小切手を使わないから払戻請求書が必要

南都銀行本店が来年2月に移転するというニュースを見た。

現本店近くの近鉄奈良駅前出張所は昨年10月に開業済で、

新しい本店のすぐ近くにある大宮支店の集約は5月に行われる。

同時に本店に集約予定だったJR奈良駅前支店は直近の取扱量が多いそうでいったん延期。

延期というのは新本店開業後の状況を見て集約可否を再判断するのか。


その南都銀行のプレスリリースの中に変なタイトルのものがあった。

当座預金払戻請求書の新設について(pdf)  (南都銀行)

他の銀行でもこういう発表がされている。

払戻請求書というのは窓口で預金を引き出すとき記載する帳票である。

必要事項を記載して押印して提出する。最近はあんまりやらんかな。

どこが新設なんだ? と思うわけだが、ポイントは「当座預金」である。


当座預金というのは一般の人にはなじみのないものである。

というのも当座預金は小切手・手形の決済に使うことを目的としており、

日本では個人で小切手・手形を使うということはまずないからである。

この特徴から当座預金の引き出しは小切手を使うことになっている。

「当座勘定規定」には「当座勘定の払戻しの場合には、小切手を使用してください。」と書かれている。

普通は小切手というのは支払のために他人に渡して、受け取った人が現金化するわけだが、

自分で書いて自分で取引店の窓口に持って行けば、現金化することができる。

これが当座預金の使い方だったのである。

なぜこうなっているのかというと、当座預金には通帳が無いという事情もあるらしい。

(実際には入金帳という入金時のみ使う通帳のようなものは存在するが)


ただ、小切手・手形は2027年に廃止する方針が示されている。

小切手は振込、手形は でんさい(電子記録債権)への移行が推奨である。

インターネットバンキングで処理が完結し、小切手・手形の送付が不要、手形の印紙税節約などのメリットがある。

しかし、ここで小切手が廃止になると、当座預金を窓口で払い戻す手段がなくなってしまう。

これでは困るので、普通預金同様に払戻請求書を使うようにしますという話だった。


そもそも小切手・手形の廃止により、当座預金の新規受付も終了となる。

だからといって既存の当座預金を解約して普通預金に移行しろなんてすると、

振込先の変更など、様々な手間が発生してしまう。

小切手・手形が完全に廃止されれば当座預金のための特別な規定も不要だが、

完全廃止までにはまだしばらく時間がかかる。そこまでの時間稼ぎですかね。


ところで当座預金にはもう1つ特別な機能がある。

それは預金保険制度における「決済用預金」であることだ。

預金保険では金融機関ごとに1名あたり元本1000万円までは全額保護される。

ただ、利息が付かない預金については全額保護されるという規定もある。

これに該当する典型例こそが当座預金だったのである。

ゆうちょ銀行においては振替口座が該当する。

ただ、これは普通預金であっても手続きをすれば決済用預金にすることができて、

「決済用普通預金」とか「普通預金(無利息型)」という名前で提供されている。

なので必ずしも当座預金でなければならないわけではない。


当座預金から出金ってそんなにあるものなのかな?

と思ったんだけど、口座残高から払込票での振込をするのもそうでしたね。

今までは払込票と小切手を窓口に持参するか、外交員に渡せばよかったが、

今後は入金帳を呈示して、払込票と払戻請求書を渡すことになると。

通帳と入金帳という用語の違いだけで、普通預金と同じってことですね。

こういう振込も件数としてはかなり減ってるとは思うけどね。

税金の支払いもネットバンキングで行うことが多くなってるだろうし。

ただ、こういうのもすぐにゼロにはなりませんからね。