WBCの決勝が 日本 vs アメリカ になったけど、
まさかこれが決勝に来ると思っていた人はなかなかいなかったと思う。
というのも、当初のトーナメント表では順当に行けば準決勝で発生する組み合わせだったから。
いろいろな条件が重なって決勝で実現したのだった。
「順当に行けば」準決勝とは言われていたが、これには理由がある。
【WBC】侍ジャパン準々決勝進出の条件は? オーストラリアに勝てばB組1位 試合前に決定も (日刊スポーツ)
WBCは5チームによる総当たり戦を4会場に分かれて、
各上位2チームが決勝トーナメントに進出、準々決勝はマイアミ・東京で2試合ずつ、準決勝からはマイアミで行われた。
準々決勝から負けると終わりというのは、WBCでは初めての仕組みである。
(前回は1次・2次ラウンドが総当たりで、準決勝からトーナメントだった)
WBCは分散開催の大会だが、集客上で重要な役目を担うホスト国は特別な扱いがある。
例えば、1次ラウンドのプールB(東京開催・日本を含む)では、日本の試合はすべてナイターになっていた。
そもそも1次ラウンドの組み合わせ自体が集客をかなり意識していて、
プールB(東京)は台湾以外のアジア勢、プールC(フェニックス)は北アメリカ、プールD(マイアミ)はカリブ海地域を固めている。
有力チームはある程度散らせたが、プールごとにレベル差があったことは否めない。
そして準々決勝は各会場2試合のうち、2試合目にホスト国が入る確率が高くなるような仕組みが導入されていた。
東京では、15日(Q1)はプールA 1位 vs プールB 2位、16日(Q2)はプールB 1位 vs プールA 2位の予定だが、
日本がプールBを2位通過になったときは日程を逆転させることになっていた。
すなわち日本が15日の試合に出ることはないと最初から決まっていると。
マイアミでは、17日(Q3)がプールD 1位 vs プールC 2位、18日(Q4)はプールC 1位 vs プールD 2位だが、
アメリカがプールCを2位通過になったら日程を逆転させることになっていた。
とはいえ、日本もアメリカもどうせ1位通過でしょ?
と思っていたら、プールCのアメリカ vs メキシコでメキシコが勝利した。
他はアメリカは全勝、メキシコはコロムビア相手に負けた以外は勝利、
この結果、アメリカとメキシコは3勝1敗で並んだのだが、
この場合は直接対決の結果で順位を決めるので、メキシコ1位・アメリカ2位通過となった。
これによりマイアミの準々決勝は日程が逆転することになった。
問題は準決勝の組み合わせだった。
トーナメント表では19日にQ1の勝者 vs Q3の勝者、20日にQ2の勝者 vs Q4の勝者となっていた。
順当に日本がプールB 1位通過、アメリカがプールC 1位通過ならば、
日本はQ2、アメリカはQ3へ向かうことになる。
そして、各々勝てば20日の準々決勝がアメリカ vs 日本となる。
ところがさっきも書いたようにアメリカはプールC 2位通過となった。
これによりQ3とQ4の「組み合わせ」が入れ替わると言われていた。
冒頭で引用した記事はそれを前提に書かれている。
この解釈だとアメリカ vs 日本は20日の準決勝でしか発生しないとなる。
ところが実際はQ3とQ4の「日程」が入れ替わるというのが正しかった。
【WBC】MLB「その情報は違う」変更を否定 日本4強なら相手はプエルトリコかメキシコ (日刊スポーツ)
この結果、アメリカ vs 日本は準決勝ではなく、決勝で発生しうる組み合わせとなった。
こちらの方がしっくり来るのはその通りなのだけど……
当初のトーナメント表の注釈はQ3とQ4の組み合わせが変わるとしか読めなかった。
あと、準決勝には東京→マイアミの移動も絡む。試合翌朝にマイアミ着である。
予定通りならQ1の勝者もQ2の勝者も到着3日後に準決勝になるが、
もしもQ1とQ2の「日程」の入れ替えが発生していたら、Q1の勝者は到着2日後が準決勝になる。
当初の大方の解釈通り「組み合わせ」の入れ替えならば、この問題はない。
結果的にはすでにマイアミにいるチームの日程が1日ズレるだけなので、
あまり大きな問題はなかったのだが、WBC主催者の真意はよくわからない。
ともあれ、日本・アメリカとも2勝すれば決勝で当たることになったが、
当然のことながら決勝トーナメントともなれば相手は手強い。
日本にとっては準決勝でアメリカを破って1位通過のメキシコが強敵。
アメリカにとっては、準々決勝でプールDを全勝と勢いに乗るベネズエラが強敵だった。
アメリカは2位通過となったことで、準々決勝の相手が強化された形である。
実際、アメリカ vs ベネズエラ、日本 vs メキシコは共に厳しい戦いだった。
アメリカ vs ベネズエラは5回にベネズエラが4点取ったこともあり、
7回終わって5-7、このままではアメリカが負けるところだったのだが、
8回にベネズエラのキハダ投手が満塁を許してしまい、投手交代、
ここで絶好調のターナー選手が満塁ホームラン、9-7で逆転に成功した。
こうして、ベネズエラの連勝は途絶え、アメリカは準決勝に駒を進めた。
日本 vs メキシコは8回終わって、5-4でメキシコが1点リード、
9回はメキシコを無得点に抑え、日本は見事に2点とって勝利したのだった。
なかなかヒヤヒヤする試合だったが、最後に投手力の差が出た形。
そして決勝は3-2で1点差を守り切って日本優勝となったわけである。
お互いなかなか得点できない試合だったが、それだけハイレベルということである。
最後は投手大谷・打者トラウトという、エンゼルスの同僚対決となったが、三振3アウト、日本の勝ちとなったわけである。
漫画にしてもやり過ぎという内容だと言われた。
決勝トーナメントの状況を見る限りは メキシコ と ベネズエラ のどちらか、
あるいは両方が決勝に進出していても不思議はない感じはあった。
そもそも順当に行けば、準決勝でアメリカ vs 日本だったはずで、
そうするとどちらかは決勝に行けなかったのである。
とはいえ、アメリカが負けても挽回できる1次ラウンドで1敗、日本が全勝という、
絶妙なところで決勝戦がアメリカ vs 日本となったことには納得感もある。
なぜならば、今回の日本は投手の安定感がずば抜けてよかったのである。
一方のアメリカ、こちらも素晴らしいチームだが、防御率はやや劣る。
これが負けても挽回できる1次ラウンドで1敗したことにも現れている。
2017年のWBC、アメリカが優勝、日本は準決勝でアメリカ相手に敗れベスト4、
このとき準決勝で当たったのも、アメリカが2次ラウンド2位通過だったから。
2017年のWBCは1次ラウンド上位2チームが4チームずつの総当たり戦をして、
その上位2チームが準決勝、そこからは負けると終わりだった。
このとき、日本は全勝で東京での2次ラウンドを1位通過だったのだが、
アメリカはサンディエゴでの2次ラウンド、プエルトリコ相手に1敗、2位通過だった。
この結果、1位通過の日本、2位通過のアメリカが準決勝で当たったと。
このときも1点差の接戦で、2-1でアメリカ勝ちだった。
この準決勝が事実上の優勝決定戦で、決勝はプエルトリコ相手に8-0でアメリカの完封勝ちだったという。
WBCの分散開催とホスト国の日程固定はフェアとは言えない仕組みである。
ただ、こういう仕組みによって興行としての成功が確保できるということで、
WBCは野球の最高峰を決める大会として定着したのではないかと思う。
アメリカも当初はWBCですらチームメンバーが揃わなかったというが、
やっとそれなりのメンバーが揃うようになったと言われている。
ところで、今回のWBC、日本では大谷選手の参戦もあり、
その同僚ということで対戦相手のエンゼルスの選手が話題になることは多かった。
各国代表で重要な役割を果たしているエンゼルスのスター選手たち、
そんな選手が揃ったチームはさぞ強い……と思いきや勝率5割を切っているという。
スター選手がいても、それに続く選手の層が薄いことが課題だという。
さっきアメリカ vs ベネズエラの試合の話を書いたが、
アメリカ逆転のチャンスを作ってしまったベネズエラのキハダ投手、
実はこれもエンゼルスの選手で、頼りになる投手には違いないのだが、
回またぎで登板して炎上というのはエンゼルスのファンには見覚えのある光景だったそう。
思わぬ形でエンゼルスの選手がアメリカの決勝進出に貢献してしまったと。
そんなわけで、スター選手がいても、チーム全体のレベルが伴わないと、
なかなか試合には勝てないということですよね。
WBCで日本の安定感が高かったのは、NPB各チームの選りすぐりの選手を集めたからでしょう。
それがあってこそMLBからの4人も大いに活躍できたということである。
これが各チームに散れば、なかなかこうもいかないのである。
WBCが終わって現実に引き戻された野球ファンがしばしばいるわけだよね。
最も落差が大きいのはエンゼルスのファンかもしれないねって話。
アメリカ vs ベネズエラの時点で目が覚めたファンもいたのかも。