京阪バスが今年4月から京都駅~交野~なんば の高速バスを走らせるらしい。
え? 京都と大阪をバスで? びっくり仰天のバスだが、最近、京阪バスは近距離高速バスを多数開設している。
使い勝手のよい高速道路を使って鉄道アクセスの悪いところにぶつければ需要は開けると考えたのだろう。
京阪バスが京都府・大阪府・滋賀県で運行する高速道路経由のバスには、
と5つある。多分これで全部。
直Q京都号は阪神高速京都線・第二京阪道路を利用したバスで、2009年に開設された。
このバスは京都駅と京阪の開発した京阪東ローズタウンを結ぶバスで、開設のきっかけはなんといっても第二京阪道路の開通だろう。
ところで京阪東ローズタウンってご存じですかね?
京田辺市・八幡市にまたがる地域につくられた住宅団地で、名前にもあるとおり京阪電気鉄道が施行者となって土地区画整理事業で開発された。
ところが、京阪が開発したくせに最寄り駅は団地内にあるJR学研都市線の松井山手駅というようわからんことになっている。
しかもこの松井山手駅は京阪がJRにお金を出して作ってもらった駅で、非常に不思議な住宅団地である。まぁ男山団地の延長線上なんだろうけど。
大阪へのアクセスは抜群で、学研都市線で京橋・北新地へ行ける。30分ぐらいなのでかなり便利ですね。
一応樟葉駅にもバスが通じていて、これを使えば京阪乗って京都市内に行けるけどどう考えてもめんどくさい。
まぁ普通は学研都市線で東に進んで京田辺駅で新田辺駅から近鉄でしょうね。どっちにしても京都府内なのに京都市へのアクセスはあまりよくない。
さて、ここで第二京阪道路・阪神高速京都線ができたわけだが、ちょうど第二京阪道路が団地の中を突き刺してて、阪神高速は京都駅のほん近くまで通じている。
これは使わない手はない、と思ったのだろう。それで開設されたのが直Q京都号、所要時間は京都駅~松井山手駅で35分ほど。田辺経由で45分ほどかかるのだから速い。
運賃は500円、高いんじゃないのとおもったかもしれないけど田辺経由で近鉄だと570円なのでこれでも安い。
定期券はないけどバスカードはある。1ヶ月20往復利用で18000円ほど。田辺経由の通勤1ヶ月定期が19720円だから高くない。
というわけで大変な人気となり、朝ラッシュ時中心に増発が行われた。高速道路経由だから定員乗車なので需要に応えるのは大変だが京阪バスはがんばっているよう。
山科急行線は阪神高速京都線の稲荷山トンネル区間を利用している。
ターゲットは山科区の南部、このへんから京都市内へは東西線が使えるが、京都駅へ行くには遠回りにならざる得ない。
ちょうど京都橘大学という大学もあることだし、ここへのアクセスも兼ねて走らせてみようということだろう。
余談だけど、京都橘大学はもとは女子大学でしてそのときは京都橘女子大学だったそう。(参考記事 : この大学には女子学生しかいないよ)
京都駅の他に十条相深町、鳥羽街道駅の近くにあってちょうど稲荷山トンネルの入口に当たるところ、から利用できる。
山科区内ではいくつか停留所に止まって沿線でこまめに客集めをするが、小野駅という地下鉄の駅にも停まるのでここで比較してみる。
山科急行線は300円均一で、京都駅~京都橘大学は24分(直行)・30分(各停)、京都駅~小野駅は22分となっている。
さて、京都駅~小野駅だと烏丸御池経由で310円、所要時間は27分、と地下鉄相手でもなかなか使えることが分かる。
実際には利用できる停留所はたくさんあるから、大学や家の近くから京都駅直通となれば便利だろうと思う。
定期券はないがバスカードは使える。さらにPiTaPaの登録制割引も対象で最高でも月10500円で済む。これなら地下鉄より安い。
立命館大学(BKC)線は、草津市にある立命館大学びわこ・くさつキャンパス(BKC)へのスクールバスですね。
このBKCは地図で見ると大学よりも高速道路が目立つ。ちょうど新名神と名神の接続路が通っていて、この途中に設けられた草津田上ICが最寄りのIC、非常に近い。
鉄道での最寄り駅は少し離れたところにある南草津駅で、近江鉄道バスで10分、運賃は220円となっている。
この南草津駅は1994年4月のBKC開設の6ヶ月後の9月に開業している。まさに大学のための駅だったんだな。
その後、駅周辺の開発が進み、駅開業から17年目の2011年、新快速の停車駅となった。そんな急速に発展を遂げた駅である。
南草津新快速停車は意外なことのようだが、実は滋賀県内で3番目に乗降客数が多いお化け駅だったので当然とも言える。(1位:草津駅、2位:石山駅)
そんなBKCだけど、高速道路が近いんだから高速バスがあってもいいよねって誰しも一度は思うことかも知れない。
そんな高速バスの1つが京阪バスの中書島~BKCのバスで、平日・土曜日に運行している。日曜日は基本的に運休。2008年に運行開始した。
ルートは京滋バイパスと名神高速道路が基本だが、需要が少ないと見込まれる昼間・土曜日は京滋バイパス石山ICからBKCまでは一般道走行でコスト削減を図ってる。
平日はけっこう頻発してて、所要時間は35分(全線高速道路経由)・42分(一部一般道経由)で、運賃は600円。
このバスのポイントはJRへのアクセスの悪い京阪をターゲットにしてることでしょう。
例えば枚方市~BKCを考えると、南草津へのルートはいくつか考えられるけど三条京阪~山科を東西線に乗るルートが普通だろう。
これで運賃は820円、所要時間は1時間ちょっと。BKCへのバスのことも考えると運賃1040円、所要時間は1時間半となる。
それがこのバスを使うと1時間でBKCまで行けて、運賃は京阪320円+バス600円で920円とまだましな金額である。
まぁこのバスは定期券ないんだけど、20枚10000円の回数券がある。月2万円ほどで使える。
通学定期が使える学生からすると高い気もするけど、JRを使ったり都合によりルートを選びやすいメリットもある。日曜運休だし土曜日本数少ないしね。
ちなみにもう1つBKCの高速バスはあって大津駅~BKC、近江鉄道バスが平日のみ運行していて320円、本数はそんなに多くない。
京都学園大学は亀岡市にある大学で、嵯峨野線の亀岡駅からバスで9分で結ばれている。
明治国際医療大学は南丹市にある大学で嵯峨野線の鍼灸大学前駅からすぐのところにある。駅名からもわかる通り鍼灸学部を持つのが特色。
この2つの大学はいずれも嵯峨野線沿線にあるが、これまたJRへのアクセスの悪い阪急沿線の人にとっては使いにくい。
まぁ、阪急大宮駅から二条駅は徒歩15分ぐらいだから歩けんことはないのだが、ろくでもない乗り換えには違いない。それなら最初からJR乗るわって。
そこで京阪バスが目を付けたのは京都縦貫自動車道、大山崎JCT~宮津を結ぶ計画となっていて、現在一部区間ができている。
ちょうど現在開業区間の南端の沓掛ICは阪急桂駅から近い。ここからのバスを走らせれば便利だと考えたのだろう。
ついでに近くにJR桂川駅もあって、嵯峨野線とどっちが便利かは疑問だがここを起点としてみる価値はある。
こうして、京都学園大学へのバスが2008年、明治国際医療大学へのバスが2010年に運行開始された。
両大学ともダンピング回数券を販売していて、桂川駅・桂駅~京都国際大学は所要時間30分・専用回数券は1枚あたり220円(現金乗車は810円)、
桂川駅・桂駅~明治国際医療大学は所要時間44分、専用回数券は1枚あたり300円(現金乗車は1000円)となっている。
いずれも京都駅から嵯峨野線を利用した場合と同じぐらいの時間で桂駅から行けてしまう。しかもダンピング回数券。こりゃ使うしかない。
学校とのタイアップの成果だろうと思う。これ通常運賃ではなかなか乗る気になれんわ。
さて、ここで最初の話に戻るわけだが、京阪バスが開設する京都駅~交野~なんばのバスも第二京阪道路・阪神高速を利用するものとなっている。
停車停留所は京都駅八条口・大石橋・十条駅・高速京田辺・河内磐船駅・京阪交野市駅・なんば(OCAT)となっている。
高速京田辺は松井山手駅に近い。京都市内の利用を除き各停留所相互で利用できる。
京都駅~OCATは80分程度で800円、京都駅~交野市駅は45分程度で600円、高速京田辺~OCATは55分程度で600円、交野市駅~OCATは35分程度で500円かな。
このバスのポイントとしては京都市内・北河内から直通では行けない難波に直通で行けることだろう。
第二京阪から大阪市内に行くとなると、そのメリットを生かせるのは南部だと言われている。北部は現状では遠回りになってしまう。
どうしても近畿自動車道・阪神高速東大阪線から環状線ルートをとらざる得ないから。梅田からだと今も新御堂筋から豊中ICが一般的。
そのため第二京阪は大阪市内から名神・京都市内へのアクセス改善につながると言われても、
使ってるのは南海バスのサザンクロス号(堺・なんば~東京)・近鉄バスの白浜ブルースカイ号(京都駅~田辺・白浜)ぐらい。
この路線はそのメリットを活用した路線といえる、ような気がするが、京都駅~難波だと新快速+御堂筋線でも770円で所要時間50分かからない。
端と端を使うもんじゃない。途中停留所から使ってなんぼである。
松井山手駅~難波を北新地から四つ橋線で行くと50分で800円かかる。乗り換え無しで運賃安いからいいですね。
意外に学研都市線から難波へのアクセスは悪いようで、直行バスができたならというわけで新しい需要までも生まれそうである。
河内磐船駅~難波でも同様のことが言える。所要時間40分・運賃610円。
交野市には京阪交野線が通じているが、枚方市駅から分岐する支線というわけでそんなに使いやすいもんではない。
なので対大阪では学研都市線に客が奪われている面もあるようだが、京都となるとやはり京阪となるのではないだろうか。
枚方市に特急が停まることもあって、交野市~四条は360円、所要時間は45分程度となっている。さすがにこれに対抗する意味は無い。
けど京都駅となると事情は別で、京阪から京都駅、学研都市線から京都駅、どっちも話にならん。まだ京阪で丹波橋乗り換えがましかな。
このルートで所要時間55分程度、運賃は540円、直行バスが圧倒的有利とも言えないけど、乗り換え無しはいいかもしれない。
あと高速京田辺~京都駅はすでに運行されている直Q京都号の補完も果たす。運賃はもちろん同じ500円。
こうして多くの近距離高速バスを走らせることになった背景には、
最近、道路状況の悪かった京都周辺で道路整備が大いに進められた結果だろうと思う。
京滋バイパス・阪神高速京都線・第二京阪道路、いずれも京都市内へのアクセス改善がなされたものと思う。
なんせ元々京都南ICか京都東ICから延々と一般道だからね。京都南ICから京都駅はそんなに遠くないけどそれでもね。
京都はターミナル間の結合が悪いので、京都市内に行ける路線はあるけど、京都駅へ向けて走らせると需要が沸いてくるというのはけっこうある話なのかなと。
山科急行線、そして新開設の京都駅~交野~なんば はそれを意図したものだろう。
逆に京都駅に行きにくいなら、というのを狙ったのがスクールバス3路線だろう。桂駅も中書島駅もそれぞれ特急停車駅ですからね。便利な駅だ。
こういう高速道路を利用した路線は神戸界隈でよく使われていて、三宮~(新神戸トンネル)~箕谷~神戸北町など多数ある。
いずれも鉄道では三宮へ行くのが不便というところに目を付けたものになっていて、団地直結で便利ということである。
大阪でも南海バスが堺東駅・堺駅~大阪南港のバスを走らせたけど、あれも直線距離では近いのに鉄道では不便というところを見いだしたものやわね。
今後も関西では、阪神高速大和川線・淀川左岸線・新名神高速道路(高槻~神戸)など新路線の開業が予定されている。
うまくやれば鉄道より有利に立てる、そんなことが先行事例からも見えてくる。まぁ失敗してもバスは転用できるんだしやってみる価値はある。