昨日、地図の話を書いていて、ふと気になったことがある。
街中を歩いていると、丸いプレートが埋め込まれていることがある。
これは公共基準点と呼ばれるものである。
この公共基準点は街中での測量の基準に使われているそうだが、一体どうやって使うんでしょうね。
公共基準点というのは工事などのために行政機関が設置する基準点である。
道路工事のために幹線道路沿いに設置されたり、区画整理を行う地区内に設置されたりする。
基準点には1級・2級・3級・4級があり、2級基準点から3級基準点、3級基準点から4級基準点を作ることができる。
一方で、街区三角点、街区多角点というものがある。
これも公共基準点の一種だが、設置の経緯が違って、都市再生街区基本調査・都市部官民境界基本調査という国の事業で設置され、
その後に市町村に移管されたもので、それぞれ2級・3級の基準点に相当する。
ここで気になったことが2つ、1つ目が街区三角点って国土地理院が設置している三角点とは違うの?
もう1つが三角点と多角点の使い分けってなんだということである。
公共基準点というのが、国土地理院以外の役所が設置する基準点という意味だそうで、
一方で国土地理院は公共基準点の設置に必要な場合に四等三角点と最下級の三角点を設置することもあるそう。
ただ、後で書く事情もあり、最近は重要性は薄れているように思う。
それで、公共基準点は国土地理院の設置した三角点や他の公共基準点から位置を決める。
昔は三角測量という3つの既知の点との角度を測ることで測量をしていたが、
現在は距離と角度を正確に測れるので、2つの基準点との角度・距離を測ることでも位置が特定できる。
このような測量方式を多角測量といい、現在の主流らしい。
1級・2級基準点は3つ以上の基準点との角度を測定を行う結合多角方式が原則必須、
3級・4級基準点は一本道で測定を行う単路線方式でもよいということで、
2級相当の点を三角点、3級相当の点を多角点と呼んでいるのだと思う。
といっても今どきは三角点を起点にして測量なんてしないんですよね。
GNSS測位ということで、人工衛星(GPS や みちびき など)を使う方法が主流で、
ただ、電波というのは電離層などで伝播特性が変わってしまう。
そこで比較的近くにある既知の点で受信したデータと比較する。すると精度よいデータが得られる。
国土地理院では電子基準点を全国1300箇所に設置して、そこで受信したデータを公表している。
1級・2級基準点を作るには、比較的近くの電子基準点を3つ選び、
1~2時間測定した受信データをこの3つの電子基準点の受信データと比較する。
これにより3つの電子基準点からの距離・方角を正確に決められるというわけ。
今どきは四等三角点はあまり重要ではないというのはそういう事情である。
こうやって作られた電子基準点から距離・角度を測れば、容易に3級・4級基準点を作ることができ、
そこを起点として工事に必要な座標を決めたり、土地境界を測定したりできると。
当然、3級・4級基準点をGNSS測位で決める方法もあって、
その場合はリアルタイムで他の電子基準点のデータと比較して10秒ぐらいで位置が決まるらしいのだが、
一方で空が見えないような場所でも、距離・角度の測定はできるので、その点では有用らしい。
なお、公共基準点を使った測量には承認を得る必要があるそう。
ところで、地図にはもう1つ標高という要素もある。
かなり最近まで標高を測定するには、2地点に標尺を立てて目盛の差を読み取る方法が使われていた。
それをずっと積み重ねていって標高を決めると誤差が相当大きくなりそうだが、
いろいろな工夫により誤差が小さくなるようにして来たのだという。
2025年からGNSS測位で標高を決める方法に移行し、それに伴って標高が少しだけ変わった。
富士山の標高5センチ高く、衛星使い新たに測量…「3776メートル」は変更なし (読売新聞)
ただ、標高ってのはけっこう難しいんですよね。
現在では地球は楕円体でモデル化するGRS80あるいはWGS84が一般的である。
ところがこの楕円体の面と標高0mの面は場所により異なる。
それは地球が厳密に楕円ではないというのもあるのだが、陸地では万有引力が大きくなるので、
その部分では重力ポテンシャルが等しくなる点が高くなるんですね。
この重力ポテンシャルが海面と等しくなる面をジオイド面という。
衛星測位では楕円体からの高さを知ることは出来る。
しかし標高を知るにはその地点のジオイド面の高さを知る必要がある。
かつては標尺で測った値とGNSSで測った値を照らし合わせて決めていた。
それが航空機で測定した重力データから決められるようになったと。
そのデータを「ジオイド2024日本とその周辺」という。
日本全国で東京湾平均海面(T.P.)0mに相当する楕円体からの高さが入っている。
現在はこのデータとGNSSで測定した楕円体からの高さの差が標高である。
もっとも沖縄や一部の離島ではその地域の海面高さを基準に標高を決めていた経緯があり、
それを補正する基準面補正パラメータというデータが導入されたという。
計算上は沖縄でもT.P.で標高を表せるようになったけど、それはしないと。
というわけで結局、人工衛星で測るんかいという感じである。
ただ、局所的なデータを得るには基準点から測定する方が有利なケースは今もあって、
そういう測定のスタート地点として公共基準点は様々活用されていると。
有用性はだんだん減ってるような気はするけど。