学院と学部・研究科はどちらもある

来月に東京工業大学と東京医科歯科大学が統合されて東京科学大学が発足する。

法人統合だけでなく、大学自体も一校化するのには将来的なリソースの再配置も目論んでいるのだろうと。

そんな中で気になるのは大学の組織のことである。


一般的な大学には学部がおかれ、大学院もあり、大学院には研究科がある。

この場合、教員の所属は大学院になっていることが通常で、

研究活動、大学院での教育活動とともに、学部生の教育の役割も担う形になっている。

だからニュースで「○○大学大学院工学研究科の○○教授らのグループは――」など報じられてるんですね。

このような特徴から学部と研究科と一体的に運営されていることが多い。

一部においては大学院だけの独立研究科が設けられることがありますけどね。


とはいえ、この体制は変ではないか、と別の体制を取る大学もある。

実はその代表例が東京工業大学であり「学院」という組織を設けている。

2016年以前の工学部と工学研究科を統合したものが「工学院」である。

学生の所属としては 工学院学士課程 が 従来の工学部に相当する形である。

学士課程・大学院(博士前期課程・博士後期課程)・教員組織がすべて一体化されている。

現在の大学の組織としてはとても理にかなった構造だと思うが、他に類例はないよう。


一方の東京医科歯科大学は一般的な学部・研究科の構造。

果たして、どちらの体制に合わせるのだろうか? と気になるわけだが、

答えは当面は「変わりません」とのこと。

旧東京工業大学(当面「理工学系」と呼ばれる)は工学院など6学院、

旧東京医科歯科大学(当面は「医歯学系」と呼ばれる)は医学部・歯学部・医歯学総合研究科・保健衛生学研究科の体制となる。

というのも変更内容によっては在学生の生活や入学試験に影響してしまうのですぐに変えられないと。

単なる呼称の変更だけならすぐやってもいいのかもしれないが、そう単純ではないという判断ではないか。

医歯学系の学部・研究科を並べてもわかるが単に1対1対応ではないんですよね。


現在の東京医科歯科大学には特徴的な組織があり、それが「教養部」である。

何が特徴的かというと市川市にある国府台キャンパスは看板に「東京医科歯科大学教養部」と書かれていることである。

教養部の機能は全学共通科目を担当するというものでそこまで珍しくはない。

東京工業大学にも「リベラルアーツ研究教育院」という組織がある。(すごい名前だな)

ただ、東京医科歯科大学教養部 は大学とは独立した学校だった時代がある。

現在の学制になる以前、大学予科というものが存在していた。

大学予科というが現在の学校では大学(主に低学年)に相当する学校である。

かつて存在した大学予科は母体となった大学に単純に統合された例が多いが、

東京医科歯科大学の予科を継承したのは千葉大学だったのである。


というのも当初は医学部・歯学部は学部2年次修了者が入学する学校だった。

総合大学の中に医学部・歯学部が設けられる場合は、

最初に2年間は他の学部に所属して、3年次から医学部・歯学部に入学するという対応ができた。

(東京大学が最初の2年は全学部生が「教養学部」に所属するのはこの名残では?)

ところが医学部・歯学部しか持たない東京医科歯科大学にはそれができなかった。

なので東京医科歯科大学の1・2年に相当する学校を千葉大学の中に作ったわけである。

とはいえ、これは明らかに実態に合っていないわけで、1959年に東京医科歯科大学に移管、

国府台キャンパスは「教養部」の看板を掲げ、学部1年が通う校舎となっている。


そのような歴史のある「教養部」だが、将来的には消失すると思われる。

というのも全学共通科目を理工学系と医歯学系で分離してやる意味はなく、

大岡山キャンパスを中心に行われている理工学系の科目に医歯学系が合流する形になるのが規模面からも自然である。

大岡山キャンパスは東京科学大学にとって中心的な地区と位置づけられていることとも合う。

通学先に影響がありすぐには変えられないが、そう遠くないうちに変わるとみられる。

こうなると国府台キャンパスは「教養部」の看板を下ろすことにはなるだろう。

その後の校地の使い方にはいろいろなオプションがあるとは思うが。


この話に限ったことではないが、最終的な組織としては東京工業大学を継承する部分が多いのではないかと思う。

規模的には圧倒的に大きく、体制としてもよく揃っているとみられるためである。

このため教育・研究組織も「学院」の方を選ぶのではないかと予想したが。

ただ、ここは違うかもなと思っているのは入学試験の形態である。

一般的には大学の入学試験は学科別に定員を決めて行われるが、

東京工業大学ではその昔は類別(複数の学科を束ねたグループ)、現在は学院別に定員を決めて選抜している。

理学・工学という広大な分野に対して入学時点では幅を持たせているわけである。

ただ、医歯学系では学科別にキャリアパスも大きく異なるわけですよね。

そうすると入学時点で厳密に決まらないと困るだろうから、現在の形態に近い形になるんじゃないかなと。

これは理工学系も含めて大きく変わる話にもなりかねないが。


しばらくは理工学系と医歯学系で別の学校のように見えているだろうけど、

統合が始まれば早いんじゃないかなと思いましたね。