自転車なら万博に直行できる?

来年の大阪・夢洲での国際博覧会、

一般客で夢洲に直接乗り入れられるのは自転車と電動キックボードだけだそう。

自転車でご来場の方へ (EXPO 2025 交通インフォメーション)

「夢洲自転車駐車場 600台 利用料金 500円」ってやつがそう。

500円もかかるのかと思うけど、唯一会場まで乗り入れるというのは特徴的である。


このページには特に電動キックボードと書かれていないが、

この先にある駐車場予約ページに詳しいことが書かれている。

四輪は夢洲・尼崎(尼崎東海岸出入口近く)・堺(三宝出入口近く)の3箇所、

自動二輪・原付は夢洲に駐車して、そこからバスとなっている。

四輪の駐車料金は5000~5500円、二輪の駐車料金は2000円が基本で、

これに対して日・時間帯・阪神高速の利用状況により加減がある。

バスは駐車料金に含まれているが、会場に直接乗り付けられない割には高いなと思う。


これに対して「自転車・電動キックボード」は夢洲に直接乗り入れられて、料金500円である。

「夢洲自転車駐車場を利用できる電動キックボードは、特例特定小型原動機付自転車に限ります。」とあり、

一般原付・原付二種に該当する電動キックボードは利用できないことはわかる。

キックボード形でない特定原付が利用可能なのかはよくわからない。

あと「特例特定小型原動機付自転車」って書いてあるけど、これって歩道モードって意味だよね。

なんでわざわざこんな書き方をしているのかはさっぱりわからない。


とはいえ、自転車・特定原付での来場は大変である。

夢洲は夢舞大橋で舞洲と、夢咲トンネルで咲洲と結ばれているが、

夢咲トンネルは自動車専用道路だから、夢舞大橋も現状は自転車・歩行者での通行は想定していない。

ただ、夢舞大橋には歩道があり、開会までには開放されるとみられる。

本線は軽車両通行止めの規制がかけられ、自転車・特定原付は歩道の押し歩きになる。

これは想定の範囲ではあるのだけど、さらに問題なのは舞洲への渡り方で、

普通に考えれば桜島方面につながる此花大橋を使うのだが、拡幅工事のため歩道がつぶされている。

このため自転車が利用できるのは常吉大橋に限られる。こちらも車道は軽車両通行止めだが。

こちらは歩道部は自転車通行可のようで「歩道斜路部押し歩き」となっている。

此花大橋を使えれば天保山渡しで港区方面に渡れたり、選択肢も増えるのだが、

常吉大橋を使うとなれば、伝法あたりまで此花通をひた走るしかない。


他の交通手段に対して優位性があることは確かだが、そうはいってもねという感じはある。

万博へのアクセス手段として自転車という話が言われているのは、

主要なアクセス手段である地下鉄中央線と桜島駅からのバス、

どちらも輸送力的に苦しいという事情がある。

中央線は会場まで直接鉄道で乗り付けられるので最も輸送力が多いが、

こればかりに集中するとひどい混雑になるのは目に見えている。

このため、桜島駅ルートへの分散も必要で、新大阪~桜島の直通列車の設定で、

新幹線での来場者を中心に利用してもらう想定はあると思う。

ただ、こちらはバス乗務員の確保に苦心しており、想定ほどの本数は出せないようである。

他のバスに比べると距離が短いので、増発するならここなのだが、それすら厳しいと。


少しでも鉄道・バスの輸送力を補えるなら、自転車・電動キックボードでの来場も……

ということらしいのだが、果たしてどれぐらいの効果があるのか。

かなりタフではあるのだが、上記のような交通機関の混乱も予想されるところである。

来場日時・時間帯を決めて事前予約することで、ある程度分散できることは期待しているが、

そうはいってもルートによって偏りはあるでしょうからね。

そういうところであまり考えなくてもよい自転車というのも一考に値するのかもしれない。

もちろん駐車場の予約は必要なので、自転車もそれはそれで考えることはあるが。

R-18タブの臨時メンテナンスの先

少し前にBOOK☆WALKERで「R-18タブ内の臨時メンテナンス」というので、

R-18区分の電子書籍が買えない期間が1週間ほどあった。

詳細な説明がないまま1週間も買えない本があるというのは異常事態だが……

メンテナンス明け後は「カートに入れる」ボタンが消え、「コインで購入」ボタンだけになっていた。なんだこれ?


この時点で詳細な説明はなかったのだが、意図としてはクレジットカード決済を封じたかったらしい。

【2024年11月15日に実施した変更内容】
■対象作品
R18作品
■購入方法について
カート、および予約のご利用がいただけません。
コインでの単品ごとの購入となっております。(略)

【2024年12月中旬以降(「14周年コイン大還元祭」終了後)の変更予定】
■対象作品
R18作品および、アダルト表現等の要素を含む一部作品
■購入方法について
以前のようにカートがご利用いただけます。ただし上記の対象作品がカートに含まれる場合、クレジットカードでのお支払いは出来ません。他のお支払方法をご利用ください。
また、以前のように予約も可能となります。ただし上記の対象作品につきましてはコイン決済モードのみでの予約となります。

突貫工事でクレジットカード決済を封じるためにコイン購入専用にしたが、

それに伴ってカートに入れてから決済する方法が使えなくなり、

クレジットカード以外の決済手段まで封じられてしまったが、それは意図と違うということらしい。


ただ、BOOK☆WALKERのコインというのはクレジットカードでの購入が可能である。

というかメインの購入方法はクレジットカードでは?

ということはコインでの購入のみに制限しても、実態としてはクレジットカードでの購入が可能である。

購入時の明細にR-18区分の商品が載らなければよいという理屈か。

あと、BOOK☆WALKERの決済手段としてはPayPal, Amazon Pay, d払いなど間接的にクレジットカードが利用できるものも多い。

そう考えると果たして実質的な意味は? となるけどどうなんでしょう。


BOOK☆WALKERにとってR-18商品というのはさほど重要ではないとみられる。

KADOKAWA自身はそういう本はほとんど出していないわけだし。

ただ、取引先の出版社にはそういう本を出しているところはある。

そういう取引先のことを思えば安易にR-18商品を撤去するわけにもいかず、

なんとか上記のような段階的な対応で乗りきろうとしているということか。


よりR-18商品の割合の多いストアはそうもいかないわけで、

FANZAではクレジットカードはJCBとDinersのみの取扱になっている。

FANZAブックス・同人以外ではVISAも利用できるらしい。

(このためVISAでDMMポイントの購入をしてFANZAブックスの購入は可能)

一方でMastercardはFANZAのみならずDMM.comも取扱停止になっている。

DLsiteもクレジットカードはJCBのみの取扱となっている。

こうなるとポイント購入のような迂回手段もとりにくい。


正直なところよくわからないところはある。

てっきり実写もののほうが厳しいかと思ったのだが、FANZAを見る限りそうじゃないんだよな。

確かにBOOK☆WALKERでR-18と言えば多くは漫画だろう。

一部グラビアもあるかもしれないが、割合として多いものではないだろう。

一体どういうポリシーなのかよくわかりませんが。


日本の法令ということで言えば「性行為映像制作物」いわゆるアダルトビデオについての規制である。

これ自体は違法でもないが、制作にあたり様々な制約が付くことになった。

また、「性的影像記録」の提供についても罰則規定が出来た。

主に盗撮を想定したものだが、「特定の者以外の者が閲覧しないとの誤信させ」撮影したものも含まれる。

あと、これは今さらではあるが「児童ポルノ」は提供行為などが禁止されている。

それぞれ法律を見てみると定義としては似ている面もけっこうある。

これらの規定が設けられたのは、これらのコンテンツが流通することが性被害の温床となっていたということだろう。

性行為映像制作物は全面禁止ではないが、状況の改善がみられないと全面禁止もあり得る話なのだろう。

いずれにせよ実写もののアダルトコンテンツの取扱は注意が必要である。


日本の法令のことを言えば「わいせつ物」という提供が一切禁止されるものもあるんですけどね。

これの解釈によっては上のような問題も吹き飛ぶぐらい範囲が広い。

漫画や小説すら対象になりうるが、実際には慣例上わいせつ物とみなさないラインがある。

このためそんなに問題になっていないということらしい。


BOOK☆WALKERにとってみれば重要度が低いところではあるが、

それだけに一般的な漫画や小説への影響はなんとても避けなければならないのはある。

コインを介して実質クレジットカード決済できるじゃないかなんて言われてはいけないと。

総合電子書籍ストアとしての意義はなんとか保てたかなという感じかね。

講師って聞かなくなったな

大学の教員の区分として「講師」というのがある。

これの英語表記として”Junior Associate Professor”を使っている大学があるが、

あまり一般的な表記ではないのでは? という疑問を言っている人がいた。


そもそも、講師ってのが最近はあまり聞かないような……

常勤教員の階級としては 教授・准教授・助教で収まっているケースも多いようである。

このようなことになった背景としては2007年に助教という区分ができたことがある。


学校教育法の定義を見てみると、

  • 教授は、専攻分野について、教育上、研究上又は実務上の特に優れた知識、能力及び実績を有する者であつて、学生を教授し、その研究を指導し、又は研究に従事する。
  • 准教授は、専攻分野について、教育上、研究上又は実務上の優れた知識、能力及び実績を有する者であつて、学生を教授し、その研究を指導し、又は研究に従事する。
  • 助教は、専攻分野について、教育上、研究上又は実務上の知識及び能力を有する者であつて、学生を教授し、その研究を指導し、又は研究に従事する。
  • 助手は、その所属する組織における教育研究の円滑な実施に必要な業務に従事する。
  • 講師は、教授又は准教授に準ずる職務に従事する。

2007年以前は、教授・助教授・助手・講師の4つが定義されていた。

助教授の定義は「助教授は、教授の職務を助ける」だった。

これを上記の定義に改めたわけだが、見てわかる通り 教授・准教授・助教 の定義はほぼ同じである。(下線部分が共通の文言)

さらに言えば、講師は「教授又は准教授に準ずる」なのでこれも同じ。

明確に違うのは「学生を教授し、その研究を指導し」という文言のない助手のみである。

2007年以前は実態としてこのような役割を持つ助手もいたのだが、

助教という役職が定義され、そちらに移行したという経緯がある。


すなわち、2007年以前は助手という階級があんまりだったので、

助教授に準じて教育・研究に従事する人に講師という階級を与える必要があったが、

2007年以降は准教授に準じて教育・研究に従事する人は助教でよいとなったと。

教授・准教授・助教という区分はアメリカの大学を参考にしたようで、英語表記もそれにならって、

教授はProfessor、准教授はAssociate Professor、助教はAssistant Professorとなる。


学校教育法の文言としては教授・准教授・助教・講師の定義はあまり差がないが、

大学設置基準ではそれぞれの職位に求められる資格があり、ここには差がある。

多くの場合は学位が重要だが、それぞれこのように定義されている。

  • 教授: 博士の学位をを有し、研究上の業績を有する者
  • 准教授: 修士の学位または専門職学位を有するもの
  • 助教: 修士の学位、6年制の学士の学位、専門職学位を有するもの
  • 講師: 教授または准教授になることができる者

教授は博士の学位が基本的に必須だが、それ以外は修士でもよいと。

なお、教授の条件を満たしていれば准教授以下の条件も満たす。

今どきは助教で採用される人もほぼ博士の学位持ってますけどね。


准教授と助教はあまり差はないが、助教は医学・歯学・獣医学・臨床薬学の6年制の学士でも許容という点では異なる。

これらの専攻分野では修士というのが存在せず、大学院は博士のみである。

ゆえにこれらの専攻分野にとっては准教授・講師も基本的に博士の学位が必要となる。

もっとも助教としての経歴があれば、准教授・講師への任用は可能である。


高専については講師の資格として「教授または准教授になることができる者」の他に、

高等学校(中等教育学校の後期課程を含む。)において教諭の経歴のある者で、かつ、高等専門学校における教育を担当するにふさわしい教育上の能力を有すると認められる者

というのが書かれている。高校の教諭の経歴があれば講師に任用できると。

これは高校年代の学生が在籍する高専に特有の規定かもしれない。

高校の教諭には専修免許状か一種免許状が必要で、それぞれ修士・学士の学位が必要である。

ということは修士の学位を持たない高校教諭は高専では教授・准教授・助教のいずれも満たさない可能性がある。

しかし、この規定があることで講師にはなることができる。

一般教科ではこれで講師に任用されている人がいるかもしれない。


冒頭の話に戻ると、講師というのは常勤教員としてはもはや一般的ではないが、

准教授に準ずる階級として存在することは問題ない。

教授・准教授・助教はアメリカの大学を参考に決めたので英語表記は堅いのだが、

講師の英語表記ってどうするのよ? という問題はけっこうあったらしい。

従来はLecturerという表記をする大学も多かったようである。

ただ、これでは准教授に準じて教育・研究に従事する意義が伝わりにくい。

それなら准教授と同じ Associate Professor でいいじゃないかと。

これが一番シンプルな解決策である。

でも、英語表記では准教授と区別が付かなくなるのは気になるなと、

その結果として ”Junior Associate Professor” という表記を使っている大学もあるという話のようだ。


気になって出身の高専の教員紹介を調べてみた。

パラパラめくっていると、博士と修士ばかりのようである。

一般教科だと学士もいるんじゃないかと思ったけど、なかなかないようだな。

高校教諭としての実績で講師になることはできるものの、

本来、助教や准教授の資格のある修士を優先したいのはそうだろう。

教授なのに学位が修士という人もいて、これは准教授としての実績で任用されているのではないかと。

専門学科の教員とかほとんど博士だと思っていたが、修士もちらほらいるんだな。

とはいえ修士も准教授レベルなら問題ないわけである。

講師という階級自体は存在するようだが、早々に准教授に昇格するようで、

講師として在籍している人の数はごく少ない。確かにそんな記憶があるな。

児童相談所を設置する

東京都多摩地域で児童相談所の新設を含む再配置が行われるらしい。

多摩地域児童相談所配置計画 (東京都福祉局)

児童相談所は概ね50万人ごとに設置することになっている。

地域によりある程度幅があることは考えられるが20~100万人ぐらいだろうと。

ところが東京都では100万人以上の地域を管轄する児童相談所もあり、

概ね50万人程度という意義に合うように3つ新設し、計7つにするという計画である。


ところで児童相談所というのは基本的に都道府県が設置するが、市が設置する場合もある。

児童福祉法 第五十九条の四 この法律中都道府県が処理することとされている事務で政令で定めるものは、指定都市及び中核市並びに児童相談所を設置する市(特別区を含む。以下この項において同じ。)として政令で定める市(以下「児童相談所設置市」という。)においては、政令で定めるところにより、指定都市若しくは中核市又は児童相談所設置市(以下「指定都市等」という。)が処理するものとする。(略)

この条文では指定都市、中核市、児童相談所設置市が処理する事務は政令で定めると書き、

指定都市は児童福祉法の都道府県が行う事務のほとんどを行うと政令にある。

すなわち指定都市は都道府県同様に児童相談所を設置する義務があると。

一方の中核市だが児童福祉法のうち一部の事務を都道府県に代わって行うが、

中核市が行わない事務の中には児童相談所の設置も入っている。

なので中核市は基本的には児童相談所を設置しないという結論になる。

ただし、政令で定められた児童相談所設置市は、一部の事務を都道府県に代わって行うこととなる。

当たり前だが、その中には児童相談所の設置も含まれている。


その児童相談所設置市は「東京都港区、世田谷区、中野区、豊島区、荒川区、板橋区、葛飾区及び江戸川区、横須賀市、金沢市、明石市並びに奈良市」となっている。

児童相談所設置市とは言うのだが、法律に特別区も含むとなっているので、東京都の特別区が多く列挙されている。

なお、横須賀市・金沢市・明石市・奈良市はいずれも中核市である。

ということは上の条文で中核市と児童相談所設置市の両方に該当するわけだ。

というわけで児童相談所は都道府県・指定都市・児童相談所設置市が設置するというのが答え。


冒頭の話に戻るのだが、元々東京都では児童相談所の体制が十分とは言えないところもあり、

特別区の規模の大きいところは1区で50万人前後の人口があるので、

それなら区で児童相談所を設置するよという話が出てきたわけである。

練馬区以外の22区が設置済みあるいは設置の意向があるとのことである。

(ちなみに練馬区は今年、区の施設内に東京都の練馬児童相談所が開設されている)

ただ、人材確保の面では課題が多いようである。

児童福祉司ら「人材の奪い合い」が激化 新宿、品川…東京23区内の児童相談所、人手足りず開設延期が相次ぐ (東京新聞)

ともかく、これにより東京都自身が児童相談所を設置するのは多摩地域が主となる可能性がある。

離島(児童相談センター(新宿区)が管轄)もあるし、特別区も全部設置できるとは思わないけど。

そんな中で多摩地域での児童相談所再配置に動いたということである。

なお、多摩地域では八王子市が中核市だが、特に市で児童相談所を設置する意向はなさそう。


児童相談所の業務が市・区の業務と統合されることの意義は大きいと思われるが、

児童福祉司の確保、一時保護施設の設置など、かなり難しい事情もある。

多摩地域の児童相談所再配置の計画を見てもわかるのだけど、

「多摩中部児童相談所(仮称)については、今後、一時保護所付設の児童相談所を設置可能な用地確保に努める 」

とあり、一時保護施設は他の児童相談所と共用になることが書かれている。

東京都の施設の中での分担であって、特に問題があるとは思わないが、

児童相談所設置市となるには、これらの体制がすべて揃っているのが原則である。

(一時保護施設は都道府県と共用というのも可能とは書かれているが)

中核市レベルでもそうそうできることではないという実情である。


このような都道府県が設置することになっている役所を市町村が設置するというのは福祉事務所と保健所が知られている。

福祉事務所は生活保護などの業務を行う役所で、市・特別区は必ず設置、

町村でも条例で定めれば設置できる。

裏返せば都道府県が福祉事務所を設置するのは福祉事務所のない町村のみである。

福祉事務所というが市役所の一部署として存在するのが一般的である。

市町村合併が進み、町村というのも数を減らしており、かなり少数派である。

町村でも福祉事務所を設置できるならと、島根県・広島県では全市町村が福祉事務所を設置したので、県の福祉事務所はもはやない。


一方の保健所だが、こちらは指定都市・中核市・特別区は必ず設置、それ以外でも政令に列挙されれば設置できる。

中核市以外で政令に列挙されたのは小樽市・町田市・藤沢市・茅ヶ崎市・四日市市、

いずれも大規模な市で、中核市への移行も見据えての保健所設置と言えそう。

保健所も専門的な人材が様々必要でなかなか市で設置するのは容易ではない

ただ、保健衛生関係の業務を従来の市の業務と途切れなく提供できるメリットは多い。


児童相談所はそれよりさらにハードルが高いとみてよいのだろう。

それは都道府県が児童相談所の体制を充実させる場合にも言えることで、

東京都では児童相談所のサテライトオフィスとして、

区の施設に週何日か職員を派遣して対応するという取り組みをしている。

実は練馬区にもサテライトオフィスが設けられていて、

その後に東京都により児童相談所が開設されたという経緯がある。

優先度の高いところから対応しているというのが実情だろう。

潜在的なインドネシア人

2026年に北アメリカで行われるサッカーワールドカップ、

この大会から出場枠が48チームとなり、新たに出場権を狙う国も多い。

その1つがインドネシアである。

アジア最終予選では日本と同組ということで試合が行われていた。


そんなインドネシアはオランダから国籍変更した選手が多くいるらしい。

選手の半分が国籍変更 サッカーインドネシア代表が逆手に取る歴史 (朝日新聞デジタル)

なんでオランダなんだろう? と思ったかも知れないが、

インドネシアはかつてオランダ領東インドというオランダの植民地だった。

この時代にオランダと現在のインドネシアを往来した人も多かったようである。

その結果「人口の10人に1人がインドネシアの血縁者だとの説もある」とのことで、

オランダには先祖をたどると現在のインドネシアに至る人がけっこういると。

その中にはサッカー選手もいるわけで、そういう選手を集めているわけである。


国籍の取得条件は国によって異なる。

日本では生まれた時点で両親のいずれかが日本国籍であることが重要である。

親が日本人なので出生時から日本国籍があるケースがほとんどだと思うが……

それにあてはまらず帰化が必要な場合でも、条件が大幅に緩和されている。

これ以外は日本人との血縁は帰化条件という点では役に立たない。

元日本人でも重国籍の解消などで日本国籍を失ってから生まれた子とか、

日本人の孫というのは、日本国籍を取得するという点では他の外国人と変わらない。

在留資格という点では日系2世・3世だと定住者になるので有利だが。


インドネシアでは親が潜在的にインドネシア国籍を取得できる人であれば、

国籍取得の条件が緩和されているっぽい。(詳細は不明)

こういう考えの国は結構多いらしく、イギリスのEU離脱前後で、

潜在的なアイルランド国籍者がアイルランド国籍の取得に走ったなんて話も。

とはいえ、インドネシアの国籍取得のフローには国会の承認など相当な時間がかかるものがある。

しかし、サッカー選手とならばかなりのスピードで承認されるそうである。


もちろん目先のワールドカップ出場枠を得たいという意図もあるのだが、

元々インドネシアではサッカーは人気スポーツらしい。

ワールドカップ出場に現実味が出てきたこともあり強化を推し進めており、

その呼び水としてオランダからの選手招致を進めているということらしい。

ゆくゆくはインドネシア出身者で世界と戦えるようになる必要があるが、

まずはオランダ出身者の力を借りて、ワールドカップを目指そうということである。


というわけでジャカルタで行われた 日本vsインドネシアは4-0で日本の圧勝だったとのこと。

やはりまだまだアジアトップクラスとの実力差は大きいということか。

というか、ここまでインドネシアは0勝2敗3分でグループ最下位、

出場枠が広がってもなかなか容易ではないようだ。


先ほど書いたように日本では親の親が日本人という条件が役立つのは、

外国人として日本に滞在する場合の在留資格である。

日本人の子として生まれた外国人は日本人の配偶者等の在留資格が得られるが、

そのさらに子の在留資格も何らか認める必要があるのは確かである。

そのため日系2世・3世は定住者の在留資格が与えられるが、

これで日本に渡ってきた日系人の在留には課題も多かったようである。


その反省として日系4世の特定活動では 日系四世受入れサポーター というのが必要になった。

この特定活動は「日本文化及び日本国における一般的な生活様式の理解を目的とする活動」という名目になっている。

これに付帯して風俗業以外での就労が認められるという形である。

この日本の生活様式への理解が深まるようにサポートする人は必置であると。

日系2世・3世の定住者は日本への定着という点で課題が多かったようで、

さらに日本との血縁・地縁が1代遠くなる日系4世はなおさらとなったよう。

なお、特定活動での滞在は最長5年だが、日本語能力などの条件を満たせば定住者への移行も可能である。

ただ、サポーター・年齢・日本語能力などの条件が厳しく、適用例はあまり多くないという。


実際のところインドネシアでもサッカー選手でなければこうはいかないのかもしれない。

インドネシアも日本同様に生まれながらの重国籍も一定年齢で解消を求める国だし、

届出や帰化で外国の国籍を取得した場合は国籍を失う規定がある。

いろいろ理屈はあるんでしょうけどね。

子の氏の規定と夫婦別姓

夫婦別姓が実現したら子供の氏ってどうなるの?

という話を言っている人がいて、まだ決まった話があるわけではないが、

もしかしたらこうなのかもなと思った話。


民法では子の氏についてこう規定している。

第七百九十条 嫡出である子は、父母の氏を称する。ただし、子の出生前に父母が離婚したときは、離婚の際における父母の氏を称する。
2 嫡出でない子は、母の氏を称する。

両親が結婚している場合は父母の氏、結婚していない場合は母の氏となる。

実はこの規定には穴があって、それが母外国人・父日本人のケースで、

父が胎児認知している場合は出生届を提出するときに本籍地と氏を決めなければならない。

(子の氏は日本人父の氏でなければならない決まりはない)

いつ本籍地を指定するか


夫婦別姓が実現すると「嫡出である子は、父母の氏を称する」とは言えなくなる。

1つ言われているのは婚姻届の提出時にどちらか決めておくというのは考えられて、

折しも戸籍には筆頭人というのを決めなければならない。

結婚後の氏として夫の氏を選べば夫が筆頭人、妻の氏を選べば妻が筆頭人になる。

夫婦の氏は従来通りとしても、どちらか筆頭人と選ぶ必要はあるのだから、

子の氏は筆頭人の方になりますよと。これは理にかなった話である。


ただ、思ったのだけど、上の規定は特殊なケースを除けば子の氏は母の氏なんですよね。

特殊なケースというのは父日本人・母外国人で結婚している場合と、離婚後に嫡出推定が働いた場合である。

ということは父母の氏を1つに決めた場合はそちらを採用し、

そうでない場合は母の氏を採用しますよという規定の方がすっきりしそうである。


ところで上記のルールで母の氏に決まった場合でも、裁判所の許可を得て父の氏を称することはできる。

第七百九十一条 子が父又は母と氏を異にする場合には、子は、家庭裁判所の許可を得て、戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、その父又は母の氏を称することができる。
2 父又は母が氏を改めたことにより子が父母と氏を異にする場合には、子は、父母の婚姻中に限り、前項の許可を得ないで、戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、その父母の氏を称することができる。

このルールは両親の離婚後に適用されることが多いように思う。

離婚により夫婦の氏は元に戻るが、子の氏はそのまま変わらない。

しかし、それだと実態に合わないケースがあるので、その場合は裁判所の許可を得て変更できると。

ただ、そもそも両親が未婚の場合でも、裁判所の許可を得て父の氏にすることもできる。

第2項は両親の結婚前に生まれた子は届出だけで夫婦の氏に出来るということですね。

このとき提出する届を入籍届という。わかりにくい名前の届だ。


夫婦別姓の場合は常に「子が父又は母と氏を異にする場合」にあたる。

だから両親が結婚中でも適用されるようになるかもしれない。

裁判所の許可が必要なのでそれなりの理由がないとできないだろうが。

ただ、それは好ましくないと制限がかかる可能性はある。


子の氏の扱いによっては夫婦別姓なんて使い物にならんという話にもなりかねない話ではある。

僕はずっと夫婦別姓には懐疑的で、夫婦のどちらも氏を変えられないとは思えなくて、

夫が氏を変えるケースがもっとたくさんあっても不思議はないんじゃないかと。

夫に名字を変えさせたと妻がパッシングを受けるのを恐れているだけでは?

とはいえ、夫婦で氏を揃えられないがために、結婚による恩恵が受けられないのもそれはそれで考え物。

その点ではあってもいいのかもしれない。

でも、結局選ばれないんじゃないの? とは思うんですよね。

子の氏の扱いによってはなおさらそういう懸念はある。

内閣府特命担当大臣と○○担当大臣

なんだこれ? というニュースなのだが……

行政効率化へマスク氏起用 米新組織トップ、歳出削減―トランプ氏 (JIJI.COM)

トランプ新大統領が「政府効率化省」を新設し、その代表としてイーロン・マスク氏とビベク・ラマスワミ氏を任命する予定だという話。

政府効率化省ってなんやねんという話だが、英語表記でDepartment of Government Efficiency、

略してDOGEとなるというのがポイントで、マスク氏とDOGEと言えば、ドージコインである。

他の省庁と同じDepartmentという表記だが、法律の規定のある省庁とは異なる。


日本でも政権の意向で国務大臣のポストが新設されることはある。

議院内閣制の日本では国務大臣は基本的には国会議員だが、

アメリカは大統領制なのでこのあたりの事情が違うのはある。

国務大臣は内閣総理大臣を筆頭に、法務大臣など省庁に対応して大臣が設けられているように見えるが、

それ以外の大臣というのも様々存在する。

その代表格が内閣官房長官である。

内閣官房の責任者に見えるのだが、制度上の責任者は内閣総理大臣であり、

内閣官房長官は「内閣官房の事務を統轄し、所部の職員の服務につき、これを統督する」国務大臣である。


内閣府の組織というのはこのような形で大臣が置かれることが多いよう。

まず、内閣官房長官・デジタル大臣・復興大臣・国家公安委員会委員長がそうで、

これらはすべて 内閣官房・デジタル庁・復興庁・国家公安委員会(警察庁)という内閣府の組織に対応する。

そして内閣府特命担当大臣というのもそうなのだという。

内閣府特命担当大臣(○○担当)という形で任命されるのだが、

内閣府の組織に応じて○○の部分が決まっていて、下記で★を付けた担当は必ず設置しなければならないことになっている。

  • 防災担当★: 中央防災会議
  • 沖縄及び北方対策担当★: 沖縄振興局, 北方対策本部
  • 金融担当★: 金融庁
  • 消費者及び食品安全担当★: 消費者庁
  • こども政策担当・少子化対策担当・若者活躍担当★: こども家庭庁
  • 経済財政政策担当: 経済財政諮問会議
  • 規制改革担当: 規制改革推進会議
  • 地方創生担当: 地方創生推進事務局
  • 知的財産戦略担当・クールジャパン戦略担当: 知的財産戦略推進事務局
  • 科学技術政策担当: 総合科学技術・イノベーション会議
  • 原子力損害賠償・廃炉等支援機構担当: 原子力損害賠償・廃炉等支援機構
  • 宇宙政策担当: 宇宙開発戦略推進事務局
  • 原子力防災担当: 原子力防災会議
  • 男女共同参画担当: 男女共同参画会議, 男女共同参画局
  • 海洋政策担当: 総合海洋政策推進事務局
  • 経済安全保障担当: 政策統括官(経済安全保障担当)
  • 共生・共助担当: 政策統括官(共生・共助担当)

上記以外にも担当組織はあるかもしれないが代表的なものを書いた。

アイヌ政策担当だけは内閣府の組織に見つからなかった。


わかりやすいのは内閣府特命担当大臣(金融担当)で内閣府傘下の金融庁の担当大臣である。

こども家庭庁についてはこども政策担当・少子化対策担当・若者活躍担当と分けて表記されているが、

実際はこの3つの担当は兼務する形になっている。(内閣府設置法第十一条の三でまとめて定義されているので兼務しか想定されていない?)

その理屈で言えば内閣府傘下のデジタル庁の担当大臣は「内閣府特命担当大臣(デジタル担当)」とかになりそうだが、

これは別の法令の規定でデジタル大臣という役職になっている。

内閣府特命担当大臣のポストはある程度自由に増減できるのだが、

上記のように内閣府の組織と紐付く必要があると考えられているようだ。


で、厄介なことにこれとは別の担当大臣というのも存在する。

内閣法の国務大臣の規定では「行政事務を分担管理しない大臣の存することを妨げるものではない」というのが存在し、

内閣の役割分担の中で省庁に紐付かない大臣を置いてもよいとなっている。

それが「○○担当」という役目を与えられた国務大臣である。

(厳密には内閣官房長官なども行政事務を分担管理しない大臣にあたるが、実態は上で書いたように内閣府の組織に対応している)

これはその時々の状況で新設されたり消えることが頻繁にある。


例えば「国際博覧会担当」というのがそれに該当する。

これは来年の大阪・関西万博に向けた取り組みを担当する大臣で、万博後はなくなる役職である。

これは内閣官房の国際博覧会推進本部に対応している。

総理大臣の意向で新設されたといえば「防災庁設置準備担当」で、

これも内閣官房の防災庁設置準備室に対応している。

内閣官房の中で組織を新設するのがもっとも柔軟性が高いということで、

内閣府特命担当大臣ではない ○○担当大臣 というのは内閣官房の組織に紐付いているようだ。

その理屈で言えばアイヌ政策を担当する組織って 内閣官房アイヌ総合政策室 らしいので、

内閣府特命担当大臣(アイヌ政策担当) というのはちょっと変な気がするのだが、

政治的な事情もあるのかこのようなことになっている。


冒頭に書いたトランプ氏の政府効率化省(DOGE)新設のようなことを、

日本でやるとすれば防災庁設置準備室のように内閣官房に設置するのが手っ取り早く、

その上で担当の国務大臣を設けるということは考えられる。

それは省庁の代表者としての国務大臣とは違うものであると。

もっとも国務大臣には定数があり、最大で19人と規定されている。

このため内閣府特命担当大臣やその他の担当大臣は兼務が多くなっている。

内閣府特命担当大臣(金融担当) は金融庁が財金分離によりできた経緯からか、財務大臣との兼務になることが多い。

内閣府特命担当大臣(経済安全保障)に経済安全保障担当を任命するという、

同じことを2回行っているようにしか見えないものもある。

前者は内閣府の経済安全保障担当で、後者は内閣官房の国家安全保障局に対応するという差があると思われる。


議院内閣制の日本と大統領制のアメリカを比較することはできないが、

自民党のベテラン議員の処遇に困り、大臣の役職を順次与えているような話もあり、

国土交通大臣に公明党の議員の任命が続いている状況への不満もあるとか、そんな話も見た。

限りある国務大臣のポストに、自民党のベテラン議員をパンパンに詰めたい意向は明らかである。

内閣府特命担当大臣(○○担当)は一応内閣府の組織に紐付くものと考えられるが、

それに大臣を任命するかどうかというのは内閣総理大臣の判断によるところもあるし、

それ以外の○○担当大臣に至っては総理大臣の決めるままということではないかと思う。

とはいえ総枠は決まっているので、兼務だらけになるんですけどね。

女性候補では男性の支持が集まらない?

アメリカの大統領選挙、トランプ氏が当選確実という話である。

(開票が済んでるので当選といってもよいのだが、正式には大統領選挙人による投票で決定するのでまだ当選確実という状態かと)

バイデン氏が撤退したところ急遽、大統領候補になったハリス氏には厳しかったか。

逆にトランプ氏は早々に共和党の大統領候補として活動していたわけでね。


勝敗を分けた要素はいろいろ言われているが、

その1つとしてハリス氏が男性からの支持を広げられなかったことがあるかもねと。

男性はトランプ氏、女性はハリス氏…Z世代で鮮明になった投票行動の「ジェンダー・ギャップ」 (読売新聞)

「隠れトランプ」なんて言われたように世論調査ではトランプ支持が低めに出がちだった。

出口調査までこういう傾向があったので当初はハリス氏優勢かと報じられたのだが。

そこを考慮すれば、男性はトランプ氏支持がかなり優勢、女性はハリス氏支持がやや優勢ぐらいか。


男性候補だから女性候補だからと単純に言える話ではないと思うのだが、

女性候補が男性からの支持を集めにくいという傾向はあるように思える。

逆もあるかもしれないけど、そこまで極端ではなさそうだ。

もちろん他にも男性の支持がトランプ氏に向いた事情はあるのだが、

他の選挙でもそういう傾向はあるような気がする。

女性候補だから勝てないというわけではないのだが、勝ちにくいと。


ところで日本では2018年に「政治分野における男女共同参画の推進に関する法律」が制定されている。

この法律は政党に対して国会議員・地方議会議員に対して男女の候補者数をできる限り均等とすることを求めている。

ただし政治活動の自由が前提なので、男女同数でなければならないわけではない。

政治分野における男女共同参画の推進に関する法律 (Wikipedia)

下に国政選挙での政党別の女性候補者の割合が記載されている。

参議院については立憲民主党・共産党などでほぼ男女同数が実現されている。

衆議院については男女同数に近いと言えるのは共産党ぐらいで、それでも6:4ぐらいで男性候補が多い。


立候補者の男女同数が実現されても、議会が男女同数になるとは言えない。

極端な話を言えば、A党が280の小選挙区に男性候補140人・女性候補140人を立てて、

男性候補を立てた140の選挙区で全勝、女性候補を立てた140の選挙区で全敗、

となれば候補者の男女同数が実現しながらもA党の小選挙区選出議員は全員男である。

参議院の比例代表については、非拘束名簿方式なので個人別得票数で誰が当選するか決まる。

名簿に男性20人・女性20人を掲載して、15議席獲得して、個人別得票上位15人は全て男というのは考えられる。


唯一、衆議院の比例代表に限っては政党が当選順位を決めることができて、

男女交互に並べれば当選者も男女同数にすることはできる。

多くの政党では名簿上位には小選挙区との重複立候補者を同順位で並べている。

同順位の場合は惜敗率が高い候補が当選するため、

小選挙区で惜しいのが男性候補ばかりなら当選者が男性に偏る可能性はある。

ただ、さっき例に書いたA党のように、小選挙区で男性候補が多く当選すれば、

比例代表の名簿に残るのは女性候補が多くなるため、そこで救われる可能性はある。

このため衆議院の比例代表だけは当選者の男女比に政党自身が責任を負う部分はある。


実際のところ、女性の国会議員というのは立憲民主党が圧倒的で、

先の衆議院議員選挙で女性の当選者73名に対し、立憲民主党が30名である。

立候補者数という点では共産党より少ないし、自民党も同じぐらい立ててるが、

勝てる候補という点では立憲民主党が多いのが実情のようである。

その立憲民主党にしても、当選者は男118人・女30人でほぼ男である。

立候補者数で見ても男女同数にほど遠いのは、女性で勝てる候補は限られているという実情か。


さっき例に示したA党というのはかなり極端な例ではあるのだが、

女性候補では男性からの票が集められないという傾向が現れれば、こういう結果もないとは言えない話である。

女性の政治家を増やすこと、実力を高めることも政党の使命ではある。

これは先の法律にも書かれている話である。

でも、それを選ぶかどうかを決めるのは有権者である。

特に過半数を狙う大政党にとってみれば小選挙区はほとんど妥協できない。

男性の支持を集められなくて勝てないというのは許されないわけだ。


候補者数の男女同数がそんなに重要か? と思うところもあるのだが、

先の法律は衆議院・参議院全会一致で成立した法律である。

各政党が候補者数の男女同数を実現すると約束したわけである。

にも関わらず、これが実現できていると言える政党は事実上ない。

まだ、女性の政治家が育っていないからという説明もあるかもしれないけど、

男性からの支持が伸び悩むハンデを背負って勝てる候補なんてそうそういないと言われると、

回り回って有権者の選択ということになるわけである。


ハリス氏は女性初のアメリカ大統領か? と言われたわけだけどね。

民主党としては男女問わず最善の選択とハリス氏を擁立したのは理解できるが、

女性候補のハンデというのはけっこう重かったのかもなと思う。

直接選挙である以上、政党の意向だけで決められる話ではありませんからね。

もちろんトランプ氏が強かったのはあるんですけどね。

違法モペットかわからない

大阪滞在時に「これは違法なモペットでは? と思う車に何台も遭遇した」と書いた。

細かいところまで見ては無かったのだが、こんな形の車だったっけ、

と調べて行ってぶち当たったのが「MATE」というブランドの車だった。

ただ、このブランドの車には日本の法規制に従った電動アシスト自転車もあるという。

一部報道について ()MATE.BIKE JAPAN)

正当に日本国内で出荷された車は法規制を満たしているのだから、

MATE製品が違法なモペットであるという報道をするなということである。


並行輸入品というのはパッと考えて思いつく話である。

ただ、それだけでもなく国内で正当に販売されている車を外国仕様の設定に変更したり、

あるいは外国で使われているスロットルを後から付加したり。

そんなことをしている車もあるらしい。

販売業者としては違法改造に手を焼いているという言い分である。


日本で電動アシスト自転車と認められるにはアシスト比率の要件を満たす必要があり、

最大でも人力:電動=1:2で、10km/h以下でアシスト比率が下げる必要があり、

17km/hで1:1、24km/h以上ではアシストしてはいけなくなる。

これは世界的には独特な規制であることは確かである。

世界的に見ればアシスト時の最高速度やモーター出力による規制が一般的で、

ヨーロッパの基準だと25km/hまでは人力:電動=1:99でも認められるし、

中国大陸に至ってはフル電動でもペダルさえ付いていれば自転車扱いである。

原付にペダルっている?


なぜ諸外国で認められるものが日本で認められないかと考えて見ると、

普通自転車では条件付きで歩道通行が認められていることもあると思う。

違法モペットであっても一般原付のように車道しか走行しないならば、ここまで問題にはなっていないと思う。

自賠責保険に入れないので、必然的に無保険運行というのは大問題だが。

ただ、大阪で見た違法モペットらしき車を振り返ってみると、

車道だけを走行しているということはまずなくて、歩道走行もしているのである。

そもそもその歩道は自転車歩道通行可なのかという問題もあるのだけど、

例えそうだとしても、電動アシストの範疇を超えた自転車が歩道走行するのは危険なのは明らかである。

特定原付は車道(自転車道含む)での扱いがほぼ普通自転車扱いになるにもかかわらず、

歩道・路側帯での扱いは自転車と異なる点が多いのは、まさにこういう考えが現れている。


自転車の歩道通行を縮小していく方針は明らかなのだが、

歩道上で部分的に歩行者と混在することを前提に整備された走行空間が多い実情はある。

実は歩道の自転車通行指定部分だった

完全に自転車専用の走行空間を作るのは現実的に不可能である。

新しい道路ではそういう区間は自転車は車道の端に出すように作るけど、

最近まではそういう区間は歩道上で歩行者と混在させることが多かった。

段々と絞り込まれているけど、一定の秩序のもとに歩道通行は残らざるを得ない。


冒頭の話に戻りますが、明らかに外見上スロットルが見えるようなのはともかく、

そうでもなければアシスト比率の要件を満たしているか否かはすぐにはわからない。

走行している様子を見ておかしいと気づくぐらいしか手はない。

改造の容易性や効果についてはメーカーごとに差はあり、

外国メーカーの車は改造が容易で、ほぼフル電動で安定して走れるなどの効果も大きい傾向にあるが、

国内メーカーの車でも改造して規定以上のアシストを得ているケースはあるという。

そういうのを真面目に取り締まるのは容易なことではないなと思う。


この事情が変わりうる要素としては、自転車への交通反則通告制度導入がある。

現状、自転車の交通違反は罰金刑を科すにも検察に呼び出していちいち起訴しなければならない。

膨大な交通違反を検挙したところで、ここが回りきらないので実効性がないと。

交通反則通告制度、反則金とか青切符という言葉の方が通じやすいかもしれないが、

これが適用されると反則金を納めると、その反則行為で起訴されることがなくなる。

これにより起訴すべき対象が反則金を納めなかった人だけになるので、

自転車の交通違反に対する検挙の実効性が高まるということである。


これにより自転車の取り締まりが強化される中で、結果的に違法モペットの検挙にもつながるんじゃないか。

自転車の歩道通行に関わる反則行為の取り締まりは注力分野になると思われる。

先ほど違法モペットと歩道通行が重なると大変危険だと書いた。

そういう点でも効果的な取り締まりになるのではないかと期待している。

もちろん違法モペットは反則通告制度の対象外なので、今でもやるべきなのだけど、

それだけのためにどれだけのリソースを割けるのかという問題はありますからね。

小選挙区比例代表並立制がゆえ

衆議院議員選挙といえば小選挙区比例代表並立制ということで、

選挙区で議席が取れなくても比例代表で復活当選したり、

政党によっては小選挙区はさっぱりだけど比例代表の議席は狙えるとか、

そうかと思えば小選挙区では自民党の候補同士が一方あるいは両方無所属でぶつかるなんてことも。

基本的に二大政党制に帰結すると言われる小選挙区制だが、そう単純でもない。


今回の衆議院議員選挙、フタを開けてみて驚いたのは小選挙区での共産党の多さだった。

小選挙区は分が悪いのは承知で候補者をねじ込むのは昔からだが、それにしても多いような……

2021年は105選挙区、今回は213選挙区、倍増してるんだな。

この213選挙区というのはほぼフルエントリーに近い自民党の266選挙区に次ぐ多さで、

立憲民主党の207選挙区に近い数字である。


どうしてこれほどまでに小選挙区での立候補をするのかといえば、

比例代表の議席を確保するためだというのが定説である。

衆議院議員選挙は政党単位での選挙活動が基本となっており、

小選挙区に候補者がいる政党は候補者の選挙カーとは別に都道府県ごとに1台の選挙カーが使えて、

都道府県ごとの政見放送(衆議院は政党単位)も流せる。

都道府県ごとに1人は候補者を立てたいというのはこの制度による。

さらに言えば選挙区の候補者の選挙活動の中で比例代表の選挙活動もできるので、

なりふり構わずに候補者を立てるのは比例代表の票の掘り起こしのためと言える。


もう1つ、共産党の候補者擁立には特徴的な点がある。

それは選挙区と比例代表との重複立候補が少ないことである。

立憲民主党が一番わかりやすいが、小選挙区207人に対して、

比例代表234人が立候補し、うち204人が重複立候補となっている。

小選挙区単独が3人、比例単独が30人、あとの204人は重複立候補である。

これに対して共産党は小選挙区213人、比例代表35人、うち12人が重複立候補である。


これも理由があって、重複立候補の場合、小選挙区での得票率が1/10を切ると比例代表で当選する資格を失うのである。

得票率1/10というのは小選挙区の供託金没収でもある。

共産党は213選挙区で候補者を立てたわけだが、これは多額の供託金没収を覚悟しているのである。

それでも比例代表の票の掘り起こしのために候補者を立てていると。

小選挙区で供託金没収された上に、比例代表の当選資格も失うでは困るのである。

だからこそ比例代表単独候補をメインに据えているわけである。


比例代表の供託金没収ラインというのは小選挙区ほど単純ではない。

参議院の場合、立候補者1人あたり600万円の供託金がかかり、

政党ごとに最大で当選者数×1200万円の供託金が返金される。

2022年の参議院議員選挙で言えば、供託金没収なしなのは自民党(33人中18人当選)だけである。

参議院の比例代表は候補者単位での選挙活動が可能なので、どの政党もかなり多めに候補者を立てがちなのだろう。

まだ参議院は理解しやすいが、衆議院はさらに複雑である。

まず供託金の金額は比例単独が600万円、小選挙区との重複立候補が300万円である。

小選挙区の供託金が300万円なので、重複立候補でも比例単独でも1人600万円という意味である。

ここだけ見れば重複立候補というのはお得に思える。

ただ、供託金没収ラインのことを考えると難しい。


まず、小選挙区で当選すると比例代表のリストから消えるので、300万円が返金される。

それ以外の供託金のうち当選者数×1200万円が返金されるという仕組みである。

立憲民主党と近畿ブロックを例に取ると、重複立候補23人・単独4人で、

このうち5人が小選挙区で当選、比例代表での獲得議席は4議席だった。

比例代表分の供託金は300万円×23+600万円×4=9300万円で、

小選挙区当選者の1500万円と、比例代表の議席数に応じた4800万円が返金される。

結果として没収された供託金は3000万円となる。

比例単独4人+重複立候補2人に相当する供託金が没収されているわけである。


だからといって比例単独候補を減らすのは危険である。

なぜかというと小選挙区が好調だと比例代表の当選者が足りなくなるからである。

国民民主党はそれで3議席損をしてしまったのである。

東海ブロックでは本来3議席の獲得が可能だったが、

6人全員が重複立候補でうち5人が小選挙区で当選、残るのは1人だけになってしまった。

比例単独候補を2人置いておけば回避できたのだが、供託金没収のリスクも高い。

比例単独候補を置いて選挙活動の幅が広がるならともかく、衆議院では大した恩恵もないのである。


だから小選挙区と比例代表の重複立候補を使わないという選択肢が出てくる。

小選挙区の得票率1/10以下あるいは当選で比例代表で当選できないリスクのある候補者は極力減らし、

その上で比例代表の当選者数の見込みを大きく超える立候補者は置かないと。

この作戦に最も忠実なのが公明党である。

公明党は重複立候補0人、比例候補39人に対して23議席獲得と無駄がない。

ただ、それでも供託金没収は発生しているようですね。厳しいな。


とはいえ、この戦略があまり一般的ではないことにも理由があり、

それは復活当選という形でも議員になれれば、次の選挙に向けた政治活動がやりやすくなるからである。

2人の候補者が競り合う選挙区だとどちらも国会議員ということはよくある。

共産党にしても小選挙区にチャンスがあると見ているところでは重複立候補を活用しており、

実際に小選挙区で当選したのは沖縄の1選挙区だけではあるのだが、

小選挙区の立候補者という切り口で見れば、復活当選3人で計4人とも言える。


二大政党制に収束すると言われる小選挙区制において共産党というのはほとんど意味を持たない政党である。

立憲民主党あたりは主張に近しい部分もあり、相乗りを選ぶケースも少なくない。

共産党も小選挙区制での戦い方という点ではそっちの方がよいと思っている節はあり、

都道府県知事・市町村長・改選数1の参議院選挙区では大抵そうである。

でも、衆議院は単なる小選挙区制ではないのである。

だからこそ目先の比例代表の議席のために小選挙区に候補者を立てまくるのである。

立憲民主党・国民民主党・日本維新の会にとってみれば厄介者だな。


さて、小選挙区比例代表並立制の長所・短所は挙げればキリはないが、

さっき書いた重複立候補のデメリットは有権者にとってメリットに成り得るのではないかと考えた。

まず得票率の低い候補は比例代表で当選できないというシステム。

小選挙区で一定のふるいを超えなければ比例代表で当選できないというのは、

国会議員にふさわしい人を選別する仕組みとして役立つのではないか。

得票率1/10というラインは若干易しくて、法定得票の1/6ぐらいが相応か?


そして小選挙区で当選しすぎると重複立候補だけでは足りなくなる点、

これは小選挙区で絶好調の政党が、比例代表でさらに議席を伸ばすのを防げるのではないか。

小選挙区比例代表連用制で全体的に比例を得よう

大昔に書いたのだが、ドイツやニュージーランドの選挙は小選挙区と比例代表の2本立てだが、

比例代表の議席は小選挙区での獲得議席数を引いて配分する仕組みになっている。

これにより小選挙区絶好調の政党は比例代表の議席は得られないこととなる。

ただ、この方法には難点があり、それは無所属候補の議席はどの政党からも差し引かれないということである。

国ごとに選挙事情はいろいろだが、日本では選挙区に無所属で立候補するのはけっこうみられる。

選挙活動に制約はあるものの、小選挙区だけならわりとなんとかなってしまう。


そんなわけで日本にこの考えを適用するのは難しいなと思っていたのだけど、

必ず重複立候補でなければならないとすれば、それにより各党の当選者数の上限というのが決まるわけである。

小選挙区・比例代表の合計で小選挙区の数以上の当選者が出ることはない。

なぜならば1つの政党は小選挙区に1人しか候補者を立てられないためである。

無所属候補と公認候補に手分けして、選挙区で無所属候補、公認候補が復活当選、

なんてことができれば実質的に小選挙区の数よりも多い当選者を出せるかもしれないが、

それは現実的とは思えないので、おのずと上限が決まるわけである。


現在の制度では比例単独候補が認められているのでそうはならないが、

必ず重複立候補でなければならないとすれば、上記のようなことは実現される。

小選挙区の数で当選者数の上限が決まるというのは、

議席の取り過ぎを調整する仕組みとしては弱いとは思うが、今よりはマシでは?


さて、途中までは共産党が比例代表の票集めに必死という話を書いたが、

結果を見てみると比例代表の獲得議席は前回9議席、今回7議席と減ってしまった。

それと対照的に議席数を積んだのが れいわ新選組 で比例代表のみで9議席である。

立憲民主党・国民民主党の2つの民主党が並立する形になったことで、

最近は立憲民主党に食われがちだったところ、れいわ新選組にも食われ、党勢を失いつつある。

依然として地方議員などの基盤は強い政党だと思うが、国政政党としてはかなりの苦境である。


大勢においては自民党と公明党が議席を減らしたというのが大きな話である。

当選したら追加公認するなら最初から公認候補にしといたらええやろにと思うのだけど、

一定の線引きが必要だったのは公明党との関係性によるものなのだろうか。

その公明党も小選挙区では思ったように議席を取れず。

重複立候補を使わない方針もあり、党代表が落選する有様。

その議席がどこに回ったかというのは地域性がかなりあって、

東日本の小選挙区では立憲民主党にだいぶ回っている。野党第一党の基盤は相当なものである。

大阪府では日本維新の会が小選挙区の議席を独占、異様な光景である。


比例代表については国民民主党が大きく議席を伸ばしている。

比例代表だけみれば立憲民主党は5議席増に留まり横ばいに近いが、

日本維新の会が10議席減らし、国民民主党が12議席増やすという具合。

2つの民主党で苦しい立場になることが多かった国民民主党だが、

労働者の政党という本来の役割で支持を集めるようになってきているようだ。


主要政党とみればこんなところだが、れいわ新選組が9議席というのは書いた通りだけど、

参政党が3議席、日本保守党が3議席(うち1議席は愛知県の小選挙区)と、

なんか面倒そうな政党が出てきたなという感はある。

れいわ新選組が共産党の勢力を食っているとさっき書いたけど、

参政党と日本保守党については自民党なのかなぁ。

自民党の強みは国民政党であるということで、様々な意見を集約させれば強いし、結束力も強いが、

党内の勢力図が移り変わるごとに、支持者も付いたり離れたりという側面もある。

その一端がこうして見えてしまっているのかなと思う。


今回の選挙で一番変わったのは自民党の党内勢力なのかもね。

なんて、そんなことを考えてしまったが、実際にはどうなのやら。

ここまで議席を減らすつもりはなかったんだろうけど、それにしてはいろいろチグハグである。