大分県が愛媛県との間にある豊予海峡に海底トンネルを掘るとどうか?
という検討をした結果、事業費およそ9300億円で採算性があるとのこと。
豊予海峡のトンネル、事業費9300億円 大分県が「概算」示す (朝日新聞デジタル)
見積もりの妥当性は気になるところだが、よくよく見てみるとこんな条件があった。
トンネルの長さは21.3キロ。片側1車線の本坑の他、排水や換気、保守・避難に使う作業坑と先進導坑の計三つの穴を掘る前提で計算した。
これでは普通の高速道路としては使えないじゃないか。
日本で最も長い道路トンネルは首都高速中央環状線の山手トンネルだが、
これは都市部の地下トンネルなので、これを除けば関越トンネルの11kmがもっとも長い。
海底道路トンネルという観点は東京湾アクアラインのアクアトンネル(9.6km)である。
豊予海峡トンネルはこれらの2倍ほどと非常に長いトンネルである。
ちなみにアクアトンネルは大型船舶の航行と航空機の飛行の双方の妨げにならないように考えられた形態である。
当時はこの距離のシールドトンネルを掘るのは相当な懸念があり、
海ほたるPAを境に川崎側をトンネル、木更津側を橋にしたのもこの都合によるようだ。
今は山手トンネルのうち 大井~大橋のおよそ8kmを1台のシールドマシンで掘りきってるけど。
とにかくこんなに長い道路トンネル、事故が起きたら大変なことになるのは目に見えている。
それを片側1車線でやるのは無理があるのではないかと思うのだが、
これは一般的な高速道路と考えるべきではないのだろう。
というので思い出したのが第二青函トンネル構想である。
青函トンネルは建設時点から新幹線のトンネルとして作られた。
ただ、実際に新幹線が走り始めたのは1988年の開通から28年経った2016年のことである。
在来線時代から青函連絡船代替の旅客列車はあったが、
人の移動としては飛行機が多く利用されるようになり低調だった。
その一方で貨物輸送における重要性が高く、現在に至るまで貨物列車の方が本数が多い。
当初から新幹線トンネルは貨物含めて新幹線でという話であれば、
それを前提としたシステムを作ったかも知れないが、貨物新幹線の構想はとうに頓挫している。
これにより発生した問題は大きく2つある。
1つは新幹線がフルスピードを出せないこと。
貨物列車に追いついてしまうのも問題だが、すれ違いに懸念があるのも理由である。
もう1つは夜間のメンテナンス時間が十分取れないことである。
新幹線は法令により深夜0時~6時の運行が禁止されている。
これにより在来線よりも余裕を持ってメンテナンスが可能である。
ただ、青函トンネルは夜間も貨物列車が走るのでそうもいかない。
老朽化対策も必要だが、そのために取れる時間は限られている。
この問題の打開策として第二青函トンネルという構想がある。
基本的に貨物列車用のトンネルなのだが、片側1車線の道路を併設する案である。
「第2青函トンネル」実現の可能性は? “2階建て”構想の深度化に期待 (ITmedia)
といっても現時点でどこまで実現性があるんだろうねとは書かれている。
鉄道部が単線というのも気になるポイントではあるが、続行運転という手法はある。
ただ、この長さのトンネルを片側1車線、さらに言えば休憩施設なしは正気ではない。
しかし、それは人間がハンドルを握るから生じる問題なのであって、
自動運転を前提とした道路であれば問題ないはずだという話である。
全く的外れな話でもないなと思うのが、英仏海峡トンネルである。
鉄道トンネルだが、カートレイン(Eurotunnel Shuttle)が運行されている。
この距離の道路トンネルは無理ということで、カートレインという方策が採用されたと言われている。
ただ、これはこれでめんどくさい話である。
一定のルールに従う自動運転車に限るという方策はそう遠くないうちに実現するのでは? ということだろう。
豊予海峡トンネルは鉄道については四国新幹線になりうる路線である。
ただ、新幹線では貨物輸送への貢献ができない。
自動運転車に限るという制約があると、結局フェリーでの移動は続くのかもしれない。
それでも相当割合では海底トンネルが利用されるであろうと。
バスで旅客輸送も道路でという話もあるかも知れないが、
四国にはX字状の新幹線構想もあるので、これと関連付けて新幹線もという話はあるかもしれない。
これだと道路は専用の貨物車中心の利用でも話になりそうである。
なお、この構想が出てきた背景には熊本県への工場立地が進んだこともあるよう。
中九州横断道路という計画があり、これと組み合わせると四国から熊本まで一直線につながる形になる。
もともと大分県は海上輸送に依存する割合が高い地域である。
阪神港への長距離フェリーもそうなのだが、豊後水道を渡って四国へ向かうルートもそうである。
関門海峡を通るより、淡路島経由で四国を走って豊後水道を渡る方が近いのである。
それをさらに熊本方面まで広げられないかという話のようだ。
上記の話の前提として淡路島経由で本州・四国が結ばれていることがあるように、
この手の架橋・海底トンネルというのは地図を書き換えるほどの効果がある。
ただ、本州・四国間の架橋とはいろいろ事情が違うなと思う部分は多い。
瀬戸大橋は複数の橋で構成されており、途中の島で区切って橋を架けることができた。
いずれのルートも多かれ少なかれ経由地の島々の生活道路として機能している。
一方で豊予海峡は橋の経由地として妥当な島がなく、トンネル案が優位という結論に至っている。
かといって北海道と違って関門海峡経由のルートは昔からあって、
これは大分県を含む九州全域で十分使いやすい。
いろいろな観点はあると思うが、トンネルを掘る必然性は弱いのかなとは思う。