ジ・エベレストの出走枠の仕組み

香港のカーインライジングがジ・エベレストへの出走のためオーストラリアに渡っている。

昨年も出走して優勝、連覇を目指しての出走である。

それに関して見ていると、出走にあたっては香港ジョッキークラブが確保した出走枠を使用するとのこと。

香港ジョッキークラブはカーインライジングのために出走枠を買ったのか?

これは半分は本当であるが、それ以外の意図もあったらしい。


ジ・エベレストは芝では世界最高賞金、1着700万A$(約7億円)である。

特に1200mではこれほど高い賞金のレースは類を見ない。

2017年に新設された比較的新しいレースで、この分野では早々世界トップクラスの評価を得たが、2023年までは無格付(リステッドですらない)だった。

ここには春(南半球なので10月頃)にメルボルンカップを筆頭に大レースを集中させるRacing Victoriaと、

気候のよい春にジ・エベレストなど高額賞金レースを続々新設したRacing NSWの対立があった。

2024年にジ・エベレストとオールスターマイル(VIC州)のG1格付けが認められ、

それに続き新設レースの格付けも順次行われたが、その中でまた別の問題が発覚して……

実質的に競馬先進国ではない

このあたりのゴタゴタの発端となったレースでもある。


ジ・エベレストの高額賞金は出走枠(スロット)を1枠70万A$で販売する仕組みがある。

スロットは12枠あり、70万A$×12枠=840万A$なので、これで賞金の8割程度は賄える。

この方式はアメリカのペガサスワールドカップ(2017年新設)が当初採用していたが、

2020年にはこの出走枠を販売する仕組みがなくなり、賞金が引き下げられた。

これにならったジ・エベレストではこれが続いているというわけである。


これまでスロットは馬主が所有馬の出走を目論んで買うものだと思っていた。

ただ、そのようなことができるのはゴドルフィンなどの大馬主に限られる。

というのも単年で買うのはいろいろ難しい事情があるのだそう。

そのため毎年出走が見込まれるような馬主・生産者でなければ買えないのである。

一方でサラブレッドのセリを運営するInglis、馬券発売を行うTABのような名前もある。

そして香港ジョッキークラブ(HKJC)だが、Australian Turf Club(ATC)との連名で書かれている。

ATCはこのレースの主催者、1枠の出走枠を自身が確保しているわけである。

それをHKJCに貸して、カーインライジングを出走させているわけである。


ジ・エベレストの出走枠は実態としてはスポンサー推薦として機能していると言えるが、

実際には出走枠の所有者は有力馬のオーナーに賞金の一部を分けてもらうなどの取引を行っている。

定価は70万A$ですが、出走直前に買おうとするとこの値段では難しいかもしれない。

実のところ、HKJCとATCの取引もいろいろあったようである。

国を超えた大物同士の協力、カーインライジングのジ・エベレスト遠征「出走枠購入」の舞台裏 (Idol Horse)

HKJCが出走枠を買う大義は香港国際競走である。

香港から遠征する馬があればそのために使うが、そうでなければ香港スプリントに転戦する意向のある馬に使うと。

香港から遠征するにしても、その後には香港スプリントに出てねという話ですね。

ATCにとってもWorld Poolという馬券の国際発売システムを運営するHKJCとの関係を深めることにはメリットがある。

そんなわけで昨年・今年と2年連続でこの形で出走枠が貸し出されている。


ジ・エベレストはJRA海外馬券発売の対象レースとなり、

日本から出走馬がいれば馬券発売が行われるとみられる。

ただ、スプリントというのは日本が世界の強豪になかなかかなわない分野でもある。

その中で勝ち目があるとなれば、ぜひ遠征したいと考えるが、

一方で出走枠をそのために買うのはおおよそ困難で、すでに出走枠を持っている団体との交渉になる。

その点でも難しいのだろうかなと思う。

スロットの所有者にはYulong Investmentsのように日本と縁のある企業もありますけどね。

オーストラリアのロードカナロア好きの正体

引退後はうちで種牡馬しないかというオファーに応じて出走なんてシナリオもあるかもしれない。