香港の感染拡大はすさまじい

来週から日本競馬では毎週末のようにGIレースが続く。

まずは春のスプリント王決定戦、高松宮記念からスタートである。

また来週はドバイワールドカップデーということで日本馬が大挙して遠征している。

なんと今年はサラブレッドの重賞8レース全てに日本馬が出るらしい。

2022ドバイワールドカップデーの出走馬 (JRA)

特にドバイシーマクラシック(芝2410m)は5頭出走で、上位人気のほとんどを占めている。

春シーズンの外国遠征といえば、もう1つ、毎年恒例なのが香港チャンピオンズデー、特にクイーンエリザベス2世カップである。

しかし、今年は地元馬だけのレースになるらしい。


4・24香港チャンピオンズデー 日本馬の参戦が不可能に 国際競走3レースは地元馬のみで施行 (東スポ競馬)

香港チャンピオンズデーは3つのG1レースからなる国際招待競走だが、

年末の香港国際競走ほどは遠征馬は多くなく、ほとんどが日本からの遠征で、それもクイーンエリザベス2世カップに極めて集中している。

ただ、クイーンエリザベス2世カップにおける日本馬の活躍は顕著であり、

昨年は日本からの4頭が上位4頭を占めるという状況だった。これは極端だが。

そんなレースに日本から遠征できないというのは日本の競馬関係者にも大きな落胆だった。


このような判断に至った背景には、香港における新型コロナウイルスの状況が悪いことがある。

これがただ事ではないということがニュースを見ていてわかった。

香港 2021年末からの新規感染 全人口の1割超に 封じ込め長期化も (NHK)

感染者数の報告が多いだけならまだしも、死者数まで多いという。

香港の人口は750万人ほど、東京都の半分ぐらいですね。

それで連日200人以上が新型コロナウイルスで死んでいるという。

東京都だと多い時期で1日30人程度である。(この中には死因が新型コロナウイルスとは言いがたい患者も含んでいる。特に最近はその傾向が強い。)

地域ごとに死者数の考え方は違うので、数字の比較には注意が必要だが、1桁以上多いのだから相当である。


どうしてこんなことになっているのか?

まず、香港といえば世界有数の過密都市ですよね。高齢者との同居も多く、家庭内感染がかなり多いということがある。

そしてもう1つ、高齢者のワクチンの普及率が低い上に、ワクチンの効果が低いのである。

ここが日本と香港の差として大きいのではないかと思う。

2022年香港でのオミクロン株BA.2の流行-3(訂正版) 2022.3.4現在 (pdf) (日本感染症学会)


香港の新型コロナウイルスワクチンの普及率は数字の面では決して悪くはない。

1回以上接種が人口の85%、日本の81%より良いぐらいである。

ただ、年齢別に見ると、12~59歳では9割以上の普及率があるのに、

60代で88%、70代で78%、80歳以上で51%と高齢者ほど低い。

それもここ数ヶ月で伸びてこの数字ですから、2回接種完の割合はもう少し低い。

3回接種の普及率うんぬんと言っている日本とはだいぶ違う。

(香港でも3回目接種は行われているが、そもそも2回接種完の割合が低ければどうしょうもない)


さらに問題なのがワクチンの種類。香港で使われているのは Comirnaty (BioNTech)とCoronaVac (Sinovac)の2種類だという。

Cominatyは日本ではファイザーワクチンとして知られている。おなじみmRNAワクチンで、こちらは2回接種完でもオミクロン株にもそこそこの効果が続く。

問題はCoronaVacだが、こちらは中国で早期に開発された不活化ワクチンである。

これはこれで効果があると思っていた時期もあったのだが、オミクロン株での効果低下はもっとも顕著なグループである。

さらに悪いのはこの使い分けで、高齢者ほどに不活化ワクチンの割合が高い。

60代以上では7~8割が不活化ワクチン、2~3割がmRNAワクチンである。

それ以下の年代では6割がmRNAワクチン、4割が不活化ワクチンとかそれぐらい。

だから香港の80代以上というのは、ワクチン未接種が半分、4割が不活化ワクチン、1割がmRNAワクチンとか、そんな数字なんですよね。

東京都だと同年代の2回接種完が97%(大半はmRNAワクチン)、さらに3回接種完が78%ですからね。


また、香港では新型コロナウイルスに顕著に効く薬が十分使われていないという。

日本でも医者にかかれなければ使いようもないと言われたものだが、医療の逼迫により医者にかかることがそもそも困難なのは要因の1つである。

そもそも「人口の1割超が感染」というのもだいぶ過小な数字だと言われていて、

正味の感染者は人口の半分にも達している? という話もある。

まぁ確かに全員診断されるとは限らないので、このギャップは致し方ないのだが。

ただ、近国で診断数が多い韓国だと過剰診断の感があるのと比べると、診断数の多さだけではない深刻さが見えている。


というわけで非常に困った話ではあって、さらに中国大陸でよく行われた都市封鎖して一斉検査というのも香港には適用できていないのが実情である。

というか都市封鎖はともかく、一斉検査しても陽性者を隔離しておく場所がない。

このため一斉検査の意味が無いというのも実施できない理由になっているという。

一斉検査をやらないことは妥当としても、それに変わる打開策も乏しい。


さて、今回、香港ジョッキークラブが香港チャンピオンズデーへの外国馬招待を断念したのは、

香港入境時が困難とか、そういう問題よりは香港競馬の開催継続を優先したということがあるそう。

香港ジョッキークラブでは、競馬関係者をバブルの中において開催を継続している。

ただでさえ香港の競馬関係者をバブル下に置くだけでも大変なのに、外国(実質的には日本)の競馬関係者が加われば、もうとてもじゃないが回らないと。

そのような実務的な困難から断念したそうである。


一方で香港競馬のレベルは決して低くなく、地元馬だけでもG1レースとしての体面は保てるだろう。

もっとも例年なら世界トップクラスの芝中距離レースに列せられるクイーンエリザベス2世カップだが、今年は並のG1レースということになろうと思う。

ちょうどこのことが発表されたのは日本の金鯱賞の1週間前ぐらいだった。

金鯱賞といえば、制度上は大阪杯の前哨戦だが、レース間隔を考えると香港のクイーンエリザベス2世カップの前哨戦に使う馬が多いレースでもある。

金鯱賞でも1番人気に推され、結果2着だったレイパパレも、香港にいくつもりで準備していたのだが、断念せざるを得なくなった。

断念した馬が向かう先は大阪杯である。

今年初めは大阪杯はエフフォーリア以外のメンバーが揃わないかもね――

なんて言われていたのだが、思わぬ形で混戦模様になってしまった。


ドバイに行った馬も香港への転戦を考えていたのはいるでしょう。

特に香港ヴァーズ2勝のグローリーヴェイズなんてそうでしょう。

このあたりの長距離勢は天皇賞(春)も考えるのかなぁ。3200m戦だけど。

2億円チャレンジになっても相変わらず3勝クラスからの格上挑戦できるんじゃないの、

とか言ってたけど、もしかするとオープンクラスでも実績次第では難しいのかな。

チャンピオン決定戦としては実績馬が揃うことは良いことではあるけど、そういう空隙だからこそ狙っていた馬もいたはずで、作戦変更が必要かも。