勤務先で今年5月からの「みなし輸出」についてのE-learningを受けたが、
社内に限れば影響は限定的だろうかなと思ったけど、思わぬ形で影響があるかもしれない。
テロリストなどに武器や軍事転用可能な物品や技術が渡らないようにするということで、
このために外国に貨物を輸出したり技術情報を提供するとなれば、それが許可が必要なものか、許可が必要ならば許可を取得するなどの対応が必要になる。
企業活動で実際に物が外国に渡る場合は見逃される可能性は低いと思うが、
問題は情報の提供であって、国内のファイルサーバーであっても外国からアクセスできるとなれば、そこにファイルを置くことが輸出にあたる可能性がある。
アクセス権の設定にはこういう観点も必要なわけですね。
さらに一見して国内で完結するものであっても、非居住者への提供は「みなし輸出」となる。
このため、外国からの出張者が参加しうる会議だと、輸出管理の対象になりうる。
とはいえ、外国からアクセス出来るとか、外国からの出張者とかいうのは、意識しやすいところはある。
しかし、今年5月からは居住者であっても下記の条件にあてはまる人への提供は「みなし輸出」として扱われることになる。
1. 契約に基づき、外国政府等・外国法人等の支配下にある者への提供
2. 経済的利益に基づき、外国政府等の実質的な支配下にある者への提供
3. 上記の他、国内において外国政府等の指示の下で行動する者への提供
3.については該当する人が役所から通知されるそうだから、問題は1.と2.である。
大学や研究機関だと1.や2.に当てはまるケースはそこそこ多いと思われる。
1.は外国の大学・企業などから派遣されてきた人、2.は外国政府や公法人から奨学金を受け取っている人が該当するためである。
このような人は非居住者と同様の手続きが必要になるということである。
会社でも社外との情報交換ではこういう問題が発生しうる。
もっとも「商慣習上技術提供取引を行う上で通常取得することとなる契約書等の書面において記載された情報から、受領者が特定類型に該当することが明らかである場合」とのことだから、把握し得ない場合は対象にならないが。
問題は社内であって、会社としては従業員がこれらに該当するか知らないわけにはいかない。
とはいえ、これも実はすでに勤務している人の場合は、通常は確認不要だという。
なぜならば就業規則で兼業を行う場合は許可を得るように規定されていることが多いからだという。
うちの勤務先でも基本的にはそうだという。まぁ該当する人は連絡してねとは書いてあったけど。
1.のように外国政府・外国法人との兼務は把握できてそうだなと思うし、
この兼務が必要だとすれば、それは職務上の理由があるだろうから、業務上の配慮もあるだろう。
あと、ここには逃げ道がいくつかあって、1つは外国法人がグループ会社である場合。
もう1つは外国政府・外国法人の指揮命令よりも優先するという取り決めがあること。
でも、2.の「経済的利益」というのはどこまで厳密に把握できるのか? というのが気になる。
2.の対象者というのは外国政府から多額の金銭・その他の重大な利益を得ているか、得ることを約束しているかということで、多額というのは年間所得の25%を占めることだという。
過去にそのような経済的利益を受けていたとしても、現在終了していれば関係は無い。
外国の大学に留学して奨学金を受け取っていて、成績優秀につき返済免除という形で終わって帰国したような場合は、もはや関係ないだろう。
「外国政府等から過去に貸与等の形で利益を受け、外国政府等に履行期限の到来した債務又は履行期限の定めのない債務を負っている場合は、債務履行請求の不行使という利益を得ているものと考えられます」という記載はあるけど。
そういう観点でも学校はともかく、会社の従業員では該当者は少なそうだなと。
ただ、思うのである。
僕はすでに国民年金の保険料を10年以上納めているので、老齢年金の受給資格がある。
僕が外国に行ったとすると、65歳以降に日本在住だと日本政府から年金を受給できることが約束されているということになる。
それって日本以外の国からしてみれば外国政府から経済的利益が約束されているのではないかと。
とはいえ、それが経済的利益により日本政府の支配下にあると認めるほどのものではないと思うが。
サラリーマンで当地でまともに給料を受け取ってれば問題になりうることはない?
まぁこういうところで疑問があれば役所に問い合わせればいいんだろうけど。
みなし輸出の対象になる場合、対象となる技術の提供には許可を得る必要がある。
許可が出ないとは言っていないが、許可を得るには時間がかかってしまう。
こういう形で企業活動に制約が出ることを嫌うのは普通だろう。
そういう面倒な従業員なんて解雇したいが……という考えもあるかもしれない。
ただ、なかなかそういうのは認められないだろうなぁ。
配置転換で対応したり、手間と時間をかけても許可を得るべしということでしょう。
この条件に当てはまるのは外国人に限った話ではなく、日本人でも普通に該当しうる。
ただ、割合として言えば、外国政府から奨学金を受け取ったり、外国から派遣された人が多いということで、外国人が多くなるのかなぁと。
とはいえ予断を持たずに対応する必要があるのはそうでしょう。
このあたりは国境を越えても一定の範囲で居住移転の自由があるからこそですよね。
もちろん不正競争防止法とかで営業秘密の保護とかは国内外問わずに課せられているわけですけど、相手がテロリストだったりするとどうしょうもない話ですしね。
なお、 外国政府・外国企業と密接な関係にある日本居住者が対象であって、
外国政府・外国企業と日本法人の間の関係、あるいは外国政府・外国企業の支配下にある日本法人と日本居住者の関係は「みなし輸出」には関係が無い。
日本法人であれば、輸出管理は適切に行われるはずという考えである。
従来の「みなし輸出」に比べるとだいぶ範囲は広がったけど、
やはりいろいろな制約からすると、あまり当たらないのかなとは思う。
ただ、該当するケースは当然あるわけで、意識する必要はあるんだよね。
正直なところめんどくさいところはあるが、こういうルールがあることで、アメリカやヨーロッパ諸国などの輸出管理との整合性があると認められて、
そうすることで科学技術分野の交流が活性化することを期待しているわけだよね。
めんどくさそうなルールだが、実務的にはそこまでではない割には、得られる恩恵は大きいと。こういうのはよくある話ですね。