命名権は指定管理者から売る

イベント最後の告知でアイドルマスターミリオンライブの12thライブが、

「京王アリーナTOKYO」で行われると出て、一体どこ?

となったのだが、京王沿線でアリーナといえば飛田給駅下車、武蔵野の森総合スポーツプラザである。

命名権を取得したんですね。なるほどね。


気になったのは命名権契約を(株)東京スタジアムと結んでいること

【株式会社東京スタジアムからのお知らせ】京王電鉄株式会社とのネーミングライツに関する合意について

東京スタジアムはこの施設の指定管理者である。

管理の実務を担っているとは言え、あくまでも東京都所有の体育館で、

普通に考えれば東京都と命名権契約を結ぶのだと思うのだが。


調べてみると武蔵野の森総合スポーツプラザの指定管理者公募の際、

(株)東京スタジアムから提出された資料を見てみると命名権のことが書かれている。

武蔵野の森総合スポーツプラザの指定管理者候補者の決定について (東京都スポーツ推進本部)

後で書くのだが、この会社は名前からわかる通り、東京スタジアムの運営も行っている。

このためスタジアムと一体として命名権を売り出すのもあると書かれている。

具体的な収支計画は隠されているが、利用者からの施設使用料と東京都からの指定管理料だけでは赤字になることも想定していたようで、

「赤字分は当グループ内で負担」という記載もみられる。

スタジアムとの一体運営により費用を縮減したり、自主事業で稼いだり、

そして命名権であったり、企業・個人からの寄付なども考えていたようである。


ところでさっき出てきた東京スタジアムというのは、一般的には味の素スタジアムで知られている。

開業後まもなく味の素が命名権を購入、現在まで続いているからである。

このスタジアムは東京都の施設ではあるのだが、複雑な経緯があるそう。

平成15年度財政援助団体等監査報告書/株式会社東京スタジアム (東京都)

(株)東京スタジアムは金融機関より資金調達をして一連の施設を建設、

建設後、施設を東京都に売却すると当時に、45年の施設利用権を購入している。

ただ、東京都は即金で払ってくれるわけではなく、売却額と施設使用権の差額を20年分割で支払うということで、

会社はこの債権と借入金を信託銀行に移管したそうである。

東京都としては施設使用権の分、割り引かれた金額でスタジアムが建ったわけである。


このような経緯があるため、東京都はスタジアムの所有者ではあるけれど、

利用者からも会社からも使用料は受け取っていないし、

逆に東京都は日常的な維持費も支払っていないとみられる。

それで経営が成り立つように商業施設も一緒に建ててるんですね。

武蔵野の森総合スポーツプラザの赤字を負担してもよいというのはこのような経緯もあるのだろう。

収入源としては命名権を売却することも可能だったので、

メインスタジアムを「味の素スタジアム」、補助グラウンドを「アミノバイタルフィールド」、

西競技場を「AGFフィールド」といずれも味の素グループに売却している。


(株)東京スタジアムは東京都が株主筆頭なのだが、

それに次いで多く出資しているのが京王電鉄らしい。

スタジアムの命名権を持つ味の素に買わないかと営業をかけたのかはわからないけど、

京王にとっても自社の電車を利用しての来場者が多い施設であり、

スタジアム・体育館の運営に広く関わってきた経緯もあり、

命名権を買うにふさわしいという判断はあったのではないか。


このタイミングでの命名権売却となったのは、

オリンピック・パラリンピック期間は命名権が使えないということで、

その後に命名権売却に向けて動いたってことなのかなと。

3年契約なのでその先はどうかわからないけど、もともとつながりの深い会社なので、今後も長く買ってくれるんじゃないかな。


一般的には命名権契約は施設所有者と結ぶものだと思うのだが、

調べてみると確かに異なるケースもいくつかあった。

等々力陸上競技場の場合は、公園再整備のために設立された川崎とどろきパーク(株)の業務に命名権の売却が含まれていて、

それに従って命名権を売却する場合、川崎市がその可否を審査し、

認められればネーミングライツ料の50%を川崎市に支払う取り決めになっているそう。

「等々力陸上競技場」の愛称が「Uvanceとどろきスタジアム by Fujitsu」に決まりました! (川崎市)

契約の相手方こそ管理者だが、川崎市との契約を仲介しているのに近い印象である。


千葉マリンスタジアムの命名権契約は所有者である千葉市とともに、

ここを本拠地球場として使用している千葉ロッテマリーンズも契約の相手方だという。

千葉ロッテマリーンズは同球場の指定管理者なんですね。

指定管理料を支払っていないので、実態は無償で貸しているのに近いが。

当然、アマチュアへの貸出などの役目を果たすのが前提ですが。

ゆえに市と球団の双方の収入源として活用されているということだろう。

マリンスタジアムは改築計画もあり、その資金源というのもあるのかも。