JR東海が老朽化したディーゼルカーの特急の代替にハイブリッドカーを買うそうだ。
ハイブリッド方式の次期特急車両の名称・シンボルマークの決定について (pdf) (JR東海)
その名もHC85系、現在の85系ディーゼルカーを置き換えるからこういう名前にしたらしい。
この辺、700系の改良版がN700系になって、N700Aになって、N700Sになるのに通じるところがある。
これから試作車が来るという状況だが、将来的には特急「ひだ」「南紀」として走る予定とのこと。
鉄道の動力源は、蒸気機関車が実用的に使われなくなってからは、電気とディーゼルの2本立てだったが、
蓄電池技術の発展で、ディーゼルと蓄電池のハイブリッドとか、蓄電池車とか、新しい動力が取り入れられている。
省エネというのも理由だけど、従来ディーゼルカーのコア部品だった流体式変速機が不要になるのも魅力なのかも。
ハイブリッドカーとまで言えずとも、エンジンで発電機を回し、その電力を使ってモーターで走る、電気式のディーゼルカーもある。
歴史的には流体式変速機を使うよりも、電気式の方が古くからあったほど。技術的にはこっちの方が簡単なんだ。
一旦、電気にするのは無駄が多いと、日本では長らく使われてなかったが、パワーエレクトロニクスの発展で見直されている。
大型変速機の入手が困難な大型の機関車では全面移行済み、最近では旅客列車での活躍も始まっている。
でも、ちょっと気になることが。
実はJR各社で列車の形式にハイブリッドカーや蓄電池車をあらわす方法が違うのだ。
これまで、国鉄・JRでは電車のモーターの付いた車両には「モ」、ディーゼルカーには「キ」と付けてきた。
「モハE230-636」とか「キハ85-1119」とか。他の私鉄・公営交通ではあまり見られない表記法だが。
機関車はまた表記法が違って、電気なら「E」、ディーゼルなら「D」の字に続けて、動輪数を表すアルファベット、6輪なら「F」を付けて、
「EF210-16」「DF200-7000」のような番号が付く。(ちなみに「C57-1」のように動力のアルファベットがないと蒸気機関車を表す)
もっともJR四国がJRになってから購入した車両では、記号を付けずに単に「2706」号車のように書いている例もあるのだが。
それがハイブリッドカーとか、蓄電池車という新しい動力方式になったときどうなるかは足並みが揃っているわけではない。
まぁ足並みを揃えようがないのが、機関車で、これは基本的にJR貨物しか買わないから。
JR貨物はハイブリッド動力を表す記号として「H」を定義して「HD300-1」のように表記することにした。
これはとてもわかりやすいですね。
ハイブリッドカーと蓄電池車の導入をリードしてきたJR東日本、
当初はハイブリッドカーもディーゼルカーの一種だと「キハE200-1」のように表記していたそうだ。
ただ、その後方針が変わって、ハイブリッドカーはHB(HyBrid)を付けて「HB-E210-1」のように表記、
蓄電池車はEV(Energy storage Vehicle)を付けて「EV-E301-1」のような表記になった。
最近ではハイブリッドカーから電池を取り除いた電気式ディーゼルカーを導入しているのだが、
これは従来の「キ」ではなく、GV(Generating Vehicle)を付けて、「GV-E402-1」のような表記になった。
こうなってくると、架線集電の電車だけが従来の表記法を維持してる感じですね。
蓄電池車といえば、JR九州、かつて石炭を運んだ非電化の支線で大活躍である。(cf. 石炭を運んだ線路と座席の出てくる展示場)
ここは「クモハBEC819-107」のように、電車として「モ」を付けている。
一方で型式名に「BEC」という文字が入っているが、明確な意味は示されてないが、蓄電池車であることを表しているのかな。
JR九州はハイブリッドカーも試験車を購入していて、その名も「YC1系」である。
YCは「やさしくて力持ち」という意味らしい。開発スローガンみたいなもんですかね。
まだ試験段階だが、今のところの表記は「YC1-1001」のように動力を表す記号なしになっている。
JR東日本の電気式ディーゼルカー「GV-E400系」と同仕様の車両をJR北海道が購入して「H100系」と命名して試験中のようだけど、
これも動力を表す記号なしの「H100-1」のような表記なので、別に動力を表す記号いらないよねというのも答えなのかな。
あと、忘れてたけど、JR西日本もハイブリッドカーを購入している。
「TWILIGHT EXPRESS瑞風」である。(cf. 挑戦的なトワイライトエクスプレス瑞風)
これはディーゼルカーの一種ということで「キ」と付けて「キイテ87-1」「キサイネ86-501」のように付番されている。
「キサ」というのはちょっと珍しくて、ディーゼルカーに組み込まれるエンジンなしの車両を表す。
1両にエンジン1台か2台積むのが通常であるところ、ハイブリッド動力の特徴を生かして、特定の車両に集中配置するということをやっている。
わざわざ「キ」「キサ」と付けたりするあたりは古風というか生真面目というか。
実はJR東日本の「TRAIN SUITE 四季島」は架線集電かディーゼル発電か選べるEDC方式のハイブリッドカーを導入している。(cf. あえてのEDC方式)
これは動力を表す記号を付けずに単に「E001-1」のように付番されている。
非常に特殊な車両なので、特に動力などを表す記号はいらんだろうという判断があったんだと思う。
(他に記号が付かない車両としては、皇族用の特別車両「E655-1」号車がある)
JR東海のHC85系の具体的な付番ルールはわからないけど、
HCがHybrid Carを表しているので「HC85-xxx」のような付番になるんじゃないかなという気がする。
JR東日本のアプローチに近いが、JR東日本ではHBとなるところが、HCというところで足並みが揃ってない。
各社の判断でという話ではあるんだけど。
私鉄・公営では動力を表す記号は付いていないことが多いので、
新しい動力の車両が増えてくるにつれて、別に記号いらないよねというのは答えなのかなと。
JRでも新幹線は基本的に全部モーター付きだからか記号なしで「785-2506」のようになっているようだし。
ただ、パッと見てわかりにくいよというのもあるんだろうと思う。
特に同じ会社で電化路線と非電化路線が混在するのは、案外ないことですからね。
どこを走れるんだろうとパッと見てわかるとありがたいということなんじゃないかなと。
そういえば、近畿車輛の試験用車両「Smart BEST」は「自己充電型バッテリー電車」を名乗っていた。
ハイブリッドカーとかバッテリーカーとか
どうもメーカーとしては「電車」であることを強調したかったようだが、
ディーゼルエンジンを積んでいる以上、法令上は気動車となり、乗務員の資格は「内燃車運転免許」が必要になるらしい。
とはいえ、徳島県(全線が非電化)での試験で試乗会をやったときには、エンジンを切って完全に「電車」として走行したこともあり、話題になった
徳島県を「電車」が走った! 「Smart BEST」走行試験、徳島~鳴門間で実施 (マイナビニュース)
すでに、バッテリーを積んだ「電車」が非電化路線を走る時代になっていますからね。
そこに発電機を付けただけですよと、メーカーは本気でそう思っているのかも知れない。