知ってる人は多いだろうけど、阪神梅田から山陽姫路まで、阪神・山陽が直通運転して直通特急を走らせている。
この直通特急は阪神・淡路大震災の後の1998年に運行を開始したものだが、
まぁこんな列車のアイデアは、戦後間もない1950年代に生まれたものとされている。
まぁなんのことかというと、神戸高速鉄道のことなんですけどね。
神戸高速は元町・阪急三宮~新開地~西代の東西線と湊川~新開地の南北線で構成されている。
新開地でT字に交わるようになっていてこれがポイントである。
いずれの端も別の路線とつながっていて、元町からは阪神、阪急三宮からは阪急、西代からは山陽、湊川からは神鉄につながっている。
そんなもんだから、神戸高速という名前は出てきても、特に東西線・南北線という名前は使われていない。
特に南北線なんて神鉄の延長路線なんだから、新開地駅でも神鉄のりばと書いてあったような気がする。
この路線がうまれた理由は3つある。
1つは私鉄4社のターミナルが分散していたからこれらを新開地でつなごうということ。
そして、これらのターミナルを結んでいた市電の代替としようとしたこと。
もう1つ、当時は山陽のターミナルは兵庫駅だったのだけど、西代~兵庫は路上走行区間があった。
なのでこの区間を地下化しようと。そういう意図もあった。
最初の理由はともかく、後に示した2つの理由はいずれも路面電車の地下化ということで、こういう理由で生まれた地下鉄は世の中たくさんある。
ただ、多くの地下鉄は公営地下鉄として建設され運営されているけど、
ここは私鉄同士をつなぐという理由があったので、神戸市が40%・私鉄4社が各10%出資して神戸高速鉄道という会社が作られて、
ここが建設・運営にあたった。というところが特徴的ではある。
あと、運行は接続する各私鉄が乗り入れるというスタイルで行われているから、車両も乗務員もない、これも特徴的ですね。
こうして1968年に開通して私鉄4社が新開地でつながった。
神鉄はそのまま新開地まで延長運転するだけだが、阪神・阪急・山陽は線路がつながったので神戸高速を越えて他社に入ることもできるようになった。
というわけで、阪神・阪急からは山陽の須磨浦公園へ、山陽からは阪神の三宮・大石へ、阪急の三宮・六甲へ運行されるようになった。
ただ、神戸市内を突き抜けて直通運転するようなことは1998年まで行われなかった。
車両の規格があわなかったのが理由だとされている。
こうして神戸高速を越えた直通運転というアイデアは実現されたけど限定的なものだった。
開通から30年たって、阪神梅田~山陽姫路の直通運転が1998年に実現された理由だが、JRへの対抗のためということになる。
1995年1月の地震の後、JRは4月1日に完全復旧した。一方で阪神・阪急・山陽・高速、すべて復旧したのは8月のこと。
とえらく遅かった。というかJRが早かった。早く復帰させないと貨物の全国ネットワークが途絶えるとか問題が多かったので特に急いだ。
ついでにその頃に新快速に新車が導入されて、快適だし速いしというわけでJRを利用する人が増えた。
そこで私鉄でなにができるって考えたら、せっかくつながってるんだし阪神特急と山陽特急をつなげて直通にして対抗してやろうと。
1998年にはもう阪神と山陽の車両規格はほとんど揃ってたので実現に至ったわけだが、
阪急神戸線は8両編成での運転を始めていたのだけど、新開地より西は6両までしか止まれない。
というわけで阪急から山陽への直通は取りやめにするという措置も同時に行われた。山陽から阪急も阪急三宮で必ず折り返すようになった。
こうして直通特急が運行されることになったのだけど、なんでわざわざ直通って付けてるんでしょうね。
実は、神戸高速のルールとしては、他社に入ったら特急だろうが各駅停車で走るというルールがあったようで。
今でもそのルールは残ってて、阪神特急が山陽の須磨浦公園まで走る時は三宮から延々と各停で走る。
それを破る特急だったからこんな名前になったんじゃないかなと。
こうして90分程度で阪神梅田~山陽姫路が結ばれた。
ただ、実は梅田~姫路について言えば、JRの新快速は1時間程度で結んでいるので、所要時間はかなり長い。
JRの快速と同じぐらいの所要時間がかかってしまう。なのでスピードという面ではあまりよくない。
まぁJRが速すぎなんですけどね。阪神・山陽も開き直って停車駅増やしてる面があるからあれだけど。
じゃあ運賃はどうなんだという話だが、JRは1450円の区間が阪神・高速・山陽だと1250円になる。
おっ、安い、と思ったかも知れないけど、三宮~姫路に注目するとJRは950円・高速・山陽は940円と大した差がない。
ようはこの金額差ってのは阪神が安いだけです。山陽は特に安くない。あと高速の運賃が別立てでかかるので少々割高感がある。
まだ同じぐらいで済んでるだけましで、明石~三宮だと山陽・高速が580円のところJRは380円と話にならない。
運賃という面では山陽はあまり強くない。しかもJRは速い。
だから、三宮まで安い阪神か阪急で、そこから速いJRという利用はよくあると思う。僕も土曜日の往路は使ったし。
じゃあこの列車の意味はなによ、といわれると山陽沿線から三宮より先、阪神沿線から須磨より先へ向かう人を拾うものなんじゃないかなと。
例えば、山陽の高砂駅から梅田にいくことを考える。
山陽沿線の明石より西の人は明石でJRに乗り換える人が多いらしい。なので直通特急と比較してみる。
高砂を12:15に出る直通特急を乗り通して阪神梅田に着くのは1時間18分後の13:33、運賃は1140円となる。
ここで明石で乗り換えるとさすがに新快速は速くて大阪駅に着くのは58分後の13:13、運賃は山陽550円・JRの890円の1440円となる。
ただ、JRは乗車券を分割すると劇的に安くなる。確か明石駅は金券屋が自販機を設置してたということでニュースになってたことがあった。
神戸駅で分割すると安くて、このセット回数券は640円ぐらいで買えそう。となると1190円ぐらいか。
まぁここでどちらを選ぶかはその人次第だが、乗り換えの手間がないことを考えれば直通特急もありかなと思う。
あと、山陽も速くないことを知ってるので割引きっぷの販売に力を入れている。
例えば、阪神梅田・難波~山陽姫路で1日乗り放題のシーサイド1dayチケットは2000円で買える。
なんでシーサイドなんだよと思った人があるか知らんけど、全体的に阪神・山陽はJRより海側を走るもので。多分それが理由だと。
JRで大阪駅~姫路はセット回数券を買うと1200円ぐらい、昼間・休日という条件をつけるともうちょっと安く買えたりするんだけどそれでも1000円は切れないだろう。
さらに阪神が難波にやってきたことで、往路は難波へ、復路は梅田からということもできる。
ついでに寄り道してもフリーきっぷだから大丈夫。と、JRより遅いということを除けばかなりよさそうである。
実は、日帰りで学会にいこうとかんがえていたときにはこれ使おうかなと思ってた。
この直通特急ってのはなんや言うけどやっぱり画期的だったんじゃないかなと。
きっとこんなフリーきっぷは直通特急なかったら生まれなかっただろうし。
こうして考えてみるとわかる話である。