凱旋門賞が日本馬を招致したい理由

JRAでの海外馬券発売ももはや定着してきた感はある。

そういえば今日は香港チャンピオンズデーの3レースの馬券発売があるんですね。

その海外馬券発売で飛び抜けて売れるのが凱旋門賞である。

JRAでの売上は当地フランスのPMUの売上よりはるかに多いというのも知られた話である。

ただし、JRAの内規では海外馬券発売は一定の実績のあるJRA所属馬が出走予定の場合のみ行うことになっている。

すなわちJRA所属馬が凱旋門賞に行ってくれないとこの売上はないわけである。


そして凱旋門賞は招待競走ではないので輸送費・滞在費と負担が重い。

このような事情を考慮してJRAでは海外遠征協力金という制度を用意している。

2歳戦を除くG1勝ち馬が出走する場合は500万円、

帰国後にジャパンカップ・有馬記念に出走する場合は+1000万円が支払われる。

原資は凱旋門賞の馬券売上であることは言うまでもない。

とはいえ、この条件にあたる馬だけが出走するわけじゃない。


そんな凱旋門賞だが日本からの遠征馬、最大2頭に限り輸送費補助が導入されるようだ。

日本馬誘致へ凱旋門賞が3つの変更「輸送補助」「前哨戦の前倒し」「馬場改修」ギャロ発表 (日刊スポーツ)

大半を占めるヨーロッパ圏の馬は輸送費自己負担なのは変わらないし、

遠方でもオーストラリアや香港などからの出走に補助があるわけではない。

わざとらしいが、ヨーロッパ以外から凱旋門賞に継続して参戦しているのは日本だけだからとのこと。

前哨戦となるニエル賞・フォア賞・ヴェルメイユ賞も1週繰り上げになる。

JRAの前哨戦繰り上げと重なるが、日本の調教師の意見を聞いてのことらしい。

また、凱旋門賞の時期は雨が多く、馬場が悪くなりやすいため、馬場改修を行うとのこと。

馬場が極端に悪化しては勝負にならないので、遠征なんてやってられないという声もあったのだろうか。


日本からの遠征馬に限り輸送費補助があるのはJRAでの馬券発売の分配金目当てだろう。

こういう話はアメリカのブリーダーズカップでもあった。

元々ブリーダーズカップは北アメリカ以外からの出走馬には輸送費補助がある。

基本的な輸送費補助ではかなり足が出るのだが、日本からの出走は補助額が増額されているらしい。

今回のマルシュロレーヌの場合、むこう(主催者)が出してくれる金額が、輸送費をひっくるめて日本以外の馬だと4万ドルだったんですけど、日本の馬は10万ドルということを聞いて、俄然やる気になりましたよね。

(BCディスタフ覇者マルシュロレーヌの軌跡 (ウエブハロン))

BCディスタフはJRA馬券発売対象のレースではないが、それでも増額対象だったという。

この年のBC開催はJRAでは3レースの馬券を発売して、計13億円の売上となっている。

BCフィリー&メアターフに出て優勝したラヴズオンリーユーが、BCターフとの両にらみだったので日本馬がいないレースの馬券発売が行われる珍事もあったが。


とはいえ、そういう即物的な理由だけでもないんじゃないかという話はある。

凱旋門賞が芝2400mの世界チャンピオン決定戦を死守するための道ではないかということである。

凱旋門賞は世界のトップ100 G1レースの1位になることが多いレースである。

芝2400mの主要レースというのは概ね下記のところである。

  • ドバイシーマクラシック(UAE) (2410mだけど)
  • 凱旋門賞(フランス)
  • キングジョージ6世&クイーンエリザベスステークス(イギリス)
  • ブリーダーズカップターフ(アメリカ)
  • ジャパンカップ(日本)

この中でもっとも国際競走らしいのはやっぱりドバイシーマクラシックですよね。

2400mの世界チャンピオン決定戦という意義を失いつつあるという危機感はあるのだろう。


そして、ヨーロッパでは2400mというのは長すぎるという評価になっている。

それは日本にヨーロッパの2400mのチャンピオンが種牡馬として続々と渡ってきていることからもわかる。

フランケル一族が日本に来る理由

世界競馬を見渡したとき、アメリカはダート中心、オーストラリアはマイル以下が中心、

ヨーロッパも平地は2000m以下が評価が高いという状況だが、

日本は芝2400~2500mに格式高いレースが多いため、ここに注力し続けている。

3000m級は日本でもさすがに長いという評価ではあるが、天皇賞(春)と菊花賞はこのクラスの世界最高峰である。

そんな日本で行われる2400mのチャンピオン決定戦、ジャパンカップは近年は外国馬はなかなか歯が立たないレースになっている。

ヨーロッパからの遠征馬にとってはスピード勝負に過ぎるからという話はあるが、

地元勢の層が厚すぎるからという要因も大きいはずである。


実はすでにジャパンカップは2400mの世界チャンピオン決定戦なのではという説もあってですね。

というのも日本競馬は少頭数のレースが少ないんですよね。

それは賞金(6着以下に払われる出走奨励金などを含む)が高いからなんだけど。

ヨーロッパのレースを見るとG1でもこれだけしか頭数いないの? と思ってしまう。

多頭数のレースで形成されるレーティングというのは傑出した馬が発生しにくい傾向にある。

平均的なレベルが高いことは疑いはないし、実際にワールドベストホースランキングには日本馬は多く掲載されている。

でも実際はもっと強い馬がいるんじゃないの? ということである。

世界のトップ100 G1の上位になるレースというのは傑出した馬が上位に入ったレースという側面もかなりある。

2023年にジャパンカップが1位になったのはイクイノックスが走ったからというのが大きな要因である。

ジャパンカップが世界一になるまで


凱旋門賞が日本馬なしに2400mのチャンピオン決定戦の地位が保てない状況だと、

もはやジャパンカップが世界チャンピオン決定戦になってるような気はするけど。

でも、こういうのは既得権みたいなところはありますからね。

既得権があるうちに、日本の有力馬を招致して地位を保ちたいと。


今年の凱旋門賞ですが、日本からも何頭か登録が報じられているが、

やはり参戦有力なのは昨年の有馬記念を優勝したレガレイラでしょうね。

去年も牝馬ながら皐月賞・ダービーに参戦する前後で凱旋門賞登録が報じられていた。

残念ながら春2戦で結果が出なかったので参戦はならなかったが。

前哨戦として(牝馬なので)ヴェルメイユ賞を選ぶかはわからないけど、その可能性もあるのかも。