近い構造であれば、自転車道のように走ってもよいのだろう。

実は歩道の自転車通行指定部分だった

特定原付はそうもいかないので歩道モードで6km/hに制限されるのだが。


これに対して路側帯は「歩行者の通行を妨げないような速度と方法で進行しなければならない」となんとでも解釈できそうな書き方。

ただ「徐行」までは求められていないと言えそうだ。

歩行者がいない路側帯ならば、歩行者が見えれば止まったり避けたりできる程度の速度でよさそうだ。

というわけで歩道に比べるといろいろ緩いんですね。


歩道がなくて路側帯だけの道路というのはだいたい幅に余裕がない。

駐停車車両が路側帯を潰していることが多い理由でもあるが、

車道に余裕がないのでちょっとでも詰めたくなってしまうと。違反だけど。

自転車・特定原付は他の自動車に比べて遅いわけだが、

その追い越しをしてもらおうにも十分な余裕がないことが多い。

そういう場合、自転車であれば歩行者がいない限りは路側帯を通れる。

これによりスムーズに追い抜きができるケースが多いわけである。

ところが特定原付はルール上はそれできないんですよね。

歩行者いないのでいったん路側帯に入れば後ろの車に追い抜いてもらうのがよいが、

特定原付なのでそれは出来ないんだよなぁと心苦しい思いをすることはある。


歩行者保護のためのルールで、自転車にしても基本的には路側帯に入らず車道を走った方がよいと思う。

しかし、自転車にとっては路側帯を通るというオプションはほぼ常にあって、

歩行者がいない場合はそれを活用するほうがよい場面はしばしばある。

そういう選択肢が特定原付にはないというのはちょっと変な気はするんですよね。

特例特定原付ならばいいけど、歩道モードへの切替はそう簡単ではないので。


特定原付と自転車のルールはほぼ同じと言いたいが……

というところでひっかかるのが路側帯のルールだという話だった。

同期パスキーの目的

SBI証券といえば不正アクセス問題で相当な被害を出して、

それ以後、ログインの追加認証が複雑化してめんどくさいなぁと思っていた。

複雑化はしたが本質的にメールアドレス認証であることは変わらず、

僕はそのメールアドレスを携帯電話のMMSにしているから、PCのメールアドレスを乗っ取っても無理だが、

メールも乗っ取られて被害が拡大するのはよくある話。本質的な解決には遠い。

という中でWebサイトのログインにもパスキーが導入され、早速設定した。


で、これをやったときに気づいたのですが、スマートフォンで設定したパスキーがWindowsでも使えて、

あれ? パスキーってデバイスに紐付くものではなかったのかと。

あまり考えていなかったのだが、Googleパスワードマネージャーにパスキーが格納されているようだ。

現在はChromeでは特別な設定をしない限りはそれが基本になっているよう。

このため同じGoogleアカウントを使用するAndroid端末・Chromeでは全て使えてしまうと。


パスキーについて生体認証でログインできる仕組みと思っている人もいるかもしれないが、

正確に言えばそれは正しくなくて、デバイスに登録された秘密鍵でログインする仕組みである。

ただ、それを利用する際に生体認証やPINコードを要求するのが通例であり、

結果として生体認証に見えていると。でも重要なのはそこではない。

この秘密鍵を格納された端末なのか外付けのセキュリティデバイスなのか、

これを奪われなければログインされないということが重要であると思っていた。

逆に物だけ奪えばログインできるんじゃないかと思うかも知れないが、そこは生体認証なりPINコードで対策していると。


でも、その秘密鍵がクラウド上にあっては意味がないのでは?

秘密鍵が格納された物を奪われなければログインできないはずだったのに、

秘密鍵をクラウドで保持しているなら、そこにログインできるアカウントを乗っ取ればことが済んでしまう。

うーん、どうしてだろうと考えたがよくわからない。


このクラウド上に保存する仕組みを同期パスキーと呼ぶそうである。

比較的新しい仕組みだが、2022年からAndroid同士・iOS同士ではこの方式をサポート、

2024年からはGoogleはAndroidとPCのChromeブラウザの間でもサポートするようになった。

冒頭書いたようなAndroidで設定して、Windowsで使うようなことができるようになったのは本当に最近だったと。

見ての通り、この同期パスキーはスマートフォン同士での導入が先行したが、

パスキーをデバイス固定にすると、端末変更のたびにパスキーを失うことになる。

これがかえって悪いんじゃないかという話があったようである。

端末を変える度にパスキーを再登録するのはかえって脆弱ではないかと。

Googleアカウント、Appleアカウントが乗っ取られるとそれこそ大変なわけで、そこは強固になっているだろう。

そのアカウントに紐付く形でパスキーを保持するのなら十分安全ではないか。

パスキーの秘密鍵は通常は本人であっても目視することはない。

フィッシングサイトでパスワードが奪われるような被害は考えにくい。


そんなわけで同期パスキーを各プラットフォーマーは推奨していると。

ただ、当然ですがこれはGoogleアカウントやAppleアカウントが強固であるのが前提になっている。

これが脆弱だと結局は1つ乗っ取られれば芋づる式にやられてしまう。

パスキーが広く普及するにつれて、そういう問題も起きそうですがどうでしょうね。

SBI証券ということについて言えば、取引パスワードや、出金時のメール認証というのはあるけど、

ログインパスワードと取引パスワードが同じで被害を受けたり、

メール認証ということはGmail乗っ取られたらやられる人はいるだろうと、

そういうところまで考えて強固化できている人がいるのかという話ですね。


とはいえ、これでログイン時の追加認証がなくなるのは楽である。

元々手間がかかる割に効果的とも思えないものでしたからね。

パスキーを使っておけばフィッシングサイトへの対策には十分というのはおそらく正しいとみられる。

そこが達成出来ればよいということにしたのだろう。

ブリーダーズカップのメインレース

昨晩、寝る前にブリーダーズカップ(BC)各レースの時刻を見たら、

JRA馬券発売対象のレースだとBCクラシックの発走が一番早いとみて、

え!? と思ったのだが、そうなんですよね。


大概の催しものでメインとなるものは最後に持ってくるのが普通である。

JRAではメインレースは最終レースの1つ前に置かれるのが通例だが、

最終レースを別とすれば、メインレースに向けてレースの格式が上がっていくものである。

ブリーダーズカップも2022年まではメインレースであるクラシックが最終レースの1つ前、

ブリーダーズカップの重賞では一番最後に行われていた。

ところが2023年以降、この順序は入れ換えられたわけである。


理由はテレビ中継との兼ね合い、具体的にはカレッジフットボール中継との時間調整のため。

【遥かなる世界の競馬地図】米BCの競走順にファン、馬主から不満が噴出…そのワケとは (サンスポ)

実際、TV中継も含めたタイムスケジュールを見てみるとよくわかるのだが、

NBCで中継が行われるのは、5R(当地12:41発走)から9R(15:25発走)まで。

ここにBC開催の格式高いレースを押し込んでいて、

ターフスプリント(5R)→スプリント(6R)→ディスタフ(7R)→ターフ(8R)→クラシック(9R)となっている。

あとはこの前後にいろいろ押し込んでいて、4Rにフィリー&メアスプリント、10Rにマイル、11Rにダートマイル、12Rにフィリー&メタターフとある。

ターフに日本馬がいればそれが一番早かったかも知れないが不在なので、

結果としてはクラシックが馬券発売対象では一番早かったわけ。


そんなわけで朝6時前にのそのそ起きてスプリントからTV中継を見始めたわけですが。

日本のファンにとって今年のBC開催はやはりクラシックが一番の注目ポイントでしょう。

それはフォーエバーヤングが出走するからで、日本の馬券発売でも1番人気、

といっても単勝は日本馬が売れるのはJRA馬券発売のいつものこと。

正味の人気は馬単など見るべきで……それでもフォーエバーヤング頭が売れている。

実は当地でも1番人気とほぼ差のない2番人気だったそうで、

この人気に応えてフォーエバーヤングはBCクラシックを優勝したのだった。

日本調教馬、そして日本産馬がダート競馬の世界チャンピオンになったわけである。


当然これは藤田オーナー、矢作厩舎、坂井騎手の偉業でもあるけど、

フォーエバーヤングが走ってきたレースを振り返ると日本競馬、世界競馬にとっての偉業であることがわかる。

フォーエバーヤングが新馬勝ちの次に走ったのがJBC2歳優駿である。

このレースはJBC協会・NAR(地方競馬全国協会)肝いりのレースで、

これ自体は2歳チャンピオン決定戦ではないが、全日本2歳優駿の前哨戦として重要なレースであることを示したわけである。

大井の3歳ダート三冠初年でもあったが、UAEダービーを目指したことで東京ダービーは見捨てられたが、

三冠最終戦のジャパンダートクラシックには出走して優勝、

ヨーロピアンスタイルのダート三冠の面白さを示した。(cf. ヨーロピアンスタイルの3歳ダート三冠)

Road to JBC(昨年のジャパンダートクラシック、今年の日本テレビ盃)をBC前哨戦に使われる屈辱もありつつ、

NARと各主催者が築いてきたダートグレード競走の体系があったからこそ、

フォーエバーヤングは日本ダート競馬のチャンピオンとして挑戦できたわけですよね。


日本ダート競馬のチャンピオンがアメリカに殴り込めるのも、

ドバイワールドカップデー、特にUAEダービーの存在は大きい。

当然フォーエバーヤングにとってもケンタッキーダービーの出走権を取ったレースでもあるけど、

2016年にUAEダービーをステップにアメリカ三冠を完走したラニの活躍も大きいわけですよね。

ドバイワールドカップデーも最近はアメリカからの遠征馬が寂しいという話はあるが、

そんな中で地元馬とともにダートのレースを盛り立てているのが日本からの遠征馬であることは確かである。

ダート競馬の本場、アメリカから一線級の馬が来ないのにワールドカップなんて……

言われかねないところでこのように活躍馬を出せたことは大きい。


あと、サウジカップデーもそうですよね。

UAEダービーの前に走ったサウジダービーもそうですが、

やはり今年のサウジカップ、ロマンチックウォリアーとの死闘は今年の世界競馬の1つのハイライトである。

当地で1番人気かそれに近い人気を得た要因でもあるでしょう。

実はサウジカップは今年からBCチャレンジの指定競走(BCクラシック)になっていて、

フォーエバーヤングはこの権利を使っての参戦である。

来年からはサウジダービーはRoad to the Kentucky Derbyのヨーロッパ・中東シリーズのポイントレースになる。

同シリーズは2枠の出走枠があり、1枠は事実上UAEダービー優勝馬に与えられるが、

サウジダービーは2枠目を決める上での重要レースに位置づけられる。


そして忘れてはいけないのがブリーダーズカップそのものである。

BCクラシックがダート競馬の世界チャンピオン決定戦であることを疑う人はいないが、

基本的にはアメリカの全国チャンピオン決定戦なんですよね。

それを”World Championship”と言えるのはアメリカ人が厚顔無恥だからというわけではなく、

芝レースを中心に外国からの遠征馬が実際に多いからこそである。

そのために輸送費補助、北アメリカ産馬以外の自動エントリー制、BCチャレンジなど導入しているわけですよね。

フォーエバーヤングも父リアルスティールが種牡馬登録されていることによる自動エントリーである。


BCクラシックは9頭立て、日本の感覚で言うと少ないが……

直前でゾウリンティ(今年のKYダービー・ベルモントS優勝馬)が熱発で取消になったが、

それでもBCクラシックとしては豪華メンバーという評判だった。

当地でも日本でもフォーエバーヤング、フィアースネス、シェラレオーネの4歳馬3頭が人気上位、

この3頭が評判通りに上位独占、チャンピオンこそフォーエバーヤングに持って行かれたが、

フィアースネスも迫り、これなら仕方ないと思える勝負だったのでは。


BCクラシックがダート競馬の世界チャンピオン決定戦であることが日本のファンに広く認識されたのは、

2021年にラヴスオンリーユー(F&MT)とマルシュロレーヌ(ディスタフ)を連れてきた矢作厩舎の功績も大きい。

一昔前なら世界チャンピオンといえば凱旋門賞であると疑ってなかったでしょうから。

当然、この認識は時代を追うにつれて変わっていって、

それこそ香港スプリントを勝つのは凱旋門賞より難しいと思われた時代もあったんですがね。

NARを初めとする関係者の努力により日本でのダート競馬の地位が高まったからこそですが。


芝だと世界チャンピオン決定戦ってなんだろうとなるわけですが、

ジャパンカップは芝長距離の世界チャンピオン決定戦であると主張していきたい。

凱旋門賞はもう世界チャンピオン決定戦とは言えないのでは?

というのは今日のBCターフでも思ったんですよね。

優勝馬が障害から転向したエシカルダイアモンドというのは異質としても、

上位5頭がせん馬、すなわち凱旋門賞に出走資格のない馬である。

玉がないのでジャパンカップへ

凱旋門賞が「牡馬・牝馬限定」であることは必ずしもダメなことではないが、

ヨーロッパにおける芝長距離路線の地位低下を表していることは確かである。

一方のジャパンカップ、地元馬が上位独占で国際競走という感は薄いが、

それは日本の芝長距離路線の充実度が高いからですよね。


ところで冒頭の話に戻るのだが、日本で1日にG1レースを複数やることは基本的にはない。

JBC開催については1日に3つのG1級レースが行われるのと、

中山大障害とホープフルステークスが同日開催になることもあるのとそれぐらいである。

ジャパンオータムインターナショナルなど国際競走シリーズを組んでも、

香港国際競走、ドバイワールドカップデー、ブリーダーズカップのように複数頭まとめて遠征とはいかないんですよね。

これは日本の国際競走で外国からの遠征馬が充実しない理由として言われることもある。

これは日本競馬の特殊な事情があって、それはG1レースの馬券が売れまくる、それこそケタ違いである。

このため同日に複数のG1レースを開催して売上を分散させたくないと。

香港競馬も馬券売上は多いが、香港国際競走デーにしても、国際競走よりハンデ戦の方が馬券が売れる。

このため、同日に4つのG1レースを開催してもあまり問題が無いという。

有馬記念を筆頭にチャンピオン決定戦で馬券を買って熱狂する日本の競馬ファンはそれはそれですごいということで。

ダイエーを移管するのも大変だった

イオンのスーパーマーケット事業は地場スーパーの集合体だという話をしばしば書いている。

このため親会社のイオンとは別に上場を維持している会社も多いが、

それがゆえの難しい話があったという話を知った。


それが九州エリアのダイエーである。

ダイエーは経営再建の一環で2015年にイオンの完全子会社となった。

この段階ではダイエーは近畿・関東の食品スーパーに注力する方針だった。

(ダイエーという屋号もなくなりイオンフードスタイルになると言われていたが、これは撤回された)

このためこれと異なる店舗はイオングループ各社に継承されていった。

九州についてはイオン九州への継承を考えたのだが、そう単純にはいかなかった。

なぜならばイオン九州は上場企業で、九州エリアのダイエーは事業規模が大きかったためである。


この問題を打開するために設立された会社が イオンストア九州 である。

イオンストア九州は100%子会社、ダイエーとは兄弟会社にあたる。

いずれもイオンの完全子会社同士なので移管は容易である。

ここに九州エリアのダイエー店舗を移管したわけである。

その後、イオンストア九州は店舗運営をイオン九州に委託することにした。

イオン九州の店舗網と統合され、屋号も順次「イオン」に改められた。

対外的にはイオン九州の店舗と差はなかったが、あくまでもイオンストア九州の店舗なので、

レシートなど「イオンストア九州」と印字されていたそうである。


イオンストア九州への分社化後、改装される店舗もある一方、老朽化により閉店する店舗も多くあった。

全体として経営再建も進んだようである。

イオングループのスーパー事業再編の流れで、2020年にイオン九州・マックスバリュ九州・イオンストア九州は合併、

イオン九州は上場を維持、マックスバリュ九州(上場会社)とイオンストア九州の株主にはイオン九州株が付与された。

これにより九州エリアのダイエーは名実共にイオン九州に移管され、

イオンはイオンストア九州に相当するイオン九州株を得たことになる。


ところでダイエーは本州のGMSタイプの店舗をイオンリテールに移管しているが、

これもイオンリテールストアという会社を介して移管したそう。

すなわちダイエーからイオンリテールストアに分割した後、

店舗運営をイオンリテールに委託するという方法をとったと。

このため近年まで旧ダイエーのイオンではレシートなどでこの社名が見えることがあったよう。

近年までというのは今年3月にイオンリテールに合併するまでである。

イオン100%子会社同士なのにこのような方法をとっていた理由はよくわからないが、何らか事情があったのだろう。


ダイエーについては、2018年に近畿圏のスーパー統括会社になることが表明されている。

もっとも近畿圏といっても前身となった各社の事情により、

兵庫県播磨・但馬・淡路はマックスバリュ西日本→フジの管轄、

滋賀県は大津市内の1店舗を除いてマックスバリュ東海の管轄なんですが。

実態としては京阪神エリアってことですかね。

とはいえ、ダイエーには近畿圏とともに関東圏の店舗も残存していた。

この問題についてはこの時点では棚上げされていたのである。


どうしてなのか? それは当時はまだ不採算店舗も多かったためではないか。

イオングループでは関東圏のスーパー統括会社はUSMH(ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス)とされている。

この会社は上場会社で、かつて上場会社だったマルエツ、カスミ、いなげや の株主がいる。

ただ、この問題にも打開の目処がついたようである。

ダイエーの関東圏店舗とイオンマーケット(ピーコックストア)を来年3月にマックスバリュ関東に移管するそうである。

イオンはこれに相当するUSMH株を得ることになるのだろうが、どういう手法をとるのかはよくわからない。


ところでマックスバリュ関東という会社の事業規模はそう大きなものではない。

先期のUSMH各社の売上はマルエツが4013億円、カスミが2750億円、いなげや が2110億円に対して、

マックスバリュ関東は448億円である。1桁少ないという。

関東圏のダイエーが具体的にどれぐらいの事業規模かわかる資料はないが、

マックスバリュ関東の倍以上の規模があるのは間違いない。

すなわち新生マックスバリュ関東ってもはやダイエーじゃないのって?

ダイエーの現在の本社が東京(東陽町)にあることを考えると、

それがそのままマックスバリュ関東の新本社になるんじゃないのって。

関東圏の店舗を失ったダイエーの本社はダイエー茨木プロセスセンターに移転するんかね。


一見するとよくわからない話だが、ダイエーはそもそも大阪・千林が創業の地で、

現在も登記上の本店は神戸・ポートアイランドに置いている。

ダイエー神戸三宮店(三宮オーパ2内)が事実上の戦艦店なのだろう。

三宮オーパ2は元々ダイエーの食品フロア以外に移管されたものである。

このような歴史的経緯も踏まえてダイエーという屋号は近畿圏に残したということだろう。

関東圏のダイエー・グルメシティの屋号がどうなるのかはわからない。

他地域のようにマックスバリュになるのかなぁ。

ただ、マックスバリュというブランドも浸透していない地域なので、そこにこだわる理由もないとは思うが。


ともあれ、これにより長きにわたり続いてきたイオンの食品スーパー再編が完了することとなる。

その昔は愛知県内でマックスバリュの運営会社がバラバラなど、

屋号だけ統一して中身はバラバラというとんでもない時代もあった。

近年は屋号はあまり手を入れず、運営会社を地域別にまとめていく方向である。


統括会社として残った会社の歴史をたどってみると面白くて、

北海道の イオン北海道はかつてポスフール、さらに昔はニチイ北海道という社名だった。

元はニチイ→マイカルの関連会社だったが、マイカル経営破綻後に離脱、

独自のブランド、ポスフールに改め、北海道を代表するスーパーとして君臨していた時代があった。

結果としてはマイカル同様、イオン傘下に入り、ポスフールもイオンへの屋号統一が行われたのだが。

神奈川県から滋賀県にわたる東海エリアはマックスバリュ東海に統合されたが、

この会社の前身はヤオハンジャパン、一時は世界的小売業となったヤオハンにルーツを持つ。

1997年に経営破綻した後、イオン傘下で再建が進められていった。

この中でブランドもヤオハンからマックスバリュに改められている。


そして近畿圏の統括会社となるダイエーについては、かつての日本最大の小売業である。

その姿は大きく変わったしまったが、屋号は今後も残ると思われる。

イオン社内にはかつてのダイエーに由来する会社も存在する。

存続会社という観点ではビック・エー と オレンジフードコート(ディッパーダン) ぐらいだと思うが、

イオンモールの事業部門のうち都市型店舗はかつてのオーパに由来する部分が多い。

(ビブレ(旧マイカル)、フォーラス(旧ジャスコ)に由来する店舗もあるが)

使えるものはうまく使っているのである。

VFPレジスタの退避節約術

昨日、ARM Cortex-Mシリーズで割り込みからの復帰に使われるEXC_RETURNの話を書いた。

EXC_RETURNを使わないといけない

さらに面倒な話があって、それが浮動小数点数レジスタのことである。


今回使っているマイコンはCortex-M33なのだが、浮動小数点演算用のVFPが付いている。

ARMv7で言うところのM3, M4に対応するARMv8のプロセッサがM33で、

M3とM4はVFPを積んでいるかどうかがだいたいの差で、

M33のVFPはオプションだったはずだが、大概積んでいる印象はある。

今回は浮動小数点演算を行うシステムなのでVFPを活用している。

整数の汎用レジスタとは別にVFPには単精度だと16個の浮動小数点数レジスタとFPSCRという状態レジスタがある。


これらのレジスタは割り込み処理で退避する対象となっている。

Cortex-Mシリーズではレジスタの退避はハードウェア的に行われるが、

浮動小数点機能を使わなければ32bitレジスタ8個(R0~R3, R12, LR, PC, xPSR)で済むのに、

浮動小数点を使うと+17個ということで大変である。

ただ、ここをサボるための仕組みがあるんですね。


Cortex-M4(F) Lazy Stacking and Context Switching – Application Note 298

M4の話だが、M33も仕組みは全く同じである。

まず、CONTROLレジスタにFPCAというビットがある。

初期値は0だが、浮動小数点命令を使うと自動的に1にセットされる。

FPCA=0で割り込みが発生すると8レジスタのみの退避を行う。

FPCA=1で割り込みが発生すると8+17レジスタの退避を行う……わけではない。

FPCCRレジスタの設定によるのだが、初期値(LSPEN=1, ASPEN=1)の場合は、

スタックポインタに8+17レジスタ分の領域を確保して、基本の8レジスタだけの退避を行う。

その上でCONTROL.FPCA=0, FPCCR.LSPACT=1 に設定する。


割り込みハンドラに浮動小数点演算がないパターンでは、FPCA=0のまま、EXC_RETURNに到達する。

この場合は割り込みハンドラ中にVFPレジスタは一切変化しなかったので、

CONTROL.FPCA=1, FPCCR.LSPACT=0 に戻すだけで完了となる。

あとは基本レジスタの復帰を行って、スタックポインタを戻して割り込み元に戻る。

割り込み処理の多くは浮動小数点演算を含まないだろうから、このパターンが比較的多いはず。

では、浮動小数点演算があった場合はどうなるか。

浮動小数点演算を行おうとすると、FPCA=0→1への変化が生じるが、

このときにFPCCR.LSPACT=1がセットされていたら、この時点でVFPレジスタの退避が行われる。

このようにレジスタ退避を後回しにする仕組みを”Lazy state preservation”と呼んでいる。

FPCA=1でEXC_RETURNに到達した場合は、VFPレジスタも復帰して元の処理に戻る。


で、この仕組みでもEXC_RETURNのアドレスが重要な意味を持っていて、

M33ではEXC_RETURNの4bit目が割り込み時点でのFPCAによって変わる。

割り込み時にFPCA=0の場合は4bit目は1、復帰時にスタックポインタを8レジスタ分だけ戻すことも表す。

割り込み時にFPCA=1の場合は4bit目は0、こちらはVFPレジスタ分もスタックポインタが進んでいて、

EXC_RETURN到達時のCONTROL.FPCAの値に応じて復帰要否が変わると。


で、昨日書いたCPU例外から再びmain関数に戻ってくる場合の話だが、

具体的にはEXC_RETURN=0xFFFFFFB8へジャンプすると、

Threadモード、Mainスタック、Non-Secure、特権モード、FPCA=0というリセット時と同様の状態になる。

ただ、このまま動かし続けるとそれはそれで問題があって、

それはFPCCR.LSPACT=1がセットされていると言うことである。

この状態で浮動小数点命令を実行すると誤ったレジスタ退避をしようとする。

ジャンプ後にFPCCRレジスタの値を明示的に設定する処理を入れれば問題は解消した。


割り込みハンドラでFPCA=0にセットする仕組みは多重割り込みにも効いて、

浮動小数点演算をしない割り込みハンドラ実行中に割り込みが発生した場合、

割り込みハンドラのレジスタ退避という観点では8レジスタの退避のみでよい。

レジスタ退避用のスタックサイズの削減にも寄与してるわけですね。

Mainスタックだけ使う前提で言えば、

  • main関数(VFP使用) スタック消費200byte+レジスタ退避104byte
  • 優先度2の割り込み(VFP不使用) スタック消費8byte+レジスタ退避32byte
  • 優先度1の割り込み(VFP使用) スタック消費40byte+レジスタ退避104byte
  • 優先度0の割り込み(VFP不使用) スタック消費8byte+レジスタ退避32byte
  • MPU例外ハンドラ スタック消費0byte

で、合計528byte消費する可能性があるわけですね。


全体的にはあまり深く考えなくても効率よく動くように考えられているが、

通常と異なる操作をするといろいろ踏んでしまうんですね。

この失敗がなければ気づかなかったことは多かったわけですけど。

EXC_RETURNを使わないといけない

最近はまたARM Cortex-Mシリーズのマイコンを使って仕事をしていて、

CPU例外発生後にその情報を引数で渡してmain関数に戻ってくるコードを書いたら、どうもうまく動かない。

main関数を再度呼び出す


ARM Cortex-Mシリーズでは割り込み発生時にハードウェア的にレジスタの退避が行われる。

なので割り込みハンドラでレジスタ退避のことを考えなくてよい。

それは知っていたのだが退避させたレジスタは復帰させなければならない。

この復帰処理に入るための仮想的なアドレス(EXC_RETURN)がリンクレジスタに入る。

リンクレジスタというのは関数の呼び出し元を表すレジスタで、

関数からreturnするというのはここにジャンプすることを指す。

で、例外ハンドラから出るときには何らかのEXC_RETURNにジャンプするべきようですね。


とはいえ例外ハンドラを出るときに例外発生場所に戻っては仕方ないわけで、

そこを変えたければスタックに積まれている例外発生元アドレスを変える必要がある。

sp+0x18が例外発生元アドレス、すなわち復帰先アドレスになっている。

退避されているレジスタの値を変えたければここを変えなきゃいけないんですね。

EXC_RETURNのアドレスもまた例外発生時の状態が保存されている。

復帰先のモードやレジスタ復帰方法がここで決まるんですね。

このあたりの値を変える処理はアセンブラで書かないと無理なので、

例外ハンドラから出るアセンブラのコードを書いて、例外ハンドラの最後から呼び出すようにした。


ただ、これはこれで問題があって例外ハンドラを出ると再度例外が発生するという。

例外ハンドラの中で例外フラグを消しておく必要があったようで、

CFSRレジスタをリードして同じ値をライトして、消去するとうまくいった。

このことからわかるが、例外ハンドラを実行中は例外が起きないんですね。

例外ハンドラからEXC_RETURNにジャンプすると再度例外が起こるようになると。

さらに言えば例外ハンドラの優先度は他の割り込みより高いので、例外ハンドラ実行中は他の割り込みが起きない。


ただ、他にも問題はあったんですよね。

それは浮動小数点レジスタの退避ですね。

普通はあまり意識しなくても効率よくやってくれるのだが、けっこう複雑な仕組みで……

このあたりもまた改めて紹介しようかなと。

これもEXC_RETURNが関係していると言うね。

タッチ決済を導入するわけ、しないわけ

関東圏で私鉄・公営交通11社がクレジットカードのタッチ決済を導入するようである。

首都圏の鉄道11社、「クレカのタッチ決済」で相互利用 26年春以降 JR東と京成は発表に含まれず (CNET Japan)

ただ、見出しにあるんですけど、京成が入ってないんですね。

成田空港の接続路線なのに意外なんですけどね。


すでに区間など限定して導入している会社も多いのだが、

関東圏特有の事情としては会社間の直通や改札を通らず乗換が多いことである。

すでに京急と都営地下鉄など対応しているところはありますけど、駅を限っての導入である。

なのである程度一斉導入する必要があるわけですね。


これを見て思い出したのだが、関西でも私鉄・公営の多くがタッチ決済を導入している。

2021年、南海が難波・新今宮・関西空港・高野山など外国人客の利用が多く見込める駅にタッチ決済を導入したのが日本初である。

関空~大阪都心の移動がまずタッチ決済でできると早いということで、導入の動機として大きかったわけですね。

南海の導入が関西各社での導入の呼び水になったことは間違いないが、

やはり多くの会社が導入するきっかけとして大きかったのは万博である。

といっても万博合わせで導入する必要があったのはタッチ決済ではなく、QRコード乗車券である。


QRコード乗車券、何を起点に取るかという話はあるが、

関西においては近鉄が2022年に名古屋~伊勢志摩エリアで発行を始めたデジタルきっぷが起点であろう。

QRコードで乗れるようにする理由

近鉄って前日まで購入が条件の割引きっぷが多くて。

遠方でも近畿日本ツーリストなどの旅行代理店で購入はできる。

でも今はそれも店舗数が減っていて、なかなか手間がかかる状況。

これをWeb購入で窓口での引換なしに自動改札機に呈示すれば利用できるようにした。

これが近鉄のデジタルきっぷのスタート地点である。

当初は名古屋~伊勢志摩に特化していたが、大阪・京都からの利用もできるようになった。


この仕組みは関西各社の共通プラットフォーム、スルッとQRttoに発展することになる。

スルッとKANSAIのプリペイドカードがなくなって長いが、カードタイプのフリー乗車券は依然多く存在していた。

これをデジタル化するということになったわけですね。

同時期にJR西日本も自社内、他社またぎのQRコード乗車券を発行するようになった。

これを万博合わせでやる必要があったわけですね。


このときに自動改札機の改造が必要になるので、同時にタッチ決済を導入しようという話が出てきたわけである。

ここに乗らなかったのがJR西日本と京阪である。両社はQRコード乗車券のみ。

京都市・叡電・嵐電はそもそも自動改札機のQRコード対応をしていない。

(叡電は京阪発行のデジタル乗車券が利用できるが、目視で対応している)

なお、このあたりは会社により若干の差があり、

近鉄は生駒ケーブルを除く全線全駅、相当利用者数の少ない駅にも導入する一方、

南海はほぼ全駅と言いたいが、汐見橋線・多奈川線は全駅非導入である。

(一応、汐見橋線は大阪市内なのだが……)

神鉄はかなり歯抜けで有馬温泉方面の利用をカバーすることを重視したことが見て取れる。


関西にやってくる外国人観光客にとってみれば、

京都にさえ行かなければだいたいクレジットカードで済む感じかね。

JRは使えないけど、観光地への往来を考えればJRはなくてもよいので。

バスはまだ導入路線が少なくて、高野山・六甲山と奈良の一部路線に限られる。

高野山と六甲山はタッチ決済で来て、その先は使えないだとけっこう困りますからね。

奈良は市内循環線と西の京・法隆寺方面の路線に限られているので、

同じ区間を走るバスでも対応車両を探すのが難しそうだが。

ただ、これも京都に対応路線がないのがダメですね。

京都方面は足並み揃えて非導入にしたという見方も出来る。(阪急・近鉄はあるけど)


関西におけるJR・京阪もそうなのだが、足並みが揃わないのが気になるところで、

関東圏について言えば、JRが使えないと東京都心の移動もけっこう苦労するし、

京成は成田空港アクセス路線の筆頭である。

全般的にJR各社はタッチ決済には消極的で、一方QRコード乗車券は積極的な傾向がある。

このあたりはICカードのプラットフォーマーとしての側面もあるのかも。

どうせ地元の人は当地のICカードを使うわけだし、すみ分けはあると思うんですけどね。


それにしても京成が不在なのは本当に不思議なんだけどね。

ただ、これは京成成田空港線の事情によるところが大きいのかも知れない。

確かに成田空港線には浅草線・京急(羽田空港)方面に直通の通勤電車もあり、

これを成田空港と都心の往来に使えるが、本数が少なめである。

成田空港線自体はスカイライナー中心の運行体系になっている。

すなわち特急券が必要なわけですね。それなら特急券・乗車券合わせてクレジットカードで買えば? という話になる。

で、調べたらオンラインで割引きっぷが買えるんですね。まぁ窓口引換ってのがいまいちだけど。

顔認証乗車券なんていうのも導入しているけど、これはどうなんだろ?

いずれにせよ空港アクセス路線とはいえ、関空における南海とは少し違うようである。

新商品のクーポン配布

よくファミリーマートで買い物をするのだけど、

ファミリーマートでは特定の商品を買うと、翌火曜から使えるクーポンが発行されることがある。

大抵は同じ商品と引換できるクーポンなのだが、違う場合もある。


その中でも先週火曜~今週月曜で行われていたキャンペーンは変だった。

小岩井 Theカフェオレ」または「午後の紅茶 ミルクティー」を買うと、

「小岩井 Theりんごオレ」の引換券が出てくるというものである。

商品が違うというのも変なところではあるが、店頭に りんごオレ なんて置いていないんですね。

これじゃあせっかくもらったクーポンも使えないんじゃないか。

そう思っていたわけである。


そしたら今日行くと、りんごオレがたくさん並んでいて「新商品」のマークが付いていた。

そう、新商品のプロモーションのためにクーポンをばらまいてたんですね。

まさか火曜ぴったりから登場してくるとは思っていなかった。

というわけでクーポンはちゃんと使えたのである。


で、これはうまいのかという話なのだが、正直微妙だった。

というのもりんごジュースの味に近いんですよね。

りんごってそれだけでおいしいから、そこに乳成分を付ける必要ないんじゃないって。

あと1枚引換券があるから、これは消化しますが、その先はないなと。


ところでファミリーマートのキャンペーンもいろいろな種類があるが、

ファミペイを呈示して買うとファミペイアプリにクーポンが配布されるタイプと、

レシートにクーポンが印字されて、これを渡すタイプが混在している。

今回の場合は後者なのだが、正直なところ面倒である。

なぜならばセルフレジが使えないからである。

ローソンだとセルフレジで使えるクーポンが配布されたりするけど。

とはいえ、クーポンとしての効果を考えるとファミペイでの配布はおそらくイマイチなのだろう。

1つはファミペイを呈示しない人には効かないこと。

もう1つは例えファミペイを使っていてもクーポンが配布されたことに気づきにくいこと。

なかなかうまくいかない話である。