昨日、水素の国内シェアの50%以上をイワタニが握っていると書いたが、厳密には正しくないようだ。
確かにイワタニは販売される水素の50%以上を握っているのはその通りらしいのだけど、
はるかに大量の水素を製造する工場が世の中にはある。しかし、その水素の大半は工場内で使ってしまう。
何だそれは? と思ったかも知れないが、水素を大量に作り、大量に消費する工場というのは製油所である。
なんと日本国内の水素消費の7割は石油精製に使われているという。そして、その水素は自家製造しているという。
産業用ガスとしての水素はごくわずかなのだ。
何に水素を使うのかというと、水素化精製と水素化分解という処理で使うようだ。
原油を精製して作られる石油製品というのは、基本的には炭化水素、炭素と水素が結びついたものである。
原油の中には硫黄や窒素も含まれているが、これはあまりありがたくない。
特に硫黄を含んだ燃料を燃焼させると、硫黄酸化物(SOx)を発生し、酸性雨の原因となるなど問題が多い。
そのため、現在販売されている ガソリン・灯油・軽油 は硫黄分を低減している。
原油に含まれる硫黄や窒素を、水素と結合させて、硫化水素やアンモニアの形で取り出すのが、水素化精製だそうだ。
水素化分解というのは、分子量の大きい炭化水素に水素を加えて、分子量の小さい炭化水素に分解すること。
水素化精製にしてもそうだけど、水素ってのはハサミみたいなもんだね。
石油製品で高く売れるのが、ガソリン・灯油・軽油、逆に重油というのは安くしか売れない。
そこで重油となってしまう分子量の大きな炭化水素を、ガソリン・灯油・軽油の材料によい炭化水素に作り替えるわけだ。
重油分の多い原油から、いかにガソリン・灯油・軽油をたくさん作るかというのが、石油精製という商売のキーポイントらしい。
他に重油分を熱分解して、ガソリン・灯油・軽油の原料に適した炭化水素 と 炭素(石油コークス) に分解する方法があるそう。
重油分に水素を足すか、炭素を余らせるか、このどちらかのアプローチで重油分を減らしているということである。
逆に石油精製の中では、水素が発生するところがあって、それがガソリンの製造。
というのも、ガソリンエンジンの効率を高めるためには、圧縮比を高くするのが効果的だが、
発火点が低いと、所望の圧縮比に到達する前に爆発してしまうという問題がある。
発火しにくさを表す指標としてオクタン価というのがあるが、オクタン価を高めるための処理で水素が発生するんだそうだ。
オクタン価を高めるためには、炭化水素の結合を増やすとよいらしく、結合をくっつけると水素が余ると。
水素を足したり引いたり複雑だが、有用な石油製品を作るにはそういう工夫が必要だと。
ただ、これだけでは全ての水素をまかなえないので、軽質ナフサの水蒸気分解も併用しているとのこと。
ガソリンの原料よりもさらに分子数の小さな炭化水素だが、そこに水蒸気を加えて、二酸化炭素と水素を作るということ。
さっきまで分子量が大きい炭化水素を分解するという話を書いてたが、分子量が小さすぎるのもそれはそれで価値が低いようだ。
こうやって、製油所は大量の水素を作り、自家消費しているということだ。
重油の用途として大きいのが船舶燃料だが、2020年以降、全世界で船の燃料の硫黄分を0.5%以下にすることが決まっている。
硫黄分の少ない燃料として、すでに広く活用されているのが 軽油(A重油) 、取扱も便利ですからね。その代わり高くなるけど。
あるいは天然ガスなど、安価で硫黄分を含まない燃料に移行することも考えられているようだ。
重油(C重油)を低硫黄化したものも用意されるようだが、供給能力や品質に不安があるようである。
重油ほど硫黄分を低下させるのが大変で、それが実現できたとしても、大量の水素が必要になる。
それなら、SOxを除去する装置を船に取り付けて、従来の硫黄分のC重油を使おうという考えもあるが、できる船とできない船があるだろう。
いずれにせよ、石油精製の余り物を重油として売ろうにも、需要がなくなって売れなくなる時代がやってきつつあるようだ。
重油を軽油などに作り替えるにせよ、低硫黄の燃料を作るにせよ、精油所で作る水素はなおさら重要になっているようだ。