近鉄ほどホーム柵の設置が難しい鉄道会社もないだろうと言われているが、
鶴橋駅の全てのホームにホーム柵が取り付けられることになったのだが……
鶴橋駅2番線昇降ロープ式ホームドアを2025年3月30日(日)初列車から使用開始 (pdf) (近鉄)
なんとロープ式だけでなく、一般的な開閉式のホーム柵を導入するのだという。
近鉄は全列車のドア位置を揃えるのは事実上不可能である。
通勤電車の多くは4ドアではあるが、このドアの配置が車種により差がある。
老朽化した車両を一掃して……というのを近鉄に期待するのは厳しいだろう。
名古屋線を中心に3ドアの車両もあり、これも一掃とはならないだろう。
さらに近鉄には特急があり、通勤電車と配置が大きく異なり、車種による差も大きい。
奈良線においては、阪神電車との直通運転を行っているが、
阪神車は車両の長さからして異なるということで絶対に揃うわけがない。
となれば、ロープ式しかないだろうというのが常識的な考えである。
昇降ロープ式のホーム柵はJR西日本が特急停車駅を中心に導入している。
この方式は車両連結部などへの転落を防げないなどの欠点もあるのだが、
特急停車駅の安全性向上には効果的ということで活用されている。
JRの成田空港駅・空港第2ターミナル駅でも使われているようですね。
実際、近鉄は早い段階で阿倍野橋駅にロープ式のホーム柵を試験導入、
現在は本格導入に向けて順次設置ホームを増やしている。
乗り入れ先の阪神三宮駅の快速急行折り返し用ホームにも導入され、
鶴橋駅の奈良・伊勢方面のホームの両側に設置されることも決まっている。
近鉄にとっての本命はこれに違いないと誰もが思っていたわけである。
ところでちょっと話は逸れるのだが、JR西日本と近鉄ではロープ式でも形状がだいぶ異なる。
JR西日本のロープ式は支柱が伸縮することによりロープを上げる方式になっている。
この方式は一般的な開閉式のホーム柵と同じような工事で取り付けられそうである。
一方、近鉄のロープ式は支柱を立てて、その支柱に沿ってロープを昇降させる仕組みになっている。
こちらは支柱を立てる工事がかなり大がかりになっている。そのかわり支柱部がかなり細い。
近鉄車と阪神車が混在する場合、昇降ユニットを置く場所すら容易ではない。
細さを求める必要があり、支柱を立てる方式を採用しているのではないかと思う。
当然これは阪神三宮駅(快速急行用ホーム)にも当てはまるので、こちらを採用している。
話は戻って近鉄は昇降ロープ式のホーム柵しか導入できないと思っていたのだが、
まさかの開閉式のホーム柵を導入するのだという。
具体的には近鉄名古屋駅(急行・準急用ホーム)と鶴橋駅(上本町・難波方面)だが、このような注釈が付いている。
(※ 大開口ホーム柵:多様な扉枚数に対応できるようホーム端からセットバックして設置)
そう、柵と車両の間を歩けるぐらい空けておく訳である。
こうすることで車両の扉と柵の開口部がズレていても、調整が利くというわけである。
言われてみればなるほどという感じはあるけど……
実はこの方法を導入している駅が川崎市内にあって、それが東急田園都市線の宮前平駅である。
今となってはなんでこんな設置方法なんだという話なんだけど、
柵が設置された2015年には田園都市線には6ドア車が走っていたという事情がある。
6ドア車に合わせたホーム柵の設置ができなかったので、柵と車両の間を歩けるようにしたと。
ただ、なんでそこまでして宮前平駅へのホーム柵設置を急いだのかというのは謎である。
というのも当時6ドア車の廃止が迫っていて、そこまで待てばよかったのである。
実際、JR山手線の駅では6ドア車が来る可能性のある部分の設置を先送りにする対応も取られていた。
それだけ転落が多くて早急な対応が求められたのか。よくわからない。
他の採用例としては新幹線の熱海駅、新神戸駅があるが、
これは新幹線がホームを高速で通過するという事情によるものである。
開口部と扉の位置を厳密に合わせる目処は立たなくても、安全面から柵の設置を優先したわけである。
熱海は日本初の可動式ホーム柵設置駅であり、新神戸もそれに次いで古い。
現在は開口部を広いものができて、そこそこの停止精度でも開口部と扉位置を合わせられるようになった。
このため新神戸駅では2018~2019年に最新式のホーム柵に置き換えられ、歩ける隙間はなくなった。
なぜロープ式ではなく、セットバックした開閉式を採用するのか。
これは明確なところはわからないが、何らかの支障があるのではと。
近鉄の支柱を立てるロープ式は支柱を立てる構造物が大きくなる。
そのため導入できない場所があるのではないか。
逆にセットバック方式はホームの幅に余裕がないと導入できない。
鶴橋駅の上本町・難波方面は利用者の割には余裕がありそうだ。
これが同じ駅で異なる方式が採用される理由なのだろう。
近鉄は極端だが、各社ともいろいろ苦労はありそうですね。
阪神は近鉄車が入りうるところへの柵導入はロープ式を導入した三宮以外はないけど、
梅田とか三宮の他のホームとかは近鉄車は来ないので開閉式のものを導入している。
ところがこれもちょっと面倒な事情があって、山陽車の一部は車体長が若干長いらしい。
このため開口部の広いホーム柵を使った上で、停止位置を微妙にずらすことにより対応しているという。
広い開口部に微妙な調整をしながら当てはめているという路線はけっこうあるようで、
京成のスカイライナーも停止位置の調整と大開口部の活用でホーム柵対応させているようだ。
そう、特急車でも車種が限られていればなんとかなる場合もあるんですね。