「海の京都」「森の京都」「お茶の京都」というのを聞いたことある人はどれぐらいいるだろうか。
わりと京都府と行き来のある人なら見聞きしているかもしれない。
これらは「もうひとつの京都」というキャンペーンによるものである。
海の京都ってのはいかにも印象深いし、この中では一番積極的な活動が見られる。
2016年前後からこれら3地域のキャンペーンは行われている。
京都府内にはこの3つのキャンペーンの対象地域に含まれない地域がある。
当然、京都市は含まれていない。京都市以外への観光誘致を目的としたキャンペーンだからである。
その京都市の西側にある向日市・長岡京市・大山崎町で、これらの地域は乙訓地域と呼ばれる。
生活面では京都市への依存度が強い地域とは言えるのだと思うが。
で、気になって調べたところ、乙訓地域でもこういうキャンペーンはあって、
それが「竹の里・乙訓」で、あまり知らなかったが同時期からやってたらしい。
3つのキャンペーンの対象エリアも細かく見てみると気になることはある。
「森の京都」は京都府の丹波地域で、亀岡市、南丹市、京丹波町、福知山市、綾部市が該当する。
厳密なことを言うと現在は京都市に属する京北なども丹波である。
区域ではないが「森の京都」のWebサイトには京北のことも書かれてはいる。
乙訓ほどではないが観光面では影が薄い感じはある。
目下においては亀岡のサンガスタジアムを中心に広げていきたいとのこと。
「お茶の京都」は宇治市以南の山城地域である。
本来は山城というのは京都市も含むし、乙訓地域も含むのだが、
京都府の行政区分としては京都市を除くのが慣例で、乙訓地域も時に除かれる。
宇治茶のブランドを形成した宇治市、茶畑が広がる周辺地域を意識してお茶の京都と言っているが、
実際には八幡市などはそういうイメージではない地域も含まれている。
京都の郊外として歴史ある地域というのが「お茶」というところに現れているということか。
その中でも南部の相楽地域はもはや奈良の郊外という色合いが強いが。
(奈良県のパンフレットにもあたかも県内のように書かれてたし: あられ舞う南山城と火の粉舞う奈良)
で、気になったのが「海の京都」なんですよね。
これ、最初は丹後という意味だと思っていたが、丹後+福知山市+綾部市が正しい。
そうなんですよ。福知山・綾部は「海の京都」と「森の京都」の両方の対象地域なんですね。
海の京都の典型的な地域が天橋立(宮津市)や舞鶴といった地域である。
いずれも長い歴史のある景勝地であり、港町である。
福知山・綾部はそれ自体が海に面しているわけではないし、歴史的な区分も異なる。
しかし、交通面で言えば、綾部や福知山を経て丹後や但馬(兵庫県)といった日本海側の地域へ向かうことが多い。
おそらくこういう流れを考えて海の京都に含んでいるのだと思う。
この3つのキャンペーンの特色としてDMOの存在がある。
DMOはDestination Management Organizationの略で日本語で言えば「観光地域づくり法人」らしい。
従来的な観光協会などがこの役目を果たしていることも多いが、NPO法人や株式会社という体裁を取るものもある。
(株)南紀白浜エアポートが和歌山県牟婁地域を中心とした地域連携DMOとして書かれているが、
この会社は南紀白浜空港の運営とともに旅行業をはじめとした観光誘致を行っているためDMOなのだという。
京都府ではもうひとつの京都のキャンペーンに合わせて観光協会を再構築していて、
特に一般社団法人京都府北部地域連携都市圏振興社(海の京都DMO)では、
構成市町にあった既存の観光協会を集約しており、事業規模が大きい。
さっきもあったが福知山・綾部は森の京都の区域でもあるが、
地域の観光協会に相当するのが海の京都DMOなので、ちょっと複雑である。
他はそこまでではないが、いずれのDMOも旅行業登録を持っており、旅行商品の開発なども行っている。
「海の京都」「森の京都」「お茶の京都」という言い方も気に入らないところはあるが、
一方でこれらのキャンペーンが功を奏していることは確かである。
やはり京都というのが世界的な観光都市であるところ、
その周辺も魅力的な地域が多々あるというのでうまくやっているとは思う。
どちらかというと乙訓地域は京都市内の観光を分散させるという観点で興味がありそうで、
これは京都市が山科・醍醐地域への観光客誘致に取り組んでいるのはよく知られているが、
同様に「京都西山」ということ京都市西京区に属する地域も含めた乙訓地域のプロモーションもしている。
この点で切っても切り離せないという言い方はできるかもしれない。
それは伏見と「お茶の京都」であるところの宇治・八幡とかもそうだけど
比べるものではないが、奈良県が中南部への観光客誘致に苦戦しているのは昔からである。
みどころは多い地域ではあるのだがポテンシャルに見合っているとは言えないだろう。
昔は奈良市を中心とした北部にしても宿泊客が少ないと言っていたが、
最近はホテルの充実も進み、少しずつだが滞在形の旅行にシフトしつつある。
とりあえずこれでも大きな進歩と捉えられているところだが、
それが中南部まで波及するのはまだ遠いというのが実情かなとも思う。
どっちかというと「お茶の京都」への観光誘致に寄与しそうな話だが。
(「お茶の京都」の課題にも宿泊施設が少ないことが書かれていたし)
奈良県だって中南部への観光客誘致に興味がないわけではないだろうが、
でも優先度の面で奈良市周辺を中心に考えていたところはあるだろう。
奈良県で言えば中南部なのか、中部と南部(五條・吉野)なのかわからないけど、
一定の地域ごとに広域観光の司令塔がいるのは1つのモデルではないかと思った。
地域連携DMOの一覧を見て、ああそういえばと思ったのが「KIX泉州ツーリズムビューロー」で、
これは和泉地域の市町で構成されていてKIXとある通り関西空港と関連付けた活動である。
いろいろな観光資源を掘り起こして、特に外国からの観光客誘致では一定の成果を得ている。
けっこうやりようはありそうな気がしますよね。