相互主義とは言えないビザ免除

日本のパスポートでビザ無しで渡航できる国・地域の数が多いと言われているが、

ビザ無しでの渡航を認める条件も国によっていろいろである。

そんな中で相互主義を求めてビザなしでの渡航を停止するという話が。

中国、シンガポール・ブルネイのビザ免除再開へ 停止は日本のみに (朝日新聞デジタル)

ブラジル観光のビザ必要に、日本人へ免除取りやめ「相互主義の原則」 (朝日新聞デジタル)

中国は新型コロナウイルス対策で停止中のビザ免除を再開しないという内容。

ブラジルについては今年10月以降に停止かという話。

もっともブラジルについては日本側がビザ免除を導入する方向で検討しているそうで、

これが実現すると日本人のブラジル入国時のビザ免除は継続するとみられる。

ブラジル人向け短期滞在ビザ、日本政府が10月撤廃へ調整 (朝日新聞デジタル)


各国、ビザ免除についての考えはいろいろだが、そもそも日本はどうなのかという話である。

日本は69の国・地域のパスポートを持つ人にビザ免除を認めている。

ビザ免除国・地域(短期滞在) (外務省)

観光・親族訪問・会合参加などを目的とした短期滞在の在留資格が与えられる。

短期滞在は最長90日が原則のため、ビザ免除でも90日を基本としている。

基本的には相互主義に基づき、日本人にビザ免除を行っている国・地域を対象としていて、

相互主義に基づき90日とは異なる期間を定めている国もある。

ブルネイの14日、カタール・アラブ首長国連邦の30日はお互い揃えた結果とみられる

タイとインドネシアについては15日に制限しているが、日本人の両国への渡航は30日が上限で異なる。

逆に長い方でドイツやイギリスなど一部の国では180日認めているケースがある。

原則90日が上限の短期滞在だが、これらの国の人に限っては入国管理局での手続きを踏めば180日まで延長できるという。

ただ、相互主義とは言いがたいものもいくつかある。


まず、明らかに日本が独自でビザ免除をしているのがオーストラリア。

オーストラリアはニュージーランド国籍を除き全ての外国人にビザの取得を求めているそう。

一方でETAと呼ばれる電子ビザの制度を1994年から導入しており、

日本はETA対象のためETAで容易にビザを取得できるというわけである。

手数料は20オーストラリアドル(約1900円)となっている。


オーストラリアとならんで相互主義からかけ離れているのがインドネシア。

2020年10月以降、インドネシアはビザ免除を停止している。

ただ、この停止前から観光ならビザ免除だが、商用だと到着ビザ(VOA)の取得が必要とかいろいろ複雑だったらしい。

VOAの運用すら停止していた時期もあったが、2022年3月から再開、

VOAは30日以内の観光・商用で指定の入出国港から入国する場合が対象だが、

手数料として500000ルピア(約4700円)かかるので、地味に高い。

購入の列に並ぶのが煩わしいということで、最近ではe-VOAが導入されたが、

決済手数料として3.9%上乗せされて519500ルピアかかるそう。

結局はVOAという形で集金したいだけでは? という気もする。

逆にインドネシア人の日本への渡航もちょっとあるけどそれは後で。


渡航目的の面で相互主義から離れているのがペルーですね。

ペルーについては日本側のビザ免除は「ビザ取得を勧奨する措置を導入しています」ということで実質停止状態なのだが、

それはさておき、日本人のペルーへの渡航は90日以内がビザ免除の対象だが、

観光目的ならよいが、商用の場合はビザ免除の対象にならないようである。

このことはペルー大使館のサイトにも明確に書かれている。

業務目的で渡航する場合でも、ビジネスビザ無しで渡航できるとする協定国の国籍以外の方は、ペルーで業務を行う場合、ビジネスビザを取得して下さい。契約を伴う全ての業務については、ビジネスビザの取得は義務となっています。

(ビザ (Ministerio de Relaciones Exteriores))

そこは相互主義じゃないのかと思うのだけどビザを取得しないといけないと。


最近はビザ免除での渡航前に事前登録を求める国がいくつか出ている。

アメリカ(ESTA)・カナダ(eTA)・ニュージーランド(NZeTA)がそう。

いずれも登録に当たっては手数料がかかる。

カナダのeTAは7カナダドル(約750円)で5年有効、空路での入国時のみ必要という。

(日本人でも陸路、めったにないだろうが船で入国する場合は不要らしい)

アメリカのESTAは当初無料だったが現在は21USドル(約3000円)で2年有効。

最近まで陸路は他のシステムが併用されていたが、現在はESTAに一本化された。

ニュージーランドのNZeTAは2年有効で52NZドル(約4600円)となっている。

期間内なら複数回使えるとはいえ、インドネシアのVOA並みに高いが、

これはビザ申請時に徴収される国際観光税35ドルがNZeTA申請時に徴収される都合らしい。

電子マルチビザでは? という気もするけど、“You must get an NZeTA if you are travelling without a visa…”とあるからビザではないらしい。


また、今後導入予定の国としては韓国(K-ETA)とドイツなどシェンゲン協定加盟国(ETIAS)がある。

韓国はすでにK-ETA導入済みなのだが、観光促進の名目でK-ETAの適用免除をしている。

K-ETAは1万ウォン、ETIASは7euroと1000円程度の手数料がかかる。

K-ETAについては取得しておくと専用レーンが利用できるらしいので、

それを目的にあえてお金を払ってK-ETAを申請するのも手ではあるらしい。


そして日本もインドネシア人とカタール人のビザ免除は事前登録制になっている。

事前登録の有効期間は3年となっている。そして登録手数料は無料と。

ただ、手数料は無料でも申請には在外公館にパスポートを持参して、

後日、登録証を貼り付けたパスポートを返却って言うんだから相当な手間である。

それを旅行会社などに代行依頼するとそれはそれで金がかかる。

そりゃ他のビザを取得するよりは楽で速くて安いだろうけど。

今年になってインドネシア人の事前登録はWebからできるようになったそう。

承認後に登録証を印刷すればそれでOKと。これでだいぶ楽になった。


日本がビザ免除を行っている国・地域は69、これに対して日本人がビザ免除で渡航できる国は少なく見積もっても120ヶ国以上はある。

これは日本人に対して一方的なビザ免除を行っている国・地域の多さを表している。

観光・ビジネス促進のために効果的という各国の判断があるのだと思う。

そのような判断をしていた国の1つが中国(中華人民共和国)だったと。

実際、観光・ビジネスの活性化に大きな効果を生んでいたと思うのだが……


一方、日本も中国からの渡航円滑化を進めたい考え自体はあるとみられる。

個人観光ビザでの来日歴のある人を対象にした数次観光ビザの導入がその一例である。

ただ、やはり観光なら旅行会社の保証や資力証明、商用なら企業の保証など、

中国大陸からの渡航にはいろいろな条件が付いているのが実情である。

近国ではフィリピンとベトナムも同様の状況である。


果たしてどうなるんでしょうね?

相互主義でない以上はなかなか強く言えないところはあるが、

日本人の中国渡航時のビザ免除は当然日本側にもメリットはあった。

中国大陸から日本渡航時のビザ免除も昨今の渡航円滑化の流れと整合的ではある。

ただ、やっぱりそれは難しいんじゃないかと思わせる部分も多々ある。

日本側としても検討はするんでしょうけど、どうでしょうね。


なお、ビジネス目的での渡航円滑化についてはAPECビジネストラベルカード(ABTC)という仕組みもある。

APEC加盟国間のビジネス渡航の円滑化のために発行されるカードで、

一定の条件を満たす貿易・海外投資を行う企業に所属する人に発行される。

各国の承認手続きもいるので発行まで6ヶ月ぐらいかかるのだが、

発行されると中国・ロシア・オーストラリア・インドネシアでもビザ免除になるし、

通常のビザ免除より滞在期間が長いとか、優先レーンが利用できるなどメリットがある。

商用目的でかつ、所属企業の条件がいろいろ付くが、ビザ免除の停止が続く中では期待度は高いのではないか。

日本にとっても短期商用目的では推奨したい仕組みだと思われる。