ちょっとした国際問題なのですが……
フランス代表に「フランス人いない」 スペイン元首相コラムに猛批判「人種差別的暴言だ」仏メディア猛反発 (スポニチAnnex)
サッカーワールドカップで大活躍のフランス代表チーム、代々フランス人って人はあまりいませんねと。
これはどうも本当のことらしい。両親とも外国人というのがけっこういるらしい。
フランスは国籍について基本的に血統主義であるにもかかわらずである。
日本でも片親が外国人の日本人というのはしばしばいて、
今回のワールドカップでゴールキーパーとして大活躍だった鈴木彩艶選手もそうである。
父ガーナ人なのだが、母が日本人で埼玉県生まれである。
地元の浦和レッズからプロ入りして、今はイタリアのチームに所属している。
でも、こういう話ではないらしい。
そんなわけでフランスの国籍制度を調べてみた。
フランスでは国籍を取得する手段が大きく4つある。
出生、成年到達時の自動取得、宣言、帰化である。
日本と共通する部分もあるが、日本とは異なる条件もしばしばある。
出生時の国籍取得だが、少なくとも片親がフランス人、フランス生まれで両親が不明、これは日本と同じ。
フランス生まれで両親から国籍を引き継げない場合というのもあるが、対象者は限られそう。
特徴的な条件として、少なくとも片親がフランス生まれという条件がある。
これは二重出生地主義というフランス特有のルールである。
フランス生まれの人はフランス国籍を取得せずとも、その子はフランス国籍を得るということである。
もっとも後で書くルールを鑑みると、フランス生まれでフランスに住み続けていればフランス国籍を取得するケースが多そうだが。
次に成年到達時の自動取得だが、フランス生まれでフランスに居住して18歳を向かえると自動的に国籍を取得するというものである。
11歳以降で通算5年以上フランスに住んでいるという条件も必要である。
さらに宣言による取得というのもあるが、ようは届出による国籍取得である。
フランス生まれでフランス居住による国籍取得は宣言による取得もあって、
こちらは13歳以上で要件を満たしていればその時点で取得できる。
フランス代表チームで両親とも外国人という選手の多くは、これらのフランス生まれでフランス居住を続けた場合に該当しているそう。
フランス人の養子・配偶者・兄弟姉妹(18歳未満)・親や祖父母(65歳以上)も宣言による取得の対象である。
帰化については、これは日本と似て、フランスに一定の居住歴があり、
原則として成人で、素行が善良で、語学などフランス社会の同化を証明できることが求められる。
外国生まれで幼くしてフランスに渡ってきた場合、フランス国籍を取得するとすれば帰化なのだろう。
このパターンはフランス代表チームでは少なく、コンゴ共和国出身のブライス・サンバ選手が該当する。
コンゴ代表チームに呼ばれたこともあったが、帰化によりフランス国籍を取得してフランス代表チームに参加することにしたそう。
当然、こういうのもあるが全体としては少ないということである。
フランス生まれで成人までの一定年数をフランスで過ごせばフランス国籍を取得するのは出生地主義とも言えるが、
アメリカやアイルランドの出生地主義とはまた違うものである。
アメリカの出生地主義は単純にアメリカで生まれればという話で、
親のアメリカ在留資格は問わず、短期滞在でも不法滞在でもよい。
無条件というのはいろいろ問題があるようで、補正を加えた国も多く、
アイルランドは出生地主義を基本としながら制限を加えた国の1つである。
アイルランド島はアイルランド共和国とイギリスの北アイルランドがあるが、
アイルランド島で生まれればアイルランド国籍を得る可能性がある。
ただし、少なくとも片親がアイルランド国籍、イギリス国籍、アイルランド島に長期滞在である必要がある。
アメリカほど容易ではないが、両親が外国人でありながら、生まれながらにアイルランド国籍は存在するということである。
日本では両親が外国人で日本で生まれたからといって、それだけでは国籍取得はできない。
日本で帰化が認められるための要件はいろいろあるのだけど、
基本的には生計を維持できる成年でなければいけないわけである。
このため就労していない子が単独で日本国籍を取得することはできない。
ただし、親が日本国籍を取得すればその限りではない。このため親子揃っての帰化が基本である。
帰化にあたってのハードルはいろいろあるが大きくは2つではないかと思う。
1つは外国の国籍を放棄すること。これは外国出身者には非常に重いわけですよね。
もう1つは素行が善良であることである。
外国人というのは日本人よりも手続きが多いが、それらを欠かさずやってなければ素行不良ともなりかねない。
この素行が善良であるということは、永住許可の要件にもある。
日本で育った外国人が日本で住み続けるにあたって、永住者であるかは大きな差である。
親が永住者になれば、子も同時に永住者になるのが通例である。
永住許可にも素行が善良であること、生計を維持できることなど求められる。
なので就労していない子が単独で永住許可を得ることが原則できない。
しかし日本人・永住者の子・配偶者はその限りではなく、親子揃っての永住許可が原則となる。
永住許可が出ないと日本の学校を卒業しても日本国内での就職が困難になりかねない。
いずれのケースにおいても、親の都合で要件を満たせないというのが問題である。
ここを脱するためには、日本で働きながら善良に暮らした上で要件を満たす必要があるが、
これらの要件を幼い内に満たしている人に比べると面倒がある。
その点ではフランスで生まれてフランスに住み続ければフランス国籍を得るというのはよくできた仕組みだと思う。
フランスでは重国籍は特に問題ないので、そもそも問題にもならないが、
日本で親子揃っての帰化だと親は出身国の国籍を放棄する必要があるかもしれないが、
日本育ちの子だけ国籍を放棄すれば良いならハードルはかなり下がりそうである。
日本は歴史的に特別永住者という国籍ではない特別な地位を与えられた外国人がいる。
元は朝鮮籍・台湾籍の日本人、あるいはその子孫ということでは日本人と扱ってもよさそうなのだが、
国籍唯一の原則など考えると、日本人と扱うのもそれはそれで問題だったのかもしれない。
長い年月が経ち、帰化したりで特別永住者の数は減り続けているが、
帰化の手続きさえしなければ、何代でも韓国籍など維持して、日本に住み続けることができる。
一般の永住者もそうなのだが、日本としては外国人として定住するという道を基本としてきたのではないか。
どの方法がよいとも単純には言えませんけどね。
ただ、出生地主義は移民で形成された国には適しているが、
そうでない国にとっては違うんじゃない? という思いがあるんだと思う。
日本はかなり厳格な血統主義で、重国籍は解消することは前提だが、
日本に居住しないまま何代経っても、日本人の子は日本人である。
(ここに何らかの制限が設けられている国はしばしばある)
ただ、日本で生まれ育っただけでは日本国籍にはならない。
さらに言えば、元植民地出身者への国籍取得優遇策もない。
フランスも今の制度になるまでには様々な経緯があったようである。
二重出生地主義は移民の子孫をフランス市民と認めるルールの中では古いもののよう。
血統主義を基本としながら、どこからフランス市民とするか探った結果のようだ。
いろいろ参考に出来る考えもありそうに思える。
ところで冒頭の話だが、フランスでは非難の嵐だそうだけど、功利主義のような面もあり……
フランス国内の移民問題は今も続いているが、代表チームだけは特別。勝てば、すべてが前向きになる。移民を容認する社会的な環境の変化もあって、フランス代表の「アフリカ化」は進む。
(「フランスって、アフリカだよね」 W杯で顕著に現れた「9/11」…欧州で進む”アフリカ化” (FOOTBALL ZONE))
なのでフランスでの非難もどれぐらい額面通りに見たことかなとは思いますが。果たしてどうなのだろう。