奈良県政に日本維新の会

全国的にも話題となっていましたが。

奈良県知事選挙 山下真氏 初当選 維新公認知事は大阪以外で初 (NHK)

日本維新の会公認の山下氏が奈良県知事選挙に当選したという話。


日本維新の会は大阪府の地域政党である大阪維新の会が全国化したもの。

大阪府では府レベル・市町村レベル・国政レベルの選挙でも猛威を振るい、

特に衆議院の選挙区選出の議員は 日本維新の会 と 公明党 しかいないという。

大阪府に隣接する兵庫県阪神地域でもそれに近い傾向があり、選挙区選出の国会議員も出している。

県全体となるとまた傾向は違うが、現在の兵庫県知事の斎藤氏は日本維新の会推薦で当選している。

それならば、同じく大阪府と結びつきの強い奈良県でも……

と思うのだが、今までなかなかそうもいかなかった。


今回、山下氏が当選したのは自民党分裂の漁夫の利を得たと言われているが、

分裂してなくても勝ってたような気もするし、勝てないから分裂したとも言える。

自民党分裂というのは、自民党組織としては平木氏を推す一方で、

一部の県議会議員が現職の荒井氏を推し、どちらも立候補したことによる。

全県での得票を見ると、山下氏 26.6万票(44%)に対して、平木氏19.7万票(33%)・荒井氏9.7万票(16%)なので、

平木・荒井両氏の得票を合計すれば山下氏に勝てた計算ではある。

そうはいっても5ポイント差、足した得票が得られたとは思えないし、山下氏の当選は順当な結果ではないか。


全県での結果はともかくとして、気になったのは地域性である。

市町村別の得票を見て、下記の5グループに分類してみた。

  1. 山下票>平木票+荒井票
    生駒市・平群町・河合町・上牧町・王寺町・奈良市・斑鳩町・三郷町
  2. 山下票>平木票>荒井票 かつ (平木票+荒井票)-山下票<10point
    大和高田市・大和郡山市・桜井市・香芝市・橿原市・広陵町・田原本町
  3. 山下票>平木票>荒井票 かつ (平木票+荒井票)-山下票>10point
    御所市・三宅町・大淀町・安堵町・宇陀市・葛城市・川西町
  4. 平木票>山下票
    野迫川村・上北山村・山添村・十津川村・下北山村・川上村・天川村・御杖村・五條市・曽爾村・下市町・黒滝村・明日香村・高取町・天理市・吉野町
  5. 荒井票>山下票
    東吉野村

奈良県の地理に詳しい人なら明確な地域性が読み取れると思いますが。


1.のグループ、山下氏圧勝の地域は奈良市・生駒市と西和地域(安堵町除く)である。

山下氏は元生駒市長という経歴から生駒市での得票は圧倒的。

奈良県でも最も大阪府との行き来が活発な地域である。

ということでこのあたりは日本維新の会推薦というのも効いてそう。


2のグループは平木・荒井を束ねられれば山下氏と接戦に持ち込めた? という地域、

奈良県中部の多くと大和郡山市で構成されている。

このあたりも大阪府との行き来は活発で、特に香芝市・広陵町は1.の地域と同じぐらい活発である。

だけどちょっと傾向が違うんですね。平木氏が香芝市出身なのもあるのかな?

それ以外の地域は1.よりも大阪より距離があるという感じなのかな。


3のグループは平木・荒井を束ねれば山下氏に勝てた可能性が高い地域で、

葛城市・御所市は奈良盆地では南寄りの地域、宇陀市・大淀町は奈良盆地以外では宅地開発が進んだ地域。

2.と4.の中間的な地域ということなんだろうかね。

この辺も一般的な感覚で言えば大阪の郊外としての色が濃い。


4.のグループはすでに平木氏が最多得票の地域、天理市と南部の大半。

南部のうち大淀町はさっき書いた通り3.にあたり、東吉野村はなんと荒井氏が最多得票という特異的な地域である。

市町村の数で言えば多いのだが、天理市と五條市を除けば人口は少ない。

それにしても天理市がこの中にあるのは驚くべきことだと思う。

一般的には奈良市などと同じ北部に分類される地域なのだが、

平木氏の得票率は47%とかなり高く、周辺からすると特異的である。


これらのグループごとの人口を見てみると、

1.が60万人、2.が46万人、3.が12万人、4.が12万人といった具合。

人口で見れば山下氏圧勝の地域が県全体の半分近くになるんですね。

ただ、地域性としては県の北西部の一角に限られる形である。

1.と2.の地域合わせれば県人口の8割を占め、感覚的にはほとんどという感じだと思う。

面積的にも奈良盆地の多くを占める形にはなる。


奈良県在住の旧友が分裂っていうけど、荒井氏は実質的に無視されているのでは? という感想を言っていたが、

そうはいっても一定の得票は入っているのが実情である。

そもそも、今回の自民党の分裂の背景には「荒井では勝てない」という判断があったという。

高市早苗大臣 帰りたくても帰れない 奈良県知事選挙のお家事情 (NHK)

この判断はおそらく間違えていなかったのだが、

一方で平木氏を擁立するというところにも納得感がなかったようである。

「候補者一本化調整に時間がかかってしまい」と準備不足もあるのかもしれないが。

だから荒井氏を支持する県議会議員も残って、それを見て荒井氏は立候補したというわけである。


こういう状況でも自民党が公式に推薦する候補が勝つことはあるけど、

やはり元生駒市長という経歴もあって山下氏への期待は大きかったんだと思う。

ちなみに冒頭に貼ったNHKの記事には「日本維新の会の支持層のほか無党派層や立憲民主党などからも幅広く支持を集め」とあるが、

立憲民主党が公式に支持を表明していたのは平木氏だったりする。

ついでに国民民主党は荒井氏を推薦していて、2つの民主党も分裂している。

でもやっぱり納得感は無かったらしい。


荒井知事時代の奈良県政といえば印象的なのが関西広域連合への加入問題である。

2010年、関西広域機構を発展させる形で関西広域連合が設立された。

複数の都道府県の広域連合としては全国初、現在も唯一の存在である。

このとき関西広域機構のメンバーでありながら、奈良県は設立メンバーに入らなかった。

このときの荒井知事が不参加の根拠として、現在の奈良県が大阪府の一部だった時代(1876~1887年)のことを出していて、時代錯誤にすぎるのでは? と。

奈良県民の間でも近隣府県との連携強化から参加すべきではという意見も根強く、

結局は2015年に関西広域連合に参加しているのだが、現在も奈良県は資格試験や職員研修の広域化には参加していない。

このほかにも近隣府県との協調より奈良県としての独自色を打ち出すことは多かった。

でも、それらの施策を県民が支持していたかとなると疑問は多い。


同時に行われた県議会議員選挙でも日本維新の会は14議席(改選前3議席)に伸ばした。

政党別では自民党が17議席(改選前23議席)、無所属1名も自民党系かな。

自民党が引き続き最大会派……と思ったけど、今の奈良県議会は自民党系の会派が3つあるらしい。

このあたりもどうなるんかね。


大阪府に加え、兵庫県・奈良県と多数派になりつつある日本維新の会、

他地域でも都市政党としての存在感は示しつつあるが……

でもやはり本質的には大阪府の地域政党ですかね。

兵庫県・奈良県も大阪府の隣接地域だからというだけのことだし。

今回も自民党の自滅じゃないかという見方はあるんだけど、

正直、奈良県はもっと早く陥落してても不思議はなかったかな。