今日、こんなニュースを見た。
就職できない大学生が3割“大留年時代”到来の悪夢(上)(Yahoo!ニュース/ダイヤモンド・オンライン)
今度の3月卒業見込みの大学性のうち、就職を希望したものの就職が決まらなかった学生が3割ほどいるという話。
とんでもない話だなと思った。
このあたり統計ではどうなのか調べてみた。
学校基本調査 (e-Stat)
この高等教育機関の卒業後の状況調査の専攻別のデータに注目してみた。
学校の種類ごと、専攻ごとにどう違うのか、まとめてみるとなかなかおもしろい。
まず実感のわきやすい高専のデータを見てみた。
卒業生にしめる就職者の割合は51.5%、進学者の割合は46.0%、就職も進学もしない割合(一時的な職・その他・不詳)は2.4%となっている。
確かにそんな感じですね。これを40人にあてはめると、就職者が21人、進学者が18人、就職も進学もしない人が1人と、大体そんなもんかなという数字。
実際、就職希望者は22人で全員決まって、進学希望者は16人で2人を除いてすでに決まっているはずだから、確かにそんなもんかも。
進学など決まらずに研究生となったりしている卒業生も少々いるようだが、概ね進路を決めて卒業していっていることがわかる。
さて、ここからが本題、大学の学部卒のデータを見てみた。
全体を見てみると、卒業生にしめる就職者の割合は15.9%、就職者(医学・歯学の研修医も含む)の割合は62.4%、就職も進学もしない人は21.7%となっている。
なるほど、2割ぐらい進路を決めずに卒業した可能性があるようだ。まぁ就職も進学もしないからって進路が決まってないとも限らんのだけどね。
ただ、ニュースのタイトルに「大留年時代」なんて言葉が書いてあることからも予想がつくと思いますが、
就職が決まらずわざと留年するという例はかなり多いようで、実際にはもっと進路未定者がいたことは想像がつく。
ただ、それのデータはここにはないのでなんとも言えんけどね。
専攻別に見てみるとおもしろい。
工学・理学というのは大学院への進学者が多くて、実に進学率は42.2%(工学)・47.3%(理学)とかなり高い。
就職については47.2%(工学)・38.9%(理学)とまずまずの数字。就職も進学もしない人は10.6%(工学)・13.7%(理学)と平均よりはかなり低い。
他に就職も進学もしない人の割合が低いのは保健(10.7%)・農学(13.1%)か。どれも自然科学系だな。
保健関係の専攻の就職者は81.9%と大学学部卒の中では驚異的な数字。
医師・薬剤師・看護師などの職業に直結しているという事情もあるのだろう。進学者は7.4%しかないし。
一方で人文科学・社会科学は苦戦していることがよくわかる。就職者は61.1%(人文科学)・68.5%(社会科学)となっている。
かといって工学・理学のように進学者が多いわけでもなく9.7%(人文科学)・6.8%(社会科学)と。
気になるのが大学院等への進学と専修学校・外国の学校への入学の比が2:1程度であること。大学院に行く人が少ないからそうなるのだろうけど。
というわけで就職でも進学でもない人の割合は29.7%(人文科学)・24.7%(社会科学)とかなり高い。
ちなみに一番就職も進学もしない人の割合が多い専攻は芸術ですね。実に46.9%、けどこれはそういうもんかなという感想だが。
工学・理学を専攻していた学生の半分近くが進学した大学院修士課程(博士前期課程含む)の卒業生はどうなったかも見てみた。
ところで、このデータ見て気付いたんだが、専攻別に分けると工学が一番多くて41.4%もいるのは納得なのだが、次に多いのは社会科学の11.0%なのよね。
おそらく、法科大学院の学生の数が多いんだろう。専門職大学院で修士相当だからここに入ってるんだな。
次に理学(8.2%)・保健(8.2%)と続くんだが、人文科学が6.7%、教育が6.4%いるなど、理学ともいい勝負だなと感じた。
さて、工学は修士での就職者が86.1%と高い。ここで完成と考える学生が多いんだろう。
博士課程などへの進学者は7.5%と割合にすると低い。もっとも絶対数で言うと多いんですけどね。
そんなわけで就職でも進学でもない人の割合は6.3%とこれまた低い。
一方理学、これは就職者は68.8%と工学に次いで高いのだが、進学者も20.4%でかなり多い。就職でも進学でもない人の割合は10.8%となっている。
理学を専攻してきたからには一人前の研究者になりたいと考える学生が多いのだろう。これは納得。
人文科学も理学に似ていて、進学者は23.0%と多い。理由は理学と同様だろう。大学院に行くとした時点でそう考えている人は多いか。
ただ就職者が41.8%とかなり低くて、そのため就職でも進学でもない人の割合は35.1%とかなり高い。
博士課程のデータもあるが、これについては有名なものがありますね。
創作童話 博士(はくし)が100人いるむら
こっちの方がポスドクの割合とかあるからわかりやすいかな。ただ、正しいかはわからんけどね。
最後の行方不明・死亡はほんまかいなというのはあるけど。
学校基本統計のデータでは就職率が61.8%となかなか定職にありつくのが難しい様がわかるかな。
短期大学のデータもあるが、就職者18.2%、就職者は63.5%、就職も進学もしない人は18.3%と学部卒とあまり変わらない数字。
ちなみに短期大学から進学というのは学部3年次編入とか専攻科への進学ですね。高専と同じようなもの。
ただ、専攻ごとのデータをみてもそんなに差はないかな。保健・教育あたりが就職者多いけど、83.1%(保健)・81.1%(教育)と。
まぁ最近短期大学もあまり人気ないみたいだからね。それでも卒業生は高専の8倍ぐらいはいるんだけど。
ここらへんを見て思ったのは自然科学系の専攻の学生は、比較的うまく就職しているということ。
就職から進学へ切り替えた学生もいそうだし、過去に比べれば状況が悪いかも知れないけど、それでもなんとかなっている感はある。
ただ、それ以外の専攻となると就職しようとしてもうまく就職できないという状況がかなり厳しいことが分かる。
原因はいろいろありそうですけどね。
1つには自然科学系の専攻の教育は厳しいと言われているが、卒業していく学生のレベルもそれなりに高いかもしれない。
大学でレポート書いたりすることも多いだろうし、仕事をさせたらよくやるだろうという評価を受けて
いるのかもしれない。
もう1つは学んだことを直接に活用できることが多そうだから。特に工学で顕著ですよね。
なかなか人文科学の知識を直接活用するのは難しそうですしね。多分そんな仕事はあまりないでしょう。
ただ、それはしょうがないことよ。むしろ工学がチートなんですよ。学問ってなかなか直接役に立たんのだと思いますよ。
結局のところ大学で漠然と勉強していてもなかなかそれでは仕事にならんということなんだと思いますよ。
そんな中いいなと思ってもらうためには学問を通じて力をつけることが大切なんだと思いますよ。まぁ企業がどう思ってるか僕は知らないのだけどさ。
研究などを通じてそういう力を付けていかんとなと思った。