従来より低いところを飛ぶけどね

以前、羽田空港の飛行ルートのことに関連してこんなことを書いた。

ところで羽田空港は複数の滑走路から同時離陸・同時着陸するために新飛行ルートを導入したわけだが、

同じようなことをやるかもしれない空港として関西空港がある。

(市街地上空を通って着陸する理由)

関西空港・神戸空港の発着枠拡大のための発着ルートが検討されていたが、飛行ルート案が出ていた。

関西空域における飛行経路技術検討委員会 (国土交通省)

羽田空港に比べるとだいぶマイルドだと思いますね。


そもそも関西・神戸の両空港の離着陸機の騒音は海上に収める考えがあり、

陸域を通過するときは、離陸時で8000ft以上、着陸で4000ft以上を基準としてきた。

関空開港以来、新ルートの追加もいくつか行われてきたが、この範囲で新ルートの追加が行われている。

貝塚市上空を経て東日本へ向かう河和ルートがその一例である。

海上空港の特長を生かし、騒音軽減を図ってきたことは評価できるが、

海上で8000ftまで上昇するには大阪湾を広く使う必要があり、

その制約の中で関西・神戸の共存というのはとても難しかった。


それで公表された見直し案をみると、こういう流れらしい。

  1. 関西から離陸して小回りに上昇して、早期に6つのルートに散らせる
  2. 関西への着陸ルートの柔軟性を高めて着陸機の調整をしやすくする
  3. 神戸からの離陸ルートを明石海峡(着陸と共用)から淡路島北部に移動

飛行ルートを分散させることで処理能力を拡大するのが基本的な考えである。

羽田空港では2本同時に着陸・離陸を行うためにいろいろ制約があり、

それにより特定の地域に大きな騒音影響を与えてしまう傾向があった。

一方、この見直し案では、関西空港の滑走路は従来通り着陸・着陸1本ずつで運用する。

出発あるいは到着が集中すると能力をフル活用できない部分もあるが、

関西3空港の役割分担によりピーク時の需要にも対応可能なので問題ないと。

3空港が近接する難しさはあるが、羽田空港に役割が極めて集中してしまった関東圏とはここが異なる。


で、これを実現するために陸域を通過する高度が下がり、飛行ルートのバリエーションが増える。

1.の関西離陸後は淡路島上空を通るルートが2本から4本に増える。

淡路島上空と河和ルート(貝塚市付近から東へ向かう)で陸上を通過する高度が8000ft以上→5000ft以上に下がる。

2.の関西への着陸ルートは陸上を通過する高度は従来通り4000ft以上だが、

淡路島上空を通るルートが1本(南風のみ)→2本(南風)・1本(北風)に増える。

3.の神戸からの離陸ルートは淡路島北部を3000ft以上で通過するようになる。


これらは全体的に受け入れやすいものになっていると思う。

まず、関西空港だが小型機71%と大型機もあるが比較的小型機の割合が高い。

Fedexの貨物ハブがあるなど貨物機の発着も多く、貨物機は古い型の飛行機が使われ続けるため全て低騒音というのは難しい。

しかし、全体としては比較的静かな飛行機が多いと言ってよいと思う。

その上で飛行ルートが分散することで1ルートあたりの負担は軽くなっている。

うるさい飛行機が飛ぶこともありうるが頻度は低いので勘弁してねと。

着陸ルートは従来より短絡されて高度が下がることや、ルートの多様化は進むが、

4000ft以上確保できているため、そこまで騒音は気にならないと思われる。

多少うるさい飛行機が混ざる可能性はあるが頻度は低い。


最も影響が顕著なのは神戸空港の離陸機が淡路島北部を通過するところかも。

これが3000ft以上ということになる。

神戸空港については小型機が多いが、それ以外も多少入る。

今後、国際線の就航などの機能拡大もあるのでなんとも言えないところはある。

人口があまり多い地域には見えないが注意が必要かもしれない。


というわけで影響範囲が拡大することによる合意形成の難しさはあるが、

影響範囲を分散させることにより理解を得やすい仕組みはあると思う。

影響範囲は主に淡路島ではあるが、河和ルートは大阪平野も絡む。

和歌山県方面も全く影響なしとは言えないところはある。

今までより大阪湾をコンパクトに使うことにはなるが、それでも海上である程度は高度が稼げるのは海上空港だからこそ。

深夜帯は従来通りにほぼ全てを海上に収めるようにするはず。

そのあたりを総合的にアピールして理解を得るということになるのかな。