参議院議員選挙の選挙区の行く道

今日は衆議院議員選挙の日ということで選挙の話。

ただし、衆議院ではなく参議院である。

衆議院のことも書きたいけどそれは明日以降。


参議院議員選挙の選挙区は基本的に都道府県単位だが、

鳥取・島根と徳島・高知は2県で1つの選挙区となっている。

選挙区選出の参議院議員は148人と比較的少ない上に半数改選ということで

都道府県単位の選挙区では1票の格差がとても大きくなってしまう。

そこで特に問題が多かった4県について2県で1選挙区としたと。

これで1票の格差は多少緩和されたが、上記4県以外で最も人口が少ない福井県は、

人口比で言えば改選数0.47相当のところ改選数1なので格差は依然大きく3倍程度になっている。

上記4県の対策ではぬるいってことだな。


一方で全国知事会がこんな要請をしているという。

「参議院選挙における合区の解消に関する決議」に係る要請活動について (全国知事会)

課題は投票率の低下である。改選数1となれば県内から候補者が立たないこともある。

このため「合区の確実な解消」を求める決議がなされたと。大阪府は反対したそうだが。


後で書くような事情もあるので1票の格差是正は必要と考えているのだが、

1票の格差を是正しつつ、確実に各県に縁故のある候補者が出る方法があるんですよね。

それがシンガポールの議会選挙で行われている集団選挙区である。

「かの悪名高き」と言うべき制度だが。


シンガポールでは中華系以外の少数民族の議会参加を促す制度として集団選挙区が導入されている。

一部の選挙区、といっても選挙区選出の85%が集団選挙区で選ばれているのだが。

4~5人のグループで立候補し、そのうち1人以上は中華系以外の候補を含む必要がある。

最多得票を得たグループが全員当選するという仕組みになっている。

これにより一定数は中華系以外の議員が議会に参加できる仕組みである。


しかし、この制度というのはシンガポールの与党、人民行動党(PAP)に有利な制度であると言われている。

シンガポールの議会というのはPAPが議席のほぼ全てを占めている。

小選挙区制だと選挙区によっては他党もなんとかなったりするのだけど、

少数民族の議会参加の名目に、そういう選挙区をつぶすように集団選挙区を導入したのである。

で、そういう集団選挙区には目玉となる候補者を立てておけば、総取りできてしまうと。

もっとも最近はPAP以外が集団選挙区で勝つケースも出ているようだが。


例えば、兵庫県と四国4県の選挙区を作る。すると改選数5~6ぐらいはいけるだろう。

その改選数と同数のグループを作り、その中には各県と縁故ある候補者を1名以上含まなければならないとする。

そうすると県にゆかりある候補者がいないという事態は起きなくなる。

その上、兵庫県民でも徳島県民でもおなじ1票である。

全部合計して当選するグループが決まるからである。

1票の格差は是正され、議員の地理的バランスも確保される。

この応用でグループのうち少なくとも2人以上は男性と女性を含むこととすれば、

議員の男女比率もある程度は確保されることとなる。


でも、これを良い策だと考える人はあまりいないと思う。

グループを組んで立候補するには組織力のある政党でなければ難しい。

集団選挙区制のような方法は大政党に有利な方法で、だからこそPAPは導入したわけである。

日本だと具体的な議員を選べないというところに抵抗感があるかもしれない。

○○候補と××候補がグループになっている中で、

○○候補を選びたいとなれば、××候補は必ず付いてくるのである

こういう形でオマケで当選者が出る仕組みへの抵抗は強そうだ。


極端なことを言えば、全国1区の集団選挙区制にして、

男女比率・地理性・年齢などのバランスが取れたグループで必ず当選するようにする。

そうすれば確かに意図したバランスは得られるかも知れないが、全員同じ政党である。

そんなの議会として成り立ってないだろうというのが普通の考えであり、

それならば年寄りの男だらけ、大都市圏出身者だらけでも、党派間のバランスが取れた議会の方がよっぽどマシである。


そもそも参議院の1票の格差というのは二重の格差があって、

人口が小さい県には議席が割りあてられすぎというのもそうだけど、

人口が少ない県は小選挙区制(改選数1)、多い都道府県は大選挙区制(改選数2以上)という点もある。

改選数1の県というのは自民党が強い傾向にあり、それを総取りしていくのである。

改選数2以上で総取りできることはそうそうない。だいたいは複数の政党で議席を分けることとなる。

このような格差により参議院というのは相当に歪められていると考える。


衆議院が小選挙区制主体ならば、参議院は大選挙区制と比例代表制主体の方がよいのではないか。

衆議院の優越も考えれば、参議院にはそれぐらいの差があってもいいはず。

そのためには、複数県を組み合わせてやっと改選数1にするのでは足りなくて、

もっと大きな選挙区を組まないと参議院としての特色は出せないのではないか。

しかし、そのような広大な選挙区での選挙運動は相当に大変だろうと。

そういう事情も理解は出来る。


ただ、少なくとも徳島県・高知県を1選挙区にしたのは間違いで、

地理性を考えれば高知県と組めるのは高速道路でつながっている愛媛県しかないわけだし、

徳島県は兵庫県か香川県と組むという形でなければならなかっただろう。

こんな選挙区で改選数1だとそりゃ興味も失われますよね。

四国選出の議員数をできるだけ減らさないようにと考えたのかもしれないが、

人口比からすれば四国の選挙区選出は2人程度が相応である。

ここについては政治の責任ってのは重いと思いますけどね。

なんでこんなわけの分からん選挙区作ったのって。