今日は休暇だったわけだが、横浜に出かけていた。
意外にもこれまでろくに行ったことがない都市である。
通過したことはあるのだが。
うちから神奈川県は近いはずなのだが、なんとなく近く感じられないところだ。
なんでだろね? 距離の割に遠回りにならざるを得ないからかな。
東京・渋谷駅から東急に乗って、横浜駅を突き抜けて、終着駅の元町・中華街駅で降りた。
駅を降りて南側出口を出ると、すぐに「港の見える丘公園」があった。
せっかくなので入ってみた。
階段を上がっていくと壊れた建物がある。なんと、元フランス領事館の建物なのだという。
ここはフランス山というのだが、開港後に一時フランス軍が駐屯し、後に領事館の立地した小高い丘ということで命名されたものだ。
このあたりはまだ眺めはよくないが、この先に眺めのいいところがある。
ただ、目前は都市高速が錯綜するところでちょっと……けど、大きな舟が何隻か見えるので、まず横浜港を見るにはよいところか。
ところでもともと横浜は神奈川に隣接した大してなにもない村だったのだという。
神奈川港を開港すると言ったはよいが、神奈川ではなく横浜に外国人向けの施設を整備したという経緯がある。
今となっては神奈川港も含めて横浜港となっているし、横浜市の中に神奈川区があるが、実は神奈川の方が港としては古い。
同じことは神戸と兵庫にも言え、兵庫港を開港するといいつつ、その隣の神戸とかいう大してなにもなかった村を開港地にして、
今や兵庫港も含めて神戸港になっているし、神戸市の中に兵庫区がある。
そんな経緯も似ているが、雰囲気も似たようなところは多く、山手には洋館などかつての居留地の名残が残っている。
港の見える丘公園を出て歩くと外国人墓地にぶつかった。日本ではあまり見ない形の墓が塀越しに見える。
そういう土地なんだよね。
下ってきて、海の方に行くと、山下公園にたどりつく。横浜港のウォーターフロントの1つですかね。
ここに氷川丸という船がある。日本郵船がかつて運用していた貨客船で重要文化財に指定されている。
NYK LINEと書いたタラップから乗り込むことができるようになっている。
ちなみにNYKは日本郵船(NIPPON YUSEN KAISHA)の略称。商船三井のMOLと同じことだ(商船三井をどうすればMOLになる?)。
世界的にも大きな船会社で、日本の船会社の中でも特に長い歴史を持つ会社である。
日本郵船歴史博物館とのセット券を500円で買って入る。
この氷川丸はシアトル航路のために造られた貨客船である。
戦時中は病院船、戦後は引揚船として使われた時期もあったが、シアトル航路に復帰し1960年まで活躍した。
シアトルというのはアメリカ西海岸ではかなり北の方にあるのだが、最短経路で日本~ニューヨークを結ぶ上での陸海接続点によかったのだ。
ちなみに横浜港からシアトルまでは13日間の船旅となる。そんなもんなんだね。
貨物輸送に期待するところが大きかったのだが、飛行機が普及する以前は人も船で移動していたので、そこにも力を入れていた。
日本郵船の旅客サービスは世界的にも評判が高かったそうで、そのことが船の中でもあれこれ紹介されていた。
もっとも豪華なのは1等の話で、3等は幾分庶民的である。3等でも雑魚寝ではなくツーリストベッド相当となっていた。さすがにそうか。
料理も1等はフランスから呼び寄せた料理人直伝の洋食だったり、すき焼きパーティーをしてみたり、相当豪華だったそうだが、
3等の料理は日本の家庭料理そのものだったそう。まぁ外国人客が多い1等との対比でそうなるんだろうが。
海から離れると、中華街の入口が見えてくる。
横浜の中華街は有名だが、雰囲気はともかく、とても広いのが印象的だった。
歩いても歩いても中華街の景色が続くのだから驚く。ただし、その分雑然としているが。
平日なので比較的空いていたのだと思うが、それでも昼時になると人がぞろぞろと入っていく様子が見えた。
これ休日に来ると大変だったんだろうな。今日はすんなり昼ご飯食べられたけど。
なぜか甘栗を売る店が多く、「悪質な甘栗販売に注意」という看板が立てられていたのが印象的だった。
甘栗に限らないけど、客引きがひどいのは確かにそうかもしれない。
また海側に向かって歩く。向かうのは大さん橋国際客船ターミナルだ。
というのも港の見える丘公園からも山下公園からもえらく目立つ大きな船がいたからである。
一体どこの船かなと思って歩いて行くと、なんか見たことがあるファンネルマークのような気がした。
そしてさらに近づいて見てみると「にっぽん丸」と書かれている。商船三井のクルーズ客船ですね。
国際客船ターミナルってどんなんなんだろと思ったらだだっ広い空間とCIQがあるだけだった。
定期航路は来ないからね。クルーズ客船が来たときだけ稼働するターミナルだ。
なお、にっぽん丸は国内航路での活躍が多いようで、今日も国内航路だったようでCIQはやっていなかった。
その対岸あたりに赤レンガの建物が見えるが、赤レンガ倉庫である。
といっても今は倉庫ではなく、商業施設なのだが。1989年まで現役の倉庫だったものを改装したものだ。
当然のことながら倉庫であったときから手を加えられた部分も多そうだが、一方で倉庫時代の構造をつぶさないようにした跡もある。
あまりにきれいに整えられすぎて、かつての港の姿がくっきり見えるわけではないが、
それでもかつてこういうものがあったんだということを残すものになっているのは確かか。
さらに進むとみなとみらい21地区に入っていく。オフィスなどが建ち並ぶ姿が見える。
すると帆船、日本丸が見えてきた。かつて練習船として活躍した船である。
なお、日本丸は二代目がいて、練習船としての役目はそちらが引き継いでいる。
今は帆船は実用で使われることはあまり多くないが、船員養成の観点では必要なものとされている。
後で知ったのだが、日本丸が保存されているドックはもともと三菱重工業 横浜造船所のドックだったそう。
その横浜造船所が移転した跡地とその周辺の埋立地がみなとみらい21地区だそうで、
日本丸が保存されていることには、かつてここに造船所があったことを表すという意味もありそうだ。
歩いて行くとパシフィコ横浜が見えてきた。有名な展示場だがこんなところにあったのね。
海に近いらしいとは聞いていたが、確かにこれは海の近くだな。
かつて日本一高いビルだったランドマークタワーもこのあたりである。
ちなみにランドマークタワーの高さは296m、あべのハルカスが日本一になったと言っても300mだから大差ない。
しかもランドマークタワーは当初、もっと高くする予定だったのだが、羽田空港に邪魔されてこの高さになったという経緯がある。
そういう経緯を考えると本当はすごいビルなのだ。
このあたりは高層ビルが多く、ランドマークタワーの隣にそびえ立つクイーンズタワーも相当な高さだ。
富士ゼロックスと日産の巨大なビルも見える。日産はここが本社なんだね。横浜に本社があるとは聞いてたが。
ここまで来ると横浜駅は目と鼻の先である。そごうが現れた。
最初に横浜は通過したことはあると書いたが、その通過地点こそが そごう の1階にあるバスターミナルなのだ。
ここから木更津行きのバスに乗ったことがあると。
新横浜駅まで新幹線で来て、電車で横浜駅に来たら、そごう のバスターミナルからアクアライン経由のバスに乗ったと。
そんなことを懐かしく思いつつ、横浜駅から電車に乗って東京経由で帰った。
以前、会社の人に「神戸に行ったが、横浜に雰囲気が似ていた」という感想を述べていた。
確かにそうだなと思った。僕に言わせれば横浜が神戸に似ているという話になるのだが。
歴史ある港の近くに開港地として作られた新しい港町ということで似たような見た目になるのも道理なのかもしれない。
市街地にオフィスが建ち並び、山を切り開いて宅地が造られた点も似ている。
ただし、横浜市はこんなにオフィスが建ち並んでいるのに、雇用都市圏を調べると東京都市圏の一部に過ぎないとされている。
横浜市内には横浜都心に行くよりも東京に行く方が便利な地域も含んでおり、東京への通勤が多いということで、
統計的処理によれば東京都市圏の一部という扱いにしかならないのだ。
とはいえ横浜が大都市でないというわけはなく、東京の衛星都市として重要であることはみなとみらい21地区あたりの姿を見れば明らかだ。
広い横浜市からすれば一部に過ぎないのだけど、それなりに重要なはず。