少し前に気づいたのだが、JR西日本は発足以来ずっと大阪の新線建設をしているのである。
なかなかそんな鉄道会社もないと思いますが。
JR西日本(西日本旅客鉄道)の発足は1987年、かつての国鉄の路線を引き継ぐ形で設立された。
設立時の本社は旧大阪鉄道管理局のものを使っており、これは現在のヨドバシ梅田の場所である。
設立後まもなく、現在の本社ビルの建設に着手して移転している。
同じく設立後まもなく着手したのが片福連絡線の建設である。
この路線は後にJR東西線と命名されることになる。
(正式路線名に「JR」と入るのはこれが初めてのことである)
当然、計画自体は国鉄時代から存在したわけですけどね。
具体的に着手したのは1988年に建設主体となる関西高速鉄道(株)が設立されてからである。
地下鉄の補助制度を使うためには地方公共団体か地方公共団体が出資する会社でなければならない。
このためにJR西日本と大阪市・大阪府・兵庫県などが出資する会社が作られたんですね。
完成後も所有者は関西高速鉄道で、線路使用料という形で借入金の返済を行うスキームである。
トラブルはあったが1997年にJR東西線として開通、JRの路線網に完全に取り込まれる形となっている。
次いで着手したのが大阪外環状鉄道、のちにおおさか東線と命名される路線である。
純然たる新線ではなく、もともと存在した城東貨物線の複線・旅客化事業である。
これも地方公共団体が出資する会社が主体となる必要があった。
最初は関西高速鉄道にそのままやらせようとしてたらしいが、
JR西日本・大阪府・大阪市が出資する大阪外環状鉄道(株)が別に設立、
これが1996年のことである。ちょうど東西線開通の頃なんですね。
既存路線の改修とは言え、けっこう大がかりな工事ではあって、
2008年に久宝寺~放出、2019年に放出~新大阪が開通している。
そして現在行われているのがなにわ筋線の建設である。
これも東西線同様のスキームが適用され、関西高速鉄道が主体となっている。
2019年になにわ筋線の事業許可を得ている。
2021年に中之島周辺から建設に着手、2031年開通予定となっている。
なお、なにわ筋線はJRだけの事業ではなく、南海も関わっている。
関西高速鉄道は両社に施設を貸付、西本町(仮称)~大阪(うめきた)の間では共同運行を予定している。
純然たる新線ではないが、梅田貨物線地下化も大事業だった。
これ自体は大阪市が主体となる連続立体交差事業なのだが、
あわせて うめきた新駅(結果的には大阪駅の一部となっている)を作るということで、
この部分はJR西日本が建設主体となっている。2021年に完成した。
この駅は従来から梅田貨物線を通過していた はるか・くろしお が停車するだけでなく、
おおさか東線の列車の延長運転が行われている。
さらに将来的には なにわ筋線の接続が予定されている。
なにわ筋線に続く新線事業もあるのではないかと見ていて、それが 桜島~夢洲 である。
万博期間中はバスが頻発したが、予約が取れずに使えない人も多くいた区間である。
もともと、コスモスクエア~新桜島(JR桜島駅とは別)の北港テクノポート線の構想があり、
このうちコスモスクエア~夢洲はすでに中央線の一部として開通しているが、
夢洲~新桜島は未成線という形で計画だけ残った状態になっている。
元々、新桜島は京阪中之島線の到達地点として考えられていたそう。
ところが改めて評価を行ったところ、従来計画の費用対効果(B/C)は1を下回る一方、
JR桜島~夢洲の新線建設はB/Cが1を上回り、40年以内の黒字化も見込めるとのことだった。
まだやるときまった路線ではないが、可能性はかなり高いと見ている。
なにわ筋線の開通後は 大阪(うめきた)~西九条の貨物線を走る特急はおそらくなくなる。
すると万博会期中に運行されたエキスポライナー(新大阪~桜島)のような列車を多く設定できるようになる。
新大阪~夢洲の直通列車は頻発するようになれば国際観光拠点としてはメリットが大きい。
地方公共団体が出資する会社が建設主体になると思われるが、
開通後の運行はJRの既存路線と密接に関係するのでJRの新線という扱いになるのではないか。
なにわ筋線が2031年開通予定で、この後に着手とすると2040年代の開通になると思われる。
ちんたらやってるなぁという意見もあるとは思うんですけどね。
どの計画も昔からあったものではあるので。
ただ、資金や採算性のなどの事情が揃うのに時間を要したわけですよね。
それはより公共事業の色が濃い整備新幹線では顕著ですが。
あと見ての通り、どれも地方公共団体が出資する会社が事業主体なんですよね。
JR他社でこの方式で新線建設が行われたのは他にないようである。
JR東日本の成田線(空港支線)のうち京成との並行区間については成田空港高速鉄道(株)が所有者だが、
これは複線分の用地を京成・JRの各単線(レール幅が違う)で分けるという都合によるものに思える。
JR東日本では羽田空港アクセス線の建設が行われているが、
空港敷地内は国が空港事業の一環で整備し、他は休止中の貨物線を流用する区間が多いからか、
全体的な事業主体としてはJR東日本自身となるようである。