WINNERは本当にわかりやすいのか?

クレディセゾンから「サッカーとバスケを対象とした新しいスポーツくじ『WINNER』、2022年9月26日販売開始!」というメールが届いて、

調べたら今日発表されたんですね。

発売元は日本スポーツ振興センター、だからtotoと同じですね。


totoは2001年からサッカーの試合を予想する くじ として存在している。

初年度は643億円の売上があったが、2003年には199億円に年々減少する状況。

これではスポーツ振興のための助成金を出せる状況ではなかった。

これを打開したのが非予想型のBIGの登場だった。

BIGはコンピュータがランダムに試合結果の予想をするタイプの商品で、

最大6億円という高額当せん金が狙えるということで人気となった。

現在は最大12億円が狙えるMEGA BIGの発売も始まっている。

かくしてスポーツ振興くじ全体としては昨年度1131億円の売上があり、

このうち9割を非予想系、1割が予想系という状況である。


スポーツへの貢献という点では成果はあったものの、

非予想系というのは 宝くじ や 重勝式車券 との競合もある。

(非予想型の重勝式車券については おいしいところ狙いの車券? で紹介している)

どうしてtotoの売上が伸び悩んだのかというところを検討してみると、

13試合分の結果を予想しなければならないというところが難しいと。

mini totoならば5試合の勝敗、toto GOALなら3試合の得点数の予想だが、

そうはいっても全部違うチームの複数試合の結果を考えなければならない。

これが問題であるというところに行き着いたという話は聞いていた。


こうして生まれたのがWINNERということらしい。

これは「1試合予想」と「競技会予想」の2タイプあり、

予想対象は従来のサッカーに加え、バスケットボールも対象となっている。

とりあえずは国内リーグということで、それぞれJリーグ、Bリーグが対象となっている。

「1試合予想」は1つの試合結果を予想すればよく、試合10分前まで買える。

「競技会予想」は1つのリーグの優勝チームを予想すればよい。

こちらはリーグ戦が始まってまもなく締め切られることになる。

まずはBリーグのB1・B2について10/14まで発売される。


従来のtotoは13試合予想するならば26チームのことを考えなければならなかった。

特定の試合だけ予想して、残りはランダムとかもできたけど。

しかしWINNERでは、1試合予想ならば2チームの話であり、

競技会予想はリーグに参加する全チームの関係性というのはあるが、本命のチームをきめればそれで終わりである。

「WINNER」という命名も、このチームが勝つということを決めれば買えるくじということを表しているのだと思う。

また、商品の特徴として「売上は応援するクラブにも還元される!」という記載があり、

どの程度、どのような計算式で配分されるのかはわからないが、予想対象となるチームに売上金の一部が配分されるところも特徴である。


日本ではスポーツの結果を予想するという点では、競馬などの公営競技がある。

公営競技とtotoの違いといえば、払戻金の課税と控除率というところが大きい。

公営競技は競技・主催者によって控除率が異なるが、

例えば、JRAでは控除率は20%(単勝・複勝)~30%(WIN5)となっている。

基本的に組み合わせ数が少ないほど控除率が低くなっている。

一方、totoの控除率は50%である。これは宝くじの控除率にも近い。

ただ、totoは当せん金は課税対象外となっているため、高額当せんの場合メリットが大きい。

公営競技の場合は払戻金は課税対象(一時所得)である。

ただし、一時所得は50万円の特別控除があるため、必ず課税されるというものでもない。


従来のtotoやBIGは組み合わせ数が多い分、当せん金が高額になることが多かった。

このため控除率が高くてもそこまで気にならないし、なんなら非課税のメリットが大きかった。

しかし、WINNERでは1試合の結果、あるいはリーグの優勝チームという程度で、

そこにtotoと同じ控除率を適用すると、的中しても「元返し」となりかねないのではないか。

元返しというのは的中して購入額がそのまま戻ってくるというだけであり、

それはもはや買う意味が無いということである。


この点についてWINNERはどうなっているのか。

まず控除率はtotoと同じ50%のようだった。そこは変えなかったのね。

しかし、控除率50%でどうやって1試合予想タイプのくじを実現するのか?

そこは得点も予想要素に加えるという方法を取っている

サッカーの場合は、ホーム勝ちに対して 1-0, 2-0, 2-1, 3-0, 3-1, 3-2, その他 の7通り、アウェイ勝ちも7通り、引き分けに対して0-0, 1-1, 2-2, その他 の4通り、計18通りに対して投票する。

バスケットボールの場合は、ホーム勝ち・アウェイ勝ち、それぞれに8通りの得点差があって、この計16通りに対して投票する。

当せん金の計算方法は公営競技と同じで、オッズは締め切りまでは絶えず変動する。

このように勝ち・負けのバリエーションを増やすことで、元払いは避けようとしているようである。


1試合予想については一見わかりやすそうで、実は難しいという印象を受けた。

○○が勝つと思って勝ちの組み合わせをベタ買いしてもそうそうプラスにはならないだろう。

よっぽど珍しい得点になれば話は別だけど……

オッズが低い場合は控除率が低くなるような仕組みが必要だったんじゃないかなぁ。

2014年以前のJRAの単勝・複勝の控除率はオッズによって変動していて、

単勝でオッズ1.1倍の場合は13.3%、単勝でオッズ100倍の場合は21.1%だった。

非課税というメリットがあるにせよ、オッズが低ければメリットも少ないわけで。


もう1つ気になるのが購入方法である。

Webサイトで購入する場合は従来のtoto・BIGと同じなのでこれはよいとして。

toto・BIGは市中にあるコンビニや販売窓口で購入することが出来た。

WINNERも購入自体は可能なのだが、その場でマークシートを書いて買うようなことはできない。

コンビニで購入する場合は、Club totoに登録して、ここで申し込む必要がある。

このとき当せん金の受取口座を登録する必要がある。

その上でバーコードを発行してコンビニに持参して支払うことになる。

券は発行されず、当せん金は自動で口座に振り込まれるという仕組みである。


toto売り場については、Club totoへの登録自体は必須ではないのだが、

その場でマークシートに書いて購入することは出来ず、WebでQRコードを発行しておく必要がある。

その上でQRコードを呈示して購入する。

この場合は券が発行され、当せん金は窓口に受け取りに行く必要がある。

ただし、競技会予想タイプはこの購入方法から除外されているものが多いようで、Webサイトかコンビニで購入が必須となっている。

そう考えるとかなり中途半端な仕組みだなと思う。


なんでマークシートに書いて買うことができないのか、

明確な理由はわからないけど対象の試合数が多すぎるのが原因かも。

toto・BIGでは同時に販売する対象試合のグループは基本的に1つだけである。

(toto GOAL3だけ別日程で販売されるケースはあるみたいだけど)

このためtoto売り場には、販売中の回の試合を印字したマークシートを置いてあるそう。

これを使えば第何回と手でマークする必要は無いし、予想対象の試合を取り違える可能性も減る。

非予想系であれば何口購入するかだけが問題なので、口数さえ正しく伝われば良い。

でも、WINNERは同時に何試合も販売されているので、もしマークシートで売るなら試合番号などで識別する必要があるが、マークミスも多発しそう。

なのでマークシートで注文できる仕組みを作るのは諦めたということだろう。


競技会予想タイプであれば、あらかじめ印字したマークシートを用意するのも容易そうだが、

こちらは予想期間が長期間に及ぶという問題がある。

このため、券の紛失があると大変だから、Webサイトかコンビニ購入にしてるのではないか。

コンビニ購入の場合もClub totoで口座と紐付けているわけだから、紛失の心配は無い。


あとは今どきはWebサイトでの購入が主体になるだろうという読みもあるんだと思う。

他の公営競技でもインターネットでの投票割合が高まっている。

一時、無観客開催が続いた影響もあるんだが、それ以前からかなりの比率になっていた。

特に競馬はインターネット投票の普及率が高く、2018年でJRA・地方ともども7割を超えていた。

WINNERについては、1試合予想タイプについては試合開始10分前まで購入できる。

(これは複数試合を束ねて予想するtotoとは大きな違いである)

この特徴を生かすためにはWebサイトでの購入以外の選択肢はないと言える。


というわけでtotoのなにがダメだったかというところを研究した結果ではあるが、

やはり気になるのは控除率で、特に1試合予想はそれがゆえに難しいように見える。

イギリスなどブックメーカー文化のところでは、単勝・複勝への賭けがほとんどだという。

ブックメーカー方式では購入時にオッズを確定させるので、大穴に多額賭けられると困るというのもあると思う。

その代わり、単勝・複勝の控除率はかなり低いと言われており、実質的な控除率は5%程度とか。

大穴狙いは難しいが、その分控除率が低いのでドカンと賭けるという文化があると。


日本ではブックメーカー方式の賭けは公認されていないので、

全てパリミュチュエル方式、売上から一定割合を控除して的中票数で分ける方法である。

この方式は確定までオッズが決まらないが、3連単だと100万馬券とか、totoだと3億円超えの払戻が出たことがあるように、大穴も狙えるわけである。

このようなこともあり、日本では公営競技では連勝式が売上の大半を占めている。

連勝式というのは1着・2着の組み合わせとか、1・2・3着の順番とかそういうのを当てる賭け式のことである。

(競馬は例外的に1頭だけ対象の賭け式もそこそこ売れるが、それでも15%ほど)

そんな中でWINNERは控除率50%というのはかなり過酷である。

得点まで含めて予想するのは大変そうだが、それでも16~18通りに過ぎない。

公営競技だと連勝式では組み合わせ数の少ない競艇の2連単でも30通りですからね。