マイナンバーの本人確認には不十分だが

マイナンバーカードについて、

マイナンバーの申告にはマイナンバーの確認書類と本人確認が必要で、この両方が1つで済むのがマイナンバーカードの特徴である。

(マイナンバーカードは過積載?)

と紹介したが、マイナンバーの扱いが面倒になったのは、

アメリカのSocial Security Number(SSN)の課題を踏まえたものと思われる。

他人のSSNを申告するなりすまし問題ですね。これがけっこう問題だったと。

行政サービスに支障を来すだけならばともかく、民間でも多目的に使われてしまい、なりすましで大変な不便を被る人もいたようだ。


このため、マイナンバーの申告は記載するだけでは不十分で、

マイナンバーの確認書類と本人確認書類を揃えることとなった。

また用途についても法令で指定されたものだけに限られることに。

それなりに理由はあるのだが、全体的に取扱が難しい印象を与えることになった。

さらに制度導入当初はあった通知カードの運用が停止され、

マイナンバーカードを持たない場合、住民票の写しなどを取得しなければマイナンバーの申告もままならない状態に。

マイナンバーにより所得などの疎明書類が不要になるところも出てきているが、

マイナンバーを申告するところの手間はけっこう重いわけである。


そんな中で「新型コロナウイルス接種証明書アプリ」が珍しい仕組みを使っていることを知った。

このアプリを使うにはマイナンバーカードが必要だが、「券面事項入力補助用暗証番号」というちょっと珍しいものを使う。

4桁の暗証番号を全て同じにしている人はあまり気にしなくていいのだが、

最もよく使う利用者証明用電子証明書の暗証番号ではないところがポイントである。

これによりカードから住所・氏名・生年月日とマイナンバーを読み出していると。

このことについてQ&Aにはこう書かれていた。

Q1-8 なぜマイナンバーカードが必要なのですか。マイナンバーの数字を入力すれば良いのではないですか。

A1-8 本アプリでは本人確認のための最善の手段として、マイナンバーカードとその暗証番号での認証を採用しております。マイナンバーの入力だけでは、第三者が適当な入力しても結果が表示されてしまう可能性があり、本人確認ができません。

ということでマイナンバーの確認と本人確認をマイナンバーカードと暗証番号入力で済ませるという仕組みだったらしい。


ただ、この方法は厳密なマイナンバーの申告方法ではない。

番号法施行規則にはマイナンバーカードを使って電子的にマイナンバーの申告を行う方法をこのように定めている。

(電子情報処理組織を使用して個人番号の提供を受ける場合の本人確認の措置)

第三条 (略)電子情報処理組織を使用して本人から個人番号の提供を受ける場合には、次に掲げるいずれかの措置をとらなければならない。

一 機構により電子署名(略)が行われた当該提供を行う者の個人番号及び個人識別事項に係る情報であって内閣総理大臣及び総務大臣(略)が定めるものの送信を受けること並びに次号ハに掲げる措置をとること(略)

二 次のイ又はロに掲げる措置及びハ又はニに掲げる措置をとること。(略)

ハ 署名用電子証明書(略)及び当該署名用電子証明書により確認される電子署名が行われた当該提供に係る情報の送信を受けること(略)

「機構により電子署名が行われた――」というのが券面事項入力補助APで取得できるデータだと思うけど。

そうなんですよ。電子署名が入ってるらしいんですよね。

なので端末でデータを読み取って、そこから送信するまでの間に改ざんされたとしても検出できるということですね。

ただ、このケースでは署名用電子証明書による電子署名で本人確認をしなさいとなっている。

券面事項入力補助APを暗証番号で呼び出せたことをもって本人確認とはできないと。


この仕組みを使ったマイナンバー申告の実例が、先日のCONNECTでの口座開設である。

口座開設するだけのスマートフォンアプリ

マイナンバーと署名用パスワードを入力してマイナンバーカードをタッチすると、

それでマイナンバーの申告と本人確認が完了するという仕組みである。

マイナンバーは券面事項入力補助APでマイナンバーを取得するためのキーであり、

署名用パスワードは電子署名による本人確認に必要なものである。

マイナンバーをキーにICチップ内に格納されたマイナンバーを取り出せるのは一見意味がなさそうだが、電子署名付きのマイナンバーが取得できることに意味がある。


ただ、接種証明書アプリはそこまでの本人確認は法令上必要ないので、

券面事項入力補助用暗証番号とマイナンバーカードで本人確認としてしまおうと。

それでもいいとは思うんだけど、法令上は不十分ということである。

マイナンバーカードの両面の画像を送る方法よりはマシだと思うのだが。

(それはさっき引用した番号法施行規則第3条2項の「イ又はロに掲げる措置及びハ又はニに掲げる措置をとること」の「ロ」と「ニ」の組み合わせに相当する)


券面事項入力補助用暗証番号の存在意義がよくわからなくなってしまったが、

4桁なので入力の手間が少ないぐらいのメリットしかないような気がする。

むしろ暗証番号を忘れてロックされてしまう方が心配だけど。

(全ての暗証番号を同じにしていればそういう問題は少ないが)

マイナンバーカードをナンバーレス化する時が来れば、この暗証番号は非常に重要なものとなる。

マイナンバーを確認するには暗証番号が必要ということになるのだから。

それを実現するためにはマイナンバーカードの目視確認(写真やコピーを含む)からの脱却が必要なので、それどころではないのだが。