百貨店の移転先のビルは

甲府にある百貨店「岡島」が移転したという話がニュースになっていた。

この話は少し前に聞いていて、既存のビルに移転するというので、

それは百貨店と言えるのかと思ったが、3フロアということで、

確かに従来の1/7という大幅な売場面積減ではあるのだけど、思ったより百貨店としての体裁は保っている印象。


一体、移転先のビルは元々何があったのか?

移転先は「ココリ」というショッピングセンターで、2010年開業である。

山梨県立宝石美術専門学校とマンションと一体となった再開発ビルである。

この商業フロアがココリなのだが、ほぼずっと空きが目立っていた。

このような経緯のあるビルなので、賃料は割安にしても岡島が埋めてくれるなら、

そっちの方がよっぽどよいという判断はあったのではないかと思う。

岡島にとっても広い店舗を維持するコストや旧店舗の売却益を見たときに、

ココリへの移転というのはかなり理にかなった選択だったのだと思う。

岡島の移転が決まったことで、入居していた店舗は移転・閉店をしている。


さらにさかのぼると、ここには オギノ の経営するショッピングセンターがあった。

オギノは山梨県の地場スーパー、衣料品を扱う店舗もありGMSの側面もある。

オギノの歴史を見ると1958年に「紅梅町に木造平屋建て、300㎡の服地専門店オリオン店を開設」とある。

これが現在のココリの敷地にあったオギノの店舗を表している。

(紅梅町は現存しない町名だが、ココリの「コ」は紅梅町から取られたそう)

その後、1991年は「パセオ」というファッションビルとなっている。

この背景には岡島や2019年まで存在した山交百貨店との対抗があったそう。

しかし、店舗数の減少もあり、2007年に複合ビルへの改築に着手した。

以後、オギノはこの場所でのショッピングセンターには関わっていない。


僕にとって甲府というのは、徳島と並んで寂れた街という印象が強いところだが、

元が立派だったからこそ寂れたという印象を受けるのだし、

さらに言えば甲府は元々の商業集積がかなり高かった。

近年まで岡島と山交百貨店の2つの百貨店があったこともそうである。

(山交百貨店は日本百貨店協会に加盟していなかったが、間違えなく百貨店だった)

さっき書いたパセオなど、多くのショッピングセンターが存在していた。

しかし、2000年前後からこれらが一気に崩壊していったわけである。

それでも岡島は踏ん張っていたし、山交百貨店の建物はヨドバシカメラになるなど、

かつての商業集積を思えば寂しいが、一定程度の集積は残っていると言える。


2000年前後から甲府市街の商店街の崩壊が進んだことは、

郊外のショッピングセンターが充実する中で、自動車で市街地に来ることの不便さが際立つようになったということだと思う。

これはまさに県庁所在地であるがゆえで、官庁街でもあるんですよね。

この点でニーズに応えられなかったということであろうと思う。


岡島の旧店舗は商業施設とマンションからなる複合ビルになるが、ここには岡島は関与していない。

ココリもそうだけど、商業施設→マンションを中心とした複合ビルという流れなんですよね。

中心市街地の商業地区なので、商業フロアを設けないわけにはいかないが、

改築のモチベーションはほとんどマンションという実情ですよね。

果たして改築後の商業フロアはどう使われるのか。気になるところはある。


岡島にとっては思ったほどの規模縮小にはならないものの、

従来は持て余した売場にジュンク堂書店、大塚家具、好日山荘など入居させていた。

ただ、ココリへの移転によりこれらを入居させる余裕はなくなる。

では、これらの店は近隣に移転したのかというと単純な閉店である。

これらはいずれも山梨県内に唯一の店舗である。

これらの店舗は岡島の本業の衰退により、甲府にやってきたと言えるし、

閉店しても元に戻っただけなんだけど、残念に思う人は多いと思う。


2020年に百貨店の閉店が相次いだ話を紹介している。

消える百貨店はなぜ

大沼(山形市) と そごう徳島店 はそれぞれ県内唯一の百貨店の閉店である。

ただ、元々、山形には仙台の藤崎のサテライトショップを設けていたし、

徳島についてはその後、三越高松のサテライト「三越徳島」が入居した。

百貨店というのは店舗外でも売上を稼げる商売である。

藤崎は東北各地にサテライトショップを設けて、これらを刈り取ってきたし、

三越伊勢丹は東京と各地の店舗をつないでのリモート百貨店に活路を見いだしている。

この流れから徳島への出店を選んだとみられる。


岡島が規模縮小しても踏ん張ったということにはいろいろな意味があると思う。

かつての競合の相次ぐ撤退、百貨店という商売の特異性、

そしてココリという一度失敗したショッピングセンターの存在と。

縮小してそれなりにやっていけるならそれはそれでいいのかもねと。

小規模百貨店の老朽化・陳腐化対策としてはアリなのかもね。

そこまでして残したい百貨店は県内唯一とかそういうところに限られるだろうが。