H3ロケットの水素の使い方

おととい、固体ロケットブースターなしのH3ロケットの話を書いた。

固体燃料ロケットのいらないH3ロケット

H3ロケットのキーパーツが1段目エンジンのLE-9である。

H-IIロケット以来2段目につかっていたLE-5A, LE-5Bをベースに開発され、

シンプルで安全性が高く、2基・3基と載せても安上がりということだが、

詳しく調べるとなんでこれがいいんだろ? と首をかしげる部分もあった。


LE-5Aは世界初のエキスパンダーブリードサイクルエンジンだという。

そもそもロケットエンジンというのは燃料と酸化剤を加圧して送り込む必要がある。

この送り込むためのエネルギーをどうやって確保するかという問題がある。

こういう話は飛行機のジェットエンジンにもある。

飛行機のエンジンでは排気でタービンを回し、これで空気を圧縮して燃焼している。

エンジン始動時は圧縮空気をもらって起動するのだという。

ただ、ロケットでは推進に使う排気で駆動する タップオフサイクル はほとんど活用されていない。

ロケットの推進に使われる高温の排ガスに耐えるタービンを作るのは大変だからである。


そこで推進剤の圧縮を行うエネルギーを別の燃焼ガスで確保する方法が考えられ、

主燃焼室とは全く別系統の副燃焼室を設けたものがガスジェネレータサイクルである。

H-Iロケットのときに使っていたLE-5がそうだったようですね。

ヨーロッパの アリアン5・6 の1段目に使われている Vulcain もそうだという。

もう1つは副燃焼室では燃料を部分的に燃焼させてエネルギを確保し、

燃え残りの燃料を含む排ガスを主燃焼室に持って行く二段燃焼サイクルである。

理屈の上では高効率な方式で、スペースシャトルでも使われていた。

これを採用したのがH-IIシリーズの1段目エンジンLE-7, LE-7Aだったという。


ところでH-Iロケットのときに2段目用にガスジェネレータサイクルを採用したLE-5を開発したのだが、

このときの始動方法として水素ガスが膨張するエネルギを活用することになった。

専用のスターターが不要なので簡単な構造になるメリットがあった。

このときの実績より、そもそも副燃焼器自体いらないのでは? という話が出てきたそう。

すなわち水素ガスが膨張するエネルギで推進剤を圧縮して主燃焼室に送り込めばよいと。

駆動用に使った水素ガスはなんとそのまま捨ててしまう。

これがエキスパンダーブリードサイクルである。

H-IIロケット2段目用のLE-5Aで初めて採用されたわけだが、

命名がLE-5の改良版みたいな名前で、それは元々LE-5も始動時はこの方式だったことに由来するのだろう。


水素ガスを捨ててしまうのはもったいないように思うけど、

エンジンの効率を測る指標である比推力はLE-5で450秒、LE-5Aで453秒だからむしろよい。

ガスジェネレータサイクルは推進剤の一部を圧縮機のために使われてしまう欠点がある。

一方のエキスパンダーブリードサイクルは燃焼すらさせずに捨ててしまうが、

燃焼させるには酸素が必要だが、膨張させるだけなら水素だけしか使わない。

圧縮機を駆動させるのに使ったガスを主燃焼器に持って行くエキスパンダーサイクルというのもあるが、

それはそれでいろいろ制約があるらしく、必ずしも効率の良いエンジンにはならないようだ。


で、LE-5A, LE-5Bでエキスパンダーブリードサイクルの実績を積んだJAXAは、

これを1段目エンジンにも活用できるのではと考えたわけである。

課題は水素ガスを膨張させるための熱量確保である。

エキスパンダーサイクルは2段目以降で使われることはけっこうあるが、1段目では使われてこなかった。

ただ、H3ロケットではコストダウンが重要なテーマだったこともあり、

これまでの実績も考慮し1段目も同様の方式にすることを選んだという。

ただ、やはりいろいろ難しくて、当初想定していなかった追加工が発生したり、

当初想定されたコストやパフォーマンスは現状未達ではないかと言われている。

LE-9 タイプ2と呼ばれる恒久対策版はまだしばらくかかるようだが、

それでも一応はエキスパンダーブリードサイクルの1段目エンジンは実現したという。


ところで水素ガスを捨ててしまうなんてもったいないと思ったかも知れないが、

この捨ててしまう水素ガスにも大切な役割というのがあるそう。

それがノズルを冷やすという役割である。

ロケットエンジンの排ガスは高温なのでそのままでは周りの金属も溶かしてしまう。

それでは困るので冷却していて、それはLE-7のときからそうだった。

この冷却用のガスに水素を使っていたんですね。


というわけでH3ロケットに積まれている水素は燃焼以外の目的にも多く使われているという話だった。

そもそも燃焼させるにしても混合比は5.9で、水素がかなり燃え残る比率である。

飛行機のエンジンと違って、ロケットでは酸化剤も積まないといけない。

そういう事情を考えたときに水素を燃やし尽くすより効率がよいという話なのだろう。

だから、H3ロケットが噴き出している排ガスというのは、

水素と酸素が燃えた水蒸気というよりは、水素そのものもかなりあるということのようだ。

それは推進剤を圧縮するエネルギを確保し、フィルム冷却に供される水素もそうである。

なんで750Vなのか

日本の法令では直流では750V以下、交流では600V以下を低圧、

それを超えて7kV以下を高圧、それより高い電圧を特別高圧としている。

6.6kVは高圧配電線として電柱の上を比較的細かく張り巡らせられており、

この電圧で引き込んでいる需要家は比較的多いようである。

というので高圧の上限は意識されていることが多いことがわかる。


一方で低圧の上限ってなんでその数字なんだろうね? と思う。

というのも一般的な家庭に引き込まれる電圧というのは、

単相三線式といい、中性線を挟んで位相の異なる100Vを供給するもの。

単相3線式と単相2線式の違い (東京電力パワーグリッド)

わかりやすい絵ですね。200Vの供給と100Vの供給を兼ねることができる。

電力会社が低圧として供給する電圧は200Vである。


実は1965年以前は低圧の上限は直流750V以下、交流300V以下と大きな差があった。

現在でも300Vを境にして適用する技術基準がかなり変わるらしい。

なので、家庭で気軽に使えるのは200Vまでなんですね。

工場などで使用される機器の中には400Vというものも存在して、

そこに対応できるように600Vまで低圧にすることにしたらしい。

一方で直流の方はかなり昔から750Vが上限だったということで、

これは明確な理由があって、電車への電力供給に使っていたからである。


でも、現在は750Vで動く電車というのは限られてるんですよね。

路面電車と第三軌条方式で電化された地下鉄はそうなんですけど。

一部には昔の低圧の上限に当たる600Vというものもある。

近鉄けいはんな線の駅には「高圧電気通電中」に「こわいでんきがながれています」とルビが振られた表示がある。

こういう表示は第三軌条方式を使っている路線には何らかある。

ただ、近鉄の表示はかなり独特で、それが目立つところに多く貼られている。

「こわいでんき」はその通りだが、750Vは法令上は低圧にあたる。

一般的な家庭に供給される電力よりははるかに高いという意味では高圧の方が直感に合っているが。


現在、電車への供給電圧としては直流1500Vが一般的である。

1500Vは言うまでもなく高圧だが、これは750Vの倍ということで明確に理由がある。

なぜ750Vの倍にしたのかというと、両対応の車両が作りやすかったからである。

直流電動機というのは、界磁が一定の場合、電機子電圧と回転数は比例する。

(電車では直巻電動機という界磁も変化するモーターを使っていたが)

かつては電車ではモーターの直列・並列のつなぎ方を変えることで、速度を切り替えていた。

この切替時に流れる電流を制御するために抵抗器を使っていて、

抵抗器では電力損失が発生するものの、一応は過渡的に使用するものである。

で、1500Vと750Vは倍半分の関係なので、直列・並列の切替の仕方を変えれば同じように使える部分がある。

750Vと1500Vの路線が混在する時期には好都合だったわけである。


現在では何もかも違いますが。

現代的にはVVVFインバータで直流を交流電動機の駆動用の交流に変換する。

スイッチングの仕方を変えれば入力電圧が変わっても対応できるはず。

かといって750V・1500Vの両対応を行わなければならないニーズも減っている。

現在でも両対応が必要なのは 箱根登山電車の湯本~強羅間(750V電化) の車両のみである。

これは同路線の車庫が1500V電化された小田原~湯本間にあるため。

なんで湯本で変わるのかというと、小田原~湯本は小田急の車両が入る一方、

そこより先は昔からの750Vを変えずにやっているためらしい。


なんでこんな話を書いたのかというとデータセンター向けに800Vでの直流電力供給が導入されつつあるという話があったから。

ラックまで800Vで供給して、ラック内で実際にサーバーに供給する54V(48Vより少し高い電圧)に変換する。

従来は交流でラックに供給して降圧して直流電圧に変換していたが、

これを直流で供給することで、コンパクトで低損失にできると。

ただ、800Vってのは日本の法令では高圧になってしまう。

そうすると面倒なので、日本に適用するときには750Vにするのかもしれない。

800Vが750Vになっても得られる効果としてはあまり変わらないし、

そう大きな変更なく対応できそうな気はするんですけどね。

コネクタの挿し方が悪いのでは?

日本が3連休だって言ってもヨーロッパでは稼働している。

日本で木曜退勤する頃にヨーロッパは木曜始業、それと木曜で2日仕事が動いていると。

その間にヨーロッパ出張中にやり忘れたテスト項目をやってくれたようだ。

そしたら、思ったような動き方にならんのだがと言われて、週明け早々戸惑ってしまった。


そんなわけで手元で再現試験をしてみたのだが、再現できた。

その条件はコネクタを斜めから挿すというものである。

この機器、コネクタの結線でアドレスを認識する仕組みになっている。

よくある話だとは思うんですけどね。

その結線が一部だけつながって、アドレスが化けてしまったらしい。


ただ、いくらなんでもこの刺さり方はおかしいのでは?

と、ヨーロッパの月曜始業早々を捕まえて確認したところ、本来とは違う方法でやっていたようだ。

明確に言わなかった僕もよくなかったのだが、まさかその方法でやるとは……

というわけで追試して、同様の事象が起きないか見てもらうことに。


このコネクタの斜め挿しというのは、うちの職場ではしばしば問題となっている。

それでいろいろ対策があるんですよね。ここには書かないけど。

ただ、今回の製品には電気的には対策らしい対策がなかった。

斜め刺しにならないことは機械的な構造に全面的に依存しているということである。

それってどうなの? と思ったのだが、このシリーズでは昔からそうらしい。

コネクタ自体もそれなりに考えられたものではあるし……

正しく使えばここまでの斜め挿しにはならないだろうと思うのですが。


実際使って行くといろいろ起こるもんだなと思いましたが。

それはそうとして、出張の後処理のような仕事もある程度片付き、

やっとことさ本質的な作業が進められそうな気がしている。

仕事自体は着実に進んでるのですが。

オシロスコープのトリガのかけかた

明日は午後から休暇なので、今日中にいろいろやっとかないとな。

なんて考えながら、ふと気づいたことがあって、オシロスコープで測定しようとしたら、

そう単純にはいかなかったという話。


これはマイコンの外部にラッチICがあるのだが、

このラッチにストアするタイミングが外部から入力されるパルスの立ち上がりの少し前になるように設計している。

この少し前というのが想定の時間内に収まっているか見たかったのである。

で、外部から入力されるパルスの立ち上がりでトリガをかけて、

ストア信号の波形をずっと上書きさせたのだが、どうも想定の時間を超えるケースがあるようだ。

ほとんどは想定の時間内に入っているが、たまに超えると。


なので、このときの他信号の波形を取得したかったのだが、

外部からのパルス信号の立ち上がりが、ストア信号の立ち上がりの一定時間前にないケース、

これに着目してトリガをかけようとするとどうにもいかなかった。

複合条件でのトリガというのは可能なのだが、

トリガAが発生した後、指定時間経過後にトリガBが発生した場合に限られ、

これだとどうにも今回のケースを捕まえるのは難しいようだ。


というわけでオシロスコープの説明書を真面目に読んだのだが、

信号のパターンの継続時間によりトリガをかけることができることに気づいた。

さっきのストア信号と外部からのパルス信号はいずれも短時間Hiになる信号である。

もし想定通りに行っていれば、双方がLoになる時間というのは一定範囲内に収まる。

具体的には外部からのパルスの周期が1000us、Hi同士の間隔が50us以上となる想定ならば、

双方がLoになる時間は 50us~950us の範囲になるはずである。

この範囲外の場合はトリガをかけるという設定をすればよさそうだ。


で、当初の設計だと全然ダメだったので改めてタイミングを計算し直して、

それでやったのだが、想定外の形で範囲外に出ていた。

それはラッチ処理がまるごと1回飛んでいることがあったのである。

一体なにが起きているのか、デバッグ信号を追加して判明したのは、

想定外の形で多重割り込みが起きていたということである。


このパターンは多重割り込み起きないんじゃなかったっけ?

想定と異なるから想定外なんですけどね。というわけで明日の午前中に追跡する予定である。

この問題を回避するだけなら割り込みマスクを追加して多重割り込みが起こらないようにすればよく、

暫定的にそういう対策をしたら確かに起きなくなった。

トリガ条件を少しずつ動かしたのだが、新たな見積もりの範囲に入っているので、そこはよさそう。

やはり実測することは大切ですね。

巨視的なトンネル効果?

以前、新しいSIの定義の話を書いたときにこんな話を書いた。

ジョセフソン効果を決めるジョセフソン定数は 2e/hで、量子ホール効果を決めるフォン・クリッツィング定数は h/e2 とのこと。(e:電気素量. h:プランク定数)

ここで気づいたが、新しいSIの定義ではプランク定数と電気素量がそれぞれ定義値になる。

ということは、電気標準に使われる2つの重要な定数が定義値になるということである。

でも、実はすでにこの2つの定数は実務上は定義値らしい。

(電気エネルギーが先に決まるということ)

このジョセフソン効果を含む一連の研究にノーベル物理学賞が与えられることになったそう。

ノーベル物理学賞に米3氏 「トンネル効果」量子コンピューターに道 (日本経済新聞)


タイトルに「電気回路における巨視的な量子力学的トンネル効果とエネルギー量子化の発見」とあり、

「巨視的な」となっているところにポイントがあるらしい。


トンネル効果という、ポテンシャル障壁を粒子が通り抜ける現象がある。

フラッシュメモリでは、絶縁体を挟んだところにある浮遊ゲートに電子を蓄積して記録し、放出して消去する。

絶縁体を挟んだ先にある浮遊ゲートには古典的には電流は流れない。

しかし、電子には波動としての性質もあり、絶縁体を超えて電子が存在する確率が生じうる。

これを使って絶縁体に挟まれた浮遊ゲートと電子のやりとりができると。

この研究はトンネル現象に関する研究は1973年にノーベル物理学賞を受賞しており、

その受賞者の1人に江崎玲於奈氏がいるわけですね。


通常は電子も様々な量子状態があり、その中で絶縁体を越える状態も様々あり、

それで絶縁体を越える確率がこれだけあるという言い方になる。

でも、もしも電子の量子状態を1つだけにできれば?

絶対零度付近まで冷却していくと電子のとりうる状態が減っていき、

同じエネルギーを持つ電子ばかりになっていくのだそう。

絶対零度付近にある超伝導体と超伝導体の間に絶縁体を挟む。

そこで絶縁体を越えて流れる電流を測定する実験をしたそうである。


当然、普通には流れないのだが、トンネル効果により電子が通り抜けることが考えられる。

で、その流れる電流というのが波動の位相差で説明できるんですね。

通常はいろいろなエネルギーの電子が存在するところ、

絶対零度付近まで冷却しているのエネルギーが揃っているので、こういう説明ができるそう。

この位相差に相当する電流が流れるという特徴から、

もしも絶縁体を挟んで電位差がある場合は、交流電流が流れていて、

その周波数と電位差には関係があることが導かれ、これをジョセフソン効果という。

これを決めるジョセフソン定数は 2e/h という現在のSIの定義に出てくる数字で決まるというわけ。


外からマイクロ波を与えてやると、電圧特性がステップ状になり、

これを利用して正確な標準電圧を作っているということらしい。

正確な周波数、言い換えれば時間を測定できれば、そこから正確な電圧を出せるというわけで、

しかもその数字というのは計量単位令に書いてある数字を持ってくればいいと。

プランク定数はkgの定義、電気素量はAの定義に書かれている。


これらの研究によってもたらされたものは様々利用されているが、

期待されている用途の1つに量子コンピュータがあるそう。

量子コンピュータでは様々な量子状態を重ねて入れて、計算結果の量子状態を得るものだが、

この中でジョセフソン効果が使われているという。

最近ホットな話題が多く、これが受賞理由なんだろう。

でも、ジョセフソン効果で電気標準を作るのは1990年から始まってたので、

そういう意味では今さらの技術ではあるんですけどね。

20Vのロジック信号の作り方

以前、職場で治具を作ろうとしている話を書いたが、

その中でちょっとした難題があって、それが20Vのロジック信号である。

マイコンから直接操作できるわけはないし……


というわけでなんかいい方法ないですかねとアナログ回路の専門家に聞いたわけである。

そしたらオペアンプで増幅すればいいんじゃないという話だった。

それでその治具を作るに当たって回路図をくれというと、

そこにはなんてことはない非反転増幅回路が書いてあった。

言われてみればこれでいいのか。


ロジック信号なので0か1しかないので、FETなどでON/OFFすればよいだけとは言えるが、

それで十分なスピードが出るかというのはけっこう問題である。

スルーレートがある程度速いオペアンプを選べば容易に実現できると。

結局はそのために適したオペアンプを選んでもらったということで、

パッと見た感じでは古典的なオペアンプなんだろうなと。


というわけで個人的には目からうろこだったという話。

しかし、そもそも20Vのロジック信号ってなんだよという感じはありますが。

リレーロジックだと24Vのロジックってのはあるけどそういうのとは違うんだよな。

それこそリレーを駆動できるだけの電力が必要なので大変だが。


というわけでフタを開けてみれば大した話ではなかったという話。

それぐらい自分で書けるやろと言われればそうなんですけど、

オペアンプの選定とかいろいろ課題はあるじゃないですか。

マイナーアクチノイドを分ける

昨日、こんな話を書いた。

MOX燃料はいつか使用済燃料となり、当面は発電所内で保管される。

これも再処理を行うのだが、現在の再処理工場はMOX燃料の再処理を想定した計画ではないそう。(略)

ただし、原理的には可能なので、次に作る工場では対応予定と。

運べるようになるまで発電所で長期間保管している間に話は進むだろうということか。

(運び出す先が再処理工場)

ただ、そのさらに次となると考えないといけないことも増えてくる。


それがマイナーアクチノイドである。

そもそも現在、核燃料に使われているウランは地球上に天然である元素では最も重いとされている。

一時的にこれより重い元素が生じることはありうるが。

このウランのうち核分裂しやすいウラン235の割合を3~5%程度に高め、

残りはウランの大半を占めるウラン238で構成されるのが、現在一般的な核燃料である。

で、ウラン235に中性子を衝突させると、核分裂が生じるのだが、

核分裂により新たな中性子が生じて、それは他のウラン235の分裂にも寄与するが、

他の物質に捕獲されることもあり、ウラン238に捕獲されると、

ウラン239を経てプルトニウム239になることがある。

このように中性子を捕獲することで原子番号が増えることがある。

このウランより重くなった原子のうち、プルトニウム以外のもの、

具体的にはアメリシウム、キュリウム、ネプツニウムなどが該当する。


で、MOX燃料を軽水炉で使うと、マイナーアクチノイドが相当増加すると。

原因として大きいのがプルトニウムの同位体の1つ、プルトニウム241である。

これがβ崩壊するとアメリシウム241になるが、これが半減期432年とえらく長い。

プルトニウムを燃料にすることによりなおさら生じやすくなると。


ところで再処理というのは化学的な性質の差で物質を分離していくので、

得られるウランとかプルトニウムはいろいろな同位体が混ざっている。

燃料を使い終わって早く再処理に回すと、プルトニウムにはプルトニウム241が多く含まれる。

最初はプルトニウムを抽出したつもりが、だんだんアメリシウムの割合が増えていくと。

使い終わってから長期間放置して再処理に回すと、分離される高レベル放射性廃棄物にアメリシウム241が多く含まれる。

現状だとどっちの方がいいんでしょうね。といっても日本では現実的に後者にしかならんのだが。


マイナーアクチノイドをどうするかは様々検討されているが、

さらに中性子を衝突させると、だんだん核分裂していくわけですね。

現在の軽水炉ではこのような働きは期待しがたいが、

高速炉では中性下が大量に生じるので、マイナーアクチノイドも核分裂の対象になるわけである。

この特徴から高速炉の燃料には一定程度マイナーアクチノイドを混ぜることができる。

高速炉というと、ウラン238をプルトニウム239に変換する能力の高さでも知られているが、

それだけではない効能ってのがあったんですね。


もう1つは加速器で発生させた中性子で核分裂を起こす方法。

こちらは加速器駆動未臨界炉というもので、まだ研究段階ですかね。

加速器にエネルギーは消費するが、一応は核分裂により得られるエネルギーの方が大きいようである。


ただ、どちらにしてもマイナーアクチノイドの抽出をしないといけない。

これがけっこう大変なことらしくて、いろいろ研究されている。

ウラン・プルトニウムを分離した溶液から、さらに分離していくと。

長寿命放射性廃棄物の短寿命化技術の現状と展望 (pdf) (NINS)

分類のグループは大きく4つに分かれる。

1つ目はマイナーアクチノイド、これは高速炉の燃料の一部にするか、加速器駆動未臨界炉にぶち込む。

2つ目は白金族元素、ルテニウム・ロジウム・パラジウムなど。

これらは希少な金属なので資源として利用したいと。

放射性同位体もあるだろうと思うのだが、使い方次第では使えるということか。

3つ目はセシウムとストロンチウム、発熱性元素と書かれている。

4つ目がその他の核分裂生成物、これはガラス固化体にして埋める。


使用済燃料の発熱として大きいのがストロンチウム90とセシウム137による崩壊だが、

両元素の半減期はおよそ30年、300年経てばほぼ崩壊してしまう。

これだけ分けて冷やせば放射性廃棄物の処分がだいぶ容易になる。

再処理で生じる低レベル放射性廃棄物はTRU廃棄物に該当し、

高レベル放射性廃棄物同様に地層処分が必要だが、

発熱量が比較的少ないのでトンネル内に積み上げて処分できる。

ストロンチウムとセシウムを分離したガラス固化体も発熱量が低く、

こうなるとそれなりに集積して埋め立てられるわけである。

ストロンチウムとセシウムは崩壊が進んでから埋めれば効率的だが、

100年で1/10、200年で1/100と考えると長い話である。

とはいえ熱源として利用できるなら意味もあるかもしれない。


どこまでやるかという話はありますが……

マイナーアクチノイドは高速炉などで核分裂を起こすことはできるが、

当然これらの炉内では新たに生じるマイナーアクチノイドもある。

現在の核燃料サイクルはウラン・プルトニウムを発電所に戻す仕組みだが、

このスコープにマイナーアクチノイドも加わる方向であると。

結果としてはウランとそれより重い元素は発電所と往来し続けると。

それより軽い物質は基本的に埋立に向かう考えですね。

このあたりの当たりが付けば、マイナーアクチノイドの燃料化を想定した再処理方式に移行するということなのだろう。

二酸化炭素を膜分離したい理由

実験的な意味合いがかなり強いと思うのですが……

川崎市、ごみ焼却の排ガスから特殊な膜でCO2分離へ 国内初、26年から (カナロコ)

ゴミを焼却すれば二酸化炭素が発生する。これを回収してみようと。


二酸化炭素は放出すると温室効果ガスとして地球温暖化の原因となる。

これを地中に貯留すれば地球温暖化の原因にはならない。

この二酸化炭素を分離して貯留する技術を CCS と呼ぶ。

あるいは他の化学原料として使用するということも考えられる。


貯留も課題だが、二酸化炭素を集めるのも大変である。

現状先行しているのは、化学反応で吸収液に吸収させたり、物理的に吸着させる方法である。

二酸化炭素を吸収・吸着させること自体はそう問題ではないらしいが、

問題はそこから二酸化炭素を分離して、再度吸収・吸着できるようにすることで、

ここにかかるエネルギーが大きいことが大きな問題のようだ。

このエネルギーが大きいと、二酸化炭素排出量は削減できても、

エネルギーの消費が増大し、省資源という点で大きな課題がある。


ところでちょっと話は逸れるのだが、物理吸着を使った装置として酸素濃縮器がある。

これは窒素を吸着できるゼオライトを使用している。

空気を加圧して入れると、窒素が吸着されて、空気の他の成分が濃くなる。

空気中で窒素(78.1%)に次いで多いのが酸素(20.9%)である。

仮に窒素を全部吸着できれば95%が酸素の気体が得られる。

実際にはもう少し低いらしいが、上限は確かにこの程度のようだ。

その後、吸着された窒素を減圧して放出する。

この窒素を放出する部分に着目すれば、窒素ガス発生装置となる。

二酸化炭素の分離というのはこちらですね。


冒頭に出てきた膜分離方式というのはこれらとは異なり、

二酸化炭素を通しやすい膜を用意するんですね。

ただし、二酸化炭素ばかりを通すというのは難しいようで、

膜を1段通るだけでは二酸化炭素の濃度が少し上がるだけである。

そのため、これを再び加圧して膜を通す。するとさらに濃度が上がる。

これを繰り返すことで濃い二酸化炭素が得られるようになると。


この方式は圧力差を作るのにエネルギーは使うのだが、

吸収・吸着させたものを分離させるのとは違うエネルギーの使い方で、

比較的省エネということで期待されているようである。

低い濃度からの分離にも適しているということで、

これがゴミ焼却施設という二酸化炭素が生じるが、さほどでもない施設が選ばれた理由なのだろう。


他の方式に比べると装置がコンパクトなので、

化学原料として二酸化炭素が必要な場所の近くで集めることが1つ考えられている。

これはCCSで地中に貯留するというよりは、

二酸化炭素を作るためのエネルギー消費を避ける目的が大きいのかなと。

もちろん二酸化炭素をドライアイスなどの形で運んでくることは考えられるが。

この点ではゴミ焼却施設での二酸化炭素回収というのはあながちハズレでもないのかもしれないが、

今回実験を行う施設のある川崎区浮島は製油所など比較的高濃度の二酸化炭素が生じる施設があるわけで、

特にここでやるメリットはないようにも思う。まぁ実験ですからねと。

Europlugは妥協の産物らしい

ヨーロッパ某国に出張することになり、いろいろ準備をしている。

言うても出張先は社内なんですけどね。

で、準備しないとなぁというところで電源プラグのことを思い出した。


ヨーロッパ大陸といえば Cタイプと思ったが、

どうもCタイプだと緩いかもみたいな話が書かれていて、

SEタイプの方がしっかりはまるかもねとあった。

よくわからん話だが、ほとんどの場合は日本で言うSEタイプがより適しているという。


世界を見渡すと商用電源は100V付近・60Hzのアメリカ系と、200V付近・50Hzのヨーロッパ系に大別される。

日本の東日本は世界的には珍しい100V系の50Hzである。

(そもそも国内の同じ島で2つの商用周波数が混在しているのが珍しいが)

で、アメリカ系のコンセントはほぼ全て日本と同じタイプである。

もっとも日本は3極コンセントがほぼないのが世界的には特異だが。


一方の200V系のコンセントはいくつかのタイプがある。

大きく異なるのがイギリス式のBFタイプ(あるいは旧規格のBタイプ)と、オセアニア式のOタイプである。

一方で、ヨーロッパに限れば、島国のイギリス・アイルランド以外をカバーできるのがCタイプ、

これは当地ではEuroplugと呼ばれている形式らしい。

携帯用機器ではしばしば利用されているのだが、最大電流2.5Aという制限がある。

そう、電流制限付きなのである。


ヨーロッパ大陸のコンセントはドイツ式とフランス式が多くを占める。

Europe current mains electricity plug types (Wikimedia Commons)

青のドイツ式(CEE7/3: Schuko)が面積としては広くて、赤のフランス式(CEE7/5)もそこそこある。

ただ、この2つは接地極を別とすれば完全に共通と言ってよい。

具体的には直径4.8mmの棒が19mm間隔で2本突き出た形である。

コンセント部分は円形のくぼみがあり、そこにはまるプラグでなければ刺さらない。

さらに言えば接地極も両方に対応したプラグというのも存在する。

具体的にはCEE7/7がそうで、ヨーロッパ向け製品のプラグとしてはもっとも無難な形式である。

接地極が要らない場合はCEE7/17という形式もある。

日本の電気機器では3極コンセントはほぼないことを考えれば、

この形式に変換できれば十分であり、SEタイプはこれを意識している。

もっとも円形ではなく、薄い形状であることが多いが。


では、なぜEuroplugというものがあるのか。

それはドイツ式でもフランス式でもないのがわずかにあるからで、

具体的にはスイスとイタリアで問題となる。

デンマークも独自形式のコンセントが主流だが、接地極を除けばフランス式・ドイツ式と互換性があり、

なので当地でもCEE7/7形式などのプラグを接続しているらしい。

ところが接地極がつながらず、電気安全上の問題があるということで、

フランス式のコンセント設置が認められたが、まだ普及度は低いとか。


具体的にはスイス式(SN 441011)はピンの直径が4mmで間隔は19mmである。

この中間の下にオフセットされた位置に接地極がある。

あと、くぼみが丸ではなく、六角形になっておりコンパクト。

イタリア式(CEI 23-50)は10A仕様と16A仕様の2つが規定されており、

10A仕様は直径4mmのピンが19mm間隔、16A仕様は直径5mmのピンが26mm間隔であり、

この中央に接地極のピンが同様の太さであるという形である。

2つのプラグに互換性がないため”presa bipasso”という穴を2つ重ねて開けたものが一般的だという。


Europlugはスイス・イタリアに対応するように直径4mmのピンを並べていると。

少し内側に曲げてハの字にすることで直径4.8mmのピンのプラグを使う地域でも、

緩くならないように考えられているとはいうが、基本的には妥協の産物である。

このため、スイス・イタリア以外であれば日本で言うSEタイプが推奨で、

両国を含めて確実に対応したければCタイプの一考に値すると。

もっともイタリアについては、”presa bipasso”をドイツ式のSchukoの中に入れたコンセントも普及しており、

そうなると結局は日本で言うSEタイプでも問題ないということになる。

スイスこそ近隣諸国との往来が盛んなわけで困りそうなんだけど、

あくまでもこの独自形状らしいですね。


ちなみに日本の近国では韓国もドイツ式のコンセントである。

もっとも韓国は日本・台湾・アメリカとAタイプのコンセントを使う国との往来が多く、

ホテルでは110VにしたAタイプのコンセントがあることも多いという。

なので旅行先であまり気にしたことがない人もいるのかも。


というわけでEuroplugの趣旨からしてみればCタイプでよいが、

より適するのはそちらではないことも多いという話だった。

このあたり加味して出張の準備をしているところである。

MELF抵抗はなにものか

MELF抵抗というのがある。

メルフ抵抗器の理解:建設、アプリケーション、および利点 (ICコンポーネント)

見たことありますかね。あまりなじみはないかも。

中学校の授業でリード抵抗ははんだ付けしたことあるよという人は多いだろうし、

四角いチップ抵抗は一般的な電子機器のプリント板上に多く実装されている。

MELF抵抗はある種の製品では広く使われているそうだが、一般的かというとなんとも。


MELF抵抗はリード抵抗のリードを取って だるま のようにしたもので、

構造的にはリード抵抗同様でありながら面実装部品であるところに特色がある。

密度という面ではリード抵抗と大差なさそうではあるけど、

他の面実装部品と同様に実装できるという点でメリットがある。

両面に実装できるからこの点ではリード抵抗よりも高密度かもしれない。


リード抵抗あるいはMELF抵抗がチップ抵抗より優れている点は耐久性ということになる。

電力定格という点では大きなチップ抵抗と大差ないところはある。

3.5mm×1.4mmのMELF抵抗の代表的な定格は0.25W、

3.2mm×1.6mmのチップ抵抗の代表的な定格は0.25W、同じですね。

(ちなみに現代ではよく使われる1.0mm×0.5mmの抵抗の定格は0.1W)

ただ、円筒形で熱が逃がしやすいとか構造的な差もあり、

静電気などで短時間に過大な入力が入ったときに切れにくいことは事実である。

温度係数もMELF抵抗の方が小さい傾向にある。

チップ抵抗でも適切なものを選べば要件は満たせると思うのだけど、

MELF抵抗はそもそもの性能がいい傾向にあることは確かなようだ。


ただ、うちの職場ではMELF抵抗は使ってはいけないルールがある。

なぜかというと、MELF抵抗のはんだ付けはいろいろ問題があるからである。

円筒形の部品ということは転がりそうだなと思うし、

実際、手ではんだ付けするときのハードルとしてはそこが大きい。

部品が大きいので熱容量が大きく、暖まりにくいのも難しい点だという。

もちろん製造時には自動実装機で乗せて、加熱してはんだをリフローさせることで付けることになる。

転がらないように接着剤でつけてからリフローに流すのは当然である。

とはいえ、円筒形の部品はチップ部品より動きやすいのは確かで、

MELF抵抗は電極からズレたり立ったりする問題が多いようである。

このため原則使わないというルールになっているという。

チップ抵抗で条件を満たせない場合はリード抵抗で対応しているのではないか。


ところが今回、試作品にはMELF抵抗が大量に載っているのである。

変だなぁと思うかも知れないが、製造場所が違うので、その都合らしい。

その中で0Ω抵抗を実装するポイントがいくつもある。

どうも評価の内容に応じて付けたり外したりするらしい。

僕が使う用途ではほぼ全部ショートでいいんだけど。

そのための0Ω抵抗だが、結局はチップ抵抗を使っているのが実情である。

さっきも書いたようにMELF抵抗は転がったり、暖まりにくいなど手はんだには手間である。

0Ωってことは両端をショートできればなんでもいいわけで、

それならうちの職場に多数転がっているチップの0Ω抵抗でいいじゃないかと。

そう言われて0Ω抵抗を必要箇所に取り付けていた。


もっともうちの職場でのチップ抵抗の主流は1005サイズか1608サイズ、

これではMELF抵抗のパッドに届かないので、もう1つ大きな2012サイズ(2.0mm×1.2mm)のものが必要である。

そんなんあるんかいと思ったけど、それなりにバリエーションはあって、

もちろんその中には0Ωはありましたね。

最近は2012サイズの抵抗って使ってるのかね?

(チップ部品ではコンデンサは耐圧のこともあり、微細化が進む中でも岩みたいなサイズのものをよく見るが)

このぐらいのサイズだとはんだ付けしやすくていいですけどね。

といいつつ、MELF抵抗が立ち並ぶ中ではんだ付けするとはんだごての先を入れにくくて、

一応は付いているけど……みたいな微妙な付き方になってしまったのもある。


MELF抵抗が大量に並んでいる基板ってのは異様ですね。

リード部品がたくさん並んでいる基板ともまた違った感じですね。

ある種の製品の基板が社内では部品密度がやたらと高いということで「白っぽい」と言われたことはあるが。

(部品が載っているとプリント板のレジストの色が覆い隠されるので白っぽく見えるらしい)

まぁそれに類する話ですかね。