SBI証券のWebサイトを見てたら「EB債(デジタルクーポン/コロプラ)」とか書いた債券の売り出しが書かれていた。
なんだこれは、と思ったら、仕組債というやつだった。
このEB債というやつの内容を書き記してみる。
- 最初3ヶ月の利率は年利11.00%、以後、3ヶ月ごとに利率を見直す
コロプラの株価が当初価格の85%を切っている場合年利0.10%、超えている場合は年利11.00%とする
- 3ヶ月ごとにコロプラの株価が当初価格の105%を上回っているか判定し、上回っていた場合、
その時点で元本とその時点までの利息を払って、早期償還する
- コロプラの株価が当初価格の75%を一度でも割った場合(ノックイン事由)は、最終評価日に元本をコロプラの株式で払い戻す
ただし、コロプラの株価が当初価格より高い場合は元本を現金で100%払い戻す
ちなみに発行しているのはドイツ銀行ロンドン支店、コロプラとは無関係に発行している。
非常にうさんくさい債券だが、それが仕組債というやつである。
この債券の正体は何なのかという話だけど、コロプラの株式のプットオプションを含んだ債券ということになるそうだ。
プットオプションというのは特定の価格で売る権利のことだ。
例えばコロプラの株式を4200円で相手が売る権利を売ったとする。そしたらいくらかお金がもらえる。
その後、コロプラの株価が4200円以上ならば、市場で売った方がお得なので、プットオプションの買い手はあえて権利を行使しないだろう。
こうなれば、プットオプションの売り手はプットオプションを売った代金が儲かることになる。
一方で、コロプラの株価が4200円未満となれば、市場で売るよりプットオプションを行使して、4200円で売りつける方がお得だ。
こうなればプットオプションの売り手は損をかぶってでもコロプラの株式を4200円で買わないといけない。
実際にはもうちょっと複雑なのかも知れないけど、年利11.00%という高い金利はプットオプションを売った代金に相当し、
ノックイン事由が発生するとプットオプションを行使され、損をかぶるという理解でよろしいかと。
確かに判定時に当初価格の85%を切っていなければ高金利にありつけるが、
しかしながら、当初価格の105%を超えると早期償還されてしまうので、その時点で高い金利を受け取る権利はなくなってしまう。
あげくにノックイン事由が発生すれば元本割れの可能性が高いわけだから、
ろくでもない債券だなというのが正直な感想だ。
確かに株価が当初価格の85%~105%の間に収まっている限りはいいんですけど、ギャンブルだよなぁ。
仕組債と似たものに仕組預金というものがある。預金の形を取っているだけでやっていることは一緒だ。
やってる銀行はいろいろあるだろうけど、住信SBIネット銀行の「コイントス」と「プレーオフ」を取り上げる。
コイントスは1ヶ月の定期預金だ。通貨を決めて売られていて、1ヶ月後の通貨レートに応じて扱いがかわる。
まず利息はいずれも円で支払われる。
一方で、元本の払い戻しは1ヶ月後の通貨レートが特約レートより円安なら円で、円高なら特約レートで換算した所定の通貨で支払われる。
これは一体何なのか? 円安で得することはない代わり、通常の外貨預金よりも高金利の見込める預金ですね。
外貨預金は為替レートに応じて円で見ると元本割れになることはあるけど、
逆に円安になれば元本より増えることもあるので、そこに期待している人もいるかもしれない。
コイントスは円高時は円で見ると元本が目減りするが、逆に円安時は元本が増えることはない。
とはいえ金利は確かによい。わずか1ヶ月とはいえアメリカドルで年利1.5%、1年の定期預金でも0.210%なのだからかなりお得だ。
これも特定のレートで外貨を相手が買う権利、コールオプションを売った代金を含んでいるからこその金利だ。
コールオプションだと為替レートが特定のレートより円安になれば、コールオプションを行使され、現在のレートよりも安いレートで外貨を買われてしまう。
円安で得することがないというのは、円安になってもコールオプションを行使され、外貨ではなく円にされてしまうということなんだね。なるほど。
次に「プレーオフ」、これは金利に応じて早期償還されるかどうかが決まる定期預金だ。
年利0.50%、期間は最短1年、最長10年、1年ごとに早期償還を判定する。
この判定は銀行が任意に行うことになっているが、その基準は金利である。
0.50%という金利が割安ならば継続し、割高ならば早期償還してしまう。そういうことだ。
普通に最長の5年の定期預金で預けると0.22%だが、その倍以上の0.50%で最長10年預けられる期待はある。
とはいえ、最短1年で終わってしまう可能性はあるし、もしかすると金利が大きく上がれば、短期間の定期預金をつなぎあわせた方がお得かも知れない。
なお、ほとんどの募集では1年か2年で早期償還されてしまっている。
なので最長10年というものの、そんなに長期間高金利にあずかることはできない、というのがこの預金の実質的な問題かと思う。
元本は保証されるので、最長10年待てるし、早期償還されたらそれはそのとき、というのんきな人には悪くない商品ではないかと思う。
なお、これは金利スワップを売った代金を含んだ定期預金と言うことができる。
金利スワップというのは変動金利と固定金利を取り替えるもので、買い手は代金を払う代わり、変動する金利支払いを所定の金利に固定化できる。
とはいえ、市場金利が所定の金利より安ければスワップを捨てた方がお得だ。スワップを捨てるとスワップの期間が終わる、これこそが早期償還である。
仕組債とか仕組預金というものは、オプションとかスワップとか、金融派生商品(デリバティブ)を含んでいる商品なのだ。
デリバティブも使い道はいろいろあるけど、一番の使い道はリスクに備えることだ。
例えば、先物取引、将来の売り買いを今の先物価格で決めてしまう取引だ。
今の先物価格で売れ買いできれば利益が確保できる、そういうときに先物市場で売ったり買ったりして、リスクヘッジをするわけだ。
まぁ先物取引は売り手も買い手もリスクに備えるために使えるね、ということで納得するわけだけど、
オプションの買い手はリスクヘッジに使えるわけだけど、売り手は一方的に損をかぶるリスクを負うわけで、なんとも後味が悪い。
読みが当たってオプションを行使されなければ、元手なしに利益を手にできる可能性があるのはオプションの売り手になるメリットだけど。
まぁ行使されるとオプション代金をはるかに超える損失が生じうるわけで、とんでもないギャンブルなんだよね。
こんな後味の悪いデリバティブを債券や定期預金に組み込んだのが仕組債や仕組預金ということなのではないだろうか。
確かに読みが当たれば、高い金利が得られる。けど外れると容易に元本割れしてしまうものが多い。
ちゃんと理解して買う分にはいいんだけど、リスクの評価がなかなか難しいし、期待値がマイナスになる商品も多いよう。
高金利につられて買ったら痛い目に合うかもしれない。実際、それで元本割れに苦しんでるところも多いそうで。
詳しくリスクを評価して買うのならいいんだけど、容易に元本割れしてしまう商品だとどうやってもギャンブル的だよねぇ。
金融機関にとって儲かる代物なのか、よく宣伝が届くけど、よう考えんといかんよなと思った。