最近、消費税を上げましょうという話になっているが、これはなかなか簡単ではない。
消費税は、消費するところで税金を払うので捕捉率が高いのが特徴だが、逆進性があるとされている。
逆進性っていうのは低所得者ほど税率が高くなることですね。高所得者ほど税率が高くなる累進的な仕組みが望ましい。
そこで、所得税などもあわせて考える必要があるというようなことを、政府や民主党の議員は言っている。
その仕組みの設計、準備などなどに2年以上はかかるだろうという話である。
民主党は税金関係のことについて様々なことを言っていまして、今の発想とはかなり違うものも多い。
民主党政策集 INDEX2009 税制
ここで特に重要と思うことを列挙すると、
まず、消費税についてだが、今回上げたいという話になったがさっきも書いた通り逆進性があるという問題があった。
そこで、給付付き消費税額控除を導入したいと書いてある。
日常生活に必要な消費の分の消費税に相当する額を所得税から引くとか給付するとかするということ。
払っている消費税と給付付き消費税額控除を差し引きした実効的な税率は低所得者ほど低くなる。
そう言う仕組みです。さすがに消費税率を上げるならこの仕組みは必要だと言うことらしい。
逆進性対策のための制度としてはかなり効果が高い方法らしい。生活必需品の税率を下げる方法は手間がかかる割には効果がないとか。
ただ、効果を上げるためには給付付き消費税額控除の金額を多くしたいが、そうすると税収が減る。
そこらへんのバランスが難しいところで、このあたりは検討が必要。
ところで、消費税の実効的な税率の差ってなんで生じるのか気になってたのだが、
土地の購入・保険料などは消費税がかからないんですね。あと貯金すれば消費しないので税金がかからないね。
高所得者ほどこういう消費税のかからないところに金を投じる傾向があるのでしょう。これが逆進性のもとかなと。
さて、ここで所得税が出てくる。
この所得税の所得控除って制度がよくない。さっきの政策集によれば
同じ38万円の所得控除を適用した場合、高所得者が10万円を超える減税になるのに対して、低所得者では2万円の減税にもなりません。
所得控除によって具体的に何円減税になるかというのは、控除額×税率と言うことになるだろう。
高所得者ほど適用される税率は高くなるのだが、そうなると高所得者ほど減税される。これがよくない。
そこで所得控除から税額控除にするべきだと書いてるわけだ。確かにそれは言えてる。
しかし、税額控除でも払う税金がないほどの低所得者は得しない。そこで税額控除が税額より低くなればこれを給付すると。
これをセットにしたのが給付付き税額控除制度のこと。
この実践が子ども手当ですわ。所得控除を無くす代わりに給付を行うと。
今のところは独立した仕組みで給付を行ってるけど、将来は所得税に統合されるはず。
このほかに、さっき書いた給付付き消費税額控除や基礎控除の代わりになる税額控除が考えられている。
基礎控除の代わりの税額控除とかは生活保護の機能の一部を取り込むことができるようだ。
生活保護ってのは生活保護水準と所得の差が給付されるので、所得が増えても手取りが増えないという問題があったのだが、
このあたりを給付付き税額控除の仕組みを上手く使って解決したいということらしい。
そこで、出てきたのが納税者番号の話。
現在、サラリーマンは所得が完全に捕捉されてそれに応じて所得税を源泉徴収で払っている。
自営業者は自分で申告して所得税を払っている。
それはいいのだが、利子などの所得の所得税は申告せずに分離課税で支払っている。所得税15%・住民税5%の計20%ですね。
分離課税は簡単でいいのだが、一定の税率というのは所得が高い人ほど得をする。
さらにさっきも書いた通り所得の多い人はたくさんの投資をして、それで利子や配当や株式の譲渡所得でたくさんの収入を得る。
それが分離課税で安い税率で済んでるというのなら、そりゃ不公平だという話になる。
さっきの政策集には分離課税より総合課税のほうが望ましいとは書いてあるが、今すぐに変えたいとは書いてないな。
それはさておき、高所得者については給付付き税額控除をカットしたいが、今の制度では捕捉率がよくないと。
そこで、給与所得だけじゃなくて、利子などの所得も納税者番号で捕捉したいと。そういうことですね。
捕捉できるようになれば分離課税から総合課税という方向に向かうかもね。
ただ、納税者番号の仕組みはとても手間がかかる。国も情報を送る側も手間がかかる。
果たして、それ以上の税収が得られる仕組みなのかというのは考えないといけない。
あと、現在のところ、全ての住民に振られているコードとしては住民基本台帳法にある住民票コードしかない。
しかし、これは役所が定められた目的で使うときにしか使ってはいけないことになっている。
法律を改正すれば済む話だが、今のところ住民票コードは住民基本台帳カードにすら書いてない秘密の番号なので難しい気がする。
政策集には税・社会保障共通の番号を導入したいと書いてあるが、今ある中では基礎年金番号が一番近いですね。
ところが基礎年金番号は20歳以下には振られてないし、1人の人に複数の番号が割りあてられたり質が悪い。
新しく割りあてると金がアホみたいにかかるし、果たしてどうするかが問題だ。
番号無しでもできるはずだが、まぁこのあたりは捕捉率との兼ね合いかな。
これらの制度と年金というのは関係が深い。
民主党は、現在の国民年金に相当する基礎の部分を消費税で、厚生年金などに相当する上積み部分を職業によらず一元化したいと言っている。
国民年金の保険料ってのも不公平なもので所得によらず一定なんですよね。
なので低所得者ほど負担が重いのだが、消費税は所得の低い人は少なく、所得の多い人はたくさん払う。<
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その点では合理的ではある。まぁそのためには消費税率をなんぼにしないといかんのかが問題だが。
上積み部分は、国民年金基金(自営業者)・厚生年金(サラリーマン)・共済組合の長期給付事業(公務員)に分かれている。
これを一元化するわけだが、そのためには所得の捕捉率を高める必要があるようで。
自営業者にもサラリーマンと同じように所得に応じた保険料を設定する必要があるからですね。
民主党の税金関係の発想はサラリーマンや低所得者にとっては得、高所得者や自営業者には損になりそうな内容が多い。
まぁしかし税金ってのは本来そうあるべきものですからね。そう言う意味では正しいと言えるのかも。
ただ、これとセットで挙げられてるのが法人税率の引き下げですからね。
払える人ほどたくさんの税金を払えという考えによれば法人税とか高いほどいいと思うんですけどね。
にも関わらず下げると言ってるのは、日本の法人税率が高いかららしい。
日本の法人税率は30%、法人住民税とあわせて40%程度の税金を払ってるが、これはアメリカと同じく世界最高レベルの高さらしい。
法人が国外に逃げるのは簡単なので、そうやって日本で法人税を払うのを避ける傾向があるらしい。
そうなると余計に税収が減ると。そういうことが背景にあるらしい。
しかしあんまり納得の行く話でないのは確かなこと。よそも下げたからうちも下げるっていうのが気に食わん。
ただ、今のところ税金払うぐらいなら赤字にしてしまえとか、税収が余計に減ってるだろという心当たりは多いので、
これらが解決して税収が増えれば大成功なんですけどね。
いろいろ書いてきましたが、様々な事柄にはよいこと悪いことがあります。
そこを考えて、果たしてどっちの方がいいのかなとじっくり考えることが大切ですね。
僕はこれらの事柄について概ね理にかなった話だとは思ったけどね。
それにしても今までと違う点が多すぎるので、これらの実現には2年では足りそうもないな。
いやはや、どうなることやら。その前に参議院議員選挙か。