めずらしくもポストに大きな封書が投げ込まれていた。
「イオンディライト株式会社 公開買付関係資料在中」
全部紙で印刷された資料で、やっぱり送ってくるんだな。
イオンは2つの上場子会社を完全子会社することを発表していた。
その1つがイオンディライトで、僕はその株主である。
そもそもこの会社はビルメンテナンスの会社である。
歴史をたどるとマイカル傘下のジャパンメンテナンスという会社だった。
マイカル傘下の時代に上場しており、これが現在まで続いている。
マイカルは2003年にイオンの子会社となり、イオングループ内のビルメンてナンス会社を吸収、
その際にイオンディライトという社名になっている。
なぜジャパンメンテナンスは上場したのかというと、専門性の高い人材を確保するという意図が大きかったようだ。
イオンの子会社ではあるが、売上の概ね半分はグループ外によるもので、
そもそもビルメンテナンス業界のガリバーで、業界1位の売上を誇るという。
(確かに大手とは聞いてたが、業界1位なのは今初めて知った)
となればなぜイオンはこの会社を完全子会社にしようとしたのかというと、
イオン社内のファシリティマネジメント機能を移管することを考えているのだという。
上場子会社との取引となれば結局は社外との取引とあまり変わらないのである。
維持・修繕の計画を立てて、それを発注する機能をイオンリテールなど各社が持つ必要がある。
この機能ごとイオンディライトに移管するには社内に取り込む必要があると。
この先にはイオンディライトはBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)でグループ外にも商売できる会社になると書かれている。
なのでグループ外との商売は引き続き重要だという話である。
公開買付が成立してしまえば、株主としては手離れしてしまうので関係ない話だが、
社内向けのメッセージとしては重要なことだろう。
この趣旨には賛同するところなので公開買付に応募しようと思うわけだが、
公開買付ってのは代理人である証券会社にある株式でしか応募できない。
(復代理人として複数の証券会社が指定されることもある)
しかし、今回の場合は野村證券が唯一の代理人である。
そして、僕は現在、野村證券には口座自体ない。
というわけでどうしようかと考えるわけである。
選択肢は3つある。1つは野村證券の口座を作って、そこに移管して応募する。
2つ目は応募せずに持ち続ける。
おそらく今回の公開買付は成功して、イオンは90%とか67%の株式を取得できるだろう。
こうなると少数株主を締め出すための手続きが行われ、公開買付と同額で買い取られる。
この方法は以前ある会社で経験している。
3つ目は市場で売却する。現在の株価は公開買付額(5400円)に近い5380円である。
2番目の方法はこれはこれで面倒である。
スクイーズアウトの手続きには時間がかかり、交付金銭領収書で受け取るにはいろいろ手間がかかる。
前は金額が比較的小さかったからこれでよかったが、今回はけっこうな金額である。
3番目の方法はすぐに現金化できるという点では悪くないが、正攻法ではないなと。
というわけで結局は1番目の方法、野村證券に口座開設する方法にした。
説明書には「売却代金を振込で受け取る場合、送金手数料がかかる場合があります」とあるが、
銀行口座への通常の出金には手数料はかからないから、一応書いているだけである。
これ、思ったよりも楽だった。マイナンバーカードがあるのが前提ですけどね。
Androidアプリで入力補助APの暗証番号と署名用電子証明書のパスワードを入れて、
これでほとんどのデータは自動入力されて、あとは電話番号など入れる程度。
しかも、朝に申し込んだら昼休みには口座開設が完了していた。
ただ、これだけでは申し込めなくて株式を移管する必要がある。
GMOクリック証券からの移管はWebフォームに必要事項を記入すればできる。
(SBI証券からの移管は印刷したフォームを郵送する必要があった)
ちなみにGMOクリック証券はそもそも移管手数料を取らない証券会社だが、
多くの証券会社で自社が(複)代理人でない公開買付への応募は移管手数料を取らないという。
明確なところは電話などで確認する必要はあるが、概ねそう考えてよい。
ここから移管までは2週間ぐらいかかるが、特にトラブルなければ間に合うはずで、
公開買付が成立すれば5月には現金化されることになる。
その先の投資先はまた考えておかないとな。
ところでイオンがもう1つ完全子会社化することを発表したのがイオンモールで、
実はこちらも株主なんですよね。
イオンモールはイオングループの中核会社の1つだが、
上場子会社ということで意志決定が統一されていなかったわけである。
イオンタウンのような小規模なショッピングモールは社内でも様々経営しており、
ここもイオンモールの領分にしてはどうかと考えているようだ。
こちらは株式交換での子会社化ということで、今後はイオンの株主として関わることになる。
基本的には賛同するところだが、気になるのは株式交換後の取引である。
現在のイオンモールの株価は2400円ほど(子会社化発表前は2000円ほど)、
これに対してイオンの株価は3900円ほどということで、
イオンモールの100株はイオンの100株に満たないわけである。
単純にイオンの株式に交換されると、交換後の取引に困ってしまうわけである。
こうなると継続保有は難しいので、株式分割などで打開してほしいものだが。
株主優待としては残念なところもあるんですけどね。
両社はいずれもイオンギフトカードをけっこうな金額くれる会社だったので。
イオンの株主優待はイオンでの購入額の一定割合を返金する仕組みなのでかなり違う。
でもやはり本業がうまく回ってこその会社ですから。
イオンディライトにイオンが期待を寄せていることは確かにわかるし、
イオンモールにイオングループ内に雑多に散らばるショッピングモールを集約できることの意義もわかる。
イオンモールの事業としては郊外型のモールが多いことは事実だが、意外に幅が広いのである。