少し前にこんな話を紹介しましたが。
JR西日本が輸送密度2000人/日を切る区間について、鉄道では非効率であるということ問題提起をしたわけだが、
これらの路線の採算状況についてデータが公表されたが、まぁそういう数字だよねと。
ローカル線に関する課題認識と情報開示について (JR西日本)
やはりこれほど利用者が少ないと、どの路線も採算性は散々である。
特急運行路線でも全然割に合わない状況で、
山陰本線の出雲市~益田で100円の収入を得るのに446円かかるような計算。
経費の1割も賄えない路線としては、九頭竜線・大糸線・山陰本線(益田~小串)・加古川線(西脇市~谷川)・姫新線(中国勝山~新見)・芸備線(備中神代~備後庄原)・福塩線(府中~塩町)・因美線(東津山~智頭)・木次線・小野田線 といったところ。
しかし、このレベルになってくると収支のバランス以上に赤字の絶対額が問題である。
芸備線なんて顕著ですけど、利用が極端に少ない備中神代~備後庄原~三次(90.3km)の赤字額は10.3億円なのに対し、そこそこ利用がある三次~下深川(54.6km)は15.5億円の赤字である。
このように利用者が多い区間の方が赤字額がかさむのはよくあることで、
今回の公表対象ではないが、1ランク上の2000~4000人/日の路線こそ、赤字額は散々なんじゃないかと思う。
それは利用者がいない路線なら遠慮無く減便できるけど、利用者がいる路線だとそうそう減便もできないからである。
もっともこの3月から多くの路線で減便が行われ、そういう路線の赤字額も縮小させていきたいという考えはあるのだろう。利便性の低下は確実だが。
ここでリストアップされた路線で鉄道の廃止を真面目に考えるのは半分ぐらい?
そこでこの赤字を行政で肩代わりするような策を考えるかもしれないが、ただ感覚的にはこの赤字額というのは金額として大きい気がする。
- 関西本線(亀山~加茂:61.0km) : 収入2.5億円 支出17.1億円 赤字14.6億円
- 姫新線(播磨新宮~上月:28.8km): 収入0.9億円 支出7.0億円 赤字6.0億円
- 岩徳線(43.7km) : 収入1.8億円 支出7.2億円 赤字5.4億円
- きのくに線(新宮~白浜:95.2km) : 収入6.7億円 支出35.4億円 赤字28.6億円
- 山陰本線(出雲市~益田: 129.9km): 収入10.0億円 支出44.5億円 赤字34.5億円
- 山口線(益田~宮野:78.4km) : 収入2.7億円 支出16.6億円 赤字13.6億円
関西本線のこの区間の京都府内の笠置町・南山城村がとても小さな町村で、しかも関西本線以外の公共交通がほとんどないという依存度の高さである。
三重県側(全体の2/3ほど)の伊賀市・亀山市とも分担するとしても、この赤字額は誰にとっても重いだろう。
姫新線の兵庫県内は比較的利用があるので、鉄道としての存続を考えると思ったが、姫路~播磨新宮はもう少し利用が多いがおそらく大赤字なので、合わせて大赤字。
岩徳線はこういう路線の中では控えめな赤字額の印象ではある。
岩国市・周南市ともども大きな都市だから、これぐらいペロッと行けそうだけど。
下3路線は特急も走る路線なので県レベルの課題だと思うが、どうでしょうか?
沿線地域から補助を受けて存続しているローカル鉄道の実情をいくつか調べて、これらの数字と比較してみた。
1つがえちぜん鉄道、かつての京福電鉄の福井県内路線を継承して2路線53kmを経営している。
少し古いデータなのだが2010年度で収入8.0億円に対し、経費10.1億円とのことだった。
というわけで年2億円ほどの赤字と読めるが、実態はそうではない。
なぜかというとこの経費には減価償却費はほとんど入っていなくて、補助金での設備投資は減価償却しないんですね。だから設備投資が収支に全く反映されていない。
その設備投資は開業(京福からの移管)後10年間で56.1億円にも及び、
そのうち17.1億円は国による補助だが、残りは全て福井県が補助している。
沿線市町村は運行費用の赤字を埋め合わせ、県と国が設備投資をするという分担で、最初10年間は平均して年7億円ぐらいのペースで費やしてるんですね。
もっともこれはかつての京福電鉄が設備投資を怠り、重大事故を起こした経緯があり、移管後に集中して設備投資を行わざるを得なかった事情もある。
だから最近の数字を知りたかったんだけどすぐに見あたらなかった。
もう1つが若桜鉄道、鳥取県若桜町・智頭町の19.2km間を走る路線で、JR設立まもない頃に移管されたのだが、2009年に鉄道施設が沿線2町に移管された。
鉄道施設を無償で若桜鉄道に貸し付けることで、若桜鉄道の収支均衡を目指したわけである。
このときの計画値を見ると、2009~2018年の平均で若桜鉄道の収入が1.42億円、経費が1.37億円ということで、ほぼ均衡。
その上で沿線2町は施設の保守費用が年5400万円、これは税金で賄うことになる。
また、設備投資が年3100万円、ここには国の補助も入るということである。
なお、この方式では若桜鉄道の収入には沿線2町からの委託費も含まれる。
なので、運輸収入は年7000万円ほどで、そこに町・国が8000万円ほど税金を投じているということになる。
しかし全体的な規模感が小さいので、この規模の町でもなんとかなるのだろう。
具体的な数字は入手できなかったが、信楽高原鐵道も似たような数値感らしい。
数千万円の運賃収入に甲賀市が数千万円を税金で施設を維持して投資してと。
なんでこんな路線が維持できてるのかな? と思ったこともあったけど、
甲賀市は信楽地区の公共交通について、甲賀市中心部に至り、JR草津線に乗り換え可能な信楽線に集中的にお金をかけることに決めたからではないか。
信楽から大津方面に直行するバスがあって便利そうだが、本数はかなり少ない。
同じお金をかけるなら多方面へのバス路線を充実させるという選択肢もあると思うが、甲賀市は1本の鉄道に集約することを選んだということであろう。
JRが公表した収支がどのように計算したものかはわからないけど。
管理費は経費には含んでいないとは記載されているが。
しかし、減価償却費は含むと考えるのが自然だから、設備投資は補助金ありきの鉄道事業とは単純比較はできないわけですよね。
人件費なども帳簿上の数字で実態にどれぐらい即したものかわからない。
この辺は沿線市町村・沿線府県が深掘りしたいという話になれば、より詳細な試算が出てくるのだと思うけど。
路線ごとに置かれた状況はだいぶ違うので、この数字を見ての感想もいろいろだと思う。
JRはローカル線の運賃が安すぎる面もあるが、このレベルの路線ではあまり関係ないかな。
もう1ランク上の2000~4000人/日とかの路線とかだと収支にもそこそこ影響すると思うが。
利用が少なくて、費用を絞っているような路線だと、この赤字の1桁少ない金額でバスを走らせれば、鉄道よりかなり使いやすいというのはありそうな話。
ただ、赤字額で言えばそれより問題なのは、もう少し利用者の多い路線である。
一定の利用がある路線だと、金を出すのはやぶさかではないが、市町村レベルでは首が回らないという話もあると思うが、府県レベルで介入できるかどうか。
コスト低減といっても利用者に不便をかけてのコスト軽減では困るでしょう。
特急運行路線は他の交通機関との競争力を考えるとどう考えても金はかかる。
ただJRにとっても特急料金や長距離利用という形で実入りも大きいはず。
この区間だけの赤字で見るのはアンフェアだが、そうはいっても赤字がかさむことは事実であり、そこの落とし所は悩ましい。