オリンピック前半戦を沸かせた柔道は今日の団体戦でおしまい。
決勝戦は日本 vs フランス といういかにもな組み合わせで、フランスの勝利で幕を閉じた。日本は銀メダルですね。
日本は個人戦で絶好調(男女14階級で金メダル9個、銀メダル1個、銅メダル1個)に対して、
フランスは金メダル1個、銀メダル1個、銅メダル2個と悔しい結果だっただけに、団体戦にも熱が入ったんじゃないかと。
団体戦で勝てば全員が金メダリストですからね。これにはかなわないね。
後半戦にさしかかり、国立競技場では陸上競技がスタートした。
最初はいろいろな種目の予選ですけど、3000m障害で日本の三浦選手が好タイムで決勝進出を決めた。
この競技で日本選手が決勝に出るのは49年ぶりということだそう。
タイムを競う種目でも決勝に出る人数を絞り込むために予選があると、まずここをくぐり抜けないといけない。
決勝でタイムを残せるということはたいへん名誉あることだと思いますよ。
オリンピックの陸上の走る競技で、飛びながら走るのは3000m障害と100mハードル(女子)、110mハードル(男子)、400mハードルがある。
ハードルは小中学校で経験があるだろうけど、倒しても走りきればOKというわけですね。
3000m障害は倒せないハードルと水濠が設置され、タイムロスにはなるがハードルの上に乗っかったり、水たまりを歩いてもOK。
陸上競技の中でも危険な種目だと言われている。飛び越えるのに失敗すると大きなケガにつながるからですね。
英語表記では 3000m steeplechase となる。略して3000mSCとのこと。
というところで思い出したのだが、競馬の障害レースについて、外国では steeplechase と hurdle という2種類のレースがあるらしい。
今日はオリンピックの裏では新潟競馬場で 新潟ジャンプステークス(J・GIII)が行われていた。
さて、このレースは steeplechase なのか hurdle なのか? 実は結構難題である。
JRAは障害レースは基本的には jump と記載している。
“Jump (Steeplechase)” という記載もあるから、どっちかというとsteeplechaseなのかな? とは思うがどうでしょう?
というところで、競馬の障害レースってどんな障害があるのかというと、競馬場やレースによってけっこう違う。
日本ではJRAの競馬場のうち、中山・東京・京都・阪神・中京・小倉・新潟・福島 で実施されている。
(地方競馬では現在は実施されていない。ばんえい競馬も坂を越えて走るという点では障害レースかもしれないが
基本的な障害物は生垣や竹柵だが、それ以外にも水濠、バンケット(飛び上がり飛び降り台)、坂路 なんてものも。
重賞レースでは難易度の高い障害物が用意されることがある。
ただ、さっき挙げた8つの競馬場のうち、中京競馬場・新潟競馬場は障害専用のコースがない。
この場合、置き障害と呼ばれているが、通常の芝コースに設置された可動式の障害物が全てなんですね。
(置き障害自体は他の競馬場でも固定式の障害と併用される)
置き障害は全て竹柵障害で比較的低く、実況では「ハードル」と言われることもある。
ってことは置き障害しかない、新潟ジャンプステークスって steeplechase というより hurdle なのか?
というわけで世界の障害レースを調べてみよう。
2021 International Cataloguing Standards Book
これは国際的なレースとその格付けをリストアップしたものですが、障害レースは国際的な格付け体系はない。
“Part IV (Jumps)” として11か国の主な障害レースが記載されている。平地に比べるとだいぶ限られますね。
レース名には Hurdle か Stp.(steeplechaseの略)のいずれかがついているのが大半ですね。
2020 Unibet Champion Hurdle Challenge Trophy – Racing TV (YouTube)
L’AUTONOMIE EN IMMENSE CHAMPIONNE ! | Grande Course de Haies d’Auteuil 2021 | Groupe 1 (YouTube)
イギリスとフランスの hurdle ですが、ハードルって言ってもだいぶ見た目が違うな。
あと、日本の障害レースを見慣れた人にとっては、スタートにゲートを使わないというのがまず驚きかも。
2020 Magners Cheltenham Gold Cup Chase – Racing TV (YouTube)
GRAND STEEPLE-CHASE DE PARIS 2020 | Docteur de Ballon | Auteuil | Groupe 1 (YouTube)
イギリスのチェルナトムゴールドカップ、フランスのパリ大障害という、有名な steeplechase のレースですね。
チェルナトムゴールドカップは単調に見えるけど、障害物がえらく高いな。
じゃあ、日本の障害レースってどんなもんだよって、YouTubeにはJ・GIしか上がってないな。
2021年 中山グランドジャンプ(J・GⅠ) | メイショウダッサイ | JRA公式 (YouTube)
これは間違えなくsteeplechaseであろうと思うんですが。
でも、それ以外でもJRAの全レースの映像がインターネットで見られますので。
今日の新潟ジャンプステークスとか、あと最近、中京開催の京都ハイジャンプ が置き障害だけのレースですね。
上で紹介したhurdle に似てるような気はするけど、若干高い気がする。
調べたところ、イギリスでは hurdleは1.07m以上、steeplechaseは1.37m以上の障害で構成されるとあり、
日本の置き障害は主に1.3m、一部1.2mの高さなので、hurdleの範疇だが、若干高いかもしれない。
それよりなにより日本の障害レースは速いらしい。
比較がなかなか難しいところがあるのだが……
Champion Hurdle Challenge Trophy(2mile87yard=3298m)の最近の優勝馬の走破タイムは 3分45秒~4分07秒程度、
典型的に3分50秒程度として、14.3m/s=51.6km/hということですね。
Ryanair Chase(2mile4furlong127yard=4139m)の最近の優勝馬の走破タイムは 5分05秒~23秒程度、
典型的に5分10秒程度として、13.4m/s=48.1km/hということで、steeplechaseは距離も難易度も高い分多少遅い。
それに対して、中山グランドジャンプ(4250m)の最近の優勝馬の走破タイムは4分43秒~5分02秒といったところ。
典型的に4分50秒程度として、14.6m/s=52.7km/hって、ハードル並みに速いんですよね。
置き障害だけで実施された、中京開催の京都ハイジャンプ(3900m)に至っては4分14秒8で優勝だから、15.3m/s=55.1km/hですからね。
なんで速いのかというと、負担重量がだいぶ違って、ヨーロッパだと70kg以上で騎乗するところ、
日本の障害レースは難易度が高いJ・GIで63kg、他の障害レースだと60kg程度なんですよね。
障害を速いスピードで飛び越えるほど難易度は上がり事故が起きやすくなるという話で、
安全に飛び越えるためにはよく練習して、時には競走中止という決断もしないとならないわけだよね。
日本の障害レースが目立って危ないという話は聞いたことはないけど、どうなんでしょうね?
いずれにせよ日本の障害レースは速くて、速さに着目すればhardleだが、障害の難易度はsteeplechaseに近いといったところか。
あと、日本の障害レースを走る馬は、平地でデビューして未勝利だったり、クラスで頭打ちになった馬が転向することが多いけど、
ヨーロッパの障害レースが盛んなところだと、最初から障害でデビューする馬がいて、そういう馬のための平地レースってのがある。
アイルランドのJump Raceの一覧に”Champion INH Flat Race”ってのがあるけど、そういうやつです。
ハードル0個というだけでルールは障害レースと同じで、距離は他の平地に比べて相当長い。
このあたりのキャリアパスの違いも、日本の障害レースが速い要因につながっているのかも知れない。
というわけで、日本競馬の障害レースはsteeplechaseなのかhurdleなのかというのはちょっと難しいのだが、
多分、新潟ジャンプステークスは置き障害だけのスピード勝負なのでhurdleに該当すると考える方が自然でしょう。
でも、日本競馬のレース体系ではこれを区別することはないわけですよね。
どっちかと聞かれれば、固定障害を備えた競馬場が多いので、steeplechase と回答するわけだが、
最高難易度の中山グランドジャンプ・中山大障害でさえ、そのスピードはヨーロッパのhurdle並みですからね。なかなかですね。