昨日はサウジアラビアでサウジカップデーの競馬の国際競走が行われた。
メインレースのサウジカップが超高額賞金というのがとにかく話題になるが、
前座のレースも(世界的に高額賞金の日本競馬から見ても)高額賞金だし、
今年から国際的な格付けが付いたことで、日本国内でも外国の重賞と扱われることになった。
まぁサウジカップはG1だけど、他のサラブレッドのレースはG3なんですけどね。
でも去年まではリステッドですから。この違いは大きいですよ。
日本での馬券発売はなかったが、グリーンチャンネルでは中継が行われた。
21:30~23:00と25:00~28:00という2部構成だが、なぜこうなのかというと、
この間に行われる2レースはローカル重賞と純血アラブの重賞だから。
(だから「サラブレッド」と強調してたんですね)
第一部は芝の3レース、第二部はダートの3レースとなっている。
これが日本馬大活躍だったんですよ。
1R、ネオムターフカップ(芝2100m)は日本からは1頭、オーソリティが出走した。
長距離の印象のある彼が2100mを走るのは意外だったが、次にドバイシーマクラシック(芝2400m)を走るので、その途中でひとっ走りしていくかという。
ところがこんな馬が外国のブックメーカーでは1番人気となっていた。
なぜか調べたら、他にG1級のレースで実績を出しているのが1頭しかいなかったから。
オーソリティはまさかの逃げ切り勝ちだった。楽勝で90万USドル獲得である。
日本の馬は速いから先頭に立たざるを得なかったということだと思うが。
2R、1351ターフスプリント(芝1351m)、距離は怪しげだがG1でも実績のある馬が揃った。
ところで1351mって変な距離だけど、おそらく1400mだとカーブにかかるので、それより少し短くして向正面の直線をフルに使える距離にしたものだろう。
そこにヒジュラ暦のサウジアラビアの建国年、1351を当てはめたということ。
近似的に1400m戦ということで、1200mと1600mの中間の距離が魅力である。
日本からは3頭が向かったが、G2勝ちのあるラウダシオンとソングラインは日本でこの時期の1400m戦は負担重量が加算される。
この時期は1200mならば高松宮記念(GI)があるが、1400m・1600mだと実績馬にはよきレースがない。
(もっともダート1600mならばフェブラリーステークスがある)
結果はソングラインが優勝、ラウダシオンは4着だった。
わりとハイレベルなレースだったのでは? G3からの昇格の可能性もあるんじゃないか。
このレースからドバイワールドカップデーのアルクオーツスプリントへの転戦も可能で、ラウダシオンとエントシャイデンはそうだが、ソングラインは帰国予定。
ヴィクトリアマイルへの出走に万全を来すためではないか。
3R、レッドシーターフハンデキャップ(芝3000m)、名前の通りハンデ戦。
日本からはステイフーリッシュが出走したが、負担重量60kgである。
日本の感覚からすれば重いなぁと。ヨーロッパでは普通らしいが。
ヨーロッパから超長距離の実績馬が揃ったし、実績で劣る地元馬を除けば62~59kgとハンデ差は小さいし、順当にこの辺が上位なんじゃないか?
と思ったら、まさかのステイフーリッシュ逃げ切り勝ち、そんなことある?
この距離は日本の一流馬にとっては天皇賞(春)という大目標もあるし、ハンデ戦ということで躊躇もありそうだが、思ってる以上にチャンスはあるのかな。
ということで芝の3レースはスピード勝負の日本競馬が冴える結果に。
後半はウッドチップ入りの独特のダートに勝負の舞台は移る。
6R、サウジダービー(ダート1600m)、北半球産3歳・南半球産4歳(ウルグアイの馬が来てた)、
日本だとこの時期にダートで実績のある3歳馬が出るレースは少ないので、サウジダービーとUAEダービーは貴重なレースである。
勝ったのは唯一のアメリカ馬、Pinehurstだった。アメリカでG1勝ってるし順当だが。
しかしそれに続く2位がセキフウ、3位がコンシリエーレと日本馬2頭が続いた。
セキフウはUAEダービーに転戦予定、コンシリエーレは帰国らしい。
7R、リヤドダートスプリント(ダート1200m)、日本馬にとっては貴重なダートスプリント戦なので実績馬がこぞって遠征した。
が……まさかのアメリカ馬0頭。というわけで必然的に日本馬に注目が集まる。
勝ったのはカペラステークス優勝で参戦したダンシングプリンスだった。
この馬、中央未勝利から地方競馬に移籍して3連勝してJRAに出戻り、そこから重賞勝ちというだけでもすごかったが、外国重賞勝ちという実績も付いた。
これで1着賞金90万USドルですからね。
JBCスプリント(1着6000万円、今年から8000万円)より高い。
しかしこのレースは2着・3着がものすごい戦績の馬が入っている。
2着のGood Effortはイギリスの馬だが、イギリスのオールウェザーで実績を出している馬だという。
ヨーロッパ競馬のオールウェザーも日本競馬のダートと同じく芝の保護のために導入されたもの。
日本のダート競馬はなんやかんやG1を頂点としたレース体系は組まれている。
でも、ヨーロッパのオールウェザーは本当に芝の補完ですからねぇ。G3はあるらしいけど。
3着に日本のチェインオブラブ、日本での主な戦績は3勝クラス勝ち。
なんでそんな馬が選出されてるのかと思ったが、フェアリーステークス(GIII)2着があった。しかしこのレースは牝馬限定芝1600m戦である。
1着はともかく、2・3着がこれはちょっと……と思っちゃうよね。
なお、4着には昨年覇者のコパノキッキング、これはこれでようやってんのかな。
そしてメインレース、サウジカップ(ダート1800m)である。
これはさすがにアメリカの馬が多かった。超高額賞金だけに選定されることが大変。
日本からはチャンピオンズカップ優勝のテーオーケインズと、BCディスタフ優勝のマルシュロレーヌが走った。
マルシュロレーヌはこれが引退レースですね。国内によきレースがないですからね。
結果は……まさかの地元馬Emblem Roadが優勝、これには現地は大盛り上がり。
これ馬券売ってなくて助かったと思った日本のファンは多かったでしょう。
ケンタッキーダービー優勝のMandaloun、日本のテーオーケインズは8着、昨年覇者のイギリスのMishriffはしんがり負けと、有力馬は散々だった。
もう1頭の日本馬、マルシュロレーヌは6着、まぁこれはよくやった方か。
10着までは賞金が出るので、日本の2頭は超高額賞金のおこぼれで日本の重賞勝ちぐらいの賞金はもらえた。2頭とも転戦せず帰国ですね。
というわけで、全体的に日本馬の活躍が目立ったサウジカップデーですが、
芝のヨーロッパ勢はともかく、ダートのアメリカ勢はなんなんですかね。
さすがに超高額賞金のサウジカップはメンバーが揃ったけど、リヤドダートスプリントでアメリカ勢0頭とか唖然としたわ。
もしかすると第1回サウジカップの1着馬Maximum Securityが薬物検出で結果保留になっているのを引っ張っているのかもしれない。
1着90万USドル(どう考えても高額賞金だけど)のG3なんて危ない橋を渡って出るもんじゃないわよってことか?
そうかと思ったらサウジダービー優勝のPinehurstは、薬物で前科2犯のバファート厩舎の馬だったりするんですよね。(cf. アメリカ競馬も反ドーピングらしいが)
サウジカップ2着のCountry Grammerもバファート厩舎ですね。
やましいことはなにもないのか、「自信」があるだけなのかはわからんけど。
サウジカップについては世界の競馬関係者がどんな馬を送り込めばいいか手探りである。
そういう事情を考えれば日本からの2頭はよく役目を果たしたと言える。
昨年優勝馬が芝実績しかなかったMishriffというのも困惑させる要素だった。
でも今年は惨敗である。違いは天気か? (昨年は雨、今年は晴れ)
ダート1800mなのに1ターンというのも珍しいコースである。
今回、地元馬(といってもアメリカ生まれ)が優勝したことでさらに謎は深まった。
心配なのはアメリカの競馬関係者が拗ねてしまわないかということである。
アメリカの有力馬を招待するぞと高額賞金のレースを作ったが、結局来ないという事例を2つ知っている。
1つはジャパンカップダート、現在はチャンピオンズカップと名前を変え、日本ダート競馬のチャンピオン決定戦になったが、元は国際招待競走である。
ジャパンカップも外国馬が充実しないと嘆いているが、こっちは7回目にして外国馬0頭である。
日本のダートがアメリカで主流のダートとは違うので合わないとか、日本の馬が強いとか、そんな理由でそっぽを向いてしまったらしい。
現在のチャンピオンズカップは外国馬大歓迎だが、当然のように来ない。
もう1つがオールウェザー時代のドバイワールドカップである。
2010年、ドバイにメイダン競馬場ができたときに、当時アメリカ競馬でダートの代替として導入が進められていたオールウェザー馬場を導入した。
そしてドバイワールドカップデーのレースが新しいメイダン競馬場に移転され、
従来ダートのレースはオールウェザーで行われるようになったのだが……
オールウェザー4回目の2014年のドバイワールドカップにはアメリカ馬0頭になってしまった。
この期間に日本のヴィクトワールピサもドバイワールドカップを優勝している。
さすがにこれはマズイと、アメリカから輸入した土に入れ換えたという。
現在はアメリカの有力馬も戻ったが、よかれと思ってオールウェザーにした結果、レースの根幹を失いかねない大事件を起こしてしまったのだった。
サウジカップデーももしかしたらそんな扱いなのかもしれない。
さすがにサウジカップほど賞金が高ければなんとかやるけど……と。
でも、それも日本、ヨーロッパ、中東の馬にやられるようならやめちゃうかもね。
アメリカからの馬を呼ばずに高額賞金のダートG1なんて成り立たんでしょ。
果たしてどうなることやら、と長期的には心配になってしまうサウジカップデーだった。
ただ、日本の馬にとって選択肢が広がるのはよいことだと思いますね。
ダートの3レースはどれも貴重な機会である。
芝についても1351ターフスプリントは高松宮記念とのすみ分けはあるでしょう。
ネオムターフカップはオーソリティのようにドバイシーマクラシックもそうだが、
帰国してから大阪杯やクイーンエリザベス2世カップ(香港)への出走も可能なので、
確かにこの時期は国内でも2000m前後のG2は複数あるが、賞金を考えればネオムターフカップも魅力的ではないか。だからもっと来ると思ったんだけど。
格付けはG3ではあるけど、G3なら重賞ですから悪いことはない。