話題にもなっていますが。
東京など4都府県に緊急事態宣言 政府が決定 (NHK)
大阪府はともかくとして、東京都がここで出てきたのはどういうことだと考えてみる。
そもそも、東京都は昨年12月の緊急事態宣言以後、全域で飲食店の営業時間短縮を求めている。
今月12日にまん延防止等重点措置が出て、特別区域と一部の市でより厳しい制限を出したものの、
根拠となる条文の差はあれど、それ以外の地域でも要請が出続けていることに変わりは無い。
多摩地域では八王子・立川・武蔵野・府中・調布・町田の6市がより厳しい制限となったので、こんなことも話題となった。
三鷹駅の北はまん延防止、南は対象外「基準は何なの?」 (朝日新聞デジタル)
三鷹駅は概ね南側は三鷹市、北側は武蔵野市となっており、両市ともに市役所最寄り駅である。
確かにここだけみればおかしい気がするが、しかし全体からすれば軽微な問題だと思う。
なぜ多摩地域の6市により厳しい措置を取ったのかというと、
特別区域に準じて対策をとるべき繁華街が存在するからということだろうと思う。
武蔵野市が対象になったのは吉祥寺地区を想定したものとみられる。位置関係的にも杉並区や練馬区に近いからね。
こういう繁華街で要請に従わない店があったときに強制力のある措置をとれるというのは重要なことであろう。
そういう観点で言えば、三鷹駅周辺は南北共にノーマークというのが実情だと思う。
しかし、武蔵野市内で対象か否かわかれるのは実務的ではありませんから、これは仕方ないことである。
なにより三鷹市も内容に多少の差はあるが営業時間短縮要請は出ているのだから。
ただ、地理的関係からすれば 三鷹市・狛江市・小金井市あたりは同様にしてもよかったと思いますけどね。
さて、そんなわけで一貫して飲食店の営業時間短縮要請を出してきた東京都が、
国に対して緊急事態宣言を出すように依頼していた(どうも水面下では粘り強く調整されてたらしい)のは、
まん延防止等重点措置ではできない休業要請に踏み込む必要があるということだったらしい。
それはこれから連休となれば、酒盛りなどするのに昼も夜も関係ないということも想定してのことだったと思う。
そもそも、東京都の対策はこれまでも飲食店の必死の営業活動に苦しめられてきた面はある。
営業時間短縮などの要請に応じても、その枠内で客を最大限に集めたり、あるいは従わないことが横行したと。
その極地が「昼飲み」である。昼間ならば営業時間短縮要請がかからないから自由に客が集められると。
でも、それは本来の意図ではないわけで、こうして火消しにかかったわけである。
(気の毒だけど飲食店は悪者かもしれない)
このような実績がある以上、酒類を提供する飲食店はすべからず営業してはならないとならざるを得ないわけである。
というわけで、これは仕方ないと思った。
従わない店が横行するのは想定されるが、そのような店に過料を科すこともできるようになった。
感染リスクの低減に向けて、東京都・市区町村が連携して穴をふさいでいくことになろうと思う。
ただ、それでさえ打つ手に乏しいのが路上や公園などでの宴会である。
環境問題でもあるし、いかに屋外でも長時間にわたり密な状態が続くのはリスクとして大きい。
呼びかけはすると思うんですけど、こういう形で宴会を決行するような人に実効的な効果があるかは疑問である。
そこで東京都はこういうことを言い出したわけである。
20時以降ですけれども、街頭の看板であるとか、明るい看板、照明を伴う看板、ネオン、イルミネーションなども停止をしていただくようにお願いをいたします。夜は暗いです。街灯のみが灯るということに結果としてなろうかと思います。(中略) 今回は人の流れを抑制するための措置ということであります。
(小池知事「知事の部屋」/記者会見(令和3年4月23日)(東京都))
それって効果あるのか? という話だが、こういう形で人々の考えを揺り動かすのが効果的ということだろう。
百貨店にも休業要請を出す方針で、各種施設・各種興行についても休止・無観客を求める方針だという。
正直、これも直接的な効果があるとは思えないが、こういうことを積み重ねることで人が集まることを避けられるということだろう。
劇場が閉鎖されることについて「演劇が何か悪いことしたのか」と怒っている人を見たが、
そういうことではなく、悪いのは東京都に群がる住民らであり、その尻拭いがこういうところに来ているわけである。
東京都がこういう策をとらざるを得ない状況に追い込まれたのは、
各種対策をくぐり抜けるまでて、感染リスク軽減に不十分な住民がいるからということで、
こういう嫌がらせのようなことがあれこれ出てくるのは、いくら呼びかけても一向に効かないということで、
このようなことが起きていることに住民の1人としては大変恥ずかしいことだと思っている。
でも、こういうことをしなければならないのは、これまでの実績に裏付けられており納得感はある。
正直、これもいくらでも抜け道はあるんですけど、それでも効果は見込めるだろう。
なお、同時に大阪府・兵庫県・京都府にも緊急事態宣言が出ることとなったが、
こちらは東京都とはだいぶ違う経過をたどっている。
吉村知事「時短は大阪市内、午後9時まで」 宣言解除後 (朝日新聞デジタル)
これは2月下旬の話だが、緊急事態宣言解除とともに大阪市以外の大阪府域に出していた飲食店の営業時間短縮要請を外している。
これを見て大阪府は学ばないなと思ったのである。
というのも昨年11~12月ごろ、営業時間短縮要請の出ていない大阪市以外の地域で感染拡大し、
これにより大阪府全域で医療体制が危機的状況に追い込まれたのだから。
その経緯を傍から見ていたので、2月下旬時点でまた同じことやらかすなと思ったら、もっとひどかった。
妻が陽性と確認されて3日後の今月13日、妻が熱と全身の倦怠感に加え、胸の痛みを訴えたため、男性は救急車を呼びました。
しかし、救急隊員からは、病床がひっ迫しているため、保健所の許可がなければ、病院に搬送できないと断られたと言います。
(大阪 医療ひっ迫 救急搬送に4時間 倒れても搬送されない場合も (NHK))
感染症の患者を医療機関に搬送するのは保健所の業務とされている。
といっても実務的には消防署に依頼していることが多いようだが。
感染症に限らないが、病状の急変があったときはいきなり救急通報して救急車で搬送されることが多いが、
消防署は保健所からの指示がないから搬送を拒否していることがあるということである。
救急隊も病状など保健所に報告した上で搬送先を決めるように依頼したはずだが、保健所がそれを拒否したということである。
こういう状況は今日に始まったことではなく、4月に入る頃にはもはや危機的状況だったはずである。
そこに対して国が動かないのは不思議だと思っていたし、今回の緊急事態宣言も大阪府からの要請をうけてやっとのこと。
確かに大阪府の対策に問題が大きかったのは事実であるが、そこに対して積極的に介入しない国もどうかと思うのである。
結局は大阪府がこれ以上は限界と音を上げた形となったが、そうならなければ国はどうしていたのか。
大阪府が「かかれば死ぬのは当然のこと」などと開き直れば、国は動かなかったのだろうか?
本来は緊急事態宣言の要否は都道府県の判断することではなく、国が判断するべきことである。
実際、今年2~3月にかけて緊急事態宣言が不要になったかどうかというのは国の判断である。
(東京都が緊急事態宣言の解除前後で要請内容を大きく変えなかったのは、東京都と国の判断の違いを表しているとも言える)
逆に緊急事態宣言が必要という判断を都道府県に委ねてるのはおかしいよね。
実務的にはいろいろやりとりはあったのかもしれませんけど、これは国の対応にとって問題が大きいんじゃないか。
先日「ノーマスクピクニック」だとか「うちわ会食」とかいうことが話題となった。
「ノーマスクピクニック」については主催者の言動が問題視された面(cf. 「ノーマスクピクニック」復活運動に批判相次ぐ 発起人は「コロナは茶番」を主張…公園側は対応苦慮 (J-CASTニュース))はあるが、呼びかけ自体は こう言うと角が立つ が……という内容ではないかと思う。
マスク着用による弊害もある中で、屋外であれば極端な密にならない限りは比較的リスクは低い。
そこら辺を考慮して、家族など小グループで楽しむ分にはよいと思ったが、デモ集会のごとき動きは問題視されても仕方ない。
「うちわ会食」は兵庫県が口元をふさぐためのうちわを飲食店に配布しようとした話。
「うちわ会食」のうちわ配布を見合わせ 兵庫県、効果疑問視や批判相次ぐ (神戸新聞)
対策として全く理屈に合わないわけではないが、果たして現在の兵庫県(特に阪神地域と神戸市)にとって妥当かという話である。
感染の蔓延度が低いときには弱い対策ながら、他の対策と併用して意義はあったかもしれない。
でも、現状の状況を考えて、この対策で得られる効果なんてほとんどないし、逆に油断させるリスクの方が高い。
その上で東京都が求める対策を見ると、相当に強い内容だが、これまでの実績を踏まえた決断である。
ただ、それですら懐疑的な見方をしてしまうのも、これもこれまでの実績である。