調布飛行場の存在意義

今日は在宅勤務からの早抜けして、所用のために自転車で市内を駆けずり回ってた。

普段は歩いて移動することが多いところだが、自転車で移動するとこれだけしかかからないのかと改めて思う。

駐輪場のことを考えると歩いた方が楽というのはあるんだが。

今回はすぐに済む用事なので公共駐輪場を使う場合も2時間以内無料で全て対応している。


こんなニュースを見た。

都心から100キロ、遠すぎて格納庫は空っぽ…調布飛行場から伊豆大島に移転進まず (読売新聞)

東京都は調布飛行場を拠点としている自家用機を大島空港に移転させたいという話。

ただ、大島は本州とは陸つながりではないので、自家用機の運用のために海路・空路での移動が必要で現状は1機も移転していないということである。

これだけ見れば、東京都はなにを考えてるんだと思うわけだけど……


調布飛行場は東京都港湾局が管理する飛行場である。

東京都港湾局というと、東京港の管理者という印象が強いのだが、東京ヘリポートと調布飛行場の管理も行っている。

東京ヘリポートは東京港の付帯施設のような扱いになっているのだが、

調布飛行場は離島の海港・空港を管理する離島港湾部の下にあることになっている。

本州にあるが離島のための空港というのが調布飛行場の位置づけである。

事実、調布飛行場の定期便は東京都内の離島路線しかない。


一方で調布飛行場は自家用機の運用拠点でもある。

が、新規に調布飛行場を本拠地とする自家用機を配備することはできないそう。

というか、東京都の管理になった1992年以降に認めた例はないようで、

都が飛行場の管理を国から引き継いだ1992年以前から駐機しており、ある都幹部は「強制的に移転させることは難しい」と話す。

という記載もある。

調布飛行場は元々陸軍の飛行場だったものを、アメリカ軍が占有し、

それが1955年から国管理の場外離着陸場として運用されていたところにルーツがある。

この時代にここを拠点にした自家用機の運用が認められていたらしい。


本来であればアメリカ軍の占有が終われば、基地はなくなるはずだった。

ところが、飛行場としての機能は他で代替出来ないということになった。

地元としては敷地全てを公園や福祉施設などに転用することを求めていたが、

それは困難だと飛行場の敷地を半分程度に縮小し、その分だけ転用することにした。

それが現在の武蔵野の森公園と周辺のスタジアム・体育館などである。


飛行場の存続が認められた理由というのが、まさに離島の存在である。

離島への定期路線や救難活動という名目を掲げられると、地元としても反論しがたいと。

このような経緯があるので、自家用機に対する地元の目は大変厳しく、

2015年に自家用機の墜落事故で地元住民に死傷者を出してからは特に厳しい。

東京都としても自家用機を積極的に受け入れたことはないが、

国管理時代から運用している自家用機を追い出すために何か効果的な手が必要と、

いろいろ考えた結果行き着いたのが大島空港への移転だったという。


ところで東京には羽田空港が存在するのに、なぜ調布飛行場を使っているのだろうか?

おそらく羽田空港に60席未満の小型機の乗り入れが制限されていることが理由だろう。

羽田空港は混雑する空港であり、かつては国内線でジャンボ機まで飛んでいたほど。

現在は小型化が進んだが、JALの運用するエンブラエル170(76席)が最小である。

もっとも過去にはANAが羽田~三宅島で56席のQ300を飛ばしていた時期もあり、

離島路線であれば飛ばせられなくはないような気はするのだが……


調布飛行場はあまり便利な立地とは言いがたい。

ただ、八丈島以外の離島から空路で発着できるのはここだけという実情がある。

もしも羽田空港発着が認められればそれが一番良いのである。

もちろん発着枠の問題はあるのだが、これだけ拡張されたのだし、東京都内ならば特別扱いしてもいいんじゃないの? と思う。

機材は大型化して便数は集約するなどの工夫は必要と思うが。


調布飛行場には離島の救護活動という意義もあるとなっているが、

ヘリコプターであれば東京ヘリポートが主な拠点のはずだし、

固定翼機としても調布飛行場を使うことなんてあるんかね?

(小笠原諸島からの緊急搬送は厚木基地を使っているという)

立川飛行場は一応、固定翼機も使えるはず。ほぼヘリコプター専用だけど。

このような事情を考えると、これも有名無実なんじゃないかと思う。


離島定期便を羽田空港に移管できれば、調布飛行場の存在意義はなくなる。

離島住民・調布飛行場周辺住民いずれにとっても嬉しいニュースである。

ただ、そうして調布飛行場が廃港になると自家用機の運用はできなくなる。

もしそうなったとしても大島空港が使えますよというのはアリバイとして有用である。

それが実用的ではないってのはもっともな話なんですけどね。


もちろん自家用機も航空写真の撮影など、理由があって調布にいるんですけどね。

その自家用機の退路を断つことが本当によいことなのかというのはある。

東京都が管理を引き継いだ時点では、離島のためという名目があれば、

消極的ながらも自家用機の運用拠点を維持できるという考えもあったのかも。