今日は土曜日の代休だから実質土曜日である。
というわけでいつもの土曜日のようなことをしていた。
そんな中で平日だからこそと献血に行った。
各地の血液センター・献血ルームでは、特に平日の成分献血への協力を呼びかけている。
平日の成分献血がなぜ重要か。それは血小板製剤の使用期限が4日しかないからである。
そもそも、献血は大きく分けて、全血献血(通常400mL)と成分献血に分けられる。
全血献血で得られた血液からは赤血球製剤と血漿製剤が作られる。
一般にイメージする輸血は赤血球製剤の輸血であり、この点で400mL献血はとても重要である。
一方の成分献血は回復の遅い赤血球は体に戻して、残りの成分を採取するということなのだが、
主に血小板製剤を作るための血小板成分献血と、血漿だけを採取する血漿成分献血の2つに分けられる。
血小板製剤を効率よく作れるのは血小板成分献血だけなので、これもすごく重要だ。
週の真ん中で供給される血小板製剤を確保する方法は、平日の成分献血しかないということで、重要視されているわけだ。
なお、血小板成分献血でも血漿は同時採取しており、血小板だけを採血することは基本的にないと考えてよいかと。
成分献血に協力するというと、血小板にするか血漿にするかは検査の時に指定されることになっている。
ここで血小板にするか血漿にするかのポイントはいくつかあるが、最も重要なのは需給状況である。
血小板製剤の使用期限は4日しかないので、作りすぎても仕方ない。なので、余裕がある状況では血漿献血が選ばれる。
他の観点もあって、まず午前と午後だと午後は血漿献血が選ばれる確率が高いという。
なぜならば午前採血だと翌日午前には供給できるが、午後採血では遅れるからだ。4日間という短い使用期限では半日でも大きい。
あと、検査のときの血小板の測定値を見て、血小板の測定値が高い人は効率よく血小板を採取できるので、血小板献血が選ばれることが多そう。
ただ、そうはいうものの、これまで大阪府とかで成分献血に協力するというと、ほとんど血小板で採血されていた。
過去の記録を調べたら大阪府で血漿で採血されたのは1回しかなかった。
ところが引っ越してきてからは成分献血8回中、血小板は2回だけ。ほとんど血漿が選ばれている。
休日ばかりでなく、平日でも血漿献血が選ばれているのだから驚く。
ただデータを見ると東京都と大阪府で成分献血全体に占める血小板献血の割合の差はさほど大きくない。
2014年実績で、東京都では62%、大阪府では64%、ほぼ一緒ですね。
理由は分からないものの、血漿成分献血が選ばれているということは、おそらく血小板製剤の需給の見込みは立っているのだろう。
血漿製剤は一旦冷凍保存して長期保存してから使う仕組みなので、需給のバッファはきわめて大きい。
血漿製剤は輸血に使われることもあるが、それ以上に重要なのが血漿分画製剤の材料としての用途である。
血漿分画製剤となるとなおさら使用期間が長いので、もっとバッファは大きいとも言える。
一見すると優先度は低そうだが、これはこれで重要なのだ。
と言うのも、血漿分画製剤は輸入に頼る部分が一定ある。
近年、国内自給率向上に努めてきたこともあって、自給率はかなり向上している。(cf. 血漿分画製剤の自給率の推移 (厚生労働省))
しかし、未だに完全自給にはなっていないとされており、血漿成分献血も重要なのだ。確かに優先度は低いかも知れないけど。
もっとも、献血でがんばっても血漿分画製剤の国内自給率100%はほぼ不可能なんだけどね。
なぜかというと、特殊な免疫グロブリン製剤は売血なしに安定供給が難しいからだ。
例えば抗D人免疫グロブリン製剤、Rh(-)の女性が、Rh(+)の子を出産する前後で標準的に投与される製剤で、
後にRh(+)の子を身ごもってしまったときに不都合が生じないように抗D抗体の生成を防ぐために使われる。
これは抗D抗体を持つ人から採血した血液から作る必要がある。
が、抗D抗体を持つ人ってどんな人かというと、典型的にはRh(+)の子を産んだRh(-)の女性なんだよね。
ただし、先ほど書いたように、日本では抗D抗体がそもそも作られないようにするのが標準なので、ほとんど発生しない。
そんなほとんどいない人の血を献血で集められるかと言えば、これはほとんど不可能だ。
数少ない抗D抗体を持つ人を囲い込んで、たくさん血漿をいただかないとなり立たない。
日本では売血が禁止されているのでお金は出せない。無償で協力してくれればよいのだが、実情として厳しい。
こういう特殊な免疫グロブリン製剤の自給率は低いのだが、それにはそれだけの理由があるのだ。
血液製剤には「献血」か「非献血」か書くことになっているが、どうしても「非献血」にならざるを得ないものはあると。
献血の推進と血漿分画製剤の国内自給、完全に矛盾した目標とは言えないものの、突き詰めるとこういう問題がある。
とりあえずはそんなことは気にせずとも、なんとなく献血に協力してれば、よい方に活用していただけると考えればよいだろう。
もちろん一般に需給が厳しいとされる、冬期であったり、成分献血ならば平日というのは、特に積極的にできればよいのだが、
それ以外でも、けっこうですと言われない限りは意味があるはずと考えよう。
献血に行ってけっこうですと言われることあるの? って話だけど、2011年3月にはあったらしいよ。