先日、こんな話を書いた。
しかし、実はこの中で1つだけ文化財保護法の対象になっているものがある。
それが「伝統的酒造り」である。
2021年に創設された登録無形文化財に初めて登録されたのがこれ。
伝統的酒造りって何が伝統的なんだろう?
気になって調べたら、ポイントは こうじ菌 らしい。
無形文化財というのはそのわざの保持者がいて成り立つものですが、
「伝統的酒造り」の場合は保持団体ということで「日本の伝統的なこうじ菌を使った酒造り技術の保存会」が認定されている。
日本の伝統的なこうじ菌を使った酒造り技術の保存会の概要 (note)
伝統的酒造りの登録無形文化財への登録のために作られた団体である。
そしてこの団体の対象とするところは「日本酒、本格焼酎・泡盛、本みりん等の日本の伝統的なこうじ菌を使った酒造り技術」である。
だから清酒に限らないんですね。
税法上の焼酎は広い概念だが、その中でも伝統的なもの、本格焼酎や泡盛と表記できるものは当てはまる。
(泡盛も税法上は焼酎にあたるが条件を満たせば「泡盛」という表記が認められている)
あと、みりん ですか。確かにこれも酒でしたね。
わざわざこういう広い概念を導入するのは、ユネスコ無形文化遺産への登録を意図したものという事情もあるんだろう。
日本の伝統的酒造りとして登録が認められれば、清酒・焼酎・泡盛など包括した登録になる。
これらに共通する要素として こうじ菌 というのを見いだすことができる。
醸造酒と蒸留酒だと違いそうだが、そこそこ関連はあるんだよね。
そのため、これらを包含して日本特有の酒造りとして登録できると考えたか。
日本国内の事情だけ言えば、それぞれ別々に登録してもよさそうなもんだけど。
焼酎のような蒸留酒は世界的にもバラエティに富んだもので、
そもそも日本国内を見ても米・麦・さつまいも など多様である。
一方で清酒は日本酒とも呼ばれるが、醸造酒としては世界的にもアルコール度数の高い酒として知られる。
一般的にはアルコール15%程度で販売されているが、実は醸造時は20%以上が好都合なので、わざわざ水で薄めているという。
世界的にも”Sake”として知られており、米を原料とする酒類ではもっともよく知られた存在ではないか。
おそらく、国際的に見て、日本の酒造りとして評価されるのは清酒が主となるのだろう。
一方で日本国内にも地域性があり、焼酎・泡盛が根付いた地域というのもある。
酒類の消費量が減る中で、地域に根付いた酒造りを伝承していくことの難しさは同じである。
国際的な評価と国内の事情から「こうじ菌」というところに特色を求めたのかなと。