バイクで行く西湖と洞穴

河口湖あたりまでバイクを持って来たからには行きたかったところがあって、

それが西湖である。バスでも行けるけど、本数も限られますしね。

というわけで吉田から河口湖を経て西湖まで走って行く。


ルートとしては河口湖の北側まで 新倉河口湖トンネル で向かい、そこから湖岸に沿って進み、西湖へ向かうというもの。

新倉河口湖トンネルって自転車走行できるのか? と事前に確認したのだが、

車道走行で特に問題ないよう。歩道走行が一般的なようではあるけど。

ただ、トンネル内が渋滞で全然進みが遅いので、左端を走ると車をすいすい抜いていく形になる。

自転車サイズのバイクだから無理なく追い抜けてしまうのである。

どうしてこうも渋滞するのか? それは出口がすぐ交差点で、ここを右折する車が多いのである。

そもそもこのトンネルは河口湖周辺の渋滞を回避して吉田~笛吹・甲府方面の移動をするためのものだから、

圧倒的に右折が多いのは当然なのだが、ここまで詰まるかという感じである。


トンネルを抜けて湖岸にやってくると観光客がうろちょろしている。

河口湖は徒歩であれこれと周遊したことはあるが、この辺は来たことなかったんじゃないかな。

レンタサイクルか自転車で周遊する人も多いようだった。

湖岸をひた走るのだが、道路が細くなったところで、かなり詰まって身動きが取れなくなった。

歩道モードにして路側帯を走ったるかと思ったが、その路側帯も狭くて進めない。

どうも大石公園の出入口で詰まっているのが伸びていたようだ。渋滞だらけである。


ここを過ぎると車も少なくなって、西湖方面に向けて河口湖を離れていく。

「富士河口湖町 足和田出張所」と書かれた建物があるが、かつて存在した足和田村に由来する。

富士河口湖町は2003年に河口湖町・足和田村・勝山村が合併、後に上九一色村の一部を編入(残りは甲府市に編入)している。

単に河口湖町ではないのはこういう経緯がある。

足和田村は河口湖の西側と西湖周辺からなる村で、その中心は河口湖西側にあったと。

そんなわけでまさに西湖の入口という感じだが、ここからの上り坂はかなり急で、

10km/hぐらいまで速度が落ちてしまうところもあった。自転車はかなり大変そうだった。


西湖にやってくるとカヌーをやっている人が目に付く。

いろいろ看板が立っていて、まず「二級河川 西湖」という記載。

西湖・精進湖・本栖湖は内陸県では珍しい二級河川である。独立水系の堰止湖のため。

河口湖も堰止湖だが、利水・治水のため古くから水路で結ばれていたので、相模川(桂川)水系に属する一級河川である。

実は西湖は発電や治水のため、河口湖と水路で結ばれているのだが、そこは上流下流の扱いではないらしい。

次に モーターボート・ジェットボート乗り入れ禁止という看板。

河口湖ではボートを持ち込んで航行する姿も見られるが、西湖は自然公園法の規定で禁止されている。

手こぎなら問題ないのでカヌーってのはあるんでしょうけど。

次に「西湖は湧水につき水泳はやめよう」という看板、湧水と水泳の関係はよくわからんが……

ただ、湧水というのはその通りで、そういう湖である。


で、なんで西湖までやってきたのかというと……

走って行くと巨大な建物が見えてきた。AMUSEと書いてある。

これ、2021年に東京から本社移転して来た芸能事務所のアミューズである。

富士河口湖町に本社を移転したとは言うが、なんと西湖なのである。すごい立地である。

本社が移転したといってもマネージメント業務は従来通り東京でやってるんだろうけど、

レッスンや映像制作といった活動を行う拠点として位置づけられているようだ。

特に部外者がやってきてもどうということはないのだが、西湖ってどんなところか気になったきっかけはこれである。

【アミュボの夏休み】ボートに乗って湖を一周!自然に囲まれ超癒される! (YouTube)

ちょうど本社移転の頃に西湖にやってきて撮影された動画である。


河口湖はいかにもリゾートという感じだが、西湖はかなり落ち着いた印象ではある。

ぐるっと進んでいくと「西湖コウモリ穴」というのがあった。

気になって駐車場に入ってみると、お金を払うとみられるらしい。

ただし、コウモリは夜行性なので見えないよと。とはいえ、溶岩洞穴としてはみどころが多いという。

このあたりは青木ヶ原樹海という、火山活動で流れた溶岩の上に作られた森である。

西湖・精進湖・本栖湖はもともと1つの湖だったのが、溶岩で分かれたものである。

(溶岩で分かれたが、透水性があるため、3つの湖の水位はほぼ同じらしい)

溶岩の中にあるガスが出て行く中で洞穴ができて、コウモリがすむようになったと。

実はこのコウモリがすんでいるというのがこの洞穴の特色を表しており、それは比較的暖かいということである。

比較的暖かいといっても外に比べると少しひんやりしているが、その程度である。

ヘルメットが渡されたがかなりかがんで進まないといけないところが多く大変。

溶岩が固まりかけのときに流れた溶岩がいろいろな形で残っている。

奥には人が進めないように扉が付けられていた。コウモリは自由に出入りできるが。


隣接して「クニマス展示館」という施設がある。2010年に西湖で再発見されたクニマスについての展示である。

クニマスのことは昔、田沢湖に行った時に紹介している。

もともと田沢湖はこれといった流入河川のない川ということで独自の生態系があり、固有種としてクニマスが有名だったそう。
これも酸性水のため絶滅したのだが、なぜか富士五湖の西湖で発見されたというのは田沢湖にとっても大きなニュースだったようで、そのことはこの周辺でもあれこれかかれている。

(桜の田沢湖と角館)

田沢湖と西湖のつながり、それはヒメマスの養殖のために卵を田沢湖から取り寄せていたことである。

このときヒメマスに混ざってクニマスも来ていたらしい。

そのことは西湖の人々は全く意識していなかった。ただ、黒いヒメマスがいるということは知られていて、

この黒いヒメマスについて、2010年にクニマスであると判明したわけである。

クニマスはかなり深い湖底で産卵を行うため、田沢湖と同じぐらい深い西湖では細々と生き残れたのだという。

産卵する場所が違うのでヒメマスとクニマスは交雑することはないという。不思議なこともあったもんで。


さっき洞穴にしては暖かいのが特色と書いたが、普通は洞穴というのは寒いものだ、

というので次の目的地を決めた。鳴沢氷穴である。寒い洞穴の典型である。

さすがにここは観光客が多い。入口で富岳風穴にも行きますかとセット券を勧められる。かなり近いらしい。

氷穴というと凍るから氷穴なのだと思ったが、温暖化の影響か万年氷も見られなくなったという。

湖で採取した氷を保存していたのを模擬して冬に保存した氷を展示しているのだが、

それも夏を越えて溶けてしまい、なにが氷穴やという感じだが、0~4℃と相当に低温であることは事実である。

こういう深い洞窟は空気の圧縮・膨張を繰り返す中で、だんだん空気が冷やされていく。

その中でも特に低温なのが鳴沢氷穴だったというわけである。


風穴は少し引き返して……さっき曲がった交差点にあったんかい。(左折は短絡路を通るので見えなかった)

ここは氷穴に比べれば冷えないが、それでも0~4℃と冷えることは確か。

比較的広いということか、様々な保存に使われており、それを模擬する展示もあった。

比較的近年まで使われていたのが蚕の卵と樹木の種子である。

蚕は冷やして保管することで生産時期をずらせるというメリットがあったよう。

樹木の種も豊作年の発芽率のよい種を複数年で使う方がよいという事情から貯蔵が行われていたよう。

ただ、いずれも現代となっては……という話である。


ここからもう少し寄り道したのだが、その話はまた明日書くかな。

河口湖周辺に戻ってきて、最後に1つ寄り道。富士山世界遺産センターである。

富士山は世界文化遺産になったのは2013年、もう10年経ってるのか。

世界遺産登録に至るまでの経緯がまず紹介されていたのだが、

当初は自然遺産の国内候補にリストアップされたが、これは早々消されている。

世界的に見てそこまで特徴的な自然ではないというのは理由として大きかったのだろう。

ただ、そこでも世界遺産にという声はあったようで、信仰・芸術という観点で文化遺産を目指したのだという。

構成資産に遠く離れた 三保の松原 まで含まれたのは芸術という観点だな。

西湖・精進湖・本栖湖も構成資産になっている。芸術という観点で本栖湖が特に重要だったそうだが。

現代においては富士山といえば登山という感もあるが、富士登山にまつわる構成資産もあり、

それが御師住宅で、これは富士山への登拝をサポートしていた御師の住宅で、登拝者の宿坊という役割もある。

世界遺産登録に前後して登山にあたっての環境保全の取り組みも進んだ。

登山者の集中など課題はあるが、富士登山もまた世界遺産の価値を伝える活動とは言えるのではないか。


というわけで、そろそろいい時間と河口湖ステラシアターへ向かう。

この富士山世界遺産センターの前の道路は富士スバルラインの無料区間で、

このまままっすぐ行くと富士山の吉田ルート登山道の一般的なスタート地点にたどりつく。

当然、このバイクでそこまで行けるわけはないのですが。早々右折する。

河口湖ステラシアターに着くと、ローブを着た人がうろちょろしていて異様な雰囲気である。

Ave Mujicaの世界観に合わせてグッズとして売られているのである。

バンドリのライブといえば、キャラクタが描かれた派手なTシャツや法被を着てる人が目立つが、

そういうグッズがないのか、ローブのせいか、すごい落ち着いた雰囲気である。


今回の河口湖3連戦を決めたきっかけとして大きかったのはAve Mujicaである。

元々、月曜にあるPoppin’Partyの単独ライブは来るつもりで決意は決まっていた。

ただ、土曜のMorfonicaは「うーん」という感じだった。

その間に挟まったAve Mujica、観に行こうと思ったのは公開されていたライブ映像の影響が大きい。

これは聴き応えありそうだなと。それなら3日とも行こうと思ったのである。

ただ、これは知らなかったのだが、Ave MujicaのライブにはMCもアンコールもない。

それだけならRAISE A SUILENもそうだけど……でも意図は違うだろう。

幕間には怪しげな詩の朗読とダンスが差し込まれ……朗読は録音だが。

アンコールがないのも独特な世界観に浸ったまま終わるという意図があるんだろう。

Ave Mujicaは文字通りの覆面バンドである。作中の設定では誰か明かさずにパフォーマンスしてる。

見ている我々はこれがどのキャラクタで、誰が演じているかもう知ってますけどね。

そういう位置づけなのでキャラクタとして喋るのも、中の人として喋るのも無理なんだろう。

キャラクターもののコンテンツのリアルイベントでこれはちょっと変だよね。

果たしてAve Mujicaの世界はどんなものか。1月からのTVアニメで明かされるのだろう。

幕間もそれを意識しているのか、よりキャラクタの内面に近い内容になりつつあるようだ。


そんなわけで思いのほかたくさん寄り道しながらの旅だった。

歩きではとても行けないところだし、バスではなかなか機動的に目的地を加えたりするのは難しいですからね。

ただ、やっぱり電池残量との戦いだなとは思いますね。

平坦ならかなりの距離走るけど、上り坂が続くと本当にゴリゴリ削られる。

1日で50kmぐらい走る用途で使う車じゃないだろと言われれば、それはそうなんですけど。

ちなみに河口湖ステラシアター、昨日・今日とバイクは何台かいるけど、

高速道路を走れる125cc超のバイクが基本で、原付二種は他に1台ずついたが、

原付一種は他には見なくて……特定原付って一般的には原付一種って言わない気はするけど。

大概遠征だろうからこうなるんですよね。バイクを電車で運ぶという変な手法でもしないと原付一種なんておらんよね。