SBIグループが新生銀行を買収した話を以前書いた。
この後、SBI地銀ホールディングスは銀行持株会社となり、
新生銀行の株式の50%超を保有することとなり、SBI新生銀行と名前を改めている。
で、少数株主を締め出すための株式併合をすることとなったのだが、
想定外の株主としてエスグラントコーポレーションが残ることになったと。
SBI新生銀行株、旧村上ファンド系が9.75%保有 (日本経済新聞)
想定外というが、やろうと思えばできたことは確かである。
少数株主を締め出す手続きはスクイーズアウトと呼ばれることが多いが、
現在、主に使われるのは株式等売渡請求による方法と株式併合による方法がある。
株式等売渡請求は単純に大株主が強制的にそれ以外が保有する株式を買い取るもの。
以前、交付金銭領収書が送られてきたのはこの手続きによる。
この手続きはシンプルな方法だが適用するには条件がある。
特別支配株主1名で90%超の株式を保有していることである。
公開買付などで取得できなかった株式が10%以上残ったり、
あるいは2名以上で保有し続ける意図がある場合は使えない。
株式併合は株主総会で2/3の賛成があればできる点がまず異なる。
2名以上で保有を続ける意図があるといえば、旧LINE社である。
ヤフーとLINEの経営統合にあたり、旧LINE社をソフトバンクとNAVERの合弁会社に作り替えて、Zホールディングスの親会社にしたわけである。
このAホールディングスは元々上場会社であるLINE社なので、他の株主もいる。
公開買付で他の株主を減らした上で、株式併合でソフトバンクとNAVER関係者以外は1株も残らないようにしたと。
今回のケースもそれに近くて、なぜかというと公的資金投入の影響で、
預金保険機構と整理回収機構が株主にいて、この2名は返済が終わるまではSBI新生銀行の株主に残す必要があったから。
このため株式併合でのスクイーズアウトを行う必要があり、
その際に整理回収機構の持株数2000万株を超える株主が他にいれば、
それは今後も株主として残るという形にならざるを得ないと。
で、それを実際に実行したのがエスグラントコーポレーションだったと。
エスグラントコーポレーションは持株比率10%の株主にすぎず、
7割はSBI地銀ホールディングス、2割が預金保険機構と整理回収機構、
基本的にこの9割は連帯して動くから大したことは出来ない。
ただ、配当金で返済を進めるという方法は取りにくくなった。
なぜならば配当金がエスグラントコーポレーションに流れてしまうから。
また、公的資金返済後に100%子会社にするのも難しくなった。
預金保険機構と整理回収機構は公的資金の返済完了と同時に撤退してくれるが、
エスグラントコーポレーションの株式を買い取ると余計なお金がかかるから。
最終的には再上場という道しかなさそうだが。
というわけで面倒なことになってしまったというわけである。
ただ、やろうと思えばできたのはそうなので仕方ないんですけどね。
公的資金返済に余計な時間と労力がかかるだけではないか。