昨日、船の航行区域と安全についての備えの話を書いた。
航行区域についてあれこれ書いたが「限定沿海区域」というのは、
プレジャーボートの多くで使われているという。
沿岸区域は比較的新しい区分だが、もしかしたら今のプレジャーボートはこちらに移行しつつあるのかも。条件的には似たようなもんらしい。
あるいは瀬戸内海であれば大型フェリーでも限定沿海というのがしばしばある。
例えば、阪神~北九州の阪九フェリーでも採用されているという。
初めて聞いたのだが「救命浮器」という救命器具があるらしい。
救命ボートや救命いかだ に相当する物らしい。
知床沖で事故の起きた船にも積まれていて、捜索中に発見されている。
この四角いやつが救命浮器だという。人がつかまる取っ手がついてますね。
小型船舶では沿海区域まで、大型船でも限定沿海までならば認められる器具らしい。
Ferryman 100 Ferryman 50 (アール・エフ・ディー・ジャパン)
浮き輪のお化けみたいなやつですが、これで50人とか100人とかつかまれるらしい。
実際に大型フェリーでこういう器具が採用されているかはよくわからないけど。
さっき書いたように採用条件は限定沿海区域までの場合である。
限定沿海とは平水区域を出て2時間以内の範囲ということで、母港からの行動範囲の狭い船を意図しているが、
瀬戸内海の場合、かなり広い範囲で平水区域が続くため、母港の決め方によっては阪神港~北九州・大分などは限定沿海の範囲に収まってしまうという。
行動範囲がそこに収まるとわかりきっている船では限定沿海を選択することは多いようだ。
見ての通り、救命浮器はコンパクトである。
救命胴衣を着て、海に飛び込んで、これにつかまって救助を待つということである。
平水区域の船では救命胴衣を救命浮器に代えられる規定もあるので、そのような場合はとにかくこれにつかまって待つということになる。
わりと便利そうな器具だが、最大の問題は水に浸かって待つことですね。
おそらく今回の知床沖の場合は海水温が低いので、実用的ではなかったかもしれない。
もっとも、救命いかだがあったとしても、寒さや波を考えればなかなか大変で、どっちもどっちな面はあるのだが。
前も書きましたけど、プレジャーボートの規制はだんだんと緩和されてきて、
まぁそれでも調べると法定備品についての不平不満はあれこれ見つかるが。
積んでおしまいの器具もあれば、定期的に交換する器具もあるし、無線機のように維持費や免許などが問題となる器具もある。
遭難時だけ使うのにそんなに高価なものが必要なのかという話もある一方で、
平時はろくにメンテナンスされずに、いざというときに使えないと困るとか、そういう事情もあるので、それはそれなりにお金がかかったりするんだよね。
航行区域を制限したり、無線機の積載などの条件で緩和を受けたり、そういう工夫をして初期費用・ランニングコストを抑えているのが実情だったりするんだろうが、
それが実際に遭難時に妥当であるかはよくよく考えないといけない。
知床沖というのは非常に条件が厳しいので、これを備えていれば助かったと言えるようなものはあまりないような気はする。
救命浮器でなくて救命いかだを選んでいればとも言えないだろうし、
国際VHFという海上安全の基本(が小型船だと積んでいないことも多い)に対応した無線電話を積んでいれば、スムーズな救助に繋げられたとも言いがたい。
一方で不特定多数の人の乗せる旅客船にしては求められる基準が緩いという指摘はもっともである。
もうちょっと条件のよい海域ならば、あるとないでは大違いということはあったでしょう。
そういう観点で規制強化というのはあるかもしれないし、それがプレジャーボートに及ぶ可能性もなきにしもあらず。
そうすると新たな出費や資格取得に泣くオーナーも出てくるのだろう。
いずれにせよ、こういう航行区域を限って救命器具を簡素化するという考えは、例え大型のフェリーでも見られる話であるのは確かである。
もちろん実態に合わせて、任意で積んでいる器具もあるでしょうけどね。
ただ、今回の船会社が特別に備えが悪かったとも言えないのは実情だと思う。
すなわち、これぐらいの備えで不特定多数の人を運ぶ船は全国各地にあるということである。
そこのレベルを引き上げるには法規制の強化ということになるんでしょうけどね。
ただ、その新たな出費は資格取得に耐えられず、離島航路や海上観光が成り立たなくなるということもないとは言えないので、そこは覚悟が問われるところでもある。
プレジャーボートや漁船にも影響が及ぶとすればなおさら。