凝固因子製剤を輸出する意味

ラブラッドで成分献血の予約をしようとしたらこんな案内が出ていた。

血漿分画製剤の海外輸出に伴う献血同意内容の追加について (日本赤十字社)

国内自給に支障が生じない範囲で血漿分画製剤を輸出していることを同意書に記載するという内容。

すでに輸出は行われていて、具体的には凝固因子製剤の世界血友病連盟への寄付である。

2023年度 血液凝固第Ⅷ因子製剤の世界血友病連盟への寄付について (日本血液製剤機構)


そもそも血漿分画製剤について。

あの手この手で血漿が欲しい

血漿分画製剤は血漿から必要な成分を抽出した薬である。

血漿を成分ごとに分けて使うことで血液の有効利用にもつながっている。

血漿分画製剤は大きく分けると アルブミン製剤・免疫グロブリン製剤・凝固因子製剤・アンチトロンビン製剤・組織接着剤 とある。

後ろ3つは血漿中の血液凝固に関わる成分を集めたものである。

現在、血漿成分献血の推進をしているのは、主に免疫グロブリン製剤の需要に対応したものである。

一方、主な凝固因子製剤、第VIII因子と第IX因子については血漿由来は国内自給率100%である。


凝固因子製剤は血友病の治療に使われる。

第VIII因子が不足するものを血友病A、第IX因子が不足するものを血友病Bという。

これを補充することで血液がちゃんと固まるようにするという意図である。

ただ、最近は血漿由来の製剤よりも遺伝子組み換え製剤が使われることが多いのだという。

「血友病」の治療、新たな薬が続々と 患者・家族のQOL改善に期待 (朝日新聞デジタル)

血漿由来に比べて効果が長く続くものや、凝固因子を異物として排除してしまうインヒビターのある患者でも効果を得やすいものが出ている。

そのため血漿由来の製剤が選ばれにくくなっているということらしい。


もちろん患者の負担軽減や治療効果向上はメリットがあるし、

献血によらず安定供給できることもよいことである。

ただ、遺伝子組み換え製剤は製造しているメーカーが限られるので、

何らかの理由で供給が滞ったときに、血漿由来製剤で代替する必要があり、

それで実際に血漿由来製剤を増産したことも過去にはあるという。

血漿由来の製剤が完全に代替出来ればそれに越したことはないのだが、

今のところは血漿由来の凝固因子製剤も必要と考えられているわけである。


というわけで献血由来の凝固因子製剤を途上国向けに寄付することには、

国際貢献というのもあるだろうけど、いざというとき国内で作れるようにという意図もありそう。

平時の国内自給という点では全く問題ないわけですからね。


というわけで、やはり免疫グロブリン製剤の安定供給が課題ではあって、

近年の需要増もあって、まだ足りていない状況ですね。

世界的にも需要増らしく、血漿成分献血への期待は大きいわけである。

極地法の行きと帰りの違いゆえ

先日、エベレスト登山のトイレの話を話を書いた。

山のトイレをどうするか

最後にこう言う話を書いた。

ベースキャンプより先でも滞在期間が長いのが原因の1つだろう。

確かにそれはそうなのだが、極地法の特性というところもあるらしい。


極地法というのはかつての南極や北極の探索手法に由来する呼び名である。

ベースキャンプから物資を運び込んで前進キャンプを設営し、

その前進キャンプを拠点に探索を進めて、前進した先にキャンプを設営し……

という形で探索を進めていくという手法である。

もっとも今どきのエベレスト登山というのは定型化されていて、

事前にルート工作や設営などした上で、登山者がこれらを使うという形になっているのが実情だが。


この手法でしばしば問題となるのがゴミのことである。

単純に考えれば登山時に持っていったものを下山時も持って帰ればよいが、

極地法では前進時の運搬は何回にも分けて行うことができる。

前進時にはルート工作や高所順応を時間をかけて行うので時間がかかる。

しかし、山頂に到達すれば、ベースキャンプまでは片道1回である。

何回にも分けて上げた資材を1回で降ろすのは容易ではない。

このためゴミが残されてしまうことが多いのだという。


片付けまでやって登山完了だという考えもあるかもしれないが、

そのような計画を立てても天候面で実現できない可能性がある。

そうすると結局はゴミが取り残されてしまう。

極地法をとる以上、ゴミ問題を完全に避けるのは難しいのかもしれない。


極地法の対義語はアルパインスタイルというのがあり、

少人数で手早く登山するという、一般的な登山をやるということだな。

しかし、そのためには物資を切り詰め、ルート工作も時間をかけられない。

安全に対する備えができないということで遭難のリスクが高まる。

8000m峰のような厳しい環境でやるのは厳しいなぁと思う。


ところでエベレスト登山はネパール側と中国側それぞれに主要なルートがある。

ネパール側のルートは ルクラ という町に小さな空港があり、ここがスタート地点になることが多い。

ここから徒歩で1週間ぐらいかけてベースキャンプまで行くことになる。

この区間の物資の輸送手段はヤク(牛の仲間)も使われているという。

標高5364mのベースキャンプがヤクを使って物資を輸送できる限界である。

その先には崩落の危険があるアイスフォールがあるので、人が注意深く運ぶしかない。

このアイスフォールはネパール側からの登山の最大の懸念事項だという。


一方の中国側は物資輸送という点ではネパール側よりだいぶよい。

こちらの標高5150mのベースキャンプは自動車が入れる限界地点である。

ヤクで輸送できる限度はさらに先の標高6400m地点である。

ここに置かれるキャンプをアドバンスドベースキャンプ(ABC)と呼ぶそう。

というわけで輸送と言う面では中国側のほうがよさそうである。

これはゴミを運び出す側にとっても有効なのではないかと思う。

もっとも支援体制や難易度を考えるとネパール側の方がよいらしい。


というわけで難しい問題ですね。

地球で最も高いところに行きたいと思う人が多くいるのはそうだろうし、

その中で安全な登山が求められているというのもそうだろうと思う。

そうすると極地法の仕組みが求められることになるが、

この極地法は本質的にゴミ問題を回避しがたいということになる。

登山を諦めてもらえばよいが、それで納得するかって話だよな。

登山道を少しだけ県道から削る

山梨県が富士登山の安全対策のため、登山道の一部を県道から削ったという。

富士山の弾丸登山・混雑解消へ「秘策」 山梨県、道路法の適用外す規制案を2月議会に提案 (産経新聞)

道路法の規定では、登山者数の抑制を目的として通行規制はできない。

道路法46条では道路に危険がある場合か工事の場合に通行禁止にできるとある。

富士山の登山道が冬期に閉鎖されるのも道路が危険だからである。


そもそも富士山の登山道の主要ルートは静岡県道・山梨県道になっている。

静岡県側は下記2路線3ルートが登山口への道路と登山道で構成されている

  • 150 足柄停車場富士公園線: 須走ルート+ふじあざみライン
  • 152 富士公園太郎坊線
    • (新道) 富士宮ルート+富士山スカイライン
    • (旧道) 御殿場ルート

一方の山梨県側なのだが、吉田ルートが1本指定されているのかと思いきや、そうではないのである。

  • 701 富士上吉田線: 吉田口登山道
  • 702 富士精進線: 精進口登山道
  • 707 富士河口湖富士線: 富士スバルライン

このうち実際に山頂に通じているのは701号富士上吉田線のみである。


一般に富士山の吉田ルートと言えば、富士スバルラインで五合目まで往来するルートを指す。

吉田口登山道と吉田ルートの登山道部分は同じものではない。

登山口と登山ルート (富士登山オフィシャルサイト)

黄色の吉田ルートは登山道・下山道で2本引かれているのはともかく、

六合目または五合目で「富士スバルライン五合目」と「吉田口」に分岐している。

この吉田口と書いてある先にずっと進むと北口本宮富士浅間神社がある。

このルートこそが吉田口登山道、伝統的な登山ルートで県道701号線である。

なお全部が登山道ではなく、浅間神社~馬返は車両通行可である。

吉田口六合目または五合目 と 富士スバルラインを結ぶ登山道は吉田口登山道に含まれないのだが、

ここは精進口登山道、精進湖からの登山ルートを利用したものになっている。

精進口登山道は吉田口五合目より下が県道702号線となっている。

全区間が車両通行不可で純然たる登山道である。

一般的な吉田ルートというのは、富士スバルライン(県道707号線)を自動車で走り、

富士スバルライン五合目と吉田口の間で県道702号線を歩き、

吉田口登山道と合流してからは県道701号線を歩くという形だった。


で、山梨県は県道702号線の五合目ロータリー~泉ヶ滝の県道指定を外したわけですね。

これにより県道702号線が吉田口登山道から切り離された形になる。

そして道路ではなくなった登山道は県管理の登山道となる。

この区間の通行を1日4000人に規制、16時~翌2時の通行制限を行い、

さらには富士山保全協力金とは別の通行料(2000円)を徴収するという。

この通行料については山小屋がない下山道の安全対策にも使うという。

下山道も県道701号線には含まれていないので、これも県管理の登山道という形で整理するという。


ここからもわかるように吉田口登山道を歩く場合は規制対象外になる。

登山者が多くなるとは思えないルートなので問題ないのだろうが。

富士スバルラインから登山道に入るところで規制できるとスムーズで、

登山ルートの主要な部分は県道として管理できたほうがよいということなのだろうか。

精進口登山道の県道指定の意味が薄れるが、登山者は極少ないか。


山梨県側について言えばそういうことになるが、懸念は静岡県側である。

山梨県側で規制にかかるなら静岡県側に回ろうとならないか。

静岡県側については山梨県のような対策はできないという。

これは登山道が国有地のため、県道ではなくなると県の施設として管理できないためだという。

現状は様子見ということになるが夜間の通行規制については静岡県側でも実施する話がある。

山梨に続き静岡側も夜間入山制限 富士山の弾丸登山防止 (産経新聞)

ただ、山梨県側ほど強い対策はできないんじゃないか。


ところで富士スバルラインは有料道路だが、当然とは言えない事情がある。

本来、有料道路というのは建設費の回収が終われば無料開放される。

全国路線網の場合は徴収期間を2115年まで延長する計画もあるが、

とはいえ、これも老朽化対策の工事費を回収するという名目がある。

富士スバルラインについては本来は2005年に徴収期間が終わるはずだったが、

路線の特殊性もあって維持管理有料制度に移行している。

有料道路は有料であるうちは通行料から維持費を出すが、

無料開放されれば他の道路と同様に税金で維持することとなる。

しかし、それが不適な場合は維持費のために有料道路を続けることが認められている。

これが維持管理有料制度で富士スバルラインは 関門国道トンネル(1973年~)に次ぐ2例目である。


このあたりの考え方からも道路の通行抑制というのは難しいことがわかる。

基本的には道路というのは広く利用できるものと規定されている。

一方で登山道を道路として管理することで安全対策がやりやすい面もある。

道路である以上は基本的には税金を投じることになるわけだけどね。

このあたりのせめぎ合いから、富士スバルライン~吉田口登山道を結ぶ区間だけを県道から外すということになったのだろう。


以前、宮島訪問税の話を書いたときにも富士山のことに触れてるけど……

宮島訪問税対応のため

基本的には訪問者による超過コストを補うという考えがあるため、

訪問者を抑制するほどに高い税金を徴収するということは認めにくい。

また、税金の場合は公平な徴収が出来るかという問題もある。

沖縄県の離島や宮島は入域手段が船などに限られているので容易である。

現状の富士山保全協力金も静岡県側はルートが分散するため呼びかけが難しく協力率は今ひとつ。


そんな諸々の事情を考えたときに、登山道の一部を県道から外すのがよいとなったんだろうな。

山の公共性という観点で登山道というのは自由に利用できるべきだが、

県管理でそれなりの理由があっての制限ならば問題はないのかなとも思う。

とりあえずは吉田口登山道は規制対象外だし……

通行料も登山道の維持費や環境対策費は登山者が負担するのが相応だろう。

道路と考えると通行料の徴収というのはそぐわないわけだけど、

小中学校の通学路などの生活に密接した道路と登山道では全く違うわけですよね。

ただ、登山者に求めている富士山保全協力金と吉田ルートで徴収する通行料、

役割が重複している部分がある中で合理的な説明ができるのかという疑問はある。

最大の心配事は静岡県側の登山道の混雑かな。大丈夫ですかね?

山のトイレをどうするか

エベレスト(ネパール側の話だからサガルマータと呼ぶべきか)のトイレについてのニュースを見た。

「岩にあるのがそのまま見える」 エベレスト悪臭の主犯 (中央日報)

登山者に排便用封筒の持参を求めるという内容。

登山者が多く利用するキャンプ地の中には強風で地面が露出したところがあり、

そういうところでトイレをすると排泄物がそのまま飛散するという点が問題なようだ。


エベレスト登山は高所順応を含めてかなりの時間を要する。

その中でも滞在期間が長いのがベースキャンプと呼ばれる標高5364mのキャンプ地である。

実はこのベースキャンプについては行政が美化活動を行っており、

トイレについても便を貯留して運び出す仕組みがあるよう。

ただし、尿や雑排水についてはそのまま放出されている。

尿をそのまま放出して問題ないのかという話だが、当地の環境を考えればあまり問題はないかもしれない。

尿をそのまま放出した場合、生物の栄養となり、アオコの大量発生など考えられるが、

これほどの高地では生物がほとんどおらず、栄養を消費する生物がいない。

そして流下するなかで希釈されていくので、麓での影響は軽微と言えそうだ。


すなわちここで問題となっているのはベースキャンプより上での排便である。

それも滞在時間の長いキャンプ地での排便ということになる。

排泄物を分解する生物が乏しく、便は分解されず滞留してしまう。

キャンプ1とキャンプ3は氷雪の上のため、氷の中で滞留することになる。

これも問題ではあるけど、それ以上に問題なのが地面が露出したキャンプ2とキャンプ4である。

というわけでここでの対策が特に求められているということですね。


山のトイレといえば、日本では富士山のトイレ整備がよく知られている。

他の登山者の多い山でもトイレの整備が進められてきた。

浄化循環式、バイオ式、焼却式、あとはくみ取り式も一部ではあるか。

浄化循環式は接触材としてカキ殻を使ったものが多いのでカキ殻トイレとも。

一般的な浄化槽に似ているのだが、浄化水を洗浄水に再利用する点が異なる。

水道がなくても水洗化できることや、周辺に排水しないメリットはあるが、

汚泥や汚水の引き抜きは一定必要となる。運搬状況がよいところ向けか。

なので登山道に限らず、水道が使えないところで使われている方式でもある。


バイオ式はおがくずなどの担体に居着いた菌を使って排泄物を分解する方式。

富士山のトイレとしては最も数が多いタイプではないか。

基本的に撹拌だけすればよいので、この場合は処理に必要な電力も少なく済むが、

気温が低く、利用者が多いとなれば、バイオトイレもそこそこ電力を使う。

富士山ではこれがけっこう問題のようで、近年の登山者の増加に対応できない問題がある。

吉田ルート下山道トイレのおはなし

このトイレは富士山の中でも特に利用者が多いトイレだという。

利用者の多い吉田ルートで、かつ山小屋のない下山道にあるトイレだから。

バイオトイレは担体が水分量を調整するが、尿の水分に対応すると処理能力が下がる。

そこでここでは尿を分離して貯留する仕組みを取っている。

貯留した尿は運搬しているようだが、尿だけならさほど不衛生ではないということか。

なお、バイオトイレの担体は一定の周期で交換する必要がある。


焼却式は文字通りの排泄物を焼却する方式。

燃料を多く使うことになるのが欠点だが、焼却後は灰しか残らないのは便利。

富士山では一部の山小屋で使われているよう。

ただ、どちらかというとコンパクトさを生かしたキャンピングカー向けなのかなと見える。

能登半島地震で注目の「トイレカー」 水洗ならぬ“燃焼式トイレ”とは何か? (Markmal)

国土交通省の対策本部車に搭載されていることが紹介されている。これもキャンピングカーみたいなものか。


生物の働きが期待できない低温だと、焼却式以外で自己完結型の処理は難しいだろう。

こういう方式のトイレをキャンプ地に設置するといいんだろうなと思う。

ベースキャンプより先は運搬も大変なのでトイレの設置も難しいだろうが、

ここで書いた方式の中ではコンパクトなのも燃焼式である。

尿は分離して処理(尿はそのまま放出でも許容されているのは先に書いた通り)とすれば、

必要な燃料も節約できるかもしれないなとは思ったがどうだろう。


現状は尿の処理は求められていないとあるが、尿を飲用水にできればメリットはあるかもしれない。

現状は氷河から水を採取したりしているようだが、水質も懸念があるわけだし。

これについては山というよりは宇宙空間の話だなと思う。

国際宇宙ステーション/「きぼう」日本実験棟向け「次世代水再生実証システム」をJAXAより受注 (栗田工業)

国際宇宙ステーションの新しい水再生システムを日本で開発をしているという。

一般的な下水処理は生物処理での有機物の除去が主体である。

無機物は窒素・リンは富栄養化対策のために取り除くが、それ以外は放出する。

コンパクト化が求められていて、最終的に飲用水にすることもあり、これとはかなり異なる仕組みである。


まず、イオン交換樹脂で尿からマグネシウムイオン・カルシウムイオンを水素イオンに置き換える。

これらの成分は詰まりの原因となりやすいので先に取り除くと。

次に水の電気分解を行い、水の一部を水素イオンと水酸化物イオンにする。

この水酸化物イオンを使って有機物を分解する。主には水と二酸化炭素になる。

二酸化炭素と水素は気体として放出、各種イオンを含んだ水が残る。

この水を電気透析して陽イオンと陰イオンをそれぞれ濃縮、残った真水は飲用水になると。

電気透析は塩の製造に使われている仕組みと同じだが、陽イオンと陰イオンを別々の濃縮する点が異なる。

なぜ別々に濃縮するかというと、イオン交換樹脂の再生のためである。

ここで作った酸性水をイオン交換樹脂に通すと、マグネシウムイオン・カルシウムイオンを水素イオンに置き換えて再生できる。

イオン交換樹脂を使った方式は数あれど、薬剤なしで再生できるのは特色である。

こうして不要なイオンが集められた水が廃液として残ることになる。


エベレスト登山は長期間に及ぶわけで、そこに着目した対策でないとなかなか受け入れられないんじゃないかなという気はする。

ゴミ問題に対して、登山者自身に8kg以上のゴミの持ち帰りを求めているところだが、

実際にはこれを履行せず罰金を払うケースが多いようである。

登山全体にかかる費用に対して罰金は軽微な金額だし、安全面の問題もあるのだろう。

ベースキャンプについては行政がカバーしているので比較的よいのだけど、

その先は登山者の責任でやるようにと促しても、結局はやらないと。

ベースキャンプより先でも滞在期間が長いのが原因の1つだろう。

輸送が困難ならある程度は現地処理する仕組みが必要なんだと思うけどね。

auじぶん銀行とローソン銀行

昨日、ローソンの株式の半分をKDDIが買う話を書いた。

ローソンをKDDIが買う理由

そういえば両社共に銀行を子会社に持ってるんだなと思い出した。


KDDIの子会社には auじぶん銀行 がある。

KDDIと東京三菱UFJ銀行(当時)の出資で2008年に開業している。

インターネット専業銀行としては ジャパンネット銀行(現: PayPay銀行)、ソニー銀行、楽天銀行、住信SBIネット銀行 に次ぐ5行目である。

親会社はKDDIだが、三菱UFJグループにとっての戦略的な意味もあったようだ。

ただ、インターネット専業銀行の中では後発で、特色も薄いのが実情である。

実際のところ、この銀行は住宅ローンとカードローンで稼いでいるという。

そのカードローン「じぶんローン」は歴史をたどれば、東京三菱銀行(当時) と アコム が設立した貸金業、キャッシュワン に行きつく。


一方のローソン銀行は2018年までは ローソンATMネットワーク という会社だった。

元は銀行から(主に)ローソン店内のATMの管理を受託する会社として存在していた。

このATMをローソン銀行自身のATMに転換したという会社である。

名目上はいろいろな銀行のATMだったのが開業とともにローソン銀行のATMになったという形である。

ATMネットワークのための銀行としてはセブン銀行とイオン銀行が知られている。

ただ、イオン銀行は資産運用・融資・クレジットカード、さらには中小企業向け融資(日本振興銀行を継承)と、

手広く事業を行っているので、ATMネットワークのための銀行という印象は薄い。

ローソン銀行については、現状はセブン銀行と同様のほぼATMのための銀行である。


auじぶん銀行 はネット銀行として後発ということで顧客との接点が少ない。

ローソン銀行はATMの受託ビジネスだった頃と商売は大きく変わっていない。

そこでこの両社が合わさることで、ローソンを通じた金融サービスの提供に結びつけられるのでは?

と、こういうことを思いつく人はなんぼでもいそうな話である。

もっともローソンはKDDIの子会社にならないので、単純に合併とはいかないかもしれないが。


企業統合で傘下の金融業が注目を浴びたと言えば、Zホールディングス(ヤフー)とLINEの経営統合である。

Zホールディングスは傘下にワイジェイカード(現:PayPayカード)、ジャパンネット銀行(現:PayPay銀行)、One Tap BUY(現:PayPay証券)を抱え、

関連会社として決済サービスのPayPayもいた。(現在は子会社化)

一方のLINEはLINE Pay、LINE Credit、LINE証券を傘下に抱え、LINE Bankの設立に向けて動いていた。


しかし、実際には経営統合後の金融・決済はあまり変わっていない印象である。

PayPayとLINE Payはユーザースキャンの加盟店網を統合したが、

それを除けばお互い別々のサービスとして継続している。

クレジットカードもPayPayカード、LINE Creditがともに展開している。

LINE Bankは中止、LINE証券は提携先の野村證券に移管という形で撤退。

経営統合の影響というよりは投資が見合わないという判断だろうと思う。

現時点でLINE・ヤフーの統合がもっとも進んでいるのは広告やeコマースというのが実情である。


ローソンとKDDIの重複分野として金融・決済というのは気になるけど、

そう単純に統合できる話でもないんだろうとは思う。

ローソンはKDDIの子会社になるわけではないのだし。

ただ、auじぶん銀行とローソン銀行はもっといろいろ出来るんじゃない?

両銀行の状況を整理してそう思ったので、期待しておこうと思う。

ローソンをKDDIが買う理由

KDDIをローソンの株式の半分を取得するというニュースが出ていて、

なんで通信会社のKDDIが小売業のローソンを? となる。

ローソンの子会社を見るとローソンエンタテイメント(ローチケなど)やローソン銀行があり、

この手のサービス業は、ローソンはコンビニを、KDDIは通信を通じて提供するという点で興味があり、

その点で親和性があるという主張なんだろうが、それでもよくわからんなぁとなる。


それはそうとして、このKDDIによるローソンの株式取得というのは、

最終的に三菱商事とKDDIがローソンの株式を50%ずつ保有し、非公開化することを目的としている。

現在、三菱商事の出資比率は50.06%なので、わずかに50%を超えるが、

株式併合により三菱商事とKDDIの比率をぴったり50%にするという。

この結果、ローソンは三菱商事の連結子会社から持分法適用関連会社になるという。

当社子会社(株式会社ローソン)の異動(持分法適用会社化)に関するお知らせ (三菱商事)

実はこれが目当てなのでは? という指摘を見た。


子会社の定義は、議決権の過半数を持っているか、議決権の40~50%を有して取締役の過半数を送り込むなどの条件を満たす会社である。

議決権の過半数を有していると、基本的には連結決算に入れることになる。

重要度が低いとか、連結が実態に合わない場合はその限りではないが。

50%ちょうどや50%を少し割る場合でも子会社になっているケースはある。

最初に書いた持分比率40%台前半で連結子会社にした会社には注釈で「株主間合意により」とあったから、

持株比率50%以下だけど、他の株主との間で取締役の過半数を出すことに合意は得られているという意味なんだろう

(それでも連結子会社だ)

公開買付後はローソンは三菱商事とKDDIが取締役を半々出すという。

なお、公開買付者(=KDDI)は、本日付で、三菱商事との間で本株主間契約を締結し、本株主間契約において、本取引完了後の当社の取締役として、三菱商事が3名、公開買付者が3名をそれぞれ指名すること、当社の代表取締役を三菱商事及び公開買付者がそれぞれ1名ずつ指名することに合意しているとのことです。

こうなると明確にどちらかの支配下にあると言えないので、どちらの子会社にもならない。


三菱商事にとって実態として大きな変化があるとは思わないのだが、

連結財務諸表にローソンの負債・資産・損益が全て記載されていたのが、

ローソンの純資産と損益の50%(持株比率)だけが反映されるようになり、

連結財務諸表上は資本効率がよくなったように見えるという。

これが三菱商事の狙いにあるんじゃないかという指摘である。

ローソンにとっては非公開化により経営の自由度が高まることが期待される。


やはりよくわからないのがKDDIにとってのメリットである。

冒頭に書いたようにコンビニを通じたサービス提供と、通信を通じたサービス提供には共通点があるとか、

あるいはKDDIはau Styleの実店舗のネットワークを有しているが、

そこでローソンのサービスを導入するようなことも考えにはあるらしい。

でも、それだけではローソンの株式の半分を取得する動機には弱い気がする。

真の動機というのは金が余っていたからではないか。

直近の決算を見るとKDDIの連結決算では現金を6235億円持っている。

ローソンを買うのに使うのは5000億円、お金があるからローソンを買ったというのは納得感はある。真相はわかりませんが。

騒音シミュレーションには頻度もある

以前、関西空港・神戸空港の発着枠拡大のための飛行ルート案の話を書いた。

従来より低いところを飛ぶけどね

関空は離陸後早々に6つのルートに散らせることと、神戸は出発ルートと到着ルートから分離することが主な内容。

このルートに対する騒音シミュレーションの結果が出ていた。

新飛行経路案に係る環境検証委員会 (大阪府)


簡潔に言えば、住宅地の基準より厳しいLden52dBの範囲すら海上に収まるという内容である。

Ldenというのは1日当たりの騒音エネルギの平均値を表す指標で、

19~22時の騒音は5dB増、22~翌7時の騒音は10dB増で計算するというもの。

国の基準では住宅地では57dB以下、それ以外の地域では62dB以下となっている。

これより5dB厳しい数字で見ても海上に全て収まってしまいますよということである。


ただ、平均値というところに納得感があるかということは考える必要がある。

大きな騒音があっても頻度が低ければ小さな数字になるからである。

まず、そもそも空港を発着する便数というのはある。

便数の多い空港ほど騒音の影響は大きく見積もる必要があるとは言える。

次に風向きごとの頻度ですね。

伊丹空港では発着便の99%が滑走路を北向きに使うことが知られている。

風向き次第で飛行機が遅れる

この結果、南側の市街地への騒音は大きく抑えられていると言える。

でも、南向きに離陸することも稀にあり、その時は大きな騒音が続くことになる。

伊丹は極端だが、発生頻度の低い風向きのルートは低く見積もられる。


視界条件により騒音の範囲が変わることがある。

羽田空港では東側から着陸する場合、好天時は千葉市付近から海上を飛行し、空港近くで曲がるルートをとるが、

悪天候時には直線的に飛行するため浦安市・江戸川区付近まで陸上を飛行する。

このため陸域での騒音影響が大きくなりがちだが、頻度が低いので低く見積もられる。

しかし天候が悪い日は延々とこの状態が続くことになる。


時間帯により騒音の範囲が変わることもある。

Ldenでは深夜の騒音を大きく評価するので、深夜帯の騒音対策がより評価される。

関西・中部・羽田の3空港は深夜帯は海上に飛行ルート収めることで24時間運用を実現している。

このことに文句を言う人は誰もいないと思うけど。

逆にケチが付きそうなのが羽田空港の混雑時間帯に使われる飛行ルート。

市街地上空を通って着陸する理由

北側から市街地上空を通って2つの滑走路に向けて着陸していくので、

このルートが使われる時間帯は品川区・渋谷区周辺の騒音がかなり大きい。

ただし、1日最大3時間、それも南風(頻度は4割程度)のときのみである。

なので、Ldenで評価すると新たな騒音対策が必要な地区は発生していない。


というわけでLdenで見て小さいから騒音の影響は軽視できるとも単純には言えない。

とはいえ、関西・神戸の両空港の新しい飛行ルートはそこまで極端なことはないのかなと思った。

関空は飛行ルートを多く分散させることにより騒音影響を分散させているが、

特定の時間帯・特定の天候のときに集中するという性質のものではない。


Lden52dB未満の地域についてもいくつか試算が書かれている。

  • 48~52dB: 多奈川小島, 夢舞台★
  • 44~48dB: 岩屋, 鵜崎★, 釜口, 由良★, 大川
  • 40~44dB: 二色, 中川原★, 沼島

★を書いた地域は新しく騒音の影響を受ける地域である。

夢舞台は新しい神戸からの出発ルートの真下だね。

夢舞台自体は公園や国際会議場で、騒音も比較的受け入れられるとみたか。

そこから南北に離れて岩屋・鵜崎となると影響は減りますよと読める。

由良は友ヶ島水道の淡路島側、関空の発着ルートの分散の影響が比較的大きい。

いずれも海上で高度を稼ぐ対策はある程度効いているとは言える。


あとは実運用上の飛行ルートや高度がどうなるかですね。

可能な限り、陸上を飛行する高度を上げてほしいというリクエストは書かれている。

このルートを多少逸脱する飛行機も実運用上は発生する。

これは発着する飛行機の間隔を調整するために少し遠回りさせたり、

逆にショートカットさせる指示を出すことがあるからである。

その観点では淡路島のかなり広い範囲で騒音の影響を受けることになる。

ただ、頻度としては比較的低いのでLdenで見ると軽視されることにはなる。

そういうこともたまにはありますと素直に説明して納得を得るしかない。


そんなわけで数字だけで見ると見誤ることもあるという話だった。

とはいえ、やはりそれなりに理由があって世界的な基準になっているわけで、

これを低く抑えるための作戦自体は騒音対策に寄与する内容と言える。

住民票を失った人がすること

刑務所に収容された人は住民票が抹消されてしまうことがあるらしい。

「受刑者に便宜を図る必要はない」政府の通知が阻む社会復帰 マイナンバーカード、出所後もすぐ取得できない仕組み (47NEWS)

1人暮らしで刑務所に収容されると居住実績がないと判断され住民票が職権消除されることがあると。

(刑務所への転居手続きをしておけば問題ないが、やってないケースが多い)

マイナンバーカードは住民票を基礎に発行されるので、住民票がないと取得できない。


さて、こうして住民票が抹消された人が出すべき届出は何なのか。

答えは「転入届」である。

一般的に転出届と転入届は対になるものと理解されているがそうとは限らない。

転入届の本質は住民票を作ることにある。

わかりやすいのは外国との転居時で、国内で提出するのは転出届・転入届のいずれか一方のみである。

これは刑務所を出所した人にもあてはまることで、住民票が抹消されても、

出所後に住むところが決まれば転入届を出して住民票を復活できる。


ただ、転入届だけ提出する場合は書類の準備が面倒である。

転出届を出すと転出証明書が発行される。

そして、転出証明書と転入届を提出すれば転入手続きは完了する。

マイナンバーカードを持っている場合は転出証明書は発行されないが相当するデータが送信されている。

もしも転出証明書が提出できない場合は戸籍全部事項証明書と戸籍の附票が必要になる。

また、転入日の根拠となる書類が求められることもある。

外国からの転入時はパスポートなど入国日がわかる書類が必要だし、

刑務所からの出所の場合は、出所したことがわかる書類などか。


本籍地からの取り寄せに手間がかかるのはあると思う。

戸籍証明書の取り寄せには本人確認書類が必要である。

外国からの転入時はパスポートがあるからいいけど、

刑務所からの出所だとまともな証明書がなくて困るかもしれない。

実は今年3月から戸籍証明書が本籍地以外の市町村でも取得できるようになり、

すなわちは他市町村でも戸籍情報の確認が出来るので、戸籍証明書の提出が省略できる。

これは戸籍情報が電子化され、法務局で持っている副本のデータが一元管理された結果である。

これが実現すると本籍さえ書ければ、いきなり転入届を出せるのかな?


それで住民票が作成されてからマイナンバーカードの申請が出来ると。

ここに時間がかかるのは出生時・外国からの転入時に共通する課題である。

リードタイムの短縮が検討されているが、しばらくは手元の書類でやり過ごすしかない。


普通に生活していればそうそう遭遇することはない話だが、実はそういうケースがあるという話だった。

国内でも刑務所からの出所時に発生しうるというのは知らなかったが、

考え方は外国からの転入時と同じである。

道路状況が悪くてどうにもならない

先日、こんなニュースが出ていた。

「初動に人災」「阪神の教訓ゼロ」 能登入りした防災学者の告白 (朝日新聞デジタル)

こう言うのは酷ではないかと思うのだけど、「石川県の災害危機管理アドバイザー」ということで身内の話でもある。

有料記事なのであまり読めないかもしれないが。

過去の大地震と比較しても救援の難しさが際立っているのではないか。


今回の能登半島地震は交通の寸断が深刻で、七尾~珠洲は1ルートしか取れない状況が続いている。

苦しんでいる被災者を目の前にして、「道路が渋滞するから控えて」ではなく、「公の活動を補完するために万難を排して来て下さい」と言うべきでした。(略)

交通渋滞の問題ならば、例えば緊急援助の迷惑にならない道をボランティアラインとして示す方法もあったのではないか、と思います。

行政のやらないことをカバーするボランティア団体が各地にあるのだから、

なんとか来てもらえるようにするべきだったのではという話である。

でも、使える道路が1本しかない状況では、その道路が詰まってしまえば、

消防・警察の活動も患者搬送も水・食料の輸送も道路・水道の復旧もできなくなってしまう


阪神・淡路大震災のときは阪神間の交通網がズタズタにやられたわけだが、

一方で神鉄・北神で神戸市内に入るルートは早期に回復したため、

このルートで支援に入った人も多いという話を聞いたことがある。

被災地を大きく迂回して被害の大きな地域に近づくことができたわけですね。


今回、道路の寸断により孤立した集落がいくつも出たわけだが、

海沿いならば海からの往来ができるのではないかと期待したところもある。

能登半島の特徴から海上輸送に期待したところはあるが、限定的な活躍に留まっている印象である。

港が被災したこともあるのだが、海況が悪いのもあるようだ。

また、ヘリコプターによる航空輸送も天候の悪化に苦しめられている。

冬の日本海側ということでこのあたりの状況がよくない。

陸路は天候に左右されにくいが、道路状況の悪さはなかなか打開できない。


これらの状況は民間団体だけでなく、公的な救援活動にも影響しており、

緊急消防援助隊の投入も小出しで、救命ニーズに追いついていない。本来は「想定外」を念頭に、迅速に自衛隊、警察、消防を大量に派遣するべきでした。

それができないのは道路状況の悪さもあったわけですよね。

そこをバイパスして海から入るという方法が取れればまた違ったのだが、それができる状況にはなかったのだろう。


七尾あたりまでなら比較的早期に2ルート以上取れるようになっていたし、

富山県側の氷見もそれはそれで被害が大きい地域だったし、

そういうところでは早くから民間団体も活動に入れたんじゃないかと思う。

能登地域といっても、交通状況は一律には言えないところがある。

これらの地域でも避難の長期化は避けられない状況で、継続的な支援が期待されているところはある。

でも奥能登に比べるとだいぶ被害は軽く、支援ニーズが低いことは確かか。


耐震性を欠く建物が多かったという事前の対策における課題や、

人口が少なく高齢化が進んだ地域ゆえの課題もあったことは確かである。

一方で同じ県内の加賀地域への2次避難という選択は比較的とりやすかった。

ただ、これもなかなか進んでいないようである。

加賀側の受け入れ体制については全く問題ないのだが、

なにぶん遠いので2次避難をためらう人が多いようである。


いろいろ調べてみると医療・介護の体制を継続させることに難しさがあるよう。

例えば、介護施設の入所者だけが加賀に避難すると、従来の体制が維持できなくなってしまう。

介護施設の職員も一緒に避難すれば体制は維持できるが、職員には家族もいる。

奥能登では中学生・高校生が加賀地域に避難して授業を受ける話がある。

学校の被災が深刻で、かつ避難所に使われている状況からすればよい話だが、他の家族と離れる点に課題がある。

その家族というのも実は能登で医療・介護に従事していることが多いようだ。

すなわち医療・介護が必要となる人がいれば、動くことが出来ないのである。

高齢化の進んだ地域というのは相対的にそういう職業の人が多くなる。

全部一気に動ければよいが、そこまでの踏ん切りが付くのは孤立集落ぐらいなのだろう。


集落全体で加賀地域への2次避難を選んだ地域の中には、道路の復旧が見通せない地域もいくつかあるのだと思う。

こうなると元のところに戻るというのはなかなか現実的ではないかもしれない。

制度的なことを言えば、防災集団移転ということで災害の危険がある地域がまとまって移転する制度がある。

津波・洪水・土石流などで被災した地域は再び被害を受ける可能性があるため、

この制度で安全な地域に移転するという方策が考えられる。

特に洪水被害が想定される地域だと、移転で引堤などの河川改修に必要な用地が確保できるメリットもある。


ただ、今回の地震は土砂災害による被害が大きく、そこで使えるのかはよくわからない。

今後も集落への土砂災害の危険があるとなって、地域で合意できれば防災移転もありうるが、

高々道路の寸断に留まるとなれば、対象にならないかもしれないし、

例え可能だとしても地域の合意形成が難しいかもしれない。

そうはいっても高齢化の進んだ地域では現地での再建ができない人も多いし、

再建を急いで地域外に転出する人がでてくることはやはり避けられない。

元いたところに戻れないにしても、早い内に能登には戻したいところですが。


と、交通の寸断は今後の生活再建にも尾を引く話である。

地理的特性を考えればやはりなんともしがたいところはある。

事前の耐震化にしても、あまりに厳しい揺れだったので、どれぐらい功を奏したか。

いろいろ制約がある中ではよくやってんじゃないかと思うんですけどね。

ただ、それが十分ではないですねと言われれば、それはそう思いますけど。

戸籍の附票からマイナンバーカード

今年5月から外国に住む日本人もマイナンバーカードを所持・取得できるようになる。

マイナンバーカードは住民票を元に発行されるため、外国に転出すると無効になる。

日本に再度転入するときのマイナンバーの確認書類として返却はされるが、

証明書としての効力は失うし、さらに言うとマイナンバーも無効である。

この状況が今年6月から変わるわけだが、実現方法が少し不思議な方法である。


「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」

長いので番号利用法とか番号法とかマイナンバー法とか言われてますが、

マイナンバーとマイナンバーカードに関する事項はここで定められている。

マイナンバー(個人番号)の定義はこうなっている。

「個人番号」とは、第七条第一項又は第二項の規定により、住民票コード(略)を変換して得られる番号

住民票コードを変換といっても一定のルールで変換するという意味ではないが、

この規定より住民票がある人にはマイナンバーを付与するという意味になる。

外国人でも住民票を作成する対象となればマイナンバーが付与される。

逆に日本人でも住民票がなければマイナンバーは付与されない。


マイナンバーカード(個人番号カード)の交付は現在はこう規定されている。

市町村長は、政令で定めるところにより、当該市町村が備える住民基本台帳に記録されている者に対し、前条第一項の申請により、その者に係る個人番号カードを交付するものとする。

ここからマイナンバーカードの発行対象が住民票のある人で、住民票のある市町村が交付することが読み取れる。

なお、実際のマイナンバーカードの申請先はJ-LIS(地方公共団体情報システム機構)で、

市町村の窓口ではJ-LISで作成されたマイナンバーカードに電子証明書を入れて渡すという扱いである。


この規定は今年6月からこのように変わる。

市町村長は、政令で定めるところにより、当該市町村が備える住民基本台帳に記録されている者又は当該市町村が備える戸籍の附票に記録されている者(国外転出者である者に限る。)に対し、前条第一項の申請により、その者に係る個人番号カードを交付するものとする。

「戸籍の附票」というのが出てくるのが変なところである。

戸籍の附票はこれまでの住所の履歴を記載したものである。

家族関係を記載する戸籍は戸籍法の規定によるが、戸籍の附票は住民基本台帳法で規定されている。

市町村長は、その市町村の区域内に本籍を有する者につき、その戸籍を単位として、戸籍の附票を作成しなければならない。

国外転出届を出すとどこの市町村の住民票にも記載されなくなるが、

戸籍がある日本人ならば、本籍地の市町村に戸籍の附票があるので、

それを元にしたマイナンバーカードの発行はできますよという意味になる。


この法改正では戸籍の附票の記載事項に住民票コード・マイナンバーを加える内容もある。

戸籍の附票のネットワーク化を意識したもので、住民票と戸籍の附票の結合が可能となる。

戸籍の附票は住所の履歴を表し、住民票同士をつなぐ役割があること、

戸籍の附票に書いてある本籍・筆頭人のデータで戸籍との結合が可能となること。

(ここで戸籍業務ではマイナンバーは使用する必要はない)

そういう思惑もあって、戸籍の附票を基本としたシステムにしたらしい。


本籍地の市町村というのは住所地からは遠く離れていることも多い。国外転出ならなおさらである。

この手続きのために本籍地の市町村に行かないといけないのか?

まず、国外転出届の提出時にマイナンバーカードの追記、電子証明書の発行を行うのは、

これは転出届を行う市町村で問題ないようだ。転出届を出した時点ではまだ住民なので。

(国内の転出の場合は転出時には何もせず、転入先の市町村で対応する)

新規発行・更新の場合は、今年6月時点では本籍地の市町村のみ対応だが、

領事官を経由して本籍地に申請することも可能となる規定が追加されており、

近日、在外公館でもマイナンバーカードの受取・電子証明書の更新が可能となる見込みである。


あと気づいたのは、生まれてからずっと国外在住だとマイナンバーカードの発行ができないんですね。

「国外転出者」の定義は国外転出届を出した人であるとなっている。

一度も日本国内に住所を置いたことがない人はこれに該当しない。

一度も住民票が作られたことがない人は過去のマイナンバーが存在しない。

なのでマイナンバーカードの発行ができないのではないかと見ている。

(マイナンバー付与以前に国外転出届を出した人もマイナンバーがないのは同じなのだが)


パスポート以外に日本国民であることをもって発行されるIDカードがないのはどうなんだという話は以前よりあった。

住民基本台帳カード、後のマイナンバーカードは住民票があれば誰でも発行を受けられる点で画期的なIDカードだった。

ただ、住民票に関する業務は市町村の所掌である。

このため当初は市町村をまたぐ住所変更をすると無効になるという問題もあった。

この問題は住民基本台帳カードの時代にすでに打開され、

転入後の市町村で書換を行うことで継続利用できるようになったが。


マイナンバーカードになってからはカードの作成などはJ-LISに統合され、

J-LISの運営にはデジタル庁も多く関わるようになり、国の関与は増えたが、

それでもマイナンバーカードの発行主体は市町村である。

国外転出者でさえ戸籍の附票を管理する市町村を発行主体にしているし、

戸籍の附票のネットワーク化の成果という建て付けがある

そこにこだわる必要があるのかという話はあると思うのだけど。