JR東日本が回数券を原則廃止するという発表をしていて驚いた。
普通回数乗車券の発売終了について (pdf) (JR東日本)
JR東日本完結となる、障害者割引・通信制学校の通学用以外の回数券が廃止になる。
JR東日本では回数券を販売できる券売機をかなり限定していたり、扱いの悪さはすでにあった。
一方で関東圏などICカードの普及率が極めて高い地域があり、回数券が使われることが減っていたことも事実である。
Suicaで同じ運賃区間を繰り返し利用した場合に割引を行う制度があり、ある程度、回数券の代替として使える環境も整っていた。
この点で取扱に手間のかかる回数券を廃止するのは理解できる面もあるが……
JR各社で回数券廃止をもっとも最初に発表したのがJR西日本である。
JR西日本はICOCAエリアで完結する回数券(障害者・通学用を除く)を廃止した。
ICOCAエリア外を含む回数券は現在も販売を継続している。
例えば、岡山~津山のような回数券は現在も購入できる。
他社とまたがる回数券も買えるので、岡山~高松のような回数券も買える。(この区間はJR四国区間を含めてICOCAが利用できる)
あと、これは知らなかったんだけど、新幹線はICOCAでは利用できないので、
京都~(新幹線)~新大阪~大阪(これはJR東海にまたがる回数券でもある)であったり、三ノ宮~西明石~(新幹線)~姫路 のような回数券も買える。
JR西日本の回数券廃止はICOCAエリアに限ったもので、納得できる点が多かった。
というのも関西では回数券のバラ売りを行う店が多く見られた。
これは約9%引きで買える回数券をバラ売りしてといるという面もあるのだが、
それ以上に大きいのが特定区間で設定された割安な運賃を活用することである。
例えば、草津~大阪は本来1170円だが、京都で分けてきっぷを買うと420円+570円=990円となる。
これを回数券で用意すると途中下車する必要なく割安に乗れる。
関西の私鉄・公営交通の一部ではカード式の回数券が導入されていて、これはバラ売りを難しくする仕組みでもある。これはこれで便利なんだけど。
しかしカード式回数券の運用はそれはそれで手間のかかる話であって、
ICカードが普及した現状からして回数券自体をやめる方が……と思ったのだろう。
これを採用したのが京阪(2020年12月末販売終了)、そしてJR西日本(2021年9月末販売終了)である。
両社ともICOCAへのポイント付与またはPiTaPa利用時の割引で一部代替できる。
ただ、バラ売り回数券対策という意図は理解できるものの、実際には穴がある。
それが他社関係・新幹線関係の回数券は引き続き買えるということ。
特に大阪~京都は新幹線経由の回数券で割安な運賃の恩恵が受けられる。
そして規定上、新幹線経由の回数券で在来線に乗ってもよい。(その逆も可)
このため現在も関西では回数券のバラ売りは一部で続いているという。
もう1つ、JR九州が管内完結の回数券(障害者・通学用を除く)を全て廃止した。
発表は西日本より後だが、実際に廃止されたのは2021年6月末でJRでは一番乗り。
SUGOCAを多数利用する人向けの優遇制度も同時に大きく縮小された。
回数券廃止はSUGOCAエリアに限ったものではなく、全区間である。
とはいえ、JR九州におけるSUGOCAエリアはかなり広い。
この図で黄色く塗られている駅がSUGOCAエリアの駅である。
特急導入路線の多くにICOCAを導入したJR西日本と比べると広がりに欠ける面はあるが、ただ通勤路線らしいところはだいたい導入されているように見える。
長崎~佐世保の大村線、宮崎~延岡の日豊本線、日田彦山線の小倉~田川後藤寺あたりは気になるが。
それに対してJR東日本ですが、会社全体で見ればICカードの普及度が高いが……
それは圧倒的に利用者の多い関東圏の話であって、他の地域ではどうだろうか。
というのもJR東日本のICカード導入路線はけっこう限られている。
関東圏以外でも山梨・長野・新潟・福島・宮城の各県はわりと導入路線が多い。
ただし福島県は県内に首都圏エリアと仙台エリアの境界があり、これを越えてのICカード利用が出来ない。そこまで問題はないかも知れないが。
一部駅のみ導入区間もしばしばある。以前に比べればだいぶ減ったけど。
問題は山形・岩手・青森・秋田の各県で、来年春には各県ともICカード導入区間ができる。
が、その網羅度はそんなに高いものではない。
山形県はすでに導入区間があるが、仙山線の山寺・山形の2駅のみで、仙台方面に行くのに一部の駅だけ使えるというもの。
使えない駅は多いし、県内移動には実質使えない。庄内には全く導入されていない。
青森県は来年春に青森~弘前だけ導入予定である。そこだけ? とも思う。
回数券の運用コストもバカにならないというのはそうであろうと思う一方、
最近は駅に券売機がないということも増えてきた。
そういう区間を定期的に利用する人にとって回数券は便利な場合もある。
(ただ、回数券を買える主要駅などに行き着けることが条件だが)
もちろんICカードが導入されれば、そっちの方がもっと便利という考えはあるが。
しかし、それがない場合の策として回数券は維持された方がいいと思う。
回数券の運用コストやバラ売りによる経営への影響を考えたとき、回数券の販売を継続する区間を絞り込むことは理由があると思う。
JR西日本はICOCAエリア外・他社にまたがる回数券は引き続き販売する対応だが、
新幹線経由の大阪~京都であったり、長距離の回数券も買えてしまうのはやりすぎだと思う。
ICカードでの代替性がなくて、通院など身近な利用に即したところに絞ってもよかったんじゃないか。
逆にJR九州・JR東日本はここに配慮がないのが気になる。
これを機にJR東日本がSuica導入路線を増やす可能性はあるけど、具体化している区間はごく一部である。
昔、時々使っていた近鉄のカード式回数券はともかく、JRの回数券は何枚も紙のきっぷが出てきて管理が面倒というのは思っていた。
9%安いといっても、Suica利用による恩恵が数%あると考えると……
というところでなかなか実用的ではないという状況はだいぶ前からあった話。
回数券を使い倒していた人には概ね不利な傾向にあるのは知っているが、
この状況で回数券を従来通り継続する理由に乏しいのは納得できる。
ただ、利用状況によっては回数券がないとすごく困るし、代替性に乏しいというのはあるんだよね。
JR九州も気になるのはそうだが、現状のJR東日本はその比ではなく厳しい。