「ラジオを見る」という言葉を使って「は?」と言われたら映像付きのラジオもあるのだと返すわけだが、
そうしたら「それってテレビじゃないのか」と返されるのもお決まりである。
けどそれは違うと思うんだよなぁ。
最近は地上波のラジオを聞くことも増えているのだが、インターネットでの配信もやっている番組もある。
しかも動画付きで配信している番組もあるわけだが、そういう番組はインターネットの動画配信をこのように説明するのである。
「収録の模様を動画でも配信しております」と。
音声のラジオ番組を収録するついでに、動画も撮っているのだというわけである。
なるほど。確かに映像はラジオブースで撮影されたもので、テレビ番組とは一線を画するものだ。
映像付きラジオという発想はどこから生まれたものなのか? 明確なことはわからない。
ただ、未来のラジオの姿として映像付きラジオというのを考えていた人が多かったことだけは確かで、
そんな会社の1つが文化放送というAMラジオ局だった。
2003年~2011年の間、デジタルラジオ実用化試験放送が東京(東京タワー)と大阪(生駒山)から行われていた。
このとき、東京と大阪のいくつかの放送局が参加したわけだが、その1つとして文化放送がいた。
ここで文化放送は3つのチャンネルを設けて放送をしていたのだが、その3チャンネルの中に「超A&G+」というチャンネルがあったそうだ。
超A&G+では一部の番組でデジタルラジオの簡易動画機能を使って動画付きで放送されていた。
超A&G+はインターネットでの配信も平行して行われるようになり、2011年の試験放送終了後もインターネットの配信だけは残り続けた。
これが今日の超A&G+であり、現在も動画付きラジオが多く放送されている。未来のラジオの生き残りである。
映像付きラジオの画面というのはテレビというのは質素なもんで、
ケーブルテレビ局の自主製作番組でももうちょっとちゃんとやってるんじゃないのってぐらい。
超A&G+だとラジオブースか、会議室か、なんとなく机があれば台本置いて録画できるだろって感じでやっている。
中にはテレビ番組としてもなり立ちそうなほどの絵面の番組もあるのだが、基本的には低予算で作っているものなのだろう。
本当にラジオの収録にビデオカメラを置いたようなものなのだろう。
超A&G+の場合、出演者は声優が主だから、声の仕事の延長線上でなり立つものにしてあるというのもあるのかもしれない。
けど映像があるから、普通のラジオ番組なら「ラジオではそれ伝わらんやろ」と言われるようなことをやっても映像があるから伝わる。
そういうところで表現力が増すことは期待できる。
ところでデジタルラジオ実用化試験放送をやっていたのは、実用放送としてデジタルラジオを行うことを見越して立ったのだが、
実のところ、この実用化試験放送は直接的に実用放送に結びつくことはなかった。
わざわざデジタルラジオ受信機なんて買おうと思うか? よっぽど価値を感じられるコンテンツがなければ買わんぞ。
そういう現実に気づいたAMラジオ局は、VHFのテレビ跡地にFM方式による中継局を相次いで開局させていった。(AMラジオ局もFMがいい)
これなら従来のFMラジオ受信機の延長線上で対応できる。都市型難聴対策、混信対策に大いに貢献している。
テレビの電波には乗っけられないけど、映像付きで流したいという番組をインターネットで流す手段も増えた。
ニコニコ動画はその最たるものである。(ニコニコでお金を稼ぐことができる)
一方、デジタルラジオ放送にこだわり続けた人たちもいた。
エフエム東京などはVHFのテレビ跡地を使ったマルチメディア放送に乗っかることを考え、先日、V-Lowマルチメディア放送「i-dio」の試験放送を開始した。
マルチメディア放送というと先行していたのはNTTドコモが取り組んでいた「NOTTV」だが廃止が決まっている。
i-dioはどうやって受信機を普及させるのか? 価値あるコンテンツを提供できるのか?
ということで疑問はあるのだが、僕はNOTTVよりは勝ち目があると思っている。なぜならばi-dioはカーステレオを狙っているからである。
ドライバーの心に響く高音質音楽番組、データ放送による情報提供などなど、音重視というのはこれまでのFMラジオの延長線上にある。
そんなi-dioでも「i-dio Creators Ch.」では映像付き番組の配信を行うそうで、現実の未来のラジオにも映像付き番組はあるようだ。
とはいえ、「i-dio Creators Ch.」を見ても「ラジオを見た」とは言わんだろうなぁ。
ラジオというには映像重視に過ぎるという理解である。まぁマルチメディア放送はラジオとは限らないのでそれでよいのですが。